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先端芸術表現科 夏期講習会後期 中間報告

先端コースです。

先端科の講習会後期では、ワークショップと作品制作を組み合わせたカリキュラムになっています。これまで作品を作ったことのない生徒でも、ワークショップを手がかりに、作品制作のヒントを得てもらいたいと考えています。

今回は、ゲストアーティストによるワークショップの報告をしたいと思います。

14日(水曜日)富塚絵美さんと大西健太郎さんによる「身体のワークショップ」

お二人は東京藝術大学大学院先端芸術表現科を卒業後、東京を拠点にイベントやワークショップなどを企画するなど、人と関わることで作品を作り続けています。

新美でのワークショップでは、導入は嘘で自分を偽ってもよい自己紹介からはじまり、ゲーム的な内容のものから、グループになって身体をほぐすなど、自分と他人を身体を通して理解を深めていく内容のものでした。

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お互いのことが少しわかってきたところで、グループになってひとつの作品を作ります。

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最後は、全員で目を閉じて声を出すことをしました。これまでは身体といっても視覚に頼ることが多かったのですが、声に注目することで、身体の中を意識させるような内容です。しかし、全員の声がひとつになることで、集団の中の自分をも同時にイメージすることになったと思います。

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15日(木曜日)西尾康之さんによる「実体化のワークショップ」

西尾康之さんは武蔵野美術大学彫刻学科を卒業後、「六本木クロッシング」展(森美術館)や国内外で活躍しているアーティストです。独特なプロセスで彫刻を作ることで脚光を浴びました。通常、粘土などで造形をしてから鋳型を作るというのが、彫刻のプロセスなのですが、西尾さんは鋳型そのものから造形してしまうのです。それも西尾さんの親指で押し出すことで、鋳型を作り出します。それは反転したイメージで造形を作り出す作業とも言えます。そのプロセスを経て出来た作品を見ると、それは触れてはいけないものに触れた時のような感覚を呼び覚まします。

今回のワークショップでは、各生徒の「恐怖を実体化する」といった課題でした。

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事前に各自の恐怖体験を文章にし、それを基にして粘土で造形をしていきます。

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講評会の風景です。造形の秘密を紐解くようにアドバイスをする西尾さん。

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個人的な体験、それも抽象的で曖昧なイメージを具現化するための、方法論について 語っています。個人的な問題をどのようにすれば普遍的な問題に展開できるのか考えさせられるワークショップでした。

20日(火曜日)森弘治さんによる「介入のワークショップ」

森弘治さんは、多摩美術大学卒業後、マサチューセッツ工科大学(MIT)大学院修了。社会空間への介入をテーマに、主に映像作品を制作しているアーティストです。作家活動の延長としてartists’guildという団体を組織するなど、今の時代におけるアーティストのスタイルを模索しています。

今回の課題は「公共の場所で出来る表現とはどのような事が考えられるのだろうか。実際に場所で作品を制作する。」といったものでした。

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生徒は新宿の街を観察し、自分のテーマと公共空間における問題を結び付けて、その場に潜む問題を表出させることが課題になっています。

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生徒は、公共の場所に作品を設置またはその場でパフォーマンスなどをしました。中には地域の方と交渉し、作品協力をしてもらうこともしていました。また他人に迷惑になるのではなか?と考えることで、自分の作品の意味が問われるなど、この社会の中での作品の意味について考えるワークショップでした。

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以上、3組4人のゲストによるワークショップを経た後、講習会最後の講評会に向けて、各自作品制作をします。