カテゴリー別アーカイブ: 油絵科

ハロウィンという事で…

こんにちは。油絵科の関口です。
もうすぐハロウィンという事で、お花屋さんで売っているカボチャを買ってきて、家で描いてみました。
僕はいつも心象風景の油絵を描いているので、普段は何も見ないで描いているのですが、今回はモチーフを追いかけて描くのが新鮮で楽しかったです。
%e3%82%ab%e3%83%9c%e3%83%81%e3%83%a3%e3%83%87%e3%83%83%e3%82%b5%e3%83%b3
こちらは鉛筆デッサン。サイズはA4くらいです。割りと軽い気持ちで描き始めたので、その辺に転がっていた鉛筆で描きました。%e6%9d%b1%e8%8a%9d%e9%89%9b%e7%ad%86
後でよく見ると、何とTOSHIBAって刻印されてます(笑)。少なくとも絵画用の鉛筆ではありません。それにしても東芝って鉛筆も作ってたんですね…。何かの記念品でしょうか?

 

%e3%82%ab%e3%83%9c%e3%83%81%e3%83%a3%e6%b0%b4%e5%bd%a9
こちらは水彩と色鉛筆で描きました。サイズはF4号程度。
夜中から描き始めたのですが、気付いたら外で小鳥がチュンチュン鳴いていました。

 

%e5%85%ac%e9%96%8b%e3%82%b3%e3%83%b3%e3%82%af%e3%83%bc%e3%83%ab
あと宣伝になりますが、11月23日(祝・水)に新宿校で油絵科の公開コンクールがあります。1日というスケジュールなので、素描のみになりますが「新美ならではのコンクール」が体験できると思います。内外を問わず、皆さんのご参加をお待ちしております。
http://www.art-shinbi.com/event/2016-contest/item-a.html

秋らしい天気ですね。

涼しい気温が続きますね。渋谷校の箱岩です。

すがすがしい気温で、アクティブに美術館見学やギャラリーめぐりをしている受験生も多いことでしょう。

大好きすぎる利根川沿いに居を構える私は、時間を見つけては利根川沿いの土手をお散歩してリフレッシュしたりしております。

 

しつこいですが、利根川好きすぎて散歩しながら本当に涙ぐんでしまう困ったおじさんですが、今日の景色も抜群でしたので是非ご覧ください。

1018blog%e7%94%bb%e5%83%8f%ef%bc%93

雨上がりの濃霧が、静かに日の出に照らされて薄らいでいく様子は生活の中で観るには

素晴らしすぎて心が躍ってしまいます。

水墨や、印象派の風景画のような空気遠近法をリアルに感じる、文字どうり絵に描いたような風景。

%ef%bc%91%ef%bc%90%ef%bc%91%ef%bc%98blog%e7%94%bb%e5%83%8f%ef%bc%91

こういうことに感激できるんだから、今の私は健全なんでしょうw

気分が乗らない日や、疲れている日は景色もどんよりくすんで、気が滅入るいっぽうですからね。

気分しだいで同じものが違って見えるのですから、心のもたらす影響は本当に計り知れません。

受験生だからといって「ガリ勉」みたいに心を無視して必死に画面にしがみついていたって人の気持ちを捉え、魅了する作品が作れるとは思えないんですよね。

日々の暮らしの中にあって、活き活きとした心の抑揚を感じながら画面に向かうことはとても重要だと考えています。

人の業を生み、日常の様々なトラブルを生み出す人間の心の動きは、同時に生きる喜びや幸福を生み出すもとでもあるわけですから、これほど興味深く、重要なものはないなと感じる日々です。

以前読んだ僧侶のお話ですが

質問する僧 「こころとは何を持って云うならん?」

答える高僧 「ころころと、ころがればなり。」

ひと時も留まることなく、瞬間瞬間に起きる状況変化の中で絶えず変化し続けるものが心の正体だということのようです。本質が見えるようで私はすごく気に入っている一節なんですよね。

描く者の心の動きは、ものの捉え方に作用し、描こうとする世界を照らし、筆致や絵具の抑揚を生み出し、微妙な色や形を生み出し、バイオリンのビブラートのような美振動となって、観る者の心に共鳴をもたらしすものだと思います。表現するということは、どんな形であれ心の作用なしには始まらないものなのだと思います。

そんな静かな美振動を感じられる作品を紹介しましょう。

20160901_1_img_02

サイ・トゥオンブリー《無題》1968年
家庭用塗料、クレヨン、カンヴァス 200×259㎝
©Cy Twombly Foundation

川村記念美術館HPより

むむ、画像ではちょっと伝わらないかな~~~ww

千葉県佐倉市。都心からだと1時間以上。

ちょっと遠いけど、絶対に見る価値あり!

他にも現代美術に強い美術館なので、是非足を運んでみてください。

学校がめんどい。先生がめんどい。全部いやだってやさぐれてても、今目の前にある作品の問題は解決しません。

受験まで時間がないと焦るにはまだ早い。

今こそ自分の可能性を信じて、実直に素直に自分の気持ちと向き合ってみてはいかがでしょうか?

