日別アーカイブ: 2020年4月24日

絵の具の固さ(デザイン工芸・初級の知識):渋谷校

こんにちは渋谷校です。

家庭での自宅学習これから平面制作などの際、
色々わからないなどという人はいますよね?

絵の具を塗るときの絵の具の固さ、どのぐらいがちょうどよいのかわからないと悩んでいる人はいませんか?
また、塗りが汚い、ムラムラに塗れてしまうなど仕事の質が気になって日頃から睡眠不足に陥ってしまう受験生は多いと思います。
そこで今回は絵の具について、特に絵の具の薄め方、固さや混色時の知識についてお話しします。

まずは目次
●絵の具をませるときの固さはどのぐらい?
●絵の具を混ぜる時に必要な道具
●絵の具の混ぜ方!
●混色は何故するのか?
●おまけ:彩度を下げる混色の方法

では、本編です。

●絵の具をませるときの固さはどのぐらい?

はっきり言います。どんな絵を描くのか、また絵の具の種類と色によって違うので一概には教えられません…

では話にならないので少し絞ってお話します、今回はベタ塗りのときのコツに絞ってお伝えします。平面構成もはじめのうちはベタ塗りの平面の制作から入ることも多いと思いますし、私立の入試などでは色面の塗りの美しさが大事なのでベタ塗りの場合にこだわって話します。

平面でベタ塗りをする際に絵の具が固すぎると凸凹したりガサガサしたり、逆に薄すぎると透けてしまってムラになるなど、それでも色によって多少は固さは変わるのですが、失敗しない大体の固さを教えます。
固さは柔らかすぎず、薄すすぎず。ズバリ、ケチャップぐらい(ソースと言う人もいますが)

ケチャップの固さが近いと思います。(写真のケチャップだいぶ中身減っていますね)。
固さの目安は絵皿に溶いた絵の具を入れ、自分の頭の上に持っていって、絵皿を一瞬裏返しに出来るぐらいの固さ。
薄すぎると頭に絵の具がかかってしまい危険すぎ、固すぎると全然危険な感じもしない固さではなく、ちょっと危険を感じるぐらいの固さです。分かるかな?

・また面相などでラインを引くときは面を塗るときよりも水が多いほうが良い。
・白場に薄い色を塗るときは水が多めでも大丈夫な事が多い。
・塗りムラになりやすい色は少し固めにする。
など状況によって変わるので、そのあたりは無責任な言い方ですが経験して覚えましょう。
さらにきれいに塗るには絵の具をケチらず多めに作りましょう。使用する量の倍ぐらい作ると綺麗に仕上がります。この作る絵の具の量も大事なポイントです。少ない絵の具を一生懸命塗ろうとしたり、足りなくなりそうになって水で薄めて量を増やそうとする行為が塗りの汚さに繋がります。ケチは平面の質を下げます、考え方を変えればお金をかければ試験での点数がもらえるという簡単な方法と思って試してみましょう。
まずは、経験です、次の章は道具についてです。

●絵の具を混ぜる時に必要な道具

まず絵の具、これは説明いらないですね。

ちなみにアクリル絵具には透明絵具と不透明絵具の2種類があります。受験で多く使用されているのは不透明絵具の方でアクリルガッシュなどと呼ばれるものです。ガッシュ(Gouache)と表記されているものを選びましょう。
ただし、アクリルではなく樹脂などを使用したガッシュ(ポスターカラーのようなもの)などもあるので間違わないようにしましょう。またこの2種は混ぜて使用しないほうが良いです。
透明絵具にはリキテックス(リキテックスにもガッシュの種類もあります)やホルベインのアクリラ(ガッシュと書いていないもの)などがあります。芸大系の平面などには使用してみる方法もあります。これらはアクリルガッシュとは混ぜて使用することも可能ですが基本混ぜずに使いましょう。



描いている途中に面倒で面相筆や丸筆で混ぜたりしていませんか?効率的に混ぜるにはこの様な筆先が平らな平筆がベストです。絵具の量などで太さを使い分けましょう。傷んで使用しなくなった筆でもある程度は使えます。
平筆が嫌ならば指で混ぜましょう。アクリルガッシュもないポスターカラー時代の昔の人は指で混ぜていました、筆だと気泡が出るので良くないのだそうです。でも現代の受験生はきちんと平筆を使用しましょう。

絵皿

絵皿はまず大きいものじゃなくて良いので、同じ大きさのものを数多く揃えましょう。直径7cm程度のもので良いです。白い陶器製のものを選びましょう。白色という理由は混色時に色が確認しやすいからです。家から持ってきた醤油皿のようなもので代用してはいけません。プラスチック製のものもだめです。プラスチックは軽い点はメリットですが、段々汚れて色を確認しにくくくなるという点がまるでダメです。
枚数が足りないとその都度、絵皿を洗いに行く行為が発生してタイムロスになるので30枚かそれ以上は揃えましょう。またグラデーションで色数を増やしたい時のために菊皿、下地用でいっぱい絵の具を作りたい時は大きめの絵皿など用途に合わせてバージョンアップするのも良いでしょう。

