カテゴリー別アーカイブ: 新宿校

故郷に流れる遺伝子

こんにちは。油絵科の関口です。
今週も台風が直撃ですね。2週連続で来るのはちょっと勘弁してもらいたいものです。

 

さて、今日はこの作品から見てもらおうと思います。作者が誰か分かりますか?
ヒント:この作者はエコール・ド・パリの画家で、イタリア人です。?15歳のデッサン
これは自画像という事なんですが、顔立ちには まだあどけなさが残っています。彼がこれを描いたのは何と15歳!日本だと中学3年か高校1年の年齢ですね。しかもデッサンを勉強し始めたのが14歳の頃とか。こんなのを描き始めて1年目の子に描かれたら、周りの人は嫌になってしまいますよね?

さて、僕がこの作品を見て特に感心するのは、顔の描写力はさることながら、この身体の表現の素晴らしさです。客観的な観察力というのは、訓練である程度何とかなるものだと思っていますが、この省略の仕方やタッチの使い方は観察だけではどうにもならないものです。よくぞここで筆を止めたものだと思います。完全に脱帽です。作者は素晴らしい感性を持った子供だったんですね。

さあ、勿体ぶってしまいましたが、そろそろ答えを言いましょう。
この作品の作者は夭折の画家、モディリアーニ(1884?1920年)です。ありゃ、デッサンにサインが入っていたのでバレバレでしたね(笑)。

 

さてモディリアーニというと、目の青いこんなタイプの絵を思い浮かべる人が多いと思います。モディリアーニらしい作品

以前モディリアーニの作品を見ていると「誰かの作品に似ているな?」と漠然と思っていました。最初は誰の作品に似ているか、ハッキリと分からなかったのですが、ある時ピンと来ました。
タマゴ型の頭に流線形にデフォルメされたその身体・・・僕が結びつけたのは、前回このブログでも取り上げたボッティチェルリでした。

類似作品
どうですか?作風はかなり違いますが、横に比べると結構近い感じがしませんか?

 

ところで、僕が新美の講師を始めた頃、海老澤先生がボッティチェルリの図版を出してきて「ボッティチェルリの作品は、目の高さが段違いになってるのが多いんだけど、身体全体で見ると全く違和感を感じさせないんだよね。身体の動きに合わせて高さを変えてあるから、目の高さを合わせると、逆に凄く変になっちゃうんだよね」と教えてくれました。

ヴィーナス顔1
実際よく見てみると、かなり段違いになっているんですが、言われてみるまで全く気付きませんでした。恐らく皆さんも今まで気になった人は殆んどいないんじゃないでしょうか?
当時はパソコンなど無い時代でしたので、海老澤先生はハサミで図版を切り抜いて試したものと思われます。確かに顔だけでよ?く見ると変な気もしますが、絵全体で見ると全く違和感を感じません。

段違いの目
段違いコレクション(ボッティチェルリ編)
※前回のブログで「ボッティチェルリの作品は殆んど日本に来ない」と書きましたが、一番右の絵は東京都美術館で12月14日まで見ることができます。次に日本に来るのはいつになるか分かりませんので、興味のある方は是非見に行って下さい。ちなみにこの作品はカンバスにテンペラで描かれています。
http://www.tobikan.jp/exhibition/h26_uffizi.html

 

さて、もう一度モディリアーニの話に戻りましょう。どうですか、この段違い!ボッティチェルリに負けず劣らず、かなりずらしていますね。

段違いの目
段違いコレクション(モディリアーニ編)
気が付かなかった人も多いと思いますが、実は上の帽子をかぶった絵も、よく見るとかなりの段違いっぷりです。段違いに気付かなかった人は、もう一度スクロールして確認してみて下さい。

 

モディリアーニはイタリア人として生まれて、フランスで活躍した画家ですが、遥か故郷の画家を尊敬し、時空を超えてその遺伝子を受け継いだ…と考えると、ちょっと面白いと思いませんか?

