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クリムトについて①初期編

こんにちは。油絵科の関口です。久しぶりのブログの更新、以前の記事から一ヶ月以上経ちましたね。そろそろネタ切れという噂が流れています(笑)。2013年からずっと書いてますから、いつネタが切れてもおかしくありません。ヤバくなってきたら誰かにバトンタッチしますので、その時はどうかご了承下さい。


さて、今年も都内の美術館で色んな展覧会があるようですが、来月から大規模なクリムトの展覧会が2箇所同時にあるようです。どちらもかなり良い作品が来そうなので期待が持てます。そこで何回かに渡り、クリムトについてお話を進めていきたいと思います。


クリムトは、日本で最も人気の高い画家の一人だと思います。写実的な描写、官能的な表情、緻密で煌びやかな装飾性、美しい色彩…などが一般の人にも「とにかく分かりやすい」というのが、その要因だと思われます。ただ、絵を描いている人の中には「クリムトはちょっと苦手」という人もいるとは思いますが、不思議なことに今まで僕はそういう人には出会ったことがありません。

 


初期の頃の作品は神話っぽい題材を描くことが多かったようですが、表現は結構写実的です。彼は10代中頃にウィーンにある博物館付属の工芸学校で勉強し、石膏デッサンや古典主義的な勉強をガッツリしたようです。この作品は彼が22歳頃の作品ですが、既にかなり上手に描けています。


これは17歳のデッサン。年齢的に高校2年生と考えると、ヤバいですね。

工芸学校で勉強したというのは、後に作品が装飾的になって行くのを助けていく事になるのでしょう。これが美大だったら、もしかするとここまで有名にはなれなかった可能性もあります。
オーストリアという国は、実はクリムトより以前にはあまり有名な画家が育っていませんでした。どちらかというと、絵よりクラシック音楽で有名ですよね。あのモーツァルトやシューベルトなんかもオーストリア人です。

モーツァルト(左)とシューベルト(右)※どちらもクリムトの絵ではありません。


30代中盤から後半にかけて制作した「旧ブルク劇場観客席」という作品。これでクリムトは第一回皇帝賞を受賞し、一気にスターダムにのし上がります。絵描きの立場から言わせてもらうと、この人数と建物を描くのはかなりシンドイです。奥には局面の桟敷席があり、たいていの人は描く前に構想を練る段階で挫けてしまいそうです。僕ならこの現場を見たとしても「描きたい」という気持ちにすらならない!と断言できます。恐らくクリムトは精神力というか、忍耐力のかなり強い人だったのではないか?と思います。

長くなりそうなので、今回はこの辺で。−続く−

P.S.
最後に宣伝を。既に会期は始まっていますが、国立新美術館にて白日会95周年記念展に100号を一枚出品しております。更に3月28日(木)には公開クロッキーというイベントがあり、そちらにも出演(午前・午後の両方に出演予定)しておりますので、お時間のある方は是非おいで下さい。なお白日会展は学生入場無料です。会期は4月1日(月)まで。乞うご期待ください。
http://www.hakujitsu.com

不器用な君達へ捧ぐ…

こんにちは。油絵科の関口です。私大の受験も始まり、普段はユルユルの雰囲気の油絵科のアトリエにも、少し緊張感が漂う様になって来ましたね。普段はハチャメチャな子でも、追い込まれると本気モードになるんだな…って、特にこの時期には思います。


さて、今迄ずっと油絵科の学生を見てきて感じるのは、致命的なほど不器用な人が多い…ということ。一般の人からしたら「なんでこんな簡単な事が出来ないの?」と思われる様な事が上手くこなせません。器用な人間からしたら「はぁ?あり得ないでしょ?」みたいな感じですよね。
反対に不器用な人からすると「ええ、そうですとも。器用なあなたには一生理解できないでしょうね…」といった感じで、心中穏やかではないでしょう。普通の人からしたら些細なことでも、不器用な人にとっては、切実な問題だったりしますからね。


かくいう自分も不器用な人間の一人。どういう訳か他人からは器用そうに見られる事が多いのですが、生き方も含め、中々のレベルなんです(笑)。僕の場合は極端に苦手な事と、それなりに器用にこなせる事の両方を持っているので、初めてその極端な不器用さを垣間見た人には、一様に驚かれます。そんな事もあり、不器用な人間には妙な親近感があるのです。

不器用な人間は思います。「なんで他の人は簡単にこなせるのに自分には出来ないんだ?」「自分は何か大切なものが欠けているのか?」と。
しかしそんな事で気を揉む必要はありません。美術の世界はとっても懐が深く、どんなに不器用な人でも受け入れてくれる優しさと暖かさがあるのです。
僕は時々不器用な学生に「出来ない事があっても良いじゃない!」と言いますが、それは気休めや励ましでも何でもなく、本気で思っている事なのです。そういう人は将来「普通の人には絶対に出来ないことを成し遂げる」と信じています。そして「人の総量っていうのは基本的に一緒なんじゃないかな?」って思っています。
今は周りが羨ましく思うかもしれませんが、燻ったエネルギーをしっかりと貯めて、将来に役立てて貰いたいな…と思います。


不器用な君達を何だか他人事とは思えず…
心から応援しています。

熱いぜっ!高校生石膏デッサンコンクール

こんにちは、全科総合部です。

いや~昨日は、センター試験二日目でしたが

あつかったです!!