少量の絵具を混ぜる場合にはこのようなペーパーパレットを使用しても良いでしょう。

水差し

絵の具を薄めるための水を補給するための道具です。つる首ボトルなどとも呼ばれています。
よく筆洗の水を使って薄める人を見かけます。筆を洗った筆洗の水は汚れているので筆洗の水を使用して混色すると無駄な色が混ざり発色が悪くなります。そのようなことにも気をつかえない受験生の絵は講評時大体下段に下がってしまいます。気をつけましょう。
このようなものであればそれほどこだわりはありません。きれいな水が必要な量供給しやすい陽気であればよいです。つる首の根元の色は自分の好きな色を選択しましょう。

ケチャップ

これは絵を描くときには使用しません。先程の固さの説明で使用した写真です。

●絵の具の混ぜ方
絵皿に必要な量の絵の具と、ちょうどよい分量の水を入れ平筆でグルグル混ぜます。

必ず一つの皿で1色。全て混ぜる。隅っこに混ざっていない絵の具や、水で溶いていない固さの違う絵の具が残らないように心を込めて丁寧に溶きましょう。
渋谷校では混ぜている最中に絵具をこぼし机を汚したまま帰宅することは許していません。汚した場合はきれいに机を拭いて帰りましょう。

●混色は何故するのか?
人はなぜ混色をするのか?それは欲しい色を作るためです。
もちろんチューブのままの色を使用することもあります。ただ普通の受験生は大体ターナーのアクリルガッシュを使っています。なのでそのままの色を使ってばかりいると他の受験生と構成の色が似てしまい個性が感じにくくなります。微妙な色相の色で制作したほうが個性的に見えやすいということもあります。また平面構成では彩度対比を使用した色彩計画というのもあり、例えば高彩度の色のそばに低彩度の色を添えて色彩構成すると、高彩度の色の発色が単色で使用したときよりも冴えてみせることも出来ます(言っていることが難しくて説明変ですね)。ですから色の対比を利用して同じ絵の具を使用している他の受験生よりも色が冴えた画面づくりが出来るという、これは混色で自由に色を作るということと、色彩の知識や経験、少しのセンスが必要になります。このようなことを意識して色彩計画をやっていきたいですね。
このあたりの説明はブログ程度で簡単に出来るはずはないので渋谷校に説明を聞きに来てください。

●おまけ:彩度を下げる混色の方法
初心者で混色時に彩度を下げる方法がよくわからないな?などという受験生はいませんか?
渋谷校では、こういう時期なので今は添削授業やオンライン授業などを行っています。そこで同じような質問をした生徒に対して資料を作ったので、おまけで彩度を下げる方法の解説もしてみたいと思います。

1)無彩色を混ぜて彩度を落とす

無彩色(黒、白、グレー)を混ぜれば彩度が落ちます。これはわかりやすいですよね。同明度のグレーを混ぜない場合は明度も変化します。ニュートラルなグレーを混ぜれば色相は変化しません。

2)有彩色を混ぜて彩度を落とす

有彩色同士を混色して彩度を落とすには、まずは色の3原色の説明からです。色材の3原色はこの場合(赤・黄・青)が3原色になります。レッド・シアン・マゼンタなどとカタカナを使って説明する人がいますが、カタカナの色はどちらかというと印刷やカラーインクなどの色材の場合に当てはまります。これらは染料の区分ですね。
アクリルガッシュなどは染料ではなく顔料系の色材なのでどちらかというと感覚的に普通の赤・黄・青というように考えたほうがわかりやすいかと思います。この3原色を混ぜると黒になるという理屈は知っていますよね。有彩色の混色では、この法則を利用して混色を意識すればよいのです。
つまり3原色が混ざる混色、なるべく色相環のなかで位置の遠い色(補色や反対色)どうしを混色すると勝手に彩度は下がってくれます。
反対に彩度を落としたくない場合は、色相環で距離感の近いものを混色すれば彩度が下がりにくいのです。例えば赤と黄色の混色や、オレンジと黄色などの混色であれば、青色が混ざってこないので彩度は落ちにくい混色となります(理屈上の話なので実際の絵具では彩度が落ちる場合ももあります)。ただし、気をつけてほしいのが近い色相でも例えば青よりの紫(赤と青がある)と青緑(青と黄がある)の混色では3原色が混ざってしまうので彩度が落ちます。このようにまずは色の理論をしっかり勉強することは大事だと思います。
デザイン科で色彩論を勉強したいのであればヨハネス・イッテンの色彩論などがとてもためになると思います。間違ってもゲーテの色彩論を手に取らないようにする注意は必要です。アリストテレスやシュタイナーの色彩論よりはマシですが。
また実際に理論を勉強しても実践が伴わないと受験やデザイナーを目指すの人であれば意味のない知識となってしまいますので、まずは絵具でどんどん実験していきましょう。日頃の平面構成などで失敗しても良いので実験していきましょう。

これで絵具混色マスターに近づくはずだと思います。
さて、お役に立てたでしょうか。また、なにか上げて欲しい題材がありましたら渋谷校までリクエストください。出来る範囲で掲載していけたらと思います。