秋の受験科訪問

こんにちは、基礎科日本画講師の佐々木です。

すっかり肌寒くなり、季節は秋になってきたのだなあと感じます。
受験生にはちょっと、焦りを感じる季節でしょうか。

と言いますのも、先日、デモンストレーターとして受験科に参加してきたのです。
普段は基礎科の講師として教えていますが、去年からこの時期に、昼間部で着彩のデモスト、指導と講評をさせてもらっています。

今回の課題はケイトウ、ステンレスピッチャー、カリフラワー…などなど、描きごたえたっぷりのモチーフでした。
日本画の着彩は、二日間(計11時間)かけて描き上げる持久戦ですが、のんびりしているとすぐに時間がなくなってしまいます。描き出す前のイメージと戦略、それをやり切る根性、両方を兼ね備えないと完成させることができない課題だなあと、つくづく思います。

そんなことを考えながら、完成した作品がこちら。

ブログ1

本当に生徒と同じ時間できっちり描きましたが、とても疲れました…。
様々な質感のあるモチーフなので、それが綺麗に出るように、楽しみながら描きました。

なぜ、基礎科の先生が受験科に?と思われるかもしません。
受験科には、高校生の時に基礎科で見ていた生徒もいるので、その時からの癖、逆に成長したポイント等、昔から知っているからできる指導があるのです。
初めて合う生徒も、基礎科の先生なので、受験科の先生には恥ずかしくて今更聞けないようなことを聞けてしまったり…。
受験科と基礎科の行き来をしやすくすることで、いろいろな視点から自分を確認できるようになればいいな、というおもいから、この毎年恒例のイベントは行われています。
(ちなみに、基礎科生も、よく受験科におじゃまして、よりレベルの高い絵を見させてもらっています!)

当日の様子をちょこっと紹介。

ブログ2

デモストだけではなく、私が受験生だった頃のノートを見たり、思い出話を聞いたり。
臨場感のある受験のイメージも、想像できたでしょうか。
みんな興味津々で話を聞いてくれました。

そのときの様子は、後日、日本画受験科のブログにもまた紹介されるようですので、そちらも合わせてご覧ください。

そして。
基礎科の生徒も、今週は専門課題で着彩をしていました!

ブログ3

基礎科といえども、もうすぐ高3。
受験生になるんだという気合も充分で、どんどんのびています。

ブログ5
完成作品はこちら!

ブログ4

着彩に石膏像というすこし難しいモチーフでしたが、しっかりかけています。
それぞれの質感や光の流れも表現出来はじめていますね。ガラスのお皿の表現など、ほんとうに綺麗です。

そろそろ冬期講習の受付も開始しています。
日本画、ちょっと気になるけど難しそうだな、無理そうだな、なんて思わず、気になったらまずは描いてみましょう。
高校二年生は基礎科に、三年生は受験科に。一人一人をしっかりと見て指導していくので、ひと冬でぐんと力がつきますよ。初心者でも、安心して描きに来て下さい。
やりたいことに一歩、踏み出していきましょう!

映像科:金土日コースの近況とおすすめ展覧会

こんにちは、映像科の森田です。直前のお知らせということになってしまいますが(というかこの記事をアップする金曜日が申し込みの締切日ではあるのですが)12日・13日は映像科の公開コンクールが開催されます。映像科では毎年武蔵野美大映像学科の模擬試験を行っていますが、今回は受けられないという人のためにも少しコンクールの内容を紹介しておきます。また次回のブログでは公開コンクールの問題を解説しながら、最新の武蔵美映像学科の対策についてもお伝えする予定です。お楽しみに!

■【実技/必須】
○感覚テスト(150点/3時間)…与えられたテーマから創作する問題です。B3画用紙に絵と文章によって表現します。去年のテーマは「近づくにつれて」というキーワードでしたが、さて今年はどうでしょうか。

■【選択科目/小論文と鉛筆デッサンから選択(実際の試験では数学を選択することもできます)】
○小論文(150点/2時間)…工業製品などのモチーフを観察したことをきっかけとして書く内容になってします。
○鉛筆デッサン(150点/3時間)…こちらも工業製品を中心とした基本的な鉛筆デッサンですが。
*なお、ここ数年の過去の出題では、小論文と鉛筆デッサンのモチーフが一部共通することもありました。

■【学科】
○国語・英語(各100点)…今年から出題に変更があることが発表されています。詳しくは武蔵美のWebで見てみてください。

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ところでそんな映像科生やすべての美大受験生におすすめしたいしたいのは、9月27日から東京都現代美術館でやっている『AROUND MICHEL GONDRY’S WORLD ミシェル・ゴンドリーの世界一周』展です。ミシェル・ゴンドリーは元々はミュージック・ビデオの制作で有名だった人ですが、2000年代以降は映画監督としても活躍しています。映像科の授業でも「記憶をビジュアル化している映像作品」のひとつとして初期の映画『エターナル・サンシャイン』を紹介したことがあります。

