カテゴリー別アーカイブ: 油絵科

オイル(画溶液)について② カテゴリー編

こんにちは。油絵科の関口です。
先週は冬期講習に入った途端、急に寒くなりましたね。インフルエンザも流行っているそうなので、皆さんも十分気を付けてお過ごし下さい。

さて、先週の続きです。
油絵に使うオイルは沢山ありすぎて難しいですよね。今日はカテゴリーに分けながら説明しようと思います。

オイル

 

?揮発性油
揮発精油
・テレピン
・ペトロール
文字通り揮発してしまう油で、乾くと何も残りません。水彩絵具でいう水みたいな存在です。
揮発する(乾く)スピードは早く、テレピンのみなら大抵10分以内に乾きます。
描き出しや絵具やオイルを希釈する(緩くする)のに用います。他にもダンマル等の樹脂を溶かすのにも使います。

 

?樹脂
樹脂には大きく分けて天然樹脂と合成樹脂があります。種類も色んなものがありますが、よく使われるものは二つになります。
樹脂
天然樹脂
・ダンマル樹脂溶液(ダンマルバニス)
ダンマル樹脂の役割は、乾燥を早める事、ツヤを出して膜を作る事、乾性油と混ぜて絵具の弾きを抑える事です。
性質としては乾燥が早く(揮発性油に溶かしているので、揮発性油が揮発すると大体乾く)乾いてもベタベタしています。完全に乾くと硬く固まりますので、柔軟性がありません。完全に乾いても、揮発性油には溶けてしまいます。乾燥後は若干黄ばむ傾向があります。これらの理由から単独で使うのはお勧めしません。

 

合成樹脂
・アルキドメディウム
合成樹脂のアルキド樹脂は乾燥が非常に早く、数時間で接触乾燥する為、速乾性のオイルやチューブ入りのメディウムにも多く使われています。乾燥後は若干黄ばんだり茶色っぽく変色する傾向がありますが、強度的には天然樹脂よりも若干の柔軟性があって比較的安定しており、変色を計算に入れれば十分に使えるオイルだと思います。特に受験生には欠かせないオイルなのではないでしょうか。個人的にはシッカチーフ(乾燥促進剤)をオイルに混ぜるよりはアルキド樹脂を混ぜた方が、色んな意味で安全な気がします。

 

?乾性油
油絵具には必ず入っている重要なオイルで、顔料を画面に定着する接着剤になります。但し受験生は、乾燥の遅い乾性油を使いこなすのはかなり難しいかもしれません。
乾性油とは文字通り「乾く性質のある油」の事を言います。ここで言う「乾く」とは、常温で酸素と結びついて固まり、再び元の液体に戻らない状態を指します。専門用語では酸化重合と言います。逆に不乾性油というのもあり、文字通りいつ迄経っても乾きません。サラダ油やオリーブ油等がそれに相当します。乾性油には種類も色々あり、サフラワー油、クルミ油、ヒマワリ油等も乾性油ですが、日本ではあまり出回っていません。
あと、粘度の強い(水飴状の)スタンドリンシードやサンシックンドリンシード、他にも普通のリンシードより乾きの早いボイルドリンシードという加工された乾性油もあります。乾性油に何を使うかは絵のタイプや自分の好みによります。

乾性油
・リンシード
・ポピー

・スタンドオイル

それぞれの特徴を簡単に説明すれば以下のようになります。

・リンシードオイル(亜麻仁油)
乾きが早い(と言っても1?3日程度)
固着力が強く堅牢
値段は比較的安い
乾燥後、黄変する(光に当てると元に戻って透明になるのでそんなに心配しなくても良い)

 

・ポピーオイル(芥子油)
乾きが遅い
堅牢性はリンシードに劣る
サラサラしている
乾燥後黄変しにくい(実際は少し黄変する)
値段が高い

・スタンドオイル(リンシードオイルを空気に触れさせずに加熱したもの)
乾きが遅い
粘度が強い(トローンとした水飴状)
黄変しにくい(実際は少し黄変する)

 

?乾燥促進剤
シッカチーフ?・シッカチーフ
シッカチーフは乾性油を早く乾かせる為に入れるものですが、少量で十分に効果があります。大抵はオイルの10%未満に抑えるように書かれています。
シワが寄ったり、ヒビ割れを起こしたり、自然発火したり、トラブルになる事が多いので、あまりお勧めしません。

 

