日別アーカイブ: 2016年10月2日

絵の上手さについて①

こんにちは。油絵科の関口です。
今日は絵の上手さについて、お話したいと思います。
僕は学生の絵を講評や評価する時に「君は上手いね?」と言う事が殆どありません。かと言って、皆の絵を下手だと思っている訳でもないのですが…

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ピカソ「ゲルニカ」1937年

 
先日、ふとした事で「上手さ」について生徒と喋った時「てっきり先生は上手い作品は評価しないものだと思っていました」と言われてしまいました。ショックです(笑)。
実際は上手い作品もちゃんと評価しますし、そこはキッチリ見ているつもりです。

但し、僕が「上手い」と評するのは、一般の人(受験生も含む)からすると、分かりにくいものが多いのかもしれません。
でも皆さんからすると「え?上手いのに分かりにくい??」って感じですよね…。
実は上手いにも分かりやすい上手さと、分かりにくい上手さがあるんです。

 
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ピカソ「泣く女」1937年

例えばスポーツの世界でも、その競技を専門にやっていた人が引退し、解説者になる事がありますよね?そしてテレビで「この選手は本当に上手いんです」などと発言されるんですが、素人の自分にはサッパリ分からない…という事がよくあります。
その競技をやっている人から見ると、明らかに「上手い」と思える技術がある。それが専門的な技術になればなるほど、一般の人には分かりにくい。そこで解説者が必要になる。という事なのでしょう。

 

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例えば、このピカソ15歳のデッサンは一般人から見ても「上手い」という感じですよね。これなら説明するまでもないでしょう。

では、これは如何ですか?
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こちらは上の作品から約40年後、ピカソ56歳(1937年)のデッサンです。僕からすると、圧倒的とも言える「上手さ」が絵から溢れ出ている作品なのですが…
一見すると雑にも思えるこのデッサン。人間の持つ表情の自然さや美しさ、このモデルの持つ独特な佇まいまで感じさせてくれます。素早く動かしたタッチの荒々しさと、モデルのリラックスした感じを同居させながらも不自然さを感じさせないバランス感覚…。構図も絶妙です。もしかすると、ピカソならチョチョイのチョイで描いた一枚なのかもしれませんが、ちょっとやそっとの力量では、こうは描けません。

※ちなみに上に載せた「泣く女」のモデルはこのデッサンの女性で、「ゲルニカ」の左の方にいる赤ちゃんを抱いている女性も、この人がモデルだと言われています。3点は同年作。

 

他にも色んな種類の上手さがありますが、長くなりそうなので、別の機会に紹介しますね。乞うご期待ください。