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芸大油画現役合格者に聞く③

こんにちは。油絵科の関口です。
今回も芸大油画専攻に現役合格した山道くんのインタビューの続きです。
技術がないと自覚していた山道くんが、どうやって入試を乗り切って行ったのでしょうか?また、敢えて技術を教えない、という方針を取った僕の内心は…。

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インタビューを受ける山道くん。入試も全て終わり、和やかな雰囲気で行われました。

関:でも技術を教えないって、こっちもストレス溜まるんだよ(笑)教えた方が楽だから…。本人的にも武器を身に付ける事で安心するだろうしね。
山:技術を教えないと、どうなるんですか?

関:自分で考える力が身につくでしょ?今の自分に出来ることは何だろう…って。だって何も武器を持ってないんだから。
山:確かにそうでしたね。

関:例えばさ、技術が無い分ハートで勝負する人もいると思うんだよね。でも山道くんは熱いハートで絵を描くってタイプじゃ無いじゃない(笑)?
山:そうですね(笑)自分はそういうタイプじゃないです。

関:そこで本人の個性やセンスが出てくるんだよ。でもさ。水泳教室に通ってて泳ぎ方を教えないみたいな感じで(笑)。溺れそうになるギリギリなのを見てて、自力で泳ぐ事を覚えさせるみたいな感じだからね(笑)。本当にヤバイ時にはちゃんと浮き輪投げてあげるから(ニヤリ)みたいなね(笑)。
山:(笑)二学期位にデッサンでローラーを使うのを教えてもらって、ずっとやってたんですけど、冬期講習とか武蔵美の前に「それを使わなくても良いんだ…」って、分かったんですけど「描く力も無いし、どうしよう…」みたいな感じになったことがあって。

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こちらが二学期に描いていた、ベースに木炭の粉をローラーを使って乗せたデッサン。この時は少し技術的な事も教えていました。本人は「描く力がない」と謙遜していますが、ものを描く力は二学期の時点で結構付いていたと思います。

関:そうだったね。特に武蔵美なんか、試験時間が6時間しか無くて、山道くんは描くのも無茶苦茶遅いし、技術もない…そんな中で何が出来る?って、考えた時に、山道くんの中で「あ、これだったらイケるんじゃない?」っていうのを見付けられたと思うんだよね。
山:あのブロック(とH鋼)を描いた作品ですかね?

関:あれを見た時に、やっぱり一年間の中で力を付けたんだな…っていうのを実感できて…だから僕の中では全然焦りが無かったというか、山道くんの事を信じてた。完全に信頼してたよね。それで、もし本番で失敗したらそれは仕方がないというか、絵だからしょうがないよね?っていう。一年間そういう感じ(真剣勝負)でやってきたんだから、山道くんを信じて賭けてみようって。
山:そうなんですね。

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こちらが武蔵美直前に描いたブロックとH鋼の作品。一般的な見方だと二学期の作品の方が良く描けていると思いますが、僕はこの作品を見て、荒削りながら可能性を感じました。

 

関:僕には確信があったけど、山道くん的には芸大の一次も二次も不安しかなかったと思うんだけど…
山:絵画とは何か?みたいな、自問自答に二次試験の時は描きながらずっとやってましたね。3日目も筆がずっと止まっちゃって、僕は何をすれば良いんだ?みたいな感じでしたからね(苦笑)。

関:それが絵に深みを与えたんじゃないかな?
山:そうなんですかね?…だからあんまり描かなかったんですよね。

関:考えてる時間が長かった?
山:そうですね。考えながらやってると、すごい時間が早く経っちゃって…

関:うん。でもそれって凄い大切な事だと思うよ。僕も作品を描いている中で、作品に触れてる時間よりも、考えてる時間とか、自分の絵を見てる時間の方が長いもんね。絵ってある一手を打ったら全然局面が変わってくるから、変わってきた局面に対して、こう考えたら良いんじゃないかな?とか、こういう手を打った方が良いんじゃないかな?とか、刻一刻と変わっていくものだと思うから。ただ作業をしていれば完成する…そういうもんじゃ無いと思うんだよね。
山:そうですね。

関:だから山道くんが試験の時に考えてる時間が長かったっていうのは、作品を作る上では重要なプロセスだったんじゃないかな?だって一手で全然変わってくるから…
山:そうですよね。見え方とかもそうですもんね。

関:この一手で、この前に置いた布石が効いてきた…とかね。で、丁度良いところに行ったんだろうな。って思ってるんだ。
山:そうなのかな…(照笑)?

