月別アーカイブ: 2013年9月

馬肥ゆる秋ですね?。

こんにちは油絵科昼間部の箱岩です。
季節の進行がはやくなって、めっきり秋の気配ですが、体調を崩しやすい時期です。受験生の皆さん、体調管理に気をつけていきましょう。

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今日は、東京芸術大学が初開催した、美術学部入試説明会に行ってきましたので、そのご報告をします。
説明会は約1時間スライドによるカリキュラムの説明や、芸大出身の作家や先輩たちからの受験生へのメッセージなどが紹介され、続いて試験の主な流れや評価のポイントなどが説明されました。これらは、既に芸大のHP等に紹介されたものと同一の情報なので、詳しくは芸大のHPを御覧ください。
今回の特典は、実はこの後で紹介された過去4年分の合格者の作品画像で、よく予備校のパンフレット等で見かける再現制作の作品ではなく、当然、実際の試験の絵をスライドで見せていただきました。
残念ながら、会場は撮影も録音も禁止ということでしたので、文章のみでお伝えしたいと思います。
私も芸大の受験に長く携わっていますが前代未聞の画期的な出来事でした。説明会開催に踏み切った芸大に拍手を送りたいと思います。
内容は各年、各課題ごとに4~5名分を見せた程度ですが、受験生の絵が見れたので、いろいろと思うところはありました。
個人の感想としては、「試験本番のライブ感の中で、個々の思いや考えは、どんなレベルであろうと絵に表れるもの。そして、その子の持つ魅力は、どんな形であれ、必ず理解されるのだなぁ」ということ。絵は巧さじゃない。好きであること、のめり込める存在であるかのほうが大切。
この考えが確信的になったことは、自分の中で大きかったと思います。

2学期に入り、各自の考えや感情の動きに作品が不安定に変化をすることと思いますが皆さんの制作の傍らで、皆さんの放つ魅力や想いや感性を、しっかり晴れた眼差しで見つけていけるようにと意気込む帰り道でした。

さて、今週からセンター試験の出願が始まります。出し忘れなど無いよう十分気をつけてご準備下さい。

国立はお祭りでした。

国立校 基礎科です。

ずいぶんと秋らしく涼しくなりました。
学業も制作も、はかどる季節です。

この週末、国立市では谷保天満宮の例大祭がありました。
普段は静かな住宅街なのですが、この日ばかりは屋台にお神輿と、
なかなかのにぎわいです。
谷保天満宮は学業の神様です。
いつかきちんとお参りに行ってみたいと思います。

お祭り

お神輿

授業中もお祭りの賑やかな音が聞こえてきましたが、みんな集中です。

デッサン

国立校では、10/24(土)・10/26(土)・11/23(土・祝) 13:00~14:00 の3日間、
美大を目指すお子様をお持ちの保護者の方にむけての
進学説明会を行います。
授業の見学のみでも結構です。
美大を受験したいけれど、どんな学校や科があるのか、
どのように勉強したらよいのか、
簡単な疑問から、専門的なご質問まで、お答えいたします。
お気軽にお立ち寄りください。
お問い合わせはこちらまで。
http://www.art-shinbi.com/02kunitachi/access/index.html

映像科・作品研究(秋の遠足)のレポート

こんにちは。映像科講師の森田です。朝晩はすっかり涼しくなり季節の変化を感じる日々ですが、一年間のカリキュラムもちょうど折り返し地点。これまでは基礎的な描写力や文章力を身につけることが目標でしたが、この先は試験の点数を意識しながらの制作になります。映像科の試験では絵だけでなく、文章表現やテーマの設定によって総合的に評価されるので、ひとりひとりが自分の表現を様々な角度から鍛え上げていく必要があります。

そんな中、先週の金土日コースの授業はちょっと趣向を変えて、新美から徒歩3分、走れば1分のオペラシティ・アートギャラリーへ。『アートがあればⅡ 9人のコレクターによる個人コレクションの場合』という展覧会をみんなで観に行きました(金曜日)。とはいえただの遠足ではありません。200作品以上の展示の中から自分が興味を持った作品をピックアップし、教室でその作品についてのレポート記入と研究発表を行なってもらいます(土曜日)。そして最終的にはその研究発表を参考にしながら、自分が制作することを想定した映像メディア作品の展示プランをプレゼンテーションする(日曜日)という、推薦入試対策も兼ねた特別授業でした。

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『アートがあればⅡ』という展覧会自体は個人のコレクションによる展示なこともあり、比較的絵画や写真の作品が多かったのですが、日曜日のプレゼンテーションはあまりそれに捕われず、みんな自由で壮大な、ある意味突き抜けた発想で取り組んでくれました。その一例、ということで授業内でプレゼンテーションしてくれたプランから紹介しようと思います。

□タイトル:『壁をなくすノート』
□素材、メディア:ビデオ映像(15分・ループ再生)、本
□内容:映像と一冊の本によるインスタレーション作品。映像と本はそれぞれ二つのパートに分かれている。日本の小説家と海外(英語圏)の小説家に協力してもらう。日本のことを少し知っている海外の小説家に、知っている日本語を挙げてもらう。日本の小説家はその単語だけを使って小説を作る。同様に日本の小説家は知っている英単語を挙げ、海外の小説家はその単語を使って小説を書く。映像ではその小説家たちが単語を思い出しながら口にする場面を映し、鑑賞者はその映像とともに、実際に書かれた小説を読むことができる。
□テーマ:「言葉の壁をなくす」私たちが別の言語を持った人と通じ合うことができないのは「言葉の壁」のためである。だが、私たちが言葉とは別のかたちで自分の考えを表現しようとすることで、その壁を越えて通じ合うことができるのではないか?

