日別アーカイブ: 2013年10月12日

日本画vsデザイン リンゴの着彩対決!!

こんにちは!新宿校基礎科講師のデザイン担当 吉村と日本画担当 佐々木です。

今、基礎科の月火水コースでは日本画とデザインの専門課題を制作中です。
そこで、今回は日本画の静物着彩で主に使用される「透明水彩」と、デザインの平面構成で主に使用される「アクリルガッシュ」 2つの画材の違いをご紹介したいとおもいます。

「透明水彩」も「アクリルガッシュ」も、両方チューブから出した絵の具を水で溶いて筆で塗る画材ですが、「透明水彩」は、文字通り、透明な性質を持っています。
・上から重ねて塗っても、下の色が透けて見える
・重ねて塗るほど色が濁る・暗くなっていく
・塗った部分が乾いても、水に濡れると溶ける
という特徴があります。

「アクリルガッシュ」は、その逆で、不透明な性質を持っているため
・上から重ねて塗ると、下の色を潰すことができる
・重ね塗りをしても色が濁らない
・一度乾くと水には溶けない
という特徴があります。

1009-10
上:水彩
下:アクリルガッシュ

では、この2つの画材を使用して、同じモチーフを描くと、どのような差がでてくるのでしょうか。
アクリルガッシュを吉村、透明水彩を佐々木が使用し、リンゴを描きくらべてみました!

 

1009-8

1009-1

左:アクリル 右:水彩

まずはデッサンの段階。
この時点で既に差が現れていますね。

アクリル→絵の具が不透明で細かく描いても見えなくなってしまうため、デッサンの段階では大きな形のみを捉えています。そのため、デッサンの所要時間はとても短いです。

水彩→絵の具が透けるため、鉛筆で描いた模様を、絵の具を塗っても活かすことが出来ます。そのため、デッサンの段階から、完成の時に活きてくるような描き込みを入れています。

 


1009-2

色に入りました。
この段階ではそれぞれ何を意識して色をおいているのでしょうか?

アクリル→まず、光の状況を見やすくするために、影の中の鮮やかな色、反射光の鈍い色、光側を整理して大きく色を置いた状態です。一番明るいところはまだ画用紙の白地を残してあります。
アクリルの場合は、しっかりと絵の具の厚みを出さないと濁りやすいため、最初は大きめの筆で全体に手を入れるように進めていきます。

水彩→こちらも光側は大きく残し、光と影の境目?影、反射光の暗さを入れています。
模様が目立つ境目の部分は、既に模様を描き込み始めています。
沢山手数を入れると濁ってドロドロになってしまうため、少ない手数で完成するよう、
手を入れていきます。

 


1009-3

全体に色が入った状態です

アクリル→光側が鈍い印象にならないように、色を混ぜすぎず、手数を少なめに色をおいています。

水彩→影側の暗く曇った感じに対して、光側は鮮やかで、クリアな色を作っておいています。
紙の白い色をすかして明るさを表現しています。

 


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表面の模様などの描写が始まりました

 


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完成一歩手前

アクリル→手を入れすぎて、立体感や光が潰れてきてしまいました。

水彩→光側の模様がまだ不足しているため、光があたってよく見える、クリアな印象が弱いです。


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完成です!

アクリル→⑤での潰れてしまった部分を白で描きおこして、立体感や光を取り戻しました。
また、最後に影側に暗い調子を入れて終了。

水彩→光側の模様など弱かった部分を描き足し、クリアな印象になりました。
また、最後にヘタを描いたのは、先に色を置くと、ヘタより奥の模様を描くときに
にじんでしまったりするためです。

 

以下、の部分の補足です?

1009-15
水をあまり使わずに溶いた白で、光の部分を描きおこします。
1009-16
乾いた上から、鮮やかな色をのせてまとめます。

 

 

アップで完成したものを比較。
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水彩→絵の具が透けるということを利用して、紙の白を透かしたり、色を重ねたり模様の強弱を表現しています。

アクリル→間違っても直しが効くので、まずは色をおいてからやりとりしています。

 

 

このように、同じモチーフでも、使用する画材によってプロセスの組み立てが変化するのですね。
自分の使用する画材の特性を知って、より表現の幅を増やしていきましょう!