関:自分としては手応えがなかったかな?
山:うーん。自分の世界にはなっていたかな?っていうのはあるんですけどね。多分世間からは評価されないだろうな…っていうのは分かってましたから。

関:それはでも良いんじゃない?
山:そこが難しいところですよね。これが絵だ!っていう(正解が)のが無いから。確かに自分のモノにはなってたけど、なんか汚いし(笑)、雑だし…こりゃあどうすれば良いんだ…みたいな感じですよね(苦笑)。

関:でも、そういうところも含めて、芸大の先生方はよく見ていたのかな?って思うけどね。例えばもっと表面的にはよく出来ている作品も多分一杯あったと思うんだよね。
山:そうですね?。自分の隣の人とかも…。

関:そういう中で山道くんの作品が選ばれて、もっと完成度の高い作品が落とされてしまったという可能性だってあるんだけれど、今の芸大の先生方が見ている所っていうのは、表面的な完成度だけでは無いな…っていう気はするよね。
山:むしろそこを見られたら…おしまいだっていう風には思ってました(笑)。

関:僕はある1つの確信があって、そこはそんなに見ないだろう。と思ってたから、敢えて技術は無しで行こうと(ニヤリ)。
山:そうですね。試験前に先生にそう言われて、僕もあんまり上手に描こうとは思ってなかったですね。自分の狙いが伝わる位なら良いかな?っていう。

ー次回(最終回)に続くー

芸大油画現役合格者に聞く②

こんにちは。油絵科の関口です。
前回に引き続き、芸大現役合格した山道くんのインタビューです。今回は試験の直前の話が中心です。前回は山道くんがどんなに絵が失敗していても、僕は尻を叩いたりしなかった…というところで終わったので、その続きです。

関:芸大の直前だってね、最後の週は前日も含めて全然上手くいってなかったけど、僕は全然焦ってなかったでしょ。むしろ、なんか良い感じになってきたじゃない?って言ってたもんね(笑)。
まぁ、でもきっと本人的には結構焦りはあったよね?
山:そうですね。上手くいったのは試験の6日前に描いた自画像くらいでしたからね。何というか、これをやれば大丈夫!みたいな型が無かったから…まぁ安心は出ないですよね。焦りは…やるしか無かったから、そんなでも無かったですけどね。でもやっぱり緊張はしましたね。
山道自画像
試験6日前に描いた自画像。この作品を見てからは、その後どんなに失敗続いていても「山道くんには底力があるから大丈夫」と自分に言い聞かせ完全に信頼していました。

 

関:で、一次終わった後、エスキース見せてもらった時にさ。正直あんまり良くなさそうだな…って思ったんだよね。自分でも落ちたと思ってたよね?
山:そうですね。周りと比べてインパクトはあったと思うんですけど、それしか無かったので…

関:でもね。面接でエスキース見ながら山道くんの話を聞いている内にね、(希望的観測で)これって結構上手くいってるんじゃないか?って変わってきたんだけど…。
ただ、さっき再現で描いた素描を見せてもらって、やっぱりヤバイな(一歩間違えたら落ちてたかも)って思ったよね(爆笑)。
山:(笑)ヤバイですよ。入試で描いたヤツは(笑)。自分のだらし無さが出たというか…面倒くさいから、伝われば良いやみたいな。

一次エスキース
これが芸大一次の作品を思い出しながら描いてもらったエスキース。手前が鴨のシルエットで、奥にミミズクがいます(お腹から足に掛けての部分)。パッと見は隙間の形が鳥の頭の輪郭みたいになっています。

 

関:だらし無いという印象はないけどね。
山:いやぁ?こだわらない事には全然こだわらないですからね。

関:そっか…。でも描くときにスゴい…こう…考えるじゃない?1つのことをやるのにもさ、凄く考えて、終わった後とかにもずっと残ってメモを取ってるし。ああいうところを見ると、だらしないとか、大雑把という印象は無かったよね。むしろ結構慎重な方だと思って見てたけど。
山:その辺は二面性って言うか…。でも慎重って言うかビビりなだけですよ。でもビビってない時とか、絶対勝てる相手だと思った時は「こん位でしょ?」みたいな感じで行けるんですけどね(笑)

