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映像科:公開コンクールの報告(武蔵美入試のポイント解説)

こんにちは、映像科の講師の森田です。すっかり秋も深まって急に寒くなったので風邪気味の人もいるかと思います。受験生の皆さんはどうぞお気をつけて。この時期は芸術祭のシーズンでもありますね。先週末は東京造形大、今週末は武蔵美、来週は多摩美ということで、受験生の中には芸大も含めて全部制覇するという強者もいるのでしょうか。全部と言わずとも、少なくとも第一志望の大学の芸術祭には行ってみることをおススメしています。

さて、先々週ですが映像科の公開コンクール(武蔵野美大映像学科型模擬試験)が行われました。今回受験できなかった人のためにも、あるいは受験する可能性があるけれども、まだ対策を始めていないという人のためにも、参考のために課題と評価のポイントを解説しておきます。

■感覚テスト
下記の文から想起する状況のイメージ、あるいは出来事のイメージを解答欄に絵と文章で表現しなさい。
「しるしを付ける」(B3画用紙/3時間)

感覚テストは映像学科を受験する学生の多くが選択する(一般方式では必須の)科目で映像学科受験の名物的な課題です。ここ数年は短い文章やキーワードをきっかけにして絵と文章で創作を行います。去年の入試の問題は「近づくにつれて」というものでしたが、これを聞くと「何が近づくんだ?」と思うはずです。このように具体的な場面に関わるイメージの「余白を埋める(書かれていない情報を想像する)」ということが発想の中心になります。今回のコンクールの課題でも「しるしを付ける」と聞いて「何のしるし?」とか「誰が付けるか?」など、なるべく具体的な場面を想像しなければいけないので、それが創作の中で明らかにされていることがひとつの(大きな)評価基準だと言えます。

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・制作の一例。この作品は主人公が父親の本棚から本を抜き取り、そのページの端にドッグイア(栞代わりの折り返し)を見つけることから、普段は感じない親近感を感じ、さらにそこに自分もドッグイアを付けてみるという内容です。言葉ではない密かな共有、コミュニケーションを題材としているところが良いですね。

■小論文(選択科目)
配布された「水準器」をこの場で使用することから、または使用される状況を想定することから、あなたなりの論点を発見して、「○○は○○である」と題して論じなさい。(600字以内/2時間))

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小論文では毎年モチーフが渡されて、そのモチーフを手がかりとして論を展開していくという、これも映像学科独自の小論文になっています。ちなみに昨年の入試では「工作キット(クワガタ)」という段ボール製の模型が配布されました。この小論文のポイントは「いま・ここで・自分が・体験する」ことから論を組み立て始める、ということに尽きます。工作キットの場合ならば、もし仮に本番で上手く組み立てられなかったとしたら、その「上手く組み立てられなかった」という経験から論点を見つける、ということが望まれているということです。今回のコンクールでも、小論文を書いている机の上に水準器を置いてみたら「水平だった」という人もいれば、「微妙に傾いていた」という発見をした人もいますが、どちらが正解ということではなく、それぞれその後にどのような論を展開したのか、その発想の独創性や論理的に一貫性かあるかどうかということが評価の対象になります。

■鉛筆デッサン(選択科目)
配布されたモチーフ3点を構成して描きなさい。(B3画用紙/3時間)
〈水準器・木片・布〉

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鉛筆デッサンは課題文こそシンプルですが、毎回他の学科のデッサンではあまりお目にかからないモチーフが出されます。というのもここ数年は小論文と鉛筆デッサンで同じモチーフ(あるいは一部同じモチーフ)が出題されているからです。小論文の方がテーマの設定などもあるため、優先的に考えられているのかもしれません(これは勝手な推測です)。いずれにせよ去年であれば先ほど小論文の解説で挙げた「工作キット(クワガタ)」がデッサンの方でもモチーフになっていました。大学が発行している資料によれば「オーソドックスなデッサン力が問われる」ということが評価のポイントとして挙げられていますが、とはいえ課題自体に「ひとひねり」あることもあり得るので、デッサン受験の人も映像学科独自の対策が必要になってくるかと思います。今回の公開コンクールでは水準器を含む3つのモチーフを描く、というオーソドックスな出題でした。木片の角度と水準器で何か試みたりする人もいるかと予想してましたが、意外とそういった「攻めてる」作品は少なかったように思います。

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・講評風景(最後の成績発表&賞状を渡す場面を撮ろうとして忘れてしまいました!)

*今回の課題や解説を読んで質問や相談がある場合は映像科の方まで。お気軽にどうぞ。