1018blog%e7%94%bb%e5%83%8f%ef%bc%92

近所で見かけた渋柿。このままでは渋くてとても食べれませんが、私のふるさと福島では、この時期盛んに焼酎で処理して樽抜き柿にしたり、皮をむいて霜の降りる季節まで日のあたる軒につるして干し柿にしたり、創意工夫で驚くほど甘い食べ物に変身するんですよね。

子供ながらに面白みを感じたものです。

伸び悩む皆さんだって、まだまだ捨てたものではありません。今後の創意工夫によって大きく変身するきっかけになるかもしれません。

2学期もまだ中盤、勝負はこれからですよ、頑張りましょう!!

 

絵の上手さについて②

こんにちは。油絵科の関口です。
前回に引き続き、絵の上手さについて書こうと思います。

僕が考える上手さは、一般の人には分かりにくいものが多いと思いますので、今回は少しとっつき易いものから入って説明していこうと思います。
klimt-adele-bloch-bauer
クリムトは一般人にも人気が高く、この絵は数年前 世界で一番高い値段を付けた肖像画として、ニュースを賑わせました。煌びやかで、まさに宝石箱をひっくり返した様な美しさ。人物を見れば、かなり写実的な表現が使われており、分かり易い上手さだと思います。

%e3%82%aa%e3%83%aa%e3%82%b8%e3%83%8a%e3%83%ab
では、クリムトでも少し変わった作品を紹介しましょう。こちらも上と同じく、肖像画のジャンルになりますが、背後に中国風の絵が描かれています。これだけの数の顔が画面に登場したら、普通はうるさくて中央の人物は目立たないと思いませんか?
実は、この絵には中央の人物をメインにするための工夫が、色んなところに散りばめられています。一番分かり易いのは、明度対比です。

%e3%82%b3%e3%83%b3%e3%83%88%e3%83%a9%e3%82%b9%e3%83%88%e5%bc%b1
こちらの左右を見比べると、右側の絵は背景に完全に同化してしまっていると思いませんか?
顔の明るさに対して髪の毛の調子の黒、同じく靴の黒、この二つを取るだけでもかなり背景と同化してしまいます。更には腰の周りにある馬の暗さもウエストを引き締めるのに使われているのが分かると思います。
こういう工夫を全てを書いていたら、物凄く長くなってしまいますので割愛しますが、クリムトの絵は平面的な処理をしているだけに、こういう工夫が細かいところまでギッシリと詰まっているのです。
こういう操作も絵を描く上での上手さです。説明する上での難易度は低いですが、この能力をある程度身につけるのは、それなりの年月が掛かります。

 

%e3%83%87%e3%83%83%e3%82%b5%e3%83%b3%ef%bc%91
あと、クリムトのこのタイプのデッサンも、かなり上手だと思います。ただ、こちらの方が説明するのが難しいかもしれません。
これを見ても、ミミズが這いつくばった様なヘロヘロの線で、何が上手いんだ?と思うかもしれませんが、長年絵を描いている人間からすると、こういうのも上手なんですよ。
例えば、この絵には調子を全くと言って良いほど使っていませんが、お尻にはボリューム感があると思いませんか?普通は陰影をつけて量感を表現しますが、線のみで表しています。お尻から奥の方にある腿までの空間も感じられると思います。身体の捻じれも上手く表現されていますし、服装や髪の毛、肌の質感の差も線のバリエーションで表現しています。唇なんかもササッと描いていますが、とても表情豊かです。・・・ここまで書いていると、言葉では中々表すことが出来ず、自分の表現力の乏しさに限界を感じます。

%e3%83%87%e3%83%83%e3%82%b5%e3%83%b3%ef%bc%92
どちらもクリムトのデッサンですが、右側のデッサンなんか、もはや僕のボキャブラリーでは、上手さを説明するのが困難です(笑)。

%e3%83%87%e3%83%83%e3%82%b5%e3%83%b3%ef%bc%93
こちらのデッサンは表情が豊かですね。人形とは違い、意思を持った一人の人間として描かれており、今にも何か喋りだしそうな気配さえ漂っています。この絵からはクリムトのこのモデルに対する想いや、人間そのものに対する眼差しを感じます。
ここに挙げた数枚のデッサンは、描かれた時間は僅か数分だと思いますが、この領域に到達する為には、一朝一夕の訓練では不可能なのです。

 
このブログを通して「上手さと言っても色々あるんだ…」という事が分かって頂けたら幸いです。

絵の上手さについて①

こんにちは。油絵科の関口です。
今日は絵の上手さについて、お話したいと思います。
僕は学生の絵を講評や評価する時に「君は上手いね?」と言う事が殆どありません。かと言って、皆の絵を下手だと思っている訳でもないのですが…

%e3%82%b2%e3%83%ab%e3%83%8b%e3%82%ab
ピカソ「ゲルニカ」1937年

 
先日、ふとした事で「上手さ」について生徒と喋った時「てっきり先生は上手い作品は評価しないものだと思っていました」と言われてしまいました。ショックです(笑)。
実際は上手い作品もちゃんと評価しますし、そこはキッチリ見ているつもりです。