映像を「空間を構成する要素」や「物語を伝えるメディア」と捉えることもできれば、もっと広く「何かの行為を記録する方法」と考えることもできる。プレゼンテーションとその後のディスカッションではその発想の違いや、想定したアウトプットの面白さについて意見を交換しました。どの人のアイディアも「それ、大学に入ったら実現した方がいいよ」という感じで、全体的になかなかハイレベルなプレゼン大会でした(時間はやや押し気味でしたが…)。ともあれこのように受験課題の制作でもなく、コンテンツのとしての映像を観るだけでもなく、映像の可能性についてかなり自由に考えてみたりすることもきっと大切なはず。という充実の3日間でした。

さて、そんなプログラムを経由しつつ映像科では当面の目標としての「武蔵野美大型コンクール(10月13日・14日)」に向けて、今週来週と感覚テストと小論文の特訓課題も行ないます!

今のこの時期にこそしっかりと蓄えを

デザイン科総合コースの滝口です。

頑張った夏期講習も、季節の変化とともに少し落ち着いてきて、寒くなってくると少しずつ試験に近づいてきているなと思い始める時期かなと思います。
ちょっとこの時期って、ふっと落ち着いてしまう感覚と漠然とした不安感にも似た焦りが行ったり来たりします。そんな時期だからこそ、今の内に色んな吸収や刺激を与えていく事って大事だなと思います。

総合コースでは、9月の始めにイベント課題として上野にある様々な施設(上野動物園、国立科学博物館、国立博物館など)を各自取材をして、それを元に自由に作品を作ってみるという課題もしました。
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3カ所なので、先生方もそれぞれ分かれて引率していきましたが、僕はあまりじっくりと見たことのない国立博物館に行きました。生徒とともにじっくりと博物館を見て回りましたが、古美術や国宝なども多いので作品の撮影は無理かなと思ったんですが、半分以上は撮影が可能で、ただ見るだけでなくて自分で興味ある部分などを写真で残すことが出来たので、とっても取材として僕も充実した1日でした。
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↑浮世絵の部分ですが、細かく見ていくと色々と遊び心にあふれていました。

新学期で色々な課題やレクチャーなども総合コースではしていますが、2学期からしっかりと始まる私大対策なども含めた内容として、色々なデザイナーやデザイン書籍を見て、自分に新しい感覚の刺激を与える実習もこの時期にしています。
実は、僕自身とても美術書、とくに写真集やデザイン書籍の収集が好きで、個人で古本屋や書店などを回って漁っています。最近では、オンラインのみの書店とかもあるんですよ。

その中から、ここ2ヶ月ほどで集めたのと総合コースの図書に追加されたデザイン書籍の表紙だけ一部お見せします。(内容を書き出したら、多分それだけでブログも書けるかなと思うので)

まずはADC年鑑。こちらはデザイン科総合コースでは年代が抜けてしまっているのもありますが、近年のもしっかりと置いてあります。ADC年鑑って定価だと2万1千円もする書籍。古書を回っていたら2012年度版が1万4千円でありました。勿論買いです。
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こちらは、日本のデザイナーでは基本の巨匠シリーズで、永井一正さんと亀倉雄策さんのデザイン書籍。内容はもちろんの事、値段もちょっと受験生には定価で買うにはお高いか・・・6千円程度。でも、頑張って探せば3千円で見つかるかも(というか見つけた)
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そして、デザイン雑誌の中では幅広くデザイナーの作品や企画を紹介してくれる雑誌アイデア。お金ある人は定価でしっかりと買って欲しいですが、なんと言っても1冊大体3千円程度。そう何冊も買えません。
でも、お金がないとこういう書籍は手に入らないと思っているのは、大きな間違いです。この下のアイデアの値札をよく見てください。実は、1冊105円です。なんとペットボトルのジュースよりも安い!中を見ると、時代的には90年代と古いですが、内容はとっても良いです。古くても良いデザインは良いのです。
もちろん近年のも置いてありますよ。
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立体にも、とっても参考になる図書も最近増やしました。左がオランダのインテリアデザイナーの特集。右が子供の家具の紹介本。こちらも実は値段を見ると105円と500円だったりします。
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生徒たちにも、どうしてこんなに安い書籍を見つけられるのですか?って聞かれますが、それは大好きな趣味であり長年で培われた勘です。そんな僕個人の趣味を、新美デザイン科総合コースのみんなにもお裾分け。集めた書籍をみんなで閲覧したり収集したり。
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この今の時期だからこそ、色んな刺激をしっかりと蓄えて、これから向かっていく試験にも、その先のデザインという世界への準備としても、こういう自分の足を使って集めることや自分の世界にとどまらず好奇心を持つ習慣を養ってもらえたらと思います。

