日別アーカイブ: 2017年5月1日

終了間近!エリザベス・ペイトン展

こんにちは。油絵科の関口です。
ゴールデンウィークなのでお出かけしたいけど、どこも混雑しているから家でノンビリ…という人も多いと思います。今日はそんなあなたにお勧めの展覧会を紹介します。

品川駅から少し離れた所(徒歩15分くらい)に原美術館という美術館があるのをご存知でしょうか?ちょっと現代的で通好みの企画が多い美術館です。IMG_5575
展示は現代的なのに、外観は昔ながらの塀に囲まれた、何だか時代劇にも登場しそうな入り口です。すぐ近くにミャンマーの大使館もあります。

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美術館の裏は御殿山庭園。小さいながらも結構落ち着ける場所です。

今そこでエリザベス・ペイトン展が開催されています。僕は4月の平日に訪れましたが、割と空いていて、ジックリと見る事ができました。
エリザベス・ペイトンは1965年生まれのアメリカ人女性作家。新美にもペイトンの画集がありますので、油絵科の学生なら見た事のある人もいると思います。日本ではあまり紹介されてこなかったという事で、日本の美術館では初個展だそうです。僕も本物を見るのは初めてでした。作品の内容に関しては、それぞれ好みもあると思うので、今日はちょっと変わった視点から紹介してみようと思います。

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ペイトンの作品はどれもかなり小さく、キャンバスやパネルに描かれた作品は、殆どF6号以下のサイズでした。紙に描かれた作品以外は、ジェッソの様なアクリル系の白い下地材をナイフで塗り、その上から絵具の吸収を抑える為と思われる半透明なメディウム(これも恐らくアクリル系)が塗られているのが、側面を見る事で分かります。ペイトンはキャンバス地の凹凸は好まないタイプなのでしょう。でもナイフで下地材を乗せた後にサンドペーパーなどで磨いたりはしません。パネルのヘリからはみ出た塗料もそのままで、きっちりとした四角の作品ではないのも特徴です。
制作を始めるにあたって、テーブルの上にパネルを並べて下地作りをする事が彼女のルーティーンになっている事が伺えました。

作品は油絵具で制作している様ですが、白いところは下地の白さを活かしている事が多く、暗さで描いていくデッサンや水彩に近い構造になっています。肌の表現を除いて、全体的に殆どホワイトを使っていませんでした。この事から、色が濁るのを嫌うタイプなのだと思います。
使用している筆は丸筆が中心で、数少ない大作には、何やらスポンジ状の描画材を用いて描かれているものが見受けられました。筆致も一度画面上で止めてから離しているのが特徴です。習字でいうと「払う」タッチというものが、殆どありません。筆運びは結構早い方だと思うので、こういうのは割と珍しいタイプだと思います。理由はわかりませんが、何か特別な拘りがありのかもしれませんね。WW9-Peyton_10
この絵の写真では分かりにくいと思いますが、背景の青いタッチは明らかに筆とは違うもので描かれていました。

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他にも紙に描かれたパステルの作品(左)や水彩(右)なども面白い作品が多いです。水彩でもしっかりとタッチを止めています。

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左が今回来ていたペイトンの作品で、右がドラクロワの「アルジェの女たち」。オマージュなので原画を知っているとより一層楽しめます。この他にクールベのオマージュもありました。

かなりマニアックな見方を紹介しましたが、探偵になった気分で、作品の隅々までよく観察していくと、色々な発見があるので、どんな展覧会でも結構楽しめめるものです。まだご覧になっていない方は、会期が5月7日(日)迄です。今ならまだ間に合いますよ。