但し、僕が「上手い」と評するのは、一般の人(受験生も含む)からすると、分かりにくいものが多いのかもしれません。
でも皆さんからすると「え?上手いのに分かりにくい??」って感じですよね…。
実は上手いにも分かりやすい上手さと、分かりにくい上手さがあるんです。

 
%e6%b3%a3%e3%81%8f%e5%a5%b3
ピカソ「泣く女」1937年

例えばスポーツの世界でも、その競技を専門にやっていた人が引退し、解説者になる事がありますよね?そしてテレビで「この選手は本当に上手いんです」などと発言されるんですが、素人の自分にはサッパリ分からない…という事がよくあります。
その競技をやっている人から見ると、明らかに「上手い」と思える技術がある。それが専門的な技術になればなるほど、一般の人には分かりにくい。そこで解説者が必要になる。という事なのでしょう。

 

15%e6%ad%b3%e3%81%ae%e3%83%87%e3%83%83%e3%82%b5%e3%83%b3
例えば、このピカソ15歳のデッサンは一般人から見ても「上手い」という感じですよね。これなら説明するまでもないでしょう。

では、これは如何ですか?
56%e6%ad%b3%e3%81%ae%e3%83%87%e3%83%83%e3%82%b5%e3%83%b3
こちらは上の作品から約40年後、ピカソ56歳(1937年)のデッサンです。僕からすると、圧倒的とも言える「上手さ」が絵から溢れ出ている作品なのですが…
一見すると雑にも思えるこのデッサン。人間の持つ表情の自然さや美しさ、このモデルの持つ独特な佇まいまで感じさせてくれます。素早く動かしたタッチの荒々しさと、モデルのリラックスした感じを同居させながらも不自然さを感じさせないバランス感覚…。構図も絶妙です。もしかすると、ピカソならチョチョイのチョイで描いた一枚なのかもしれませんが、ちょっとやそっとの力量では、こうは描けません。

※ちなみに上に載せた「泣く女」のモデルはこのデッサンの女性で、「ゲルニカ」の左の方にいる赤ちゃんを抱いている女性も、この人がモデルだと言われています。3点は同年作。

 

他にも色んな種類の上手さがありますが、長くなりそうなので、別の機会に紹介しますね。乞うご期待ください。

エッシャーの世界

こんにちは。油絵科の関口です。
先日、横浜そごう美術館で「エッシャー展 ?視覚の魔術師?」を見てきました。なかなか良い展覧会でしたので、皆さんに紹介したいと思います。
img_5053
今回は作品の前に「これ以上前に来ないで下さい」というテープや柵が無かったので、かなり間近で作品を見ることが可能です。小さい作品が多いですし、エッシャーの世界を存分に味わうなら、このスタイルは大正解だと思います。
ちなみにエッシャーの作品は、大半が版画で木版画とリトグラフが殆どです。キャプションにはタイトルの他に版種や描画材なども書かれていますので、そちらにも注目してみて下さい。

今回はエッシャーが実際に刷った版木も何点か展示してあります。刷り上がった版画を見る機会はあると思いますが、版木までは中々見る事は無いと思います。版画は間接技法なので、直接エッシャーが手掛けた版木を見ると、息使いまで聞こえてくる様な感覚に陥りました。

%e9%ad%9a%e3%80%9c%e9%b3%a5
あとエッシャーと言えば、反復する形を利用し、それらが少しずつ変容し、別のものに変わっていく有様を描いた作品が有名ですね。この着想の源流にあるのは、実はイスラム美術です。しかしエッシャーが実際に訪れたのは中東ではなく、スペインでした。スペイン内戦を避けるようにアルハンブラ宮殿を訪れた彼は、そこでタイルや装飾の幾何学的な美しさに魅せられたようです。

余談ですが、このイスラム圏の幾何学模様は、確かに綺麗で面白いんですよね?。見ていて飽きないので、僕も最近はPinterestというアプリでジャンジャン集めています。
%e3%82%a4%e3%82%b9%e3%83%a9%e3%83%a0%e7%be%8e%e8%a1%93
エッシャーはアルハンブラ宮殿にある幾何学模様をたくさん模写して、独学でこのパターンを研究していきました。そこに独自の解釈を加え、具象生のあるパターンを次々と作り出したのです。
ただ残念な事に、個展で最初にこれらを発表した時には、人々に受け入れられた訳ではなかった様です。自信作だっただけに相当凹んだと伝えられています。

そんなエッシャーが注目され始めたのは、平面の繰り返されるパターンから、三次元の世界に像が浮かび上がる様な作品を作るようになってからでした。reptiles
視覚的なイリュージョンを巧みに扱う様になったエッシャーは、その後も様々な作品を作り出し、世界的に有名になっていきました。

いつの時代でも、作品に命を吹き込むのは作者の情熱です。そして、その熱を作り出す最初の一歩は「好奇心」なのです。例え美術に関係無かったとしても、興味を持ったジャンルがあるなら、将来かけがえのない財産になっているかもしれません。

 

エッシャー展 ?視覚の魔術師?
https://www.sogo-seibu.jp/yokohama/kakutensublist/?article_seq=198574