月別アーカイブ: 2018年9月

ボナールの見えざる技術

こんにちは。油絵科の関口です。それにしても今年は台風が多いですね。気温も乱高下して体調を崩している人も多いと思います。受験生の皆さんも風邪には気をつけましょうね。

さて先日、国立新美術館でやっているボナール展を見てきました。ボナールは19世紀末から20世紀中半に掛けて活躍し、ちょうど今から100年前位の画家になります。色彩豊かで穏やかな作風は、100年経っても色褪せることなく、世界中の人から愛されています。


今回の展覧会では、油彩だけでなく、リトグラフ、水彩、デッサン、写真(主にボナールが撮影)、プロジェクトマッピング(こちらは現代の技術なのでボナール作ではありません)まで幅広く展示されています。
油絵は大作や有名な作品も数点混ざっており「画集で見ていたあの作品が!」というものが間近で観られるチャンスです。

さて、入って最初の部屋には初期の作品がズラリと並んでいるのですが、初期の頃は日本美術の影響がいたる所から感じられる事でしょう。そして作品タイトルの素材のところにデトランプという表記があるものがチラホラ。デトランプって何だろう?と思った人もいるかと思います。厳密な定義は難しいのですが、テンペラの一種で、一般的には膠(又はカゼイン)をメディウムとして使った絵具という解釈がなされています。
「庭の女たち」デトランプ、カンバスに裏打ちされた紙

恐らく日本美術に興味があったボナールは、日本画と同じく膠で絵を描こうと思って絵具を作ったのではないでしょうか?まぁ画材から考えてる事を推察するというのは、ちょっとマニアックな推理ですがね…。


この初期の油絵を見ると、一筆ひと筆とても丁寧に描かれているのが分かります。近寄ってよく見ると、まるでペルシャ絨毯を編んでいくかの様な、複雑なタッチの重なりです。色相変化と彩度変化を絶妙に操っているので、色の響き合いがとても美しい作品だと思いました。

あと、ボナールは室内のモデルを多数描いていますが、いわゆる肖像画とは全く異なる趣の作品を多数残しています。

例えばこの作品、右側の身体を大胆に画面からはみ出させ、鏡の中の顔も半分しか映し出されていません。そしてその背後にある椅子は、かなりの暗さで描かれていて、まるで絵の主役であるかの様な振る舞いです。しかしこれは椅子を目立たせようとして描いているのではありません。実は周囲にある家具や壁紙などを巧く使って、椅子の主張を打ち消しています。その証拠に、この作品を初めて見て、最初に椅子をジックリと見たという人はまずいないと思います。


この作品でも左上にいる人物は脇役の様に描かれ、椅子の暗さの方が強く表現されています。(よーく見ると、猫ちゃん?もいるんですが、気付いた人が何人いるでしょうか?)その人物のすぐ後ろにある線は、こんな位置に入れたら、美術の先生とかに「こんな位置(目の近く)に線を入れたら強すぎるからちょっとズラした方が良い」と言われそうな位置にありますよね?
こういうのを気にならない様に組み立て、画面の中にある強さを打ち消す事が出来るバランス感覚と言うか、造形思考と言うか、画面力学と言うのが適切なのか…これがボナールの見えざる技術なんです。こうやって簡単な解説や種明かしをしても手品を見せられている様な感覚になりますよね。

フランス近代絵画をジックリと見ていくと、こういう技術を持った画家が沢山いました。折りを見て紹介していきたいと思います。長くなりましたので、今日はこの辺で。


P.S.
センター試験の受付が10/1(月)?開始されます。芸大や国公立を受ける人はもちろん、私立のセンター利用をする人も忘れずに申し込んで下さい。特に受け直しを考えている大学生、休みがちの浪人生、出し忘れにはくれぐれも気をつけて下さいね。ではでは。

新美工芸科イベント開催!

こんにちは、全科総合部です。

本日も新美は悪天候にもへこたれることなく、盛り上がっています!
通常の授業、各科保護者会、そして新美の工芸科ならではの
「パーフェクト描写ゼミ」の第一回目を開催しております!

今回は~レモン編~ということで、帰宅するときはレモンは完ぺきに描写できるように
なっていることでしょう!!

専門講師(ユーチューバー)の池谷先生も熱が入っております。

資料も充実しています。

先生の手元から受講生のみなさんは、目が離せません。
解説しながら実演していくので、とてもわかりやすい!!

