月別アーカイブ: 2013年8月

映像科の夏期講習2013・レポート2

こんにちは。映像科講師の森田です。
講習初日には更地だった隣の空き地が気がついたら駐車場になっていました。時間は流れます。季節も巡ります。そんなわけで2013年の夏期講習も明日24日で終了になります。今回も前回に引き続き、夏期講習映像コースのハイライトである映像実習(ショートムービー制作)の授業を紹介したいと思います。(*撮影の様子は前回の記事を参照)

夏空のもと無事に新宿御苑での撮影を終えた学生の皆さんは、教室に戻って編集作業を開始。コンピュータに取り込んだ素材を見返しながら、カットを繋いでいきます。今回の授業ではmacの簡易的な編集ソフト「imovie」を使っているので、映像編集が初めてという人も直感的にどんどん作業を進めていました。4つのカットのみでストーリーを構成するというシンプルな課題だからこそ、秒単位あるいはフレーム単位での編集がとても大切です。

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編集の様子。「今のところもう少し短く!」「音を少しフェードさせた方が…」など、グループごとに全員でアイディアを出し合いながら作業を進めます。

そして紆余曲折あって完成した作品はこんな感じ。
<4カット/ループ再生>という条件をうまく活かせてるでしょうか?

①画面右から走ってくる男A、公園を歩いている男Bに接触する。男Bよろける。
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②倒れこむ男B。すぐさま駆け寄る男A。「大丈夫ですか!?」と尋ねるが男Bの返事はない。
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③公園を見回す男A、しかしあたりには誰もいない。「助けを呼ぼう」とその場を立ち去る。
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④「誰か~」と叫びながら画面左に走り消えていく男A。
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①(再び)画面右から走ってくる男A…、
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どうでしょう。画像だけではわかりづらいかもしれませんが、ループ再生することで映像の中で起こっている出来事に対して色々な想像が生まれます。実習の最後の上映会では、みんなで感想を言い合いながら(知ってる人が演技をしている様子を面白がったりもしながら)作品を鑑賞します。「ディスカッション」「撮影」「編集」それぞれの段階での演出のアイディアが、完成した作品にどのように反映されているか、検証してみる時間がとても大切です。

映像などのイメージを情報として理解すること、そしてその情報を発信することを「メディア・リテラシー(読み・書き)」と言ったりしますが、実際に映像作品を作るような授業を通じて、映像を「読み書き」することを学んでいるのだと思います。夏期講習ではこの実習以外でも、架空のCMを想定して絵コンテや企画書を書いてもらう課題などがあり、こういう授業を経験した後では、今まで普通に見ていたテレビやネットの映像がちょっと違ったものとして見えてくるかもしれません。

もちろん映像制作の世界にどっぷり浸かるのは大学に入ってからなわけですが、このような実習を通じて、ちょっと準備をすれば自分でもかなりしっかりした映像作品が作れるということがわかります。そして推薦入試では課題作品として映像作品を提出するというケースも増えてきているので、今回のような経験が強みになるとも思います。

次回以降も、具体的な推薦入試の対策や、一般入試に向けた課題の制作など、紹介していこうと思います!

先端芸術表現科 夏期講習会後期 中間報告

先端コースです。

先端科の講習会後期では、ワークショップと作品制作を組み合わせたカリキュラムになっています。これまで作品を作ったことのない生徒でも、ワークショップを手がかりに、作品制作のヒントを得てもらいたいと考えています。

今回は、ゲストアーティストによるワークショップの報告をしたいと思います。

14日(水曜日)富塚絵美さんと大西健太郎さんによる「身体のワークショップ」

お二人は東京藝術大学大学院先端芸術表現科を卒業後、東京を拠点にイベントやワークショップなどを企画するなど、人と関わることで作品を作り続けています。

新美でのワークショップでは、導入は嘘で自分を偽ってもよい自己紹介からはじまり、ゲーム的な内容のものから、グループになって身体をほぐすなど、自分と他人を身体を通して理解を深めていく内容のものでした。

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お互いのことが少しわかってきたところで、グループになってひとつの作品を作ります。

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最後は、全員で目を閉じて声を出すことをしました。これまでは身体といっても視覚に頼ることが多かったのですが、声に注目することで、身体の中を意識させるような内容です。しかし、全員の声がひとつになることで、集団の中の自分をも同時にイメージすることになったと思います。

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15日(木曜日)西尾康之さんによる「実体化のワークショップ」