 

ちなみに、終了後のパレットは、こんなかんじ。
1009-9

上が水彩、下がアクリルです。

今回は画材の性質の違いをわかりやすく確認するためにデモストをしましたが、
普段から講師が生徒と同じ課題をデモストしながら説明、指導する機会を多く設けています。

初心者にはもちろん、経験を積んでいる人にも刺激のある環境です。

まずは基礎科から、始めてみましょう!

映像科・公開コンクール情報

こんにちは。映像科講師の森田です。

いよいよ今週末13日(日)・14日(月)は映像科の全国公開実力コンクールです! 映像系学科の中で志願者も多く実技のレベルが高いとされる武蔵野美大映像学科型の模擬試験です。試験科目は実技(感覚テスト/150点)と専門試験(小論文orデッサン*/150点)に加えて学科(国語・英語/各100点)の4科目で合計500点満点。問題の形式については実際の試験と同じ内容になります。入試では毎年350~370点が合格最低ラインとなっていますが、さてこの時点で何点くらい取れるか!? 受験まで残り4ヶ月の対策の方向性を決める重要なポイントでもあります。

このブログを更新している段階では申し込みは既に締め切っているのですが……、公開模試ということもあり(今回受験する人のためにも、そうでない人のためにも、あるいは他の専攻が第一志望だけどもしかしたら併願で受験するかもしれない人のためにも)武蔵野美大映像学科の試験の形式をおさらいしておこうと思います。

●実技(感覚テスト/150点)
映像系学科の実技試験としてイメージされることの多い、マス目がうっすらと印刷されたB3画用紙に絵と文章で表現するという問題です。昨年は「風が吹いている」、一昨年は「椅子に座っている」と、キーワードから発想する問題が続いています。それ以前の年には人物のシルエットが印刷された図版が配布されたり、音を連想させる単語を複数組み合わせたり、という出題もありました。色鉛筆をメインの画材として使う点も、この形式ならではの特徴かもしれませんね。絵や文章で他の人が考えないようなアイディアを展開することも有効ですが、最終的に画面がきれいに見えるようレイアウトをまとめることがとても大切!(そしてこれが一番難しい)

●選択科目(小論文orデッサン*/150点)
武蔵美映像学科の小論文の大きな特徴として、実際に何かモチーフが渡されてそれをきっかけにして論文を書きます。ちなみに昨年は「コンパクトカメラ用の三脚」が一人一台渡されました。大きさ10cm程度のこの道具を見たり触ったりしながら、テーマの「固定するとは○○である」に答えるかたちでまとめます。またデッサンの方でも同じ素材や同じ構造のモチーフが出題されることがあり、昨年は小論文と全く同じ三脚でした。デッサンの方は基本的にオーソドックスな描写力が求められています。(*実際の試験では「数学」を選択することもできますが今回のコンクールでは実施していません。)

●学科(国語・英語/各100点)
そして忘れてはいけないのが学科。武蔵美はA・B両日程を受験すれば得点が高い方が採用されるということもあり、平均点はやや高めですが、それでもやはり高得点を採るためには学科の対策もしっかりやらなくてはいけません。教室で目安として話しているのは「目標は8割(実技や専門科目で多少余裕がある)」「ボーダーラインは7割(合格平均点は合計で350点以上)」「最低でも6割(実技、専門科目両方でかなりの高得点が必要)」です。これを聞くと暗い気持ちになる人もいるかもしれませんが、武蔵美は試験の出題形式がほとんど変わってないこともあり、対策はいくらでも可能。毎年この時期から巻き返す人もいます!!

◎コンクール2日目には全体での講評と、学科の対策も含めた「映像系学科進学ガイダンス」を開催します。武蔵美の入試、他大学の入試、直前に迫った推薦入試関連情報など、予定しています。ちなみにこちらの聴講だけであれば飛び込みでの参加も可能だということなので、たまたまこれを読んだ映像科を受験するかもしれない人、あれ14日の午後なら行けちゃうかも? という人は、ぜひ新宿美術学院の新宿校へ! お待ちしてます!

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(昨年の公開コンクールの様子)