これを参考にレモンを描けば、同じクオリティーをもったものが描けるでしょう。
他の受験生と、ここで差をつけておいておくのが得策ではないでしょうか。

今日、このゼミを逃してしまった方も第二回がございますので
是非、ご参加ください。損はさせませません!

予告「第二回パーフェクト描写ゼミ」10月14日(日)10:00~
受講料:4000円
申し込みは、新美窓口及びホームページから申し込みができるようになります。

よろしくどうぞ、パーフェクト描写ができるようになりましょう!!

彫刻科。全科石膏コンクール上位作品。10/7(日)8(祝)公開コンクール。

こんにちは!彫刻科の小川原です。10月も目前ですね。2学期は各予備校公開コンクールがあります。今の実力がしっかり出せるように準備しておきたいですね!
新美の公開コンクールは10月7日(日)デッサン、10月8(祝)塑像です。意欲の高い学外生の皆さんにも是非参加して欲しいと思っています。よろしくお願いします!

さて、先日行われた全国石膏デッサンコンクールでは石膏デッサンを行う科全てで競い合いました。上位に並んだ彫刻科の生徒作品を紹介します。
昼間部生の作品。

画面全体に気を使って作品としてやりきれています!ややおなかが黒いかなという印象がありますが、十分な出来です!


全体に丁寧な描写ができていて好感が持てます。やや探り方が似ていて臨場感に欠けるのと、大きな断面での塊り感がより強く伝えられるとさらに良いです。


少し調子の扱いが強引なところがありますが(特に顔)、熱量の感じられるいい作品に仕上がっています。まあ実際に描いている位置は真っ暗で相当描きにくかったと思います。それを考えるとよくここまで整理できたなと感心してしまいました。


やや顔の表情(特に口)が輪郭的にキツいのが気になります。が全体に無理なく印象を捉えていて自然な見え方が良いです。


ゴロッとした印象が良いですね!少し黒の色幅が似ているのでさらに表現が深まれば言うことないです。


現役生の作品です。首の量感が足りないのがもったいないですが、やりきり感があってよいです。魅力的な作品に仕上げてやろう!という作者の気迫が感じられます。

昨年の芸大合格者であり、基礎科の講師でもある日向君に6時間でデモンストレーションを行ってもらいました。さすが芸大生!という貫禄のデッサンです!

ここからは普段の授業作品です。塑像作品を課題ごとに1点ずつ紹介します。
昼間部生の作品。

現役生の作品。

髪の扱いに苦戦しましたが、最終的なまとまりが良いです。この調子!

実力が上がってきているのが見て取れます。2学期のうちにもっと作品のレベルを上げていきましょう!!

最後に僕が最近制作している作品を紹介して終わります。
再生の理論 というタイトルで、輪廻転生のなかの転生する瞬間を作品にしています。この作品の後、生と死の作品を作り、3つの作品で完結させます。まだ塑像の段階ですが最終的にはブロンズにします。


水鏡 というタイトルで作っている小品です。これは石膏原型ですが、最終的にはブロンズにします。

 

映像科:10/7.8は公開コンクールです

こんにちは。映像科講師の森田です。
10/7.8の全国実技模試、いわゆる公開コンクールまであと2週間を切りました。
感覚テスト、選択科目(小論文or鉛筆デッサン)と学科試験で武蔵美映像学科の一般入試の形式を体験することができます。

そして。
既に新美のHPでも告知されていますが、学科試験(国語、英語)に変更があります。
今年から武蔵美の映像学科は造形構想学部に移設されることになり、学科試験も昨年までの形式とは変更されることが予告されています。
新美の公開コンクールでは、この新しい形式の学科試験を想定した内容になっています。

申し込みはまだ受け付けていますので、武蔵美の映像学科の受験を考えている人は、ぜひご参加ください!


写真は昨年の公開コンクールの講評風景。

通信教育

こんにちは。通信教育です。

すっかり秋めいてきました。体調に気をつけて、しっかり時間を確保し制作してくださいね。作品お待ちしております。

新2学期生募集中です。新学期生には、初回課題発送時に各種冊子資料をお送りしています。

デッサンの基礎、着彩/平面構成の基礎から、受験生用のデッサン、油絵、平面構成、立体構成などについてそれぞれ詳しく解説してある内容になっています。

作品に添付される添削とともに、冊子や資料も何度か見直してもその時々に感じることが変わってくるかもしれませんね。