西尾康之さんは武蔵野美術大学彫刻学科を卒業後、「六本木クロッシング」展(森美術館)や国内外で活躍しているアーティストです。独特なプロセスで彫刻を作ることで脚光を浴びました。通常、粘土などで造形をしてから鋳型を作るというのが、彫刻のプロセスなのですが、西尾さんは鋳型そのものから造形してしまうのです。それも西尾さんの親指で押し出すことで、鋳型を作り出します。それは反転したイメージで造形を作り出す作業とも言えます。そのプロセスを経て出来た作品を見ると、それは触れてはいけないものに触れた時のような感覚を呼び覚まします。

今回のワークショップでは、各生徒の「恐怖を実体化する」といった課題でした。

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事前に各自の恐怖体験を文章にし、それを基にして粘土で造形をしていきます。

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講評会の風景です。造形の秘密を紐解くようにアドバイスをする西尾さん。

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個人的な体験、それも抽象的で曖昧なイメージを具現化するための、方法論について 語っています。個人的な問題をどのようにすれば普遍的な問題に展開できるのか考えさせられるワークショップでした。

20日(火曜日)森弘治さんによる「介入のワークショップ」

森弘治さんは、多摩美術大学卒業後、マサチューセッツ工科大学(MIT)大学院修了。社会空間への介入をテーマに、主に映像作品を制作しているアーティストです。作家活動の延長としてartists’guildという団体を組織するなど、今の時代におけるアーティストのスタイルを模索しています。

今回の課題は「公共の場所で出来る表現とはどのような事が考えられるのだろうか。実際に場所で作品を制作する。」といったものでした。

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生徒は新宿の街を観察し、自分のテーマと公共空間における問題を結び付けて、その場に潜む問題を表出させることが課題になっています。

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生徒は、公共の場所に作品を設置またはその場でパフォーマンスなどをしました。中には地域の方と交渉し、作品協力をしてもらうこともしていました。また他人に迷惑になるのではなか?と考えることで、自分の作品の意味が問われるなど、この社会の中での作品の意味について考えるワークショップでした。

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以上、3組4人のゲストによるワークショップを経た後、講習会最後の講評会に向けて、各自作品制作をします。

 

 

日本画科- 夏期講習会&石膏像よもやま話&雑記?

日本画科講師の金子です。

立秋とは名ばかり。暦の上ではすでに秋ですが、猛暑厳しい今日この頃、夏期講習会もいよいよラストスパート!日本画科「後期総合コース」、「後期私大対策コース」の2コースも大詰めです。引き続き、熱中症には充分注意を払っていきましょう。

日本画

― 今夏は、受講生からしばしば「石膏デッサンが苦手」、「石膏像が嫌い」との相談を受けました。

この石膏デッサン。日本画科の受験では共通一次に石膏デッサンを課している大学も少なくなく、避けて通ることの出来ない課題と言えるでしょう。

そもそも石膏像は、古代及びルネサンス彫刻など西洋彫刻の複製に用いられていますが、今日のように図版や映像で美術品を簡単に閲覧できない時代、デッサンや考古学の資料として、また美術館の展示物として重要な役割を果たしてきたようです。日本では外国人が持ち込んだ石膏像や、東京美術学校が輸入した石膏像が、日本国内で流通するきっかけとなったようですね。

東京藝大絵画科日本画では、一次試験の石膏像出題率が高く、そんな私もまた受験生時代に、多くの石膏像をデッサンしました。その延長で、西洋彫刻にも大変興味がありました。中でもミケランジェロの「瀕死の奴隷」の石膏半身像は、その力強い生命表現に魅力を感じたものです。腕を下げた側からの動勢を静とするならば、腕を上げ頭部が傾く方向に仰け反る動勢は動と捉えることが出来ます。そして逞しい肉体表現と、繊細な衣のレリーフ表現に感銘を覚えます。行き届いたディテールは、下半身の造形表現にも及びます。

瀕死の奴隷←囚われ人(瀕死の奴隷)(15世紀)

この点においては、日本の古典彫刻にも共通した意識を感じます。特に下半身の造形には、行き届いた観察が見られます。

― 興福寺金剛力士像(鎌倉時代)は、視覚で伝わってくるものばかりではなく、気迫や士気など、目には見ることができないものも伝わってくるものを感じ取ることが出来ます。怒気迫る作品であるにもかかわらず、繊細な表現性を感じます。

阿形像が154.0㎝、吽形像は153.7㎝で、木造彩色の寄木造。阿形と吽形は互いに共鳴し、阿吽と言われるように、二体で一つの完成を見ることが出来ます。この像は、鎌倉時代、運慶の弟子である定慶によって作られ、それまでの力士像が甲冑で表現されていたのに対して、初めて裸体で芸術的な肉体表現を行ったものであると言われるものです。

興福寺金剛力士像←興福寺金剛力士像(鎌倉時代12世紀)

