カテゴリー別アーカイブ: 油絵科

油絵の具の色について(黄色編)

こんにちは。油絵科の関口です。

皆さんは黄色い絵と言って、まず思い浮かぶのはゴッホのひまわりでしょうか?今日はもう少し古い時代の黄色について、お話しようと思います。
ひまわり
ゴッホ「ひまわり」1989年

 

彩度の高い赤や青は、ルネサンスの油絵の中に用いられていましたが、当時の油絵をよく見ると、黄色で鮮やかなものは殆ど見受けられません。黄色の代わりに金箔を使っていたのではないか?と思われます。
当時の黄色は、イエローオーカーやローシェンナという黄土色が主体で、文字通り黄色っぽい土から作られていました。イエローオーカーの歴史は古く、世界中で古代から使われていた事が確認されています。レオナルドとラファエロ
レオナルド(左)もラファエロ(右)も鮮やかな黄色は使用していません。

 

イタリア北部のヴェネツィア派と呼ばれる人達の中には、黄色を積極的に取り入れた作品が見受けられます。この黄色はオーピメントという、硫化砒素(猛毒!)を用いている様です。この色は現在使われていません。博士たちと議論するキリスト1560
ヴェロネーゼ「博士たちと議論するキリスト」1560年

エルグレコ
若い頃にヴェネツィア派で修行した、エル・グレコも黄色を積極的に使っています。※ 調べてみましたが、使用顔料は分かりませんでした。

 

比較的鮮やかな黄色が絵の中で使われる様になったのは、17世紀に入ってからになります。中でも人々の印象に残るのはフェルメールではないでしょうか。
古い文献を読むと、フェルメールの黄色にはマシコットという、鉛から作られたものも使われていた…というものが見受けられます。しかし実際は鉛錫黄(Lead?Tin?Yellow)という色だった様です。この色も現在は使われていません。手紙を書く女1665 - 1666
フェルメール「手紙を書く女」1665?66年

 

 

さて冒頭に書いた、ゴッホのひまわりですが、ゴッホの黄色は、クロムイエローだったと伝えられています。クロムイエローは安価ですが、耐候性が悪く、黒変する上にクロム酸鉛を使用しているので毒性が強い…という何とも厄介な色です。独特な重みがあって、綺麗な色なんですが、変色してしまうのが何とも残念です。
現在使われている不透明色の黄色で最も優れているのは、カドミウムイエローだと思います。カドミウムイエローも毒性はありますが、無機顔料で不透明な黄色には殆ど毒性があり、代替する顔料は見つかっていない様です。

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ルドン「昼」1910年  フォンフロワド修道院図書室壁画

明るくて華やかな色なのに、毒がある。・・・油絵具の黄色とは、実はそんな色なのです。

油絵科以外も必見かも?測り棒の落とし穴

こんにちは、油絵科昼間部講師の仲間です。
「この前初めて気付きました。」と海老澤先生が嬉しそうにしていました。
「固定観念は恐ろしいものです。」あれ?いつも言ってることだよなと思いつつ聞いてみると、とても面白い話でしたのでブログのネタに使わせてもらいます。(本人はめんどうくさがってなかなかブログを書いてくれないので代わりに私が投稿させていただきます。;;)

以下海老澤先生談

デッサンで長さを測るとき、スポークを使うことがありますよね。上級者になると殆ど使いませんが……。
腕を曲げて測っていると、その都度ごとに距離が違うので正確には測れませんよね。ですから先生に「腕をしっかりと伸ばして測りましょう。」と、言われます。そのようにどこでも教えていると思います。石膏像でも頭の大きさが、体に比べて何頭身あるか測る場合があります。また頭部の横幅と下部の横幅を比べる場合などもあります。

それを信じると形が大きく狂うことを発見しました。

普段は同じ長さの(若くはそうだと思っている)物を測りませんよね、たまたま木炭紙を目線と直角にしようと思い、上下にパースがつかないように木炭紙の上と下の辺の幅を測りました。しかし、どう見ても直角になっていない。そのようなことがあり、アトリエ内の棚を使って確認してみました。中央の線を目線の高さに合わせ、上下の辺の幅にパースをつけないようにしてスポークで測ってみたところ、底辺の幅はものの大きさ、距離によって違いますが1割2割くらいと長くなります。これではおおよそのあたりにもなりません。

