日別アーカイブ: 2013年8月13日

暑い日が続いていますが夏期講習も後半戦へ!

こんにちは。彫刻科の小川原です。ここ最近記録的な暑さが続いていますが体調管理はしっかりできていますか?夏期講習で学べるは本当に多いので、そのチャンスを最大限有効に生かす為に万全の体調で挑みたいですね!
さて、彫刻科講習中期は沢山の芸大生のデモンストレーションも見る事が出来て非常に盛り上がりました!生徒の皆さんも頑張ってくれて、短期間でしたがグッと実力を上げてくれていると思います!良い作品も出ているので、デモンストレーション作品と一緒に紹介したいと思います。

K.S君の作品。
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光、陰の整理が良く出来ていて、表情も合わせてきています。特に顔を似せようとする時に、線的な情報に頼りすぎて強引に合わせようとするとやればやるほど似なくなってしまいますが、色面的な印象を似せる意識で捉えていくと自然になりやすいです。いきなり中身を注目するのではなく、外堀から合わせていく感覚は重要ですね。やや口が構造に沿っていないのは少し気になります。さらに視野が広がってくれるのを期待します。

T.Y君の作品。
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部分に執着する事無く、空間も含めて全体をコントロール出来ています。派手さや強さはありませんが、実直で嘘の無い丁寧な探りに好感が持てます。明るい側の形をもう少し具体的に表現出来ると、作品に説得力を与える事が出来ます。

現役生K.Kさんの作品。
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独特な質を持つデッサンです。今回は途中やや光源設定で混乱する場面もありましたが(実際通りの色を合わせようとすると形にならない。今回は胸側面と腕正面が実際はほぼ同じ色だったが、それを自然さが失われない範囲で変えた。)、最終的にはそういった部分に関しては創作を入れていく事が必要なんだと言う事を分かってくれたと思います。

M.Nさんの作品。
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芸大2次素描は3時間で仕上げます。それに合わせて短時間で描き上げました。なにより本人に似ているのが良いです。デッサンも塑像も同じですが、「似せる」ということは単純に観察が実物を捉えている証拠と言えます。後はその似ているというレベルがどれほどのものかという事が重要で、やはり出来たものにリアリティが感じられる事が大前提になります。まだ十分とは言えませんが、この作品はそうした要素を感じ取る事が出来ます。欲を言うと表情は良く描けていますが、首より下は手数が少なくなってしまっているので、改善していきたいです。時間が短いので、完成のビジョンを強く持って、スタートからスパートをかけていくつもりで展開させていきたいです。

現役生K.Kさんの作品。
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鳩は量が少ないので観察も作業も小さくなりがちですが、そうなってしまうとまさに作り物のようになってしまい、生命感が失われてしまいます。小さな体の中には骨があり、筋があり、皮があり、羽があります。シンプルで洗練された形の中には途方も無く複雑な構造が隠されています。進化の過程で淘汰されてきた形には全て意味があって、それを感じ取りながら制作する事は彫刻では必須であると言えます。形を写す。という意識だけでは「生きている」という情報までは写せないのです。この作品はまだまだ実際の構造の成り立ちにそぐわない部分も多いのですが、表面的にならず目の前にある真実を見ようとする意識が感じられます。

デモンストレーション。S.Y君の作品。
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スタートから光を大事にしながら描き進めていたのが印象的でした。完成のビジョンと自分の作品を常に重ね合わせて制作していたのだと思います。中間色もとても美しく表現されていて、明るい調子、暗い調子が響き合っているのが分かります。モチーフを目の前にして、それをどう料理してやろうかという気概が持てるかどうかはとても重要で、高い目的や目標を強く持てる人は上達も早く、上限もどんどん破っていけるのです。この作品からはそういった意識の高さを感じます。

デモンストレーション。新美出身E.Nさんの作品。
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彼女はデッサンも塑像も作品全体で理想を追求出来る人で、細部にこだわることなく物の本質を引き出すことに対して高い意識を持っています。何が一番大事かという事が分かっているので、例え出だしで印象が狂っても自分で気づいて良い方向に軌道修正する事が出来ます。そういった意味で、ある意味受験では一番強いタイプなのかも知れません。視野が狭い人や、モチーフの中身をしっかり把握せずに制作している人は、いったんハマると立て直せなかったり、狂っているのに気づかず完成まで行ってしまうという事が多いです。作品の内容について、彼女のデッサンの特徴は断面構造の強さと、構造が持つ軸の方向の整理にあります。空間上にどのような塊としての特徴を持つ物体が、どんな方向に配置されているのか、それが強く感じられるデッサンだと思います。

生徒作品。M.Nさんの作品。
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モチーフの持つ量感や空間の魅力が良く描けていると思います。自分の作品をどのように仕上げていきたいかというビジョンと、その為の道筋を組み立てる事が出来た事で、難度の高い課題で実力を発揮する事が出来ました。見る目があり、実力もあるので、毎回きちんと整理しながら制作する事が大切です。その時々でやらなければならない事をしっかり分かってこなせばそれだけでコンスタントに実力の100%に近い作品が出せるはずです。この作品では欲を言うとフォーンの背中とマルスの腕を含む胸部より上に色が抜け過ぎで、形や空間が具体的でないので、改善出来ると良いです。