眉をつり上げ、むき出すような眼は、憤怒の形相をさらに力強いものにし、そして何よりも、肩・腕・足・手と、筋肉の隆起する様子が、大げさと思えるほど巧みに表現されていますよね。肋骨から首筋の筋肉の表情が強調され、両手の動きから生じる動勢が、腰、脚から裳裾まで伝わり、体全体に躍動感を与えていることが分かります。そう、憤怒の形相は、全身の躍動感と力強さと連動し、さらに気迫に満ちた表情となっているのです。絵画と彫刻、表現そのものは全く違うように見えるが、実は共通点が多い。表現の手法は違っても、表現の本質は共通しているからでしょうか。

東大寺戒壇院四天王像(天平時代)もお薦め。この四天王像は、興福寺の金剛力士像にはない表現を持ち合わせた天平時代の彫刻で、その名の通り、東方を守護する持国天、南方を守護する増長天、西方を守護する広目天、北方を守護する多聞天の四体の像からなります。東大寺戒壇院四天王像では、鎧兜まで行き届いた繊細な写実が、像全体の緊張感を生んでいます。深く静かに表現されたその美は、四体でつくり出されていることで、さらに緊迫したものになっているのかもしれません。

それぞれ鎧を身にまとった姿をしているにもかかわらず、体全体の動きがやわらかく、動勢が美しいのは、やはり下半身のしっかりした造形‐腰と足の造形表現と捉えることが出来ます。

戒壇院←東大寺戒壇院四天王像 広目天(天平時代8世紀)

まさしく日本の古典彫刻も侮ることなかれ、ですね。

時には素晴らしい美術作品に触れ、「目」を養い、また「思考」し、さらに「感性」を磨いていくことも大切なことです。自分の制作に結びつく発見があるかもしれません。それには、まず興味を持つこと。これがとても大切なことだと思います。苦手意識を抱いているものも同じなのかもしれません。興味の入口は何でも良いのです。石膏像の場合は、本物を間近で見ることが一番なのですが、まず全身像の図版を見ることをお薦めします。

新美は夏期終盤に3つの増設講座「石膏デッサンゼミ」、「解剖学ゼミ・ヌードクロッキー」、「美大学科増設ゼミ」を設けています。「石膏デッサンゼミ」、「解剖学ゼミ・ヌードクロッキー」が興味への入口になってくれたら素晴らしいことだと思います。是非、受講をお薦めします。

― 最後に。

私事ながら、8月1日(木)から8月17日(土)まで個展を開催し、さらに中日にあたる11日(日)には2部構成イベント(絵画と詩のコラボ、座談会)を開催しました。その座談会ゲストに、デザイン科総合コース主任 滝口浩史先生を招かせていただきました。

■「金子朋樹 展 -飛天-」 至2013年8月1日(木)~8月17日(土)
東京九段 耀画廊/東京都千代田区九段南2-8-5

2013年8月11日(日) 『絵画と詩歌-その衝動のありか-』

◇第Ⅰ部(13:00-)「絵画と詩歌の共調-詩の朗読」 金子朋樹×岡田ユアン(詩人)
◇第Ⅱ部(14:30-)「座談会-イメージをはぐくむ-」 金子朋樹×岡田ユアン(詩人)×滝口浩史(写真家)

デザイン科総合コース主任 滝口先生は、私金子の地元中学校同期(静岡県御殿場市立南中学校)であり、東京藝大同期でもあります。格別示し合わせたわけでもなく共に新美で同じ年数だけ浪人生活を送り、また、共に学生時代から新美の講師を勤め、現在は主任デスクを共にするという不思議な縁。何故か藝大の合格発表当日、待ち合わせてもいないのに門前で鉢合わせてしまったという間柄でもあります。

イベントではその滝口先生を招き、創作における根源的な共通項を互いの創作の現場から掘り下げていきました。特に滝口先生の「イメージの組み立て方~シリーズ化」、「イメージの連鎖~コラージュ、編集、アレンジ」という話はとても参考になりました。

滝口先生とは初めての座談会でしたが、結果、とても充実した内容となりました。このように、自分とは違う視点で創作活動を行う友人もまたとても大切なものです。

― というわけで、そろそろ夏の疲れも溜まってきた頃だと思いますが、晩夏を乗り切っていきましょう!

