日別アーカイブ: 2016年3月27日

大人の油絵、モランディ

こんにちは。油絵科の関口です。
ようやく桜も咲き始めたと思ったら、ここ数日は冬の様な寒さが戻って来てしまいましたね。

さて、先日東京ステーションギャラリーで行われている「モランディ展」を見に行ってきました。見た目はかなり地味な絵ですし、パッと見て上手さが伝わってくる絵ではないので(言い換えるなら通好みで、大人の絵なんです)受験生の皆さんが見て、どう思われるかは分かりません。ただ、本当に素晴らしい展覧会でした。
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展覧会カタログより

モランディの作品はものすごく禁欲的で、感情に抑制を効かせた・・・それらを漢字で表すなら、「静謐」「安寧」という表現がシックリきます。
まるで何かの修行僧か、それを通り越した仙人のようなストイックさがあります。その一方で、本人は飽きずにずっと静物(今回の展覧会では風景も出品されていますが)を描き続けていた訳で、それには何か秘密があるに違いない…と考えてみました。
1952年の作品
左上の作品は今回の展覧会出品作(これは絶品でした)で、その他は同年の別作品

今回の展覧会では「変奏(バリエーション)」というテーマが掲げられています。生涯に渡ってモランディの意識の殆どは「モチーフを利用した画面の構成」に向けられていた様に思います。モチーフの配置を僅かに動かし、まるで画面上でチェスをするかの如く、何かを考えていた事が伺えます。モチーフや画面の関係が作り出す、僅かな違いに喜びを感じ、一人悦に入っていた可能性は否定できません。
ある意味で偏執狂的で変態的と言っても過言ではないかもしれません。いや言い過ぎかな(笑)。しかし絵を前にしてニヤリとほくそ笑むモランディの姿を想像すると、それはかなり人間的で、実際には仙人とは程遠いイメージなのかもしれません。

モチーフ写真1モチーフ写真
モランディの愛したモチーフ達。時には溶接までして自作したり、ペンキを自分で塗るなど、かなりの拘りようです。

 

ところで、以前「モランディが初めて日本で大々的な展覧会をやる」というので見に行った事があり、その時の記憶は今でも鮮明に覚えいます。
実はその展覧会、今から27年も前のもので、僕がまだ浪人生の頃に見た事になります。
神奈川県立近代美術館
今年で閉館になってしまった神奈川県立近代美術館の鎌倉館で1989年に開催。

モランディ展カタログjpg
その時に買ったカタログ。

モランディポスター
この絵のポスターは、学生時代に何年もアパートの壁に貼って、ずっと眺めていました。近くで見ると全然描き込んである訳ではないし、形もかなり歪めているのに、離れて見ると質感と空間がリアルに浮かび上がります。どこか魔術的な魅力に溢れ、完璧なバルールの作品だと思いました。
※バルールについては以前に書いたこのブログをご覧下さい。
http://www.art-shinbi.com/blog/20151004/

モランディ展は滅多に日本には開催されないので、まだご覧になっていない方や、一度大人の絵を味わってみたい。という人は必見です。
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