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映像科・作品研究(秋の遠足)のレポート

こんにちは。映像科講師の森田です。朝晩はすっかり涼しくなり季節の変化を感じる日々ですが、一年間のカリキュラムもちょうど折り返し地点。これまでは基礎的な描写力や文章力を身につけることが目標でしたが、この先は試験の点数を意識しながらの制作になります。映像科の試験では絵だけでなく、文章表現やテーマの設定によって総合的に評価されるので、ひとりひとりが自分の表現を様々な角度から鍛え上げていく必要があります。

そんな中、先週の金土日コースの授業はちょっと趣向を変えて、新美から徒歩3分、走れば1分のオペラシティ・アートギャラリーへ。『アートがあればⅡ 9人のコレクターによる個人コレクションの場合』という展覧会をみんなで観に行きました(金曜日)。とはいえただの遠足ではありません。200作品以上の展示の中から自分が興味を持った作品をピックアップし、教室でその作品についてのレポート記入と研究発表を行なってもらいます(土曜日)。そして最終的にはその研究発表を参考にしながら、自分が制作することを想定した映像メディア作品の展示プランをプレゼンテーションする(日曜日)という、推薦入試対策も兼ねた特別授業でした。

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『アートがあればⅡ』という展覧会自体は個人のコレクションによる展示なこともあり、比較的絵画や写真の作品が多かったのですが、日曜日のプレゼンテーションはあまりそれに捕われず、みんな自由で壮大な、ある意味突き抜けた発想で取り組んでくれました。その一例、ということで授業内でプレゼンテーションしてくれたプランから紹介しようと思います。

□タイトル:『壁をなくすノート』
□素材、メディア:ビデオ映像(15分・ループ再生)、本
□内容:映像と一冊の本によるインスタレーション作品。映像と本はそれぞれ二つのパートに分かれている。日本の小説家と海外(英語圏)の小説家に協力してもらう。日本のことを少し知っている海外の小説家に、知っている日本語を挙げてもらう。日本の小説家はその単語だけを使って小説を作る。同様に日本の小説家は知っている英単語を挙げ、海外の小説家はその単語を使って小説を書く。映像ではその小説家たちが単語を思い出しながら口にする場面を映し、鑑賞者はその映像とともに、実際に書かれた小説を読むことができる。
□テーマ:「言葉の壁をなくす」私たちが別の言語を持った人と通じ合うことができないのは「言葉の壁」のためである。だが、私たちが言葉とは別のかたちで自分の考えを表現しようとすることで、その壁を越えて通じ合うことができるのではないか?

映像を「空間を構成する要素」や「物語を伝えるメディア」と捉えることもできれば、もっと広く「何かの行為を記録する方法」と考えることもできる。プレゼンテーションとその後のディスカッションではその発想の違いや、想定したアウトプットの面白さについて意見を交換しました。どの人のアイディアも「それ、大学に入ったら実現した方がいいよ」という感じで、全体的になかなかハイレベルなプレゼン大会でした(時間はやや押し気味でしたが…)。ともあれこのように受験課題の制作でもなく、コンテンツのとしての映像を観るだけでもなく、映像の可能性についてかなり自由に考えてみたりすることもきっと大切なはず。という充実の3日間でした。

さて、そんなプログラムを経由しつつ映像科では当面の目標としての「武蔵野美大型コンクール(10月13日・14日)」に向けて、今週来週と感覚テストと小論文の特訓課題も行ないます!