こんにちは!新宿校基礎科講師のデザイン担当 吉村と日本画担当 佐々木です。
今、基礎科の月火水コースでは日本画とデザインの専門課題を制作中です。
そこで、今回は日本画の静物着彩で主に使用される「透明水彩」と、デザインの平面構成で主に使用される「アクリルガッシュ」 2つの画材の違いをご紹介したいとおもいます。
「透明水彩」も「アクリルガッシュ」も、両方チューブから出した絵の具を水で溶いて筆で塗る画材ですが、「透明水彩」は、文字通り、透明な性質を持っています。
・上から重ねて塗っても、下の色が透けて見える
・重ねて塗るほど色が濁る・暗くなっていく
・塗った部分が乾いても、水に濡れると溶ける
という特徴があります。
「アクリルガッシュ」は、その逆で、不透明な性質を持っているため
・上から重ねて塗ると、下の色を潰すことができる
・重ね塗りをしても色が濁らない
・一度乾くと水には溶けない
という特徴があります。
上:水彩
下:アクリルガッシュ
では、この2つの画材を使用して、同じモチーフを描くと、どのような差がでてくるのでしょうか。
アクリルガッシュを吉村、透明水彩を佐々木が使用し、リンゴを描きくらべてみました!
①
左:アクリル 右:水彩
まずはデッサンの段階。
この時点で既に差が現れていますね。
アクリル→絵の具が不透明で細かく描いても見えなくなってしまうため、デッサンの段階では大きな形のみを捉えています。そのため、デッサンの所要時間はとても短いです。
水彩→絵の具が透けるため、鉛筆で描いた模様を、絵の具を塗っても活かすことが出来ます。そのため、デッサンの段階から、完成の時に活きてくるような描き込みを入れています。
②
色に入りました。
この段階ではそれぞれ何を意識して色をおいているのでしょうか?
アクリル→まず、光の状況を見やすくするために、影の中の鮮やかな色、反射光の鈍い色、光側を整理して大きく色を置いた状態です。一番明るいところはまだ画用紙の白地を残してあります。
アクリルの場合は、しっかりと絵の具の厚みを出さないと濁りやすいため、最初は大きめの筆で全体に手を入れるように進めていきます。
水彩→こちらも光側は大きく残し、光と影の境目?影、反射光の暗さを入れています。
模様が目立つ境目の部分は、既に模様を描き込み始めています。
沢山手数を入れると濁ってドロドロになってしまうため、少ない手数で完成するよう、
手を入れていきます。
③
全体に色が入った状態です
アクリル→光側が鈍い印象にならないように、色を混ぜすぎず、手数を少なめに色をおいています。
水彩→影側の暗く曇った感じに対して、光側は鮮やかで、クリアな色を作っておいています。
紙の白い色をすかして明るさを表現しています。
④
表面の模様などの描写が始まりました
⑤
完成一歩手前
アクリル→手を入れすぎて、立体感や光が潰れてきてしまいました。
水彩→光側の模様がまだ不足しているため、光があたってよく見える、クリアな印象が弱いです。
⑥
完成です!
アクリル→⑤での※潰れてしまった部分を白で描きおこして、立体感や光を取り戻しました。
また、最後に影側に暗い調子を入れて終了。
水彩→光側の模様など弱かった部分を描き足し、クリアな印象になりました。
また、最後にヘタを描いたのは、先に色を置くと、ヘタより奥の模様を描くときに
にじんでしまったりするためです。
以下、※の部分の補足です?
水をあまり使わずに溶いた白で、光の部分を描きおこします。
乾いた上から、鮮やかな色をのせてまとめます。
アップで完成したものを比較。
水彩→絵の具が透けるということを利用して、紙の白を透かしたり、色を重ねたり模様の強弱を表現しています。
アクリル→間違っても直しが効くので、まずは色をおいてからやりとりしています。
このように、同じモチーフでも、使用する画材によってプロセスの組み立てが変化するのですね。
自分の使用する画材の特性を知って、より表現の幅を増やしていきましょう!
ちなみに、終了後のパレットは、こんなかんじ。
上が水彩、下がアクリルです。
今回は画材の性質の違いをわかりやすく確認するためにデモストをしましたが、
普段から講師が生徒と同じ課題をデモストしながら説明、指導する機会を多く設けています。
初心者にはもちろん、経験を積んでいる人にも刺激のある環境です。
まずは基礎科から、始めてみましょう!