尚、新美日本画科では全受験生としっかり向き合うことを大切にしています。日本画科に興味ある受験生がいらっしゃいましたら是非見学にいらしてください。また、日本画科受験についても質問があれば講師がお答えします。お気軽にどうぞ。

完全燃焼めざして、がんばりましょう。

こんにちは油絵科昼間部の箱岩です。

夏期講習会後期日程も、残りわずかとなってきました。完全燃焼するつもりでがんばりましょう。

世間は世界陸上や高校野球などの話題で盛り上がっていますね。

ボルトの走り見たさに、ついつい寝不足になっている人もいるかと思いますが、体調を崩さないようにね。遅刻はいけませんよー。

個人的には、世界陸上、女子棒高跳びで復活優勝された、エレーナ・イシンバエワ選手の試技が印象に残りました。31歳にしてあの無駄な肉の一切ない肉体美と、スローモーションで映し出される身体の躍動やしなやかさには、すごく感動しました。

伸び調子の若い美しさもあるけど、ピークを過ぎてからの踏ん張る強さや美しさも良いなーと思うけど。個人の好みですけど、どうでしょうね。

 

なぜ,人は「人」の動きを見て感動するのでしょうか?どの競技を見ても、男性でも女性でも、筋骨たくましくても、搾っている体でも、アスリートの動きは本当に美しいと感じます。さらには子供の動きですら美しく感じますし、生活の中の何気ない仕草にすら美しさを感じます。

文字を描くこと、絵を描くことの中にも身体行為の痕跡があり、それは、やはり美しさを感じます。

人体が動くことがどうしてこんなにも人の興味を引くのか、本当に不思議ですね。

絵画においても「人」というモチーフは重要視されてきた歴史があります。丁度、クラスでも人物課題が連続したところですので、今日はその話題を広げてみましょう。

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歴史上、最も早く人体の構造に科学的な興味を示した作家がレオナルド・ダ・ヴィンチです。前校長先生の言葉を借りれば「美術史上最高傑作のカルトン」とされている作品。

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彼の人体構造への興味は、解剖や観察、次第に自然観へと広がりました。

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一方、歴史的な人体の彫刻を数多く残した同じくルネッサンスの天才ミケランジェロ。

しかし、彼はむしろ科学的な正確な見方よりも、流体的に、絵的に、人体を捉えているように感じます。

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もちろん予備校の課題であっても、人体が持つ美しさをどのように表現できるのか?自分自身の身体をどう動かせば美しい表現ができるのか?それを考えていくことは、自分の表現を考える上でとても重要なことかもしれませんね。

 

そこで、新美では東京芸術大学で美術解剖学の講師をされている阿久津先生をお招きし、解剖学のゼミとヌードクロッキー会を企画しています。

http://www.art-shinbi.com/images/pdf/2013summerplus3.pdf

阿久津先生は解剖学の先生でありながら、実は東京芸大彫刻科のご出身で、美術畑からダヴィンチのように医学部にて解剖学を学んだ方です。ゼミでは、すごく面白い話が聞けると思いますし、人体の構造について知識的に高めることは、人物を描きたい人にとっては、非常に為になると思いますので、興味のある受験生の皆さんは是非受講してみてください。

詳しくは総合受付にて、お問い合わせください。

基礎科?中学生コース?

こんにちは♪基礎科中学生コースの山崎です。

中学生コースは、美術科や美術コースのある高校を目指している中学生達が学びにきています。
受験対策の生徒もいれば、絵がうまくなりたくて通っている生徒もいます。

平日は学校に行き、日曜日は新美で一日制作します。

昨年度は、
?都立総合芸術高校 ? ?17名
?女子美大付属高校  1名
?その他美術系高校(片倉等) 3名

全員志望校に合格しました。

 

授業内容は、受験校の課題に合わせて、静物着彩、デッサンを基礎から学ぶことで、
初めて鉛筆を持つ生徒も、通いながらしっかりと力をつけていくことができます。

 

生徒作品を紹介します!

これは静物着彩。

高田着彩

光の方向が分かりやすく、しっかりと立体感を感じられる作品ですね。

 

次は静物デッサン。

堀内デッサン

 

モチーフの質感が細かく表現されています。
特にリンゴの形がいいですね!

 

 

 

そんな中学生コース、只今夏期講習真っ最中です。

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今日のモチーフです。
夏祭りをイメージした楽しいモチーフですね。

制作風景

 

それぞれ自分の目標に合わせて、鉛筆デッサン、着彩を選んで制作しています。
毎日着々と力をつけていきます!

 

中学生コースでは、随時無料体験を受け付けています。
道具の使い方、絵の進め方など1から丁寧に指導しますので、初めて鉛筆を持つという生徒でも、安心して参加して頂けます!

ちょっと気になる、やってみようかな、というひとも、
今からじゃ、もう遅いんじゃないか…とおもっているひとも、
気軽に体験しにきてくださいね ♪

1年かけてじっくり力をつけた生徒もいれば、三年生の冬期講習から集中して制作し、合格を掴んだ生徒まで、通っていた期間は様々です。
始めようと思ったら、そこが始め時。
思い立ったら、是非ご連絡ください!

新宿校 03-5309-2811