簡単に書いたつもりなんですが、種類が多いのでどうしても長くなってしまいますね。もっと詳しくてマニアックな内容は、また今度アップしますね。

オイル(画溶液)について①

こんにちは。油絵科の関口です。先週から僕がブログを書いていますが、春までネタが無くなるまで頑張るつもりです。興味のある人は月曜日にこのブログを覗いてみて下さい。ただし忙しくて書けなかった時はゴメンナサイ。

 

さて、油絵を目指す人の中に、オイルの種類が多過ぎてどう使って良いか分からない・・・という人も多いのではないかと思います。今日はオイルの使い方に付いて書こうと思います。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
この何だか怪しい液体は全て画溶液で、一本ずつ瓶詰めする前の工場で作っている様子です。今から10年ほど前にマツダ絵具さんに学生を連れて工場見学に行った時に撮影したものです。今となっては貴重な一枚、という気がします。

 

原則

※まず前提として、油絵の描き方は千差万別であり「決まった描き方、正しい描き方」というものは存在しません。その中で「原則」というのもおかしな話かもしれませんが、自分で20年以上油絵を描いてきて、また色んな作品を見てきて、思う事を書いていきます。

 

①.オイルは必要に応じて、どうしても使わなくてはならない時のみ使用する。

意外に思うかもしれませんが、油絵を描いていてオイルが必要な時というのは限られています。
毎回オイルを付けて描くというイメージで描くと、薄塗りでベチャベチャな油絵になります。(絶対にやってはいけない、というものではありませんが…実はそれでちゃんとした絵を描く為には、それ相応の技術が必要になります)

 

②.?fat?over?lean(ファット?オーバー?リーン)
日本ではあまり馴染みの無い言葉ですが、欧米ではこういう表記を見掛けます。

・fat(ファット)とは「脂肪」とか「ぜい肉」という意味がありますが「デブの」という意味もあります。
・lean(リーン)とは「痩せている」という意味。
つまり、ガリガリに痩せている人の上にデブの人が乗っかっているイメージを思い描いて下さい。

最初はテレピンやペトロールなどの脂肪分の無い揮発性油で描き始め、次第にリンシードやポピーといった乾性油を多く入れていく。これがオイルの使い方の基本です。

 

③.揮発性油+樹脂+乾性油
オイルを調合する時、基本はこの三種類のカテゴリーの油を混ぜます。市販のペインティングオイルはこの三種類に乾燥促進剤(シッカチーフ)が入っています。

混合比は用途やタイミングによって異なります。
ペインティングオイルは便利なオイルですが、描き出しに使うにはベトベト過ぎて向きません。あれは中盤以降に使うオイルだと思って下さい。

僕のお勧め(?以降は乾きが遅いので受験には向きませんが、簡単なオイルの作り方)
?描き出しはテレピンのみ。
?前半はペインティングオイルに同量程度のテレピン油を加える。
?中盤はペインティングオイル。
?後半はペインティングオイルに少し乾性油(リンシードやポピー)を加える。

 

④.同じカテゴリーのオイルは混ぜない。
同じカテゴリー同士を混ぜても殆ど効果はありません。(混ぜていけない訳ではない)
混ぜるなら他のカテゴリーのオイルを混ぜて使いましょう。

カテゴリー
・揮発精油(テレピン・ペトロール・スパイクラベンダーオイルなど)
・樹脂(ダンマル・マスチックなどの天然樹脂、アルキドなどの合成樹脂)
・乾性油(リンシード・ポピー・サフラワーなどの生油、スタンド等の加工油)

それぞれの詳細は次回以降に説明します。

 

※おまけ

オイルの捨て方
使用していたオイルが絵具で濁ったり、余ったりして捨てる際は、布や紙に染み込ませ、必ず「水」を含ませてからゴミ箱に捨てて下さい。
オイルは布や紙に含ませて放置しておくと、自然発火する恐れがあります。

 

※おまけ2OLYMPUS DIGITAL CAMERA
10年ほど前の工場見学の一コマ。これまた貴重な一枚です。さあ誰だか分かるかな?この写真が削除される前に見られた人はラッキーです(笑)。

仲間について

こんにちは。油絵科の関口です。

 