関:芸大は絶対勝てる相手だと思った(笑)?
山:いや?それは(笑)。正直、芸大は周りに「受けた方が良いんじゃない?」みたいな感じで言われて受けたので、自分的には、まぁ無理でしょ。みたいなスタンスだったんです。だから気持ち的には受かるとは思ってませんでした。

関:最初は筑波受けるって言ってたもんね。
山:そうですね。芸大は手を出すにはあまりにも遠すぎるんじゃないか?って思ってましたから。

関:11月位に筑波の推薦受けるっていう事だったんだけど、山道くんの中では、そこで落ちるのは最初から織込み済みで「落ちて気合を入れる」って言ってたもんね。
山:筑波の推薦は、もう最初から落ちて良いって思ってて、試験を体験して体勢を整えようって思ってました。

関:こっちとしては、筑波受かったら芸大受けられなくなるから複雑な心境だったんだけど、でも『受けるかからには受からせるつもり』でいたから…。一緒に石膏デッサン描いたもんね(笑)。
山:そうでしたね。自分の中でも100%の力でやんなきゃ…っていうのはあったんですけど、一方で「ここで受かんなくても良いじゃん」っていうのがあって…。

関:気持ちの行きどころというか、その辺は難しいだろうな…って思ってたけどね。
山:そうですね。

関:芸大終わった後にもさ、後期の筑波も受けるって事で、石膏描いてたんだけど、アレはキツかったでしょ(笑)?
山:いや?本当、精神的に(笑)。『これが受験だ』って感じがしましたね。やっぱ石膏デッサンって楽しくないなって(爆笑)。

関:そうやって考えてみると普段描いてた絵っていうのは、まだ受験ではあるんだけど、一枚一枚「この作品どうしよう?」っていう事を考えて描いてたと思うんだよね。これはこうだから、こうすれば良い…っていうマニュアルがある訳じゃないからね。その辺は石膏デッサンとは全然違うところだよね。『ルールは自分で作る』みたいなさ。
山:そうですね。

関:もし違う課題が出てたら全然違う作品描いてたんだろうな?って。だからそういう一枚一枚の思考力というか、作家的な力は一年でだいぶ付いたかな?って思ってるんだよね。
山:まぁ、そうですかね。

関:僕自身の今年の方針として『自力で考える力をつけさせる』ってところに重点を置いて見てたんだよね。だから敢えて作品に対してあまり口出しや手出しをしなかった。一人ひとりが、その課題に対してどうやって考えて答えを出していこうとしてるのか?っていう部分に焦点を当ててね。結構言いたくなるのを我慢してたんだよ(苦笑)。
山:僕としては課題をこなすだけだったから「本当に力着いてんのかな?」っていうのはありましたね。

関:僕はね、カリキュラムって『合格する為のプログラム』だと思ってるんだよね。皆にどうやったら作品について考えてもらえるのか?考える事を習慣付けられるのか?っていう…。アトリエではどう考えたかを聞いて「それだったらこうなんじゃない?」とか、行き詰まった時には「こういう事を考えたら前に進めるんじゃない?」っていう手助けをする位でね。だから課題ができた時には、僕の仕事はもう半分くらい終わってるんだよね(ニヤリ)。
山:あぁ、なるほど。

関:あとは個々の問題として「この技術がないと、どうしてもクリアできない」ってところがあったら、よく考えた末に教えちゃうけどね。まぁ僕の教え方っていうのは他の予備校とか、他の先生方とはちょっと違って特殊だったと思うから…
山:他の予備校がどうなのかは分からないですけど、絵画の見方っていうか、例えば明暗構成だったり、そういうのは結構教わったなって思いますね。色々言ってもらう度に、あぁそうなんだ。みたいな…

