月別アーカイブ: 2014年7月

1学期最後の課題。

彫刻科の小川原です。コンクール明けの3日間、昼間部では普段描かないベルベデーレやヴェンナのヴィーナス、組石膏等好きなモチーフを選択して描く課題を行いました。日頃良く描く石膏像に慣れ切ってしまうと新鮮な目で見れなくなってしまいがちですが、たまに気分転換の意味も込めてこういった課題をこなす事で再び素直な目を取り戻すきっかけになると思います。
それでは今回の優秀作品を紹介します。
K.S君の作品。倍版サイズの木炭紙です。
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まるで岩の塊のようなベルベデーレが力強く表現できています。量感と筋肉の構造とが複雑に絡み合い、実感のある探りが打ち出せています。欲を言うと台座やお尻の割れ肌の表情の描き込みや、奥の脚の腹部からの距離感がもう一段階はっきりと出せると良かったです。

Y.M君の作品。倍版木炭紙です。
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形態に対する粘り強い執着と探りが作品の完成度の高さを引き上げる事に一役買っています。ここ最近自分で作品の方向性をコントロールして決着を付けられるようになってきました。さらに深いやり取りが出来るように今以上に視野を広げていきましょう。

R.Y君の作品。倍版です。
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非常に丁寧に像に迫れています。さらに丁寧でありながら表面的でなく、像のリアリティに迫れている事に好感が持てます。台座の表現が強すぎて像より主張してしまっているのがもったいないです。本当に見落としが無いか考えられる事は全て確認し、不安は取り除いてしまいましょう。

T.U君の作品。2日間制作。
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とにかく良く描けています。ここまで描けたら何も言う事は無いです。ただ、今回も途中ほとんど進まず、攻めあぐねていたように、やりきらない状態で先に進めなくなってしまうときがあるのがすごく恐いところです。どうやったらいいとかそういう事ではなくて、単純に今持っている技術でもっと手数を与えていけばいいだけの話です。簡単に出来上がってしまった作品は、例え技術的に上手くても本当に薄っぺらく見えてしまいます。そうならないよう毎回自分の限界プラスαくらい詰めていくつもりで挑んでください。

A.Hさんの作品。2日課題。
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ミロビ背面は表情が少ないので具体的に描くのが難しいのですが、この作品は微妙な起伏に反応し、豊かな量感を表現する事に成功しています。とにかく描く力は十分にあります。しかしそれに一生懸命になって視野が狭くなり、出だしで形が大狂いして、それが最後まで直しきれない(最後まで全体が見えていないので違和感が見極められない)のが最大の弱点です。これは意識の問題とクロッキー力不足の両面に課題があるのですが、意識の部分に関しては明日解決できる事であるので厳しく受け止めてもらえると良いです。これさえクリアできれば一気に受験の土俵でトップに上がって来れるポテンシャルがあります。

さ、これで1学期の授業は終わりです!それぞれの問題点ははっきりしてきました。
皆第一希望の大学に受かりたい!と思っている事に間違いはないし、僕達講師陣も全員受からせたいと思って指導しています。僕らはそれぞれの成長が最も早い道を探して即効力のある指導を毎日心がけています。皆も受かる為に必要な努力を責任を持ってやり切って下さい。主体性を持って課題に立ち向かってもらえたら僕らの指導もダイレクトに伝わるはずです。来年合格する為に、自力でゴールに向かって歩んでいく覚悟を持って下さい。僕らは全力で支えます!

私大デザイン補習③

前々回は「色彩」について、前回は「構成」について書きました。
「色彩」と「構成」、2つあわせると……「色彩構成」になりますね。デザイン科のほとんどのみなさんがこの「色彩構成」を受験で描くことになると思います。

(「平面構成」とも言ったりしますが、私は使い分けていません。個人的には「色彩構成」の響きの方が好きですね。)

実は「色彩論」にも色彩のコンポジションについて説明されたページはあるのですが、いちばん最後の2ページ程でさらっと触れられているだけです。

逆にカンディンスキーは純粋な構成の基本を浮き彫りにするために、色彩を除外して「点・線・面」を説明しようとしました(らしいです)。しかし、やはり構成というのは色彩と密接な関係に?あることは否めないようです。

デザイン史…なんていうとそれこそ数千年単位の話になってきてしまいますが、現在みなさんが受験勉強で描いているような平面デザインであれば、たった100年ちょっと歴史を遡ればだいたい把握できると思います。建築や彫刻、もしくは絵画などに比べればはるかに短い時間感覚です。