今回の展覧会はミュージック・ビデオの代表作19作品を見られるインスタレーションと、映画に使われた大道具や小道具、そしてゴンドリーのドローイングなどが展示されていますが、ある意味で展覧会のメインになっているのが、展示会場のセットを使って実際に映画を作ることができるワークショップでしょう。期間中の水・土・日曜日と祝日に行われているらしく、事前に予約すれば誰でも申し込めるようです。そんなこととは知らずに観に行ったのがちょうど水曜日だったのですが、さすがにワークショップの風景は載せられないので、展示されているセットのうちのいくつかだけ撮影してみました。

展示スペースへの入り口はこんな感じ。美術館の中に突如ちょっとレトロなレンタル屋が現れます。
P1050891 のコピー

路地裏(?)のセット。グラフィティやブロック塀の汚れもリアルです。
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電車に乗っているシーンも撮れちゃいます。写真ではわかりづらいですが、車窓は液晶モニタになっていて、昼/夜、都会/郊外などの操作も可能。
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キャンプのシーン。楽しそうですね。
P1050897 のコピー

派出所と、奥には取調室的な部屋もあり。
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ワークショップがない日もこれらのセットは入ったり写真を撮ったりできます。興味を持った人はぜひ実際に行って見てみてください!(来年の1月4日までやっているようです!)

日本画科便り12-日本画科レクチャー③?

日本画科です。

 

日本画科では周期的なイベント、レクチャー、デモンストレーションを行い、生徒のブラッシュアップを図っています。10月1日~2日は、日本画科の人物デッサンと石膏デッサンの対策を兼ねて、新美彫刻科の小川原講師(彫刻科主任)による人体デッサンレクチャーを開催しました。

 

「彫刻科/小川原講師(彫刻科主任) 人体デッサンレクチャー」

10月1日?2日 人物デッサン[女性ヌード]

1日目

AM小川原講師レクチャー(人体デッサン、人体クロッキー)

?クロッキー開始(座り、立ち、しゃがみ)

PMデッサン開始

2日目

AMデッサン

PMデッサン?講評

 

 

人物を描くにしても、石膏像を描くにしても、人体について把握をしていないと描くことが出来ません。特に今年度の日本画科は、人物課題や石膏デッサン課題の時、描き出しの際の捉え方が細部を意識し過ぎていたり、大元の骨格や組立が弱くなりがちだったので、人体課題を多く取り組む彫刻科主任の小川原先生にご協力を仰ぎ、今回のレクチャー開催に至りました。

日本画科では積極的にクロッキーの練習を奨励していますが、本レクチャーでは人体の基礎からクロッキーの捉え方、練習方法、そして石膏デッサンへの応用まで丁寧かつ徹底的にご指導いただきました。

11-1←モデルのポーズに入る前に、人体デッサンの基礎とポイントを解説いただきました。

11-2←描き出しから仕上げまでの過程を解説いただいています。

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11-3←最初のポージングは小川原先生のクロッキーを直接見学し、ポイントの押さえ方、基準の設定方法などの捉え方を具体的に指導いただきました。

11-5←講評の採点風景です。

11-6←講評風景です。生徒の表情は真剣そのものです。各々、メモを取る手が止まりませんでした。奥の彫刻科参考作品や各資料がアトリエの活気を物語っているようです。

11-7←日本画科の漆原講師(手前)と小川原先生。熱い講評!!!!!

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今回、生徒たちの作品は今までで一番しっかりした人物デッサンだったと思います。その生徒たちにとっても、また、日本画科講師にとってもとても勉強になりました。今回の学習を今後のクロッキー練習や石膏デッサン、そして人物デッサンに活かしていきたいと思います。

小川原先生、2日間、本当にありがとうございました!

 

日本画科では周期的なイベント、レクチャー、デモンストレーションを行い、生徒のブラッシュアップを図っています。口頭指導、個人指導の他、”直に見て学ぶ”というそんな学びのあり方も大切にしています。次回のレクチャーは基礎科日本画コース講師の佐々木講師による着彩レクチャーです。後日、こちらにアップ予定です。乞うご期待!

 

10月13日と14日に「全国公開実力コンクール」を開催します!課題は「着彩写生」。受験生、現役高校生の皆さん、是非奮ってご参加下さい。