ー次回に続くー

芸大油画現役合格者に聞く①

こんにちは。油絵科の関口です。これから数回に渡って2017年度芸大油画専攻合格者にインタビューしたお話を載せたいと思います。芸大合格者の今年一年は一体どんな感じだったのでしょうか?人によって様々だと思いますが、その辺も含めて皆さんにお届けしたいと思います。

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発表の日に新美で油絵科の合格者で記念撮影。用事があって早く帰ってしまった人もいるので、これで全員ではありませんが、皆嬉しそうな顔をしていますね。

さて今回は新宿校夜間部から現役合格した、山道くんにインタビューしました。山道くんは直接僕が受け持っていた事もあり、なんだかんだで40分以上に及ぶロングインタビューになったのですが、何回かに分けてお届けします。これから受験生になる皆さんには、1つのケースとして是非読んでもらいたいな…と思います。
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関口:この度は芸大現役合格おめでとうございます。
山道:ありがとうございます。

関:ところで山道くんは普通科の高校出身だったよね?
山:そうですね。一般の普通科の高校で、美術部にも入っていませんでした。小3位の時から地元の絵画教室みたいなところには通ってましたけど…でも、教えてくれるって感じてもなくて、絵画だけじゃなくて、陶芸とか色んな事をやらせてくれる、体験みたいなところでした。

関:へ?。そうだったんだ。確か新美で初めて見たのは去年の春期講習だったよね?
山:そうですね。その前に一回無料の1日体験に来て、その後春期講習に来ました。

関:春期の事は今でもハッキリ覚えてるんだけど、カタチが取れて空間が出せるな…というのが印象に残ってて、来てくれたら良いな…と思ってたんだよ。でも家が遠いから新美には来てくれないんだろうなぁって思ってたんだよね。確か家は江ノ島の方だよね?
山:はい。でも1時間位で来れるんで。

関:へ?。そんなもんなんだ。意外と近いんだね。
山:はい。ちゃんとリサーチして来ましたから(笑)。快速とかに乗ればその位で来れます。

関:そんな遠い中で、新美に来ようと思ったキッカケって、どんな感じなのかな?
山:体験の時なんですけど、他の予備校に行った時に「褒める」っていうのが多くて、自分は絵を始めるのが遅かったから「これで褒められるっていうのは絶対に無いだろう」って思ったんですよね。そんな中でメッチャ褒めに来るから、なんか信用出来ないなって(笑)。

関:信用出来ない(笑)
山:新美は普通に「こんなんじゃ受験ヤバイでしょ」みたいな感じで普通に言ってくれたので。

関:それ言ったの僕じゃないよね(笑)。誰だろ。厳しめだったのかな?
山:いやぁ。全然厳しめでは無かったですね。本当に普通に自分のイメージしていた通りに言ってくれた感じです。

関:それは良かった。その後、春期講習に来て、夜間部の先生の他に昼間部の先生にも教えてもらったじゃない?どんな印象だった?
山:そうですね。そんなに技術的な事は教えないんだな、と。

関:そうね。僕も含めてあんまり技術的な事は言わないよね?ていうか、特に僕は年間通してあんまり言わなかったよね(笑)。かと言って別に精神論でも無いし。一体何を教えてたんだろうね(笑)。
山:(笑)でも、春期講習の時は「焦ってた…」っていうのもあると思いますけど、ヤル気はありましたね。

関:そうだね。いつも遅くまで残ってたしね。
山:自分の中では焦りがあったので。

関:常に焦ってた?
山:いやぁ、夜間部に通うようになってからは、段々焦らなくなったというか。

関:結構変な子もいるしね(笑)。まるで動物園みたいな(笑)。
山:そうですね(笑)。美術系の高校の人には基礎力や技術的な事は敵わないな…て思ってたんですけど、普通科の人も結構いましたし…変な人もいましたけど(笑)。

関:最初の頃に感じた、僕の山道くんに対する印象っていうのは、形に対してのこだわりが強かった…っていう。まあ、だからかもしれないけど、ずっと見ててもさ。なかなか進まないし、手が遅かったよね。いやぁ?そりゃぁちょっと要領悪いでしょっていうか、いわゆる不器用っていう…ね(笑)。でも良いものを持ってるな…ってずっと思ってたからね。だから短絡的に「ここをこうやれば…ね?何とかなったでしょ?」みたいな感じにはしたくなかったんだよね。
山:ああ。なるほど。