さて、以前このブログでライバルについて書きましたが、今回は「仲間」について書こうと思います。

僕は新美で大学生時代から講師をしていますが、その傍らで20年以上に渡って作家活動を続けてこられた背景には「多くの仲間に支えられてきた」という実感があります。そしてその原点は、新美で浪人していた頃に遡ります。
当時僕を担当してくれていた先生は森一浩先生と広田稔先生という、非常に個性の強い方達でした。ウチのクラスでは、どういう訳か伝統的に「先生」という言い方はせず、「さん」付けで呼んでいましたので、浪人生の頃から「森さん、広田さん」と呼んでいました。
森さんと広田さん
※僕の浪人時代の恩師。左が森さんの作品。右が広田さんの作品。

僕と森さんは約20歳、広田さんとは10歳ほど年齢が離れており、18歳で上京してきた田舎者の自分に多大な影響を与えた二人になります。お二人のエピソードは数限りなくありますが、今回は真面目なものを一つだけ紹介し、思わず笑ってしまう様なお話はいつかまた書こうと思います。
僕が芸大に入った後、広田さんから言われた事が僕の中でずっと残っています。

「僕が絵を描き続けられてきたのは良い仲間がいたからだ。仲間がいなかったら、僕は絵をやめていたかもしれない」「お前らも仲間は大切にした方が良いぞ」

当時も今も広田さんという人は精力的に作品をつくり続けています。当時自宅兼アトリエにお邪魔する事も何回かありましたが、壁には常に数十枚という描きかけの絵が掛かっており、1週間後にまたお邪魔すると、殆んどが違う絵に入れ替わっているという、信じ難い光景を目にしてきました。当時から年間数100枚という作品を作り続けており、バイタリティーの塊のような人の口からポロッと溢れた弱音の様な言葉が、自分の中ではとても衝撃的でした。

それから20年以上の歳月が経過しましたが、その言葉を実感する事が何回も訪れました。

所詮「人間とは一人では生きていけない弱い存在」なのかも知れません。幸いな事に今の僕の周りには色んな仲間がいます。その多くは、出会った時には「お互いにこんなに長い付き合いになるとは思ってもいなかった」という様な人達ばかりです。
反面、かつてかなり深い付き合いをしていた人の中にも、今ではすっかり音信不通で、疎遠になってしまった人もいます。別に喧嘩別れした訳でもないのに・・・。

仮に自分の人生に「道」というものが存在するとしたら、仲間というのはその道中で出会った人達の一部なんだと思います。反対方向からすれ違う人もいれば、少しの間だけ同じ道のりを行く人もいます。すれ違う人は、自分の人生の中でのキャスティングでは、通行人A・B位の位置づけでしかありません。同じ道のりを行く人でも、歩むスピードが異なる事もあります。仮に同じスピードで歩んでいても次の交差点で別の方向へ行く事もあります。

道中、意気投合した人とは、知らず知らずの内にスピードを合わせたり、別れてもまた同じ道に現れたり、相手の道の方へ自分の方から現れたりしながら、お互いの人生の中で重要なキャストになっていくのです。
今の僕には、新美の浪人中に出会った人で、とても大切でかけがえの無い仲間が何人もいます。
その時には分からなくても、今隣にいるその人は、将来のあなたにとって大切な仲間になっているかもしれません。

 

さて、最後に宣伝で申し訳ありませんが、12月11日より横浜の石川町のギャラリーARKでグループ展を行いますのでご案内致します。
14animato
この展覧会の名前はAnimato(アニマート)展と言います。Animatoとはイタリア語で”生き生きとした”とか、”元気の良い”という意味だそうで、ギャラリーのオーナーが名前を付けてくれました。この展覧会、実に今年で17回目になります。小さなギャラリーですが、100点以上の作品が所狭しと並んでいるので、きっと楽しめると思います。上で書いた広田さんも一緒に出品していますし、僕にとってかけがえの無い仲間が何人もいますので、興味のある方は是非見に来て下さい。

http://ark.art-sq.com?

武蔵野美術大学 入試説明会

こんにちは、油絵科 松田です。

先週の金曜日、新美で武蔵野美術大学油絵科の入試説明会が開催されました。

今年は、丸山直文先生にお越し頂いたのですが、品の良い穏やかな方でしたね。
丸山先生の作品は新美の学生にも好評でして、図書コーナーの画集は貸し出し頻度が高い気がします。
制作の段階でも参考にする生徒を時々見かけますが、素材の扱い方は、なかなか上手く取り入れらないようですね。
布にアクリルという素材で描いていらっしゃる丸山先生の作品を参考に、キャンバスと油彩で格闘している生徒をみると微笑ましいもので、後ろで静かに応援してます。
素材の関係性や表現内容の必然性が違うものですから、なかなか上手くはいかないけれど、失敗やアクシデントから不意に成功へ持ち込む生徒もたまにいます。
制作への入り方はどの場所からでも、最終的に本人のイメージへ転化された作品は評価してあげたいですね。  そんな時は、生徒の制作への入り口となって頂いた丸山先生の作品にも人知れず感謝する事があります。