だいたい1910年ごろ、西洋美術史からグラフィックデザイン史が派生し始めると考えてもいいでしょう。その年代は抽象画が描かれ始める時期です。そしてその抽象画の創始者といわれるのがカンディンスキーでもあります(こういうざっくりした説明は油絵の先生から叱られそうですが…汗)。

カンディンスキーの代表的な抽象画のシリーズの題名は「Composition」、そうまさに「構成」といわれるものです。その一例が以下の作品です。

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<Composition Ⅳ> 1911

いや?素晴らしい絵ですね!
…ん?よくわからない?むしろちょっと具体的じゃないの?みたいに思うと思います。もう少し時間が経ったあとの作品だとこうなります。

b
《CompositionⅧ》 1923

 

c
《Composition Ⅹ》 1939

どうでしょう?
最初のものより情景的な印象は薄くなり、普段みなさんが描いているような色彩構成にだいぶ近くなってきた気がします。
(ちなみに前回の最後にのせたモノクロの《trente》は1937年の作品だそうです。)

このように歴史をたどっていくと普段描いている色彩構成も、どこか違った視点で見え始めませんか?

絵具の講習会

こんにちは。油絵科の関口です。一学期の最終日に、株式会社クサカベさんによる絵具作りの講義、及び実習が行われました。術開発部課長の小川さんが丁寧に分かりやすく、絵具の事、オイルの事などを説明して下さいました。

今回は昼間部の希望者と、期末テストと重なっていない夜間部生が参加し、一緒に勉強しました。

クサカベ説明会1

 

これは二つの液体を混ぜて、化学反応で顔料が作られる事を説明してくれているシーンです。ちなみに液体を混ぜて作られるこの色は、プルシャンブルーだそうです。クサカベ説明会2

クサカベ説明会3
あらあら。真剣に説明を聞く学生に混じってトゥールズの池田さんまで(笑)。

 

クサカベ説明会4
初めて見る絵具の原料に興味津々の学生たち。

 

クサカベ説明会5
今回の実習ではウルトラマリンブルーの顔料を使って、透明水彩絵具、ガッシュ(不透明水彩)、アクリル絵具、日本画の絵具、油絵具の5種類を作りました。バインダー(接着剤)の違いで、絵具の名称や特徴(色、艶、乾燥時間など)が異なるのがよく分かったと思います。

 

クサカベ説明会6
5人一組のチームになって、お互いに協力しながら絵具を作っています。

皆でワイワイ、キャーキャー言いながら、まるで小中学生のように大騒ぎしていました。教える立場の小川さんはかなり大変だったと思いますが、少しでも材料や絵具について興味を持ってもらえたなら、今回のイベントは大成功だと思います。

 

油絵科のブログでは、材料についても時々取り上げていますので、興味のある人は読んでみて下さい。かなりマニアックですが、将来絵を描く上で役に立つ情報もあると思いますよ。

 

「ホワイトについて①」

http://www.art-shinbi.com/blog/20140127/

「ホワイトについて② シルバーホワイト編」

http://www.art-shinbi.com/blog/20140203/

「ホワイトについて③ ジンクホワイト編」

http://www.art-shinbi.com/blog/20140217/

「ホワイトについて④ チタニウムホワイト編」

http://www.art-shinbi.com/blog/20140303/

 

1日体験

1日体験

新宿校 古関です。

今日は、新宿校、国立校ともに1日体験でした。
今年度一番の集まりで、熱気にあふれた体験でした。

他の予備校でも同じようなことを行っていますが、
新美はしっかり途中の指導も、面接も丁寧に行っています。

1日体験に参加された学生も、その他の受験生も、
次は是非、夏期講習でお目にかかりましょう。

夏期講習前期初日は8日コースが20日、6日コースは22日スタートになります。
申し込みが済んでいない学生は至急申し込み完了するようにしましょう。

1日体験

1日体験

1日体験

1日体験

1学期末コンクール

こんにちは。彫刻科の小川原です。1学期の最後の週末にコンクールを行いました。
1学期の集大成として優秀な作品が幾つも出てきたのでこれからの指標としていいコンクールだったと思います。
それでは作品を見て行きましょう。
木炭デッサンはガッタメラータがモチーフでした。ガッタメラータは動きの強い像ではありませんが、微妙な軸の傾きに難しさがあります。特に正面から左側45°くらいの位置(横顔位置)あたりはパースなども相当意識してかからないと説得力のない描写になってしまいます。特徴的な形を持っている像なので感覚的な作業になりがちですが、むしろこういう像こそいつも以上に構造感に対する意識を高く持って制作に当たると良いです。
1位、R.Yくんの作品。
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バランスよく全体がつかめていて、落ち度なく網羅されています。実直な探りの積み重ねが評価されました。一つ一つの形には集中して取り組めても、全体を一つのものとしてコントロールしていくことはなかなかできることではありません。しかし彫刻としてはそこが一番重要であると言えます。どれだけ視野を広げられるか、そこが受験でも大きなカギになってくるのだと思います。
決して派手なデッサンではありませんがモチーフとの丁寧な対話が感じられる秀作です。

