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木炭デッサン。奴隷の制作プロセス。

こんにちは。彫刻科の小川原です。今回は奴隷を描いてみました。
奴隷とかそろそろ試験で出るんじゃないかな??。

さ、スタートです。今回はデスケルも測り棒も、計測具は一切使わずに目で見た情報だけで描いてみました!
まずは描き出しです。クロッキー的に全体像を捉えていきます。顔もこの段階から似せていく意識でがっちり当てはめていきます。大事なのは画面全体の意識。それとともに画面外にあるはずの体の意識(見えない部分)まで考えられると印象が合わせられるようになってきます。この作品をどういうテンポで進めていくか、また、今後のデッサンの構築の仕方もここで見極めます。
やはり形が合わないタイプの人は殆どの場合ここでつまずいているんじゃないかな?この段階で見極めが出来ていたらそれはもうほとんど出来レースのようなものです。皆!クロッキーを頑張ろう!
10分経過写真。1.1
次に大きく光を捉えて調子のベースとなる炭を乗せていきます。全体の形が一貫性を持った光源設定のもとイメージ出来ているかが重要です。この段階はあくまでベースなので、色幅を増やすべく真っ白から真っ黒まですべて使い切る感じで行きたいです。但しここで如何に光をバランスよく整理できるかも大事なので色は3色(明、中、暗)くらいにザックリとしたものでよいです。調子がちぐはぐになる人、空間が出せない人はこの辺りの作業から安定性が悪くなっていくように思います。
15分経過写真。
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次はガーゼを使って空間(奥行き、深さ)を作っていきます。基本は遠い所と下の面をおさえます。近いところはほとんど触れていません。ほとんど、といったのは必ずしも全く触れないわけではないからです。よく見るとある部分ごとには触れているとこが分かるはずです。空間も作りますが、質感表現のベースも兼ねています。表現に幅を持たせるにはそうしたことにも配慮が必要です。但し、これはテクニックというより感性の問題でもあるので経験を重ねないと分からないことかも知れません。デッサンも「作品」として見れるようになると、自分の作品の中で良い悪いの判断がつくようになるし、どうしていきたいかも具体的になっていきます。ただ単に習ったことを放出しているだけでは本当につまらない作品になってしまうので、自分自身の意志をしっかり持つことも大事です。その上で「美術作品」としての空気読みができるまでの経験を重ねてください。意志を持つということが「自分がよければいい」では最終的にはダメで、自分の意志で作品を見た人の心を動かせるくらいのものにしていく必要があります。自分がよければ何でもいいやと言うのは趣味の範囲から出ないのです。
20分経過写真。
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徐々に形を具体的にしていきます。常に明解な全体像をキープしておくことはとても大事なことです。なので写真で見て分かるようにアウトラインの見え方が曖昧にならないようにこの段階からバッチリ決めています。中の形の探りなんかも大きく探り直したり、言ってみれば、一番作品が展開していく時間であるとも言えるでしょう。ここでの充実具合が浅いと印象も合わないし、とてもあっさりした薄っぺらい作品になってしまいます。ぜひ、模刻しているような感覚で取り組んで欲しいところです。
1時間経過写真(ここから時間をたっぷり使っていきます)。
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ここで初めて白側の作業が入ってきます。指やパンで調子を抜いて光を描いていきます。顔や胸のバンドがピリッとしてきたのが分かると思います。重要な部分の検討が付けられていると後の作業を安心して進められます。
1時間10分経過写真。
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完成目前になっています。前の段階をベースに端からどんどん描写を入れていきました。とにかく部分的に外れないように全てが響き合っていることを意識すること。印象がとれている。という確認もしましょう。浪人生は特にですが、完全に完成!という段階の前であっても試験で勝てる内容のものを目指すことが大事です。6時間の試験なら5時間の段階で勝負できるものにしておきたいです。残りの1時間は完璧以上のものにするための時間にしたいです。
2時間半経過写真。(午前中の終わり)
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完成です。前の段階からかなりグッと内容が上がったのが分かると思います。どんなに描くのが早くても、密度を上げる時間は絶対に必要なので、完成度を上げることを前提としたら前半の作業をどれだけ正確に短時間でやれるかが重要です。殆どの人は前半での作業内容が悪くて後半出しきれない事が多いので、その辺を鍛えていくといいでしょう。形を直す作業に時間を取られてしまうのはもったいないことです。どちらかと言うと最終的に描き込んでいって像の本質を捉えることよりも形をクロッキー的に合わせることのほうが、理解と表現の難易度としては低いところにあるものなので、クロッキーが苦手だという人はしっかり訓練を積むことをお勧めします。厳しいようですが、彫刻科ではクロッキーベースのデッサン力がないと大学でまともに学べることは無いと思ったほうが良いです。大学に入ることだけのことを考えれば誰もがチャンスを得られる時代になりましたが、それと入学後に本当に「彫刻」を学べるのか。とは別問題と言えるでしょう。
3時間半経過写真。
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さて、もう主要な私大の入試も終わり、芸大の試験を迎え撃つ時期になりましたね!悔いの残らないように、やれることは全てやりましょう!皆ぎりぎりの勝負になるわけなので、ここで踏ん張れるかどうかで結果は絶対変わってくるはずです。作品も、作品に対する心構えも、芸大生にふさわしい人になってください。もし受かったら4月から芸大生ですよ!あなたはそれにふさわしいですか?意識を高くしていきましょう!
がんばろう!!