総合コースでは、さらにただ見たり集めたりだけでなく、それを活かしてみる訓練も授業で取り入れています。知っている、見たことあるでは、それらは自分に吸収されているという事ではないですからね。

追記:
僕個人の趣味の写真集のコレクションで、某美大での簡単なレクチャーもしたことがあるのですが、ここでも「デザインで見る写真集」をテーマで紹介してみたいなと思っていたんですが、ちょっと長すぎるかなと思ったので、いつか別の機会で。写真集も本当に奥深い世界ですよ。1冊だけ紹介。
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↑これは、今年出た中平卓馬とホンマタカシのアメリカの出版社から出たコラボレーション写真集。
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↑開くとリング式なので3ページになるんですよ。とっても面白い作りです。

芸術の秋ですね。

こんにちは!彫刻科の小川原です。暑い暑い夏も終わり、過ごしやすい日々にほっと一息ついていることと思います。でも受験生の皆さんは気を抜いてはいけませんね!1学期、夏期講習と貯めてきた経験値を今ここでしっかりと形にしていくことが受験を乗り越えていくために必要不可欠だと言えます。ただ闇雲に取り組むのではなく、これまでの制作を振り返って、自分ができること、できないことを整理してみましょう。その上できちんとした対策をとることが大切です。

さて、昼間部の自刻像のテラコッタ作品は僕のアトリエから新美への搬入が済んだので、早速仕上げに取りかかっています。素焼きの状態だと均質な質感と色味でスカスカした印象があり、非常に抵抗感が弱いので、薄く色をかけたり擦ったりしながら微妙な変化を与えていきます。やりすぎると戻せなくなるので、慎重に作業を進める必要があります。
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彫刻の基礎として石膏像にするのはポピュラーですが、石膏は他素材に置き換える過程での仮素材としての意味合いが強いですが、テラコッタはその先がない究極素材であるので、しっかり完成させるととても質の高い作品にすることができます。石膏取りの技法を勉強するのも為になりますが、今回はひとつの「作品」として追求してもらうためにテラコッタを素材として選びました。

授業作品です。まだ課題数も多くこなしていないですが、いくつか紹介していきます。
昼間部 M.Nさんの作品。肘の上まで入れることを条件とした片腕です。
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授業時間で仕上がらなかったので少し残って完成させました。Tシャツの袖を入れたのは面白いです。肘からつながる形に違和感を残しますが、非常に高い密度と説得力があり、魅力的な作品になりました。事前にしっかり完成のビジョンを持ち、スタートから一貫してそこに向かっていくイメージが持てれば制作時間が短くても同等の完成度まで行き着けると思います。しかし、時間をかけて丁寧に作ればできる。ということは大きく評価できるポイントです。

同じく昼間部、M.Nさんの作品。大顔面を含む静物。
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木炭紙サイズの画用紙で、コンテでの制作です。今回のモチーフを描いていく上でのテーマがパース、空間、固有色でした。この作品はそうしたポイントに敏感に反応し、自然で魅力的な(自然=魅力的)作品に仕上がっています。欲を言うと床面に面性や奥行き感がもっと出せると良いのですが、全体にはしっかりとした言い切りがなされていて、作者の実力を感じ取れる内容に仕上がっています。

続いて夜間部、K.Kさんの作品。首なしミロのヴィーナスです。
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形も正確で、質感、空間、密度ともに申し分ない非常に完成度の高い作品に仕上がっています。この課題は5日課題でしたが、本人は3日と勘違いしていて、3日の段階ですでにある程度仕上がっていました。そこであと2日あることを知り、今の状態をより良くするために何ができるかを考えて残りの時間取り組んだそうです。その成果があって、いままで行き着けなかった深みがあり、リアリティの感じられる作品に到達することができました。この前向きな取り組みがとても良いと思います。美術には当然ながら限界などありません。何となくこのくらいかなと終わりを決めてしまうのではなく、常に反省し、先を読み、チャレンジすること。そこに美術を志すものとして最も必要な本質があるのだと思います。

夜間部、T.U君の作品。ロープを持った手。
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高校のスケジュールが早く終わった日に昼から参加して自主的にトレーニングをしています。彼は表現がややカタくなるタイプで生もの(手や人物などの塑像)が苦手でしたが、この作品を見る限りそうした違和感は感じません。夏期講習を経てかなりの成長を見せてくれました。力強く握った手と、腕までの自然なつながりが魅力的な作品となっています。ロープも丁寧に作り込んで印象を引き出していることに好感が持てます。ぜひ、これからも目標を見据え、努力を怠らず、突き進んでいってほしいです。

2学期は始まったばかりですが、本当にあっという間に時間は過ぎていってしまいます。今やれることをやれるだけやっておきましょう!僕は2学期こそ勝負の時期と思っています。受験生の皆さんには、これまで培ってきた経験がいずれ必ず自分を助けてくれると信じて、自信を持って取り組んでほしいなと思っています!いつも応援しています!がんばりましょう!