2位、K.S君の作品。
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色幅が豊かでスケール感のある作品に仕上がりました。エンブレムも印象良く丁寧に描かれていて好感が持てます。手前の肩の断面が色で終わってしまっていて形になっていないのと、顔の反対側が想像できない(ややパースに狂いがある)事が作品の雑味になっていることが非常に惜しいところです。見落としがなくなれば誰より目を引くデッサンが描ける強さを感じます。

3位、Y.M君の作品。
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キレがあり、明快な炭使いが魅力的なデッサンです。この位置で難しいのが、像を正面から見た時に首が体の中心から出ているように見えるかということだったりするのですが、この作品は首の描写が弱いためにその辺がやや曖昧になっているように感じます。頭部の大きさに対しての肩の大きさもやや小さいかもしれません。ここまで具体的に描き切れているので後は描いている最中に「見えているつもり」になってしまうのではなく、モチーフの本質を見極めていくことがこれから一層大切になっていきます。

素描課題は手と折り紙でした。今回の素描のコンクールでは残念ながら皆力を発揮できませんでした。と言うよりまだまだ手そのものの構造の理解不足であったり、魅力ある画面構成のために狙っていくべきポイントが分かっていないということが明確に結果として出てしまっています。手はいつでも描けるし、彫刻では出来て当たり前のようなものなので一層努力を深めていって欲しいです。
1位、A.Sさんの作品。
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ただ「持つ」ということではなく、ポジティブに折り紙と手の関係を遊んだのはこの作品だけでした。折り紙の質感表現に浅さは感じるものの、迫力ある画面構成が魅力的です。素描では常に攻めの姿勢で居てほしいものです。自分なりの作品性とはなにか。それを発見するための研究を皆に深めていってもらいたいです。

塑造は自刻像でした。自分自身がモチーフであるということは、他のどんな課題に対しても特別なものがあると思います。形を合わせる。ということだけでなく、自分自身の内面や、精神性、今まで生きてきた歴史など、様々なことを考えながら制作に取り組んで欲しいです。評価する側としては形は合っていて当たり前で、実はそれ以上のものを求めているということを覚えていて下さい。形が取れない段階の人は一刻も早くそれをクリアして、形ではない部分での作品性についても深めていきたいです。
1位Y.M君の作品。
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作品として向かうべき方向をしっかり見極めて、責任をもって言い切りが出来た作品です。作品の放つ眼差しに意思の強さを感じることが出来て、作品に対する真摯な思いが伝わってきます。6時間でここまでかたちにすることができたらいうことはありません。あえて言うならこれから先さらに上達して手が早くなった時に、表面に走らないで欲しいということです。これ以上の物を目指すには相当レベルの高いやりとりが必要です。作品にとって必要なこと、不必要なことを見極めて、彫刻作品としての魅力を更に高めていって欲しいです。

2位、K.S君の作品。
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モデル首像に引き続き、生きた土づけによって生命感を引き出すことに成功しています。皮膚の内側の筋骨を含む形の構造感から得られる緊張感が素晴らしいです。ただ単純に形を捉える。ということではなく、「土の魅力」を取り込んでいくことで作品の可能性は無限大に広がっていくのだと思います。そうした感覚的なものの見方は受験期以降の大学や、将来作家になった時に必ず役に立つことでしょう。

3位、R.Y君の作品。
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彼の持つ骨格構造の強さが作品としての魅力につながっています。形の厚みに迫力を感じる部分がとても良いです。やや顔の表情に弱さがあり、髪の生え際の影に負けてしまっています。生え際はこれでよいので、さらに顔を強く見せていく工夫があると一層よくなるはずです。やはり陰を利用すること。場合によっては上向きの顔を少し戻してみても影が落ちるので良いかもしれません。すぐに出来ることなので次回が楽しみです。

以上です!どうでしたか?1学期後半に入ってレベルがグッと上がってきたのを感じます。特に上位を常に争っているメンバーは既に一定のレベルを超えたものが見えてきているので、周りより一段階高い次元で作品と向きあえていると思います。もちろん他のみんなもしっかり力をつけてきました!あとは自己推進力を高めていくことです!自分の力でどんどんどんどん突き進んで下さい!これから半年が本当に勝負になると思います。一課題ごとに少しずつでも前進できるように目的を持って制作にあたりましょう!