いやいや天気は良かったですが、野外は暑くはなかったですよね。
センター試験受験者の皆さん、お疲れ様でした。

何があつかったというと、新美の高校生石膏デッサンコンクールが熱かったです!

もちろん、高校2年生までの全専攻全学年で石膏デッサンを競い、励んで描いている姿も圧巻でした!
その200人近くの中から、結果、1位のトップを獲られたのがなんと!?・・・・・・。
描き始めて間もないということでしたが、素晴らしい石膏デッサンでした。
芸大の1次は通るのではなかろうか、という点数もいただいています。
このような貴重な才能を持っておられる高校生も、全国にはいるのだなあ~と、
焦りをも感じた次第です。

そして今回の「デッサン解説」。
こちらも熱かったです!!

新美の誇るスパー講師、彫刻科の小川原先生、デザイン科の増田先生が
同じ石膏像(ヘルメス)を1時間でどこまでできるのか?ガチンコ描き出し勝負です!

最初にポイントを述べて描いていただきましたが、本当に凄かった!!
しゃべることなく真剣に黙々と描かれていましたが、それを見ている受講生の皆さんも
飽きることなくじっと見入っていました。メモを取る人、2人を比較してみる人、
きっと次のデッサンに役立つこと間違いありません。
描いている先生の気迫!見ている受講生の気迫!一緒に教室にいるだけで、こちらまで緊張感がビンビン感じられました。

そして、各科の先生方も熱く講評をしていただきました。

本当に受講生の皆さん、お疲れ様でした。
今回、上手くいかなかった人も、また3月にリベンジ戦がございます!!
新美のホームページをチェックしていてください。そちらでも告知致します。
それまでに、鍛えておいてください、楽しみみしています!がんばりましょう!!

講師の先生方もお疲れ様でした。

目利きの力量

こんにちは。油絵科の関口です。受験生の皆さんはもうすぐセンター試験ですね。年間を通してコツコツ勉強してきた人も、年が明けてから勉強を始めたあなたも、これから風邪をひかないように気をつけてくださいね。

さて、先日三菱一号美術館で開催されている「フィリップ・スコレクション展」を見てきました。実はこの展覧会、自分にとっては全くノーマークで、行く予定ではありませんでした。ところがあるプロの絵描きさんと飲んでいる時に「今回のフィリップスコレクション展は必見だよ」「特にブラックの描いた風景が良かったよ」「他にもボナールも良かったし、セザンヌも良いのが来てるし全体的にレベルが高いよ」と言われ、その人がそこまで言うなら見てみよう…となったのです。


ジョルジュ・ブラック「驟雨」
僕も初めて見る作品です。画集でも見たことがありませんでした。プロが唸るだけあって確かに良い作品です。少しポップな感覚で描かれているので、ホックニーとかキタイの初期作品を見ている様な錯覚に陥ります。自転車のデフォルメも良い感じですし、ピンクや青のアクセント、雨の入り方も絶妙ですね。

「〇〇コレクション展」とか「〇〇美術館展」というタイトルの展覧会は、かなりの確率で外れ作品が紛れているものですが、このフィリップスコレクション展は一味違います。通常の展覧会とは異なり、年代順やカテゴリー毎でまとまっているということもなく、収蔵された年代順になっているのです。
プロ目線での「全体的にレベルが高い」という言葉に偽りはなく、どの部屋にも注目すべき良い作品が散りばめられていました。中でもブラックの作品は、上質で良いものを集めているな…と思いました。


ブラックの代表作の一つ「円いテーブル」
この作品は、ブラックの画集を見たら必ず載っていますね。近くで見ると意外とサラッと描かれていましたが、構成がバッチリ決まっていて、これ以上要素を省くことも足すこともできない、まさしく「絶妙」としか言いようのない名作です。


ブラック晩年の作品「鳥」
僕の中では、ブラックはピカソやマティスという20世紀を代表する巨匠の陰に隠れてしまい、それほど注目していませんでしたが、今回の展覧会を見て、その上品なセンスと絵から溢れる人柄の暖かさに改めて感銘を受けました。ユルいけど良い作品です。