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そこでよく考えたら腕の回転軸の肩は眼よりかなり下にあることにより、下部を測るとき、腕を伸ばして安定した状態で測っても、眼からの距離がじょうぶの時よりかなり長くなります。
この計測方法ですと、下部の形が大きめに狂うことになります。その当たり前のことに今更ながら気付きました。

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因に、デスケルは見上げの時と見下げの時はパースが付き、糸で吊るされた5円玉では両脇の垂直線と一致しません。学生の頃からデッサンの基本でよく言われている計測方法は見上げ見下げの場合は違うと分かっていました。
しかしスポークの長さの比例関係の計測がまったく正確ではないとは……。
要するに、形を計ったから正確なはずだという思い込みが形を狂わせます。自分の目を鍛えて固定観念、先入観、錯覚に騙されないようデッサン力をつけて下さい。
以上海老澤先生談

とのことです。いかがでしたか、私は驚いてしまいスポークでズレを測る?ことがちょっとしたブームになりました。

それでは夏期講習も間もなく終わりとなりますが、充実した夏は過ごせたでしょうか?講習会参加者は短い期間ながらも着実に力をつけていく様子が目に見えて刺激的です。25日からは2学期までお休みがありますね。ゆっくりと体を休めてください。

それでは新学期もシンビでお待ちしております。

油絵科・夏のSPイベント

こんにちは。油絵科の関口です。
暑い日が続いていますが、夜に耳を澄ませば、コオロギや秋の虫達の鳴き声が聴こえるようになりました。もう秋がすぐそこまで来ているんですね。

 

さて、新宿校の油絵科では、例年の夏期講習会と違う試みとして、各期の最終課題を全クラス合同で、作品に投票するというイベントを行いました。
クラスで課題内容が違うので、課題毎に一番良いと思うものに対してシールを貼っていく(自分の作品以外に投票)というルールで、講師も生徒も投票に参加。(講師と生徒は違う色のシールを貼りました)

投票数を数えて、得票数が多いのが上位・・・というものではなく、講師が選んだ作品について何を基準に選んだのかをコメントする。というスタイルで、まずは全体講評。その後、各クラスに別れて通常通りの講評を行いました。全体講評風景

投票では生徒に人気のあるものと、先生に人気のある作品がズレていたり、突拍子もない作品が選ばれたり(笑)して、非常に面白いイベントになったと思います。

仲間講評
そういえば僕が高校生の時、新美で先生の講評を聞いていると「何であんな下手な絵を褒めるんだろう?」とか「あの浪人生は凄く上手いのに、何であんなにボロクソに言われるんだろう?」と疑問に思った事が多々ありました。(当時はかなり癖の強い先生や、怖い先生もいたのです)
当時の自分を振り返ると、まだ絵に対する知識も経験も乏しく、素人同然の見方しか出来ていなかった…という事です。年輪を重ね、人生で色んな経験を積む事で、絵の見方も幅広くなっていくのだと思います。

今の生徒も、講師の選んだ作品に対して、何枚かは「え?? あの先生、それ選んじゃうの??マジか?」とか思ったのではないでしょうか(笑)。

宮本講評
でも、僕らは至って真剣に作品を選んでいるつもりです。全体講評で、その作品が選ばれた理由を聞いて、納得いったのではないかと思います。
・・・え?聞いても納得いってない? そういう人でも、歳を取れば分かるようになりますよ。・・・多分(笑)。
まぁそれは別として、自分の作品が他人から選ばれる(この中で一番好き!と思ってもらえる)というのは、皆にとっては制作の励みになったのではないでしょうか?

前期と中期に行ったこのイベント、後期も最終日に行いますので、乞うご期待下さい。

 

 

さて、もう一つ。最後は宣伝です。

8月26日(水)新美では二学期入学を考えている人(高卒生対象)に対して、二学期特待生試験があります。試験とは言っても、持参作品数点(油絵科は原則としてデッサン5点、油絵5点)と、面接によるもので、学科試験もありません。
経済的な面も考慮して審査しますので、実力や学科に自信が無い人でも、これから二学期入学を考えている人は受けてみては如何でしょうか?

http://www.art-shinbi.com/tokutai/images/tokutai2015-2.pdf?

 

まだまだ暑い日が続きそうですので、夏バテしない様に元気にこの夏を乗り切りましょう?