関:それに山道くんは、自分で納得できるところにいかないと、絶対前に進めないタイプなんだろうな…とは思ったよね。だから、上手くいかなくても尻を叩く様な事は殆ど無かったと思うんだよね?
山:そうですね。あんま無かったですね。

ー次回に続くー

フクロウとミミズクのお話

こんにちは。油絵科の関口です。
さて、今年の芸大一次試験では、油画専攻では珍しく鳥の剥製が出題されましたね。恐らく過去を遡っても剥製が出たのは初めてではないか?と思います。
モチーフは選択できましたので、剥製を描いていない人もいると思いますし、剥製を描いて落ちてしまった人には申し訳ありませんが、今回のブログはフクロウとミミズクのお話です。
フクロウ
ところで、皆さんはフクロウとミミズクの違いはご存知でしょうか?耳が付いているか付いてないか、の違い?いやそんな馬鹿な…と思ったあなた。実は正解です。簡単な分け方ですね(笑)。ミミズク
正確には羽角というもので、あれは耳ではなく飾り羽なのですが、日本では耳に見立ててミミズクという名前が付いているそうです。生物学的にはフクロウもミミズクも殆ど一緒のものらしいです。ちなみに今回出題されたミミズクは、受けた人の話を統合すると、トラフズクという種類ではないかと思います。
フクロウはその可愛らしい外観とは裏腹に、猛禽類というワシやタカに近い分類になります。他の鳥と決定的に異なるのは、夜に活動して狩りをする、夜のハンターという点でしょう。
正面に目が付いているのは、肉食の捕食動物の特徴で、両眼で1つのものを見るという仕組みは、獲物までの距離を正確に把握する事が可能になるのです。その代わり、フクロウの仲間は眼球が殆ど動かせず、視野も人間より狭いので、辺りを見渡す時には首を回転させるしか手立てがないそうです。ミミズクの目
確かにこの鋭い眼はどう見ても獲物を狙うハンターの目です。

 

大きい顔は、獲物の音を聞き逃さないよう進化したようです。メンフクロウを始めとするフクロウの多くの種類は、耳の付いている位置が左右で異なり、左右の耳に届く僅かな時差で、音の方向をより立体的かつ正確に把握する能力が備わっているのだとか…。メンフクロウ
メンフクロウ

動物の獲物や敵の位置を把握する能力を定位と言いますが、フクロウの仲間は音源定位という能力を備えています。脳内にある細胞が、空間内の特定の領域から発した音のみに反応するんだそうですよ。凄いですよね。ところが今回のモチーフにあったトラフズクは、どうやら両耳の位置は左右対称らしいです。メンフクロウとトラフズクは脳の構造も違うんでしょうかね?・・・自然界って摩訶不思議です。
今回の知識の半分くらいはCS番組のアニマルプラネットから得たものですが、こういう事実を知ると、本当に自然界の奥深さを感じます。

二次試験まであとわずか。一次を通過した皆さん。是非頑張ってきて下さい。

木炭紙の耳と透かしのお話

こんにちは。油絵科の関口です。
油絵科の皆さんも、芸大一次試験がいよいよ迫ってきましたね。
さて今日は普段よく使っている木炭紙について、お話しようと思います。

普段皆さんが使っている木炭紙は、MBM木炭紙です。この木炭紙はフランスのキャンソン社、又はアルジョマリー社のもので、MBMや☆印の透かしが入っています。この☆印は3スターといって、最高級品質のもので、なんと日本向けに作られているのだそうです。日本向けとは言っても、この紙を使っているプロの絵描きさんなんか殆どいないので、ほぼ「日本の受験生の為に作られている」と言っても過言ではありません。FullSizeRender
木炭紙の耳と透かし。☆印も3つちゃんと入ってます。耳は完全な直線ではなく、手漉きの風合いがありますね。

ところで今年に入ってから、一部出回っていたこの木炭紙で、透かしが入っている場所が、長辺から短辺に変更されたのをご存知でしょうか?それと同時に紙の耳が機械による裁断により、完全な直線になってしまいました。紙が直線になると普通の画用紙みたいで、とたんに高級感が無くなってしまいますね