シャイム・スーティン「嵐の後の下校」
ブラックとは異なり、荒々しさ溢れるタッチで描かれていますが、スーティンならではの切実さと溢れんばかりの熱いハートで描かれており、ジワジワ来る良い作品です。思わずジッと見入ってしまいました。


オスカー・ココシュカ「ロッテ・フランツォスの肖像」
ココシュカの作品もコレクションに入れているなんて、中々の通ですよね。この肖像画は明るいところは殆ど下地に塗ってあるキャンバスの白で、絵具を削ったり拭き取ったりしながら描かれています。絵具の厚さは極めて薄いですが、画家の想いが詰まった熱い作品です。


ラウル・デュフィ「画家のアトリエ」
正直に言うと、僕が若い頃にはデュフィの作品の良さなんか、微塵も分かりませんでした。色々な絵を見て勉強してきた今なら、この画家の凄さは理解できます。
ある意味フランス近代絵画のエッセンスが見事に詰まった作品だと思います。ここまでユルユルの絵具で描きながらも、画面を自由にコントロールする能力というのは、技術的に見ても凄いことです。日本人がこんなにオイルを混ぜて描いたら「水っぽく」なってしまうんだろうなぁ…とも思いました。

他にもセザンヌ、ゴーギャン、ゴッホなどの後期印象派。ボナール、ヴィヤールなどのナビ派。ピカソ、マティスなど20世紀を代表する巨匠…。これほどまでに良い作品をコレクション出来たのは、それらの良さを見抜く眼力とセンス、知識や教養の高さがあったからに他なりません。目利きというのは、一朝一夕で身につけられる様な能力ではないのです。気付けば展覧会全体を見るのにいつもの5倍くらいの時間がかかりました。さすがに今回は脱帽です。

もう少し会期があるので、まだ見ていない人は是非見に行ってみてください。↓
https://mimt.jp/pc/

今年もNew Year ワークショップ開催!

こんにちは、全科総合部です。

早いもので、2019年になってしまいました・・・というと
ネガティブな言い方なので、
やっと2019年になりました!!
入試も近づいて、いよいよ受験生の皆さんの実力の見せ所です!
がんばりましょう!!

さて一方予備軍の皆様、と言ってもあっという間に受験生です。(2か月後)
受験に向けてやっておかなければならないことは、山ほどありますが
取っ掛かりとして、ワークショップはいかがでしょうか?

ということで、楽しく受験に挑むというのはむしのいい話しなのかもしれませんが、
新美ではそんな最初の一歩を、ご用意しました。

次の日曜日、1月13日(日)14日(月・祝)で行われますN.Yワークショップです。

ワークショップ形式なので、自分の科だけでなく、興味のあるものを選択して行うこともできます。
もちろん入試に関わるワークショップもありますので、自由に選択してください。
もちろん無料です!

「錫のリングをつくろう!」は人気がありますね。自分デザインのアクセサリーは、実用性もあれば、さりげなく友達に自慢もできちゃうっ!!(1/13開催)

「日本画体験」は本格的に岩絵の具を使って絵が描けます。1色づつ色を練って描いていくともう、すでにあなたは日本画家!
最初は練習ですが、すでに個性が芽生えているようです。(1/14開催)

「カメラを使わず写真を撮ろう!」どういうことでしょう?そもそもカメラを使用しないで写真が撮れるの??みんなの常識を覆せるのか?(1/14開催)

「水粘土でデコポンを作ろう!」こちらは、芸大デザイン・工芸入試にとって大事な立体構成に直結しています。まだやったことがない人、苦手な人、今のうちにコツを掴んで差をつけてしまいましょう!

「受験に役立つ!絵画の明暗構成」と、こちらもタイトルどおり受験に直結!大きく絵画と表されているように、油絵だけでなく、デッサンや着彩などの平面作品ならば何にでも応用ができると思います。是非!(1/13開催)

「石膏クロッキー徹底トレーニング!」こちらもご存じのとおり、石膏デッサンの出だしを徹底的に覚えたいのならお勧めです。早く形がとれるようになります。構図もとれるようになります。(1/13・14両日開催)

「バナナ着彩体験」この中に本物が隠されています。どれかおわかりになりますか?
手前の3本の中にも本物が?着彩途中のは、わかりますよね。(1/13開催)地味に左にあるリンゴはにせもの??

木工は今回なんと!?指輪です!!「木の指輪を作ろう!」木で指輪が作れるのでしょうか?できればもちろん、友達に自慢どころか驚かせることになるでしょう!(1/14開催)」

その他にもデッサンのスキルを上げる「3時間チャレンジ」(1/13・14両日開催)
親子でデッサンの理解を深める「親子デッサン」(1/14開催)のコースもあります。

お申し込みは、こちらからお願いします。

新年のスタートを何より来年の入試を見据えて、充実させてはどうでしょうか?
宜しくお願いします!!