 

油絵具の色ついて(青色編)

こんにちは。油絵科の関口です。
前回はルネサンスの頃に油絵に使われていた「赤」について書きましたが、今日は「青」について書こうと思います。

現在使われている、コバルトブルー、セルリアンブルーなどのコバルトを原料としている青色顔料は19世紀の中頃から使われる様になりました。プルシャンブルーは18世紀から使われています。
名前は色んなものが付いていますが、サファイアブルーやコンポーズブルーなどのフタロシアニン系の混色でできる青も20世紀に入ってからの絵の具です。

 

ウルトラマリンブルー
この色は、昔はラピスラズリから採取されていました。ヨーロッパでは殆ど取れない鉱石でしたので、アフガニスタンや西アジアから「海(地中海)を越えて来た色」として伝えられ、それで「ウルトラマリン」という名前が付いたそうです。原石は綺麗な青い色をしていますが、実はかなり不純物が多く、石を砕いただけでは綺麗な青い顔料になりません。cristaux de lazurite sur calcite (Afghanistan)
ラピスラズリの鉱石

チェンニーニの「絵画論」の中で紹介されている精製法を簡単に説明すると、粉砕したラピスラズリを油や樹脂で練ってパテを作り、薄めた灰汁の中で揉むと青い顔料だけ抽出されるそうです。ヨーロッパでは輸入に頼るしかなく、精製法が複雑な為、高価な色として知られ、17世紀では何と金よりも高価だったそうです。
先日の芸大説明会で技法材料研究室を訪れた時、奥の方にラピスラズリの鉱石と青い色の塗布サンプルが置かれていたので、気になって助手の人に尋ねると、やはりチェンニーニの技法で天然のウルトラマリンを作ったそうです。

その昔、この青をふんだんに使えたのは、人気と実力のある画家だけでした。初期ルネサンスを代表する巨匠、ジオットは壁画に惜しみなくラピスラズリを使いました。
PadovaScrovegni1305
パドヴァにあるスクロヴェーニ礼拝堂、ジオットによるフレスコ画 (1305年頃)

真珠の首飾りの少女1655
17世紀の画家、フェルメールの「真珠の首飾りの少女」(1655年頃) のターバンのところに使われている青もラピスラズリです。

ちなみに現在使われているウルトラマリンは人工のもので、化学組成は殆ど天然のものと同じです。人工のウルトラマリンの方が不純物がない分、色が鮮やか。粒子が細かく、均一で絵の具にしやすい。化学反応で作れるので安価です。僕のオススメはマツダスーパーのフレンチウルトラマリン。通常のウルトラマリンよりもちょっと高いですが、発色の良さは国内外にある他のどのメーカーと比較しても群を抜いており、本当に絶品です。

 

よくウルトラマリンブルーを和名で「群青」と表現する事がありますが、ラピスラズリの和名は「青金石」とか「瑠璃」と表現します。
日本画で使われている「岩群青」という色はアズライト(藍銅鉱:らんどうこう)と言われる鉱石を砕いたもので別の色です。昔は日本にも豊富なアズライトの鉱床がありましたが、今では取り尽くしてしまったため、現在では輸入に頼るしかなく、かなり高価という事です。
6azurite2-hewlin
海外で採取されたアズライトの鉱石

 

ここのところず?っと暑い日が続いていましたので、青い色で少しでも爽やかな気分を味わってもらえたなら幸いです。夏バテしないように、しっかりご飯を食べて、元気に暑い夏を乗り切りましょう!

油絵科 現役生 合格体験記

こんにちは。学生課です。
先日、2015年度に芸大油画に現役合格をした宍倉君と、油絵科夜間部の阿部先生とで対談を行いました。
今まさに夏期講習中で、色々悩んでいる現役生も多いのではないですか?
新美HP特設サイトで、対談の様子や、宍倉君の夏から合格にかけての作品を紹介しています。
みんな悩んだり試行錯誤しながら、制作しているんですね、、! ぜひご覧ください。

http://www.art-shinbi.com/event/abura_taidan//

対談

「芸大油画 12年連続合格No.1の新美が解く、芸大油画」特設サイトはこちらから。
http://www.art-shinbi.com/event/oil_painting/

今後もいろいろな特集を組んでいきます!
たまに新美HPをのぞいてみてくださいね!