現役生K.Kさんの作品。
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毎回のように良い作品を出してくるポテンシャルには驚かされます。今回は今まで以上に一つの「作品」として迫れていると思います。構図も描写もドラマチックな表現が魅力的な1枚となりました。モチーフとの対話が上手く出来ていて、作品がモチーフにはまっていく作者の喜びが伝わってくるようです。途中円盤の形や、奴隷の断面で印象を外していましたが、大分良くなりました。奴隷に関してはやはりやや伝わりづらいですが、このモチーフの場合はある種背景的な捉え方でもいいと思うので、そこまでマイナスにはなっていないと思います。そしてそれを補って余る円盤の魅力があります。

デモンストレーション。Y.U君の作品。
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圧倒的に高いクオリティを感じる作品です。ここまでの作品をつくる為にはあらかじめブルータスはどんな印象を持つ像で、捉えるべき要素を把握していないと不可能です。単純な観察だけでは行き着く事ができない経験に裏付けられた説得力があります。デッサンも塑像も、上手い人ほどモチーフを良く知ろうと考えます。目で見た情報だけに頼るだけでなく、構造を想像して分解してみたり、空間的な位置や量の座標をイメージしてみたり、デッサンで描いたときの像の印象と照らし合わせてみたり、その引き出しの多い人ほど、さらにはそれが的確な人ほど質の高い作品をつくる事が出来ます。

デモンストレーション。T.Hさんの作品。
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ブルータスが持つ印象をぶれる事無く引き出す事が出来ている作品です。よく左右の量のバランスが狂ったり、目の位置がズレたりする人は「印象」という観点でモチーフが見れていないんじゃないかなと思います。角度を測ったり、カーブを似せたりという事も大切ですが、その結果「合っているのかどうか」というポイントでは確認が甘い人が結構多いと思います。なので頑張ってつくったのだけど、出来たものに不自然な歪みがあるという結果になってしまうのです。熱が入りすぎて視野が狭まって、本当に単純な狂い(多分僕の目が上下に1cmズレて登場したらみんな驚くと思います)に気づけないのはもったいない事です。普通の人の目で客観的に確認する事、これは非常に重要な事です。

生徒作品。K.S君の作品。
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量や軸が良く捉えられ、バランスの良い作品となりましたがやはりデモンストレーション作品と比べると説得力の弱さが見えてきます。まず断面はもっとしっかり決めて欲しいです。体がイメージ出来るくらいに詰めましょう。後頭部は粘土の質のままなので、張り出している部分を中心に抵抗感を上げていきたいです。とはいえこの段階で嘘の無い状態に仕上がっているので、この先もう少し時間があったら出来た事と思います。前半の時間の使い方はさらに上手くなれると良いと思います。作品として成立するところまで詰めていく作業はどうしても時間がかかるものです。

K.S君の作品。
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形を表現する為には色(陰影)が必要になりますが、その探りがかなり自然になってきました。強引になってしまうときは構造に合わせた(感じの)タッチが均一に入ってしまうのですが、今回はそれを最小限に抑え、調子を響かせる事で魅力的に形が描けています。自分なりの形の起こし方ではなく、モチーフに寄り添った表現を意識した事が功を奏したのだと思います。とはいえまだ見方のカタさが見受けられるので、これでも足りないんだという事を自覚して、さらに発展させていって欲しいです。

R.A君の作品。
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非常に調子の美しい作品です。石膏の質も感じられる仕上がりになりました。パジャントのもつ美しさの特徴に良く反応出来ていて、魅力的な1枚となっています。作品の打ち出し方はもちろん十人十色で、人によって様々ですが、評価する側としてそれが「美しいか美しくないか」あるいは「心地よいか心地よくないか」という事はかなり重要だと思います。独りよがりになる事無く、みてもらう相手の事も考えられる余裕があるといいですね。この作品では欲を言うとアクリル円盤の形がまだ自然でない事です。輪郭的に直線的なところがあるので、上手くカーブが捉えられると良かったです。毎回実力をすべて引き出す為に、常に高い意識で臨んでくれる事を期待しています。

現役生K.Kさんの作品。
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前期、中期と講習を受けてきて、この短期間にかなり実力をつけてきたと思います。パジャントの表情も構造に合わせた上で良く似ていて、アクリル円盤にも奥行きを感じます。欲を言うと像の断面の方向性や面的抵抗感が弱くなっているのと、衣のひだはやや強く描きすぎて実際の印象よりうるさくなってしまっている事です。何が足りなくて、何がズレているのか、本当に微妙なレベルでの問題なのですが、そこまで意識のレベルを高くしていく事が出来たら理想的な作品を打ち出す事が出来ると思います。

さて、講習も後期に入っていきます。この時期どれだけ経験値をためておけるかどうかは、受験で勝つ事を前提に考えると1年で最も大切な時期であると言っても良いかも知れません。今すぐに実力が上がらなくても、やっている事で得られた「経験」はどんどん自分の周囲に散らばっているはずです。それを2学期で確かなものに変えていき、冬期講習から入試直前にかけて一気に積み上げていけたら良いと思います。積み上げるべき時に、積み上げるものが無いと言う事が無いように、今この課題一つ一つを大切にポジティブに取り組んでいきましょう!