今回も、わざわざ遠方から新美の生徒のためにお越し頂いた武蔵野美術大学関係者の方々、丸山先生、本当にありがとうございました。
2014.ムサビ説明会1JPG

近年は少しずつですが、入試の変更点があるようです。
受験される学生さんは、ご自分の受験校へのリサーチをお忘れなく!

公開コンクールが終了して

油絵科 箱岩です。

先日の公開コンクールに、ご参加いただいた皆さん、お疲れ様でした。油彩&デッサンのダブル受講をされた皆さんは疲れがたまったことでしょう。外部からの受講者も多数有り、大変活気あるコンクールでしたね。

僕も2週連続の日曜出勤と、別件の仕事でのトラブルが立て込み、必要以上に充実した日々でした。

しかし、ストレスの捌け口が作れない日々が続いてしまうと、メンタルの弱い私はすぐ体調を崩します。まんまと、鼻風邪をひいてノックアウト寸前の日曜日でした。お恥ずかしいw

それでもせっかくの休みなので、一切、心を「空」にして水辺の景色を楽しんできましたよ。

IMG_1963

気持ちの切り替えの方法は人それぞれですが、いろいろと悩まずに何かしら行動を起こすことで脳はポジティブ・シンキングへと切り替えやすくなるそうです。メンタルが疲れたなと感じたら、思いつきのワンアクションを心がけると良いかも知れませんね。

さて、先日のコンクールで感じたことを今日の本題にしたいと思います。

率直な感想として、受験生の大多数の考えが窺い知れて、個人的に大変参考になりました。

講評しながら感じたのは、イメージや、テーマに対する取り組みの甘さです。

大多数の人が「そこそこのイメージ、そこそこのコンセプトでも、絵的な部分でクオリティーを上げりゃ良いんでしょ」と言わんばかりの絵を描いているなぁと感じました。もちろんその考えでは、構図も、モティーフの使い方も消極的で希薄になってしまいがちです。

上位であっても、作品の第一印象がそうなっている作品は「伸びしろ」が感じられず、逆にそこが充実している作品は、技術度返しに高評価につながっていたのではと思います。

とある生徒の個別講評で、本人の絵が上位だったこともあり、褒めるべき所から話し始めたのですが、どうも本人の顔色が冴えないので、???となった私は質問してみました。

「あれれ、表情が曇ってるね。上位だったけど何か思いどうりにいかなかったのかな?」

すると、ウンとうなずいて自分の最初のイメージやコンセプトを話してくれ(正直、内容が難しく、表現するのは厳しかった様子)て、自分で納得できなかったのに高評価でも喜べないということのようでした。

だとすると私の褒め言葉はさぞ追い討ちをかける事になったでしょう。本当に、ごめんなさい。

皆さんこの方はなんと現役高校3年生ですよ!!本当に末恐ろしい「アートの鬼」の出現です。受験やコンクールの順位よりも、今自分が表現したい事に、これほど本気でいられる精神の強さ。本当に素晴らしいと思いました。

常々、担当の生徒に話していることですが、試験さえ突破すればどんな方法でも良い。そんな薄っぺらな即興の受験対策で大好きな絵の世界を汚してしまっていいのでしょうか?

確かに受験は競争です。けれども、美術は盲目的な修行の果てに体得する技術ではないのです。

努力とは、目標を実現するための思考量です。「すればいい」のでも「やらなければいけない」のでもありません。受験は、いうなれば絵画という遊びにおいて、誰が一番、絵画好きであるかの意地を比べていると思ってもらえばいいのです。新美では、そんな熱い想いの実現と、それを認めさせて志望大学合格を勝ち取る。この欲張りな目標を意地でも実現したいと思って指導しています。

冬の到来を予感させる寒さが続きますが、インプット、アウトプットのバランスを整えて健全な心を手に入れるのと同時に、今一度、アートに生きたいと願う皆さんの「本気」を表現の原動力として出してしまえばいいのじゃないかと思います。

最近どうもお説教くさくて駄目ですね。次回は何か面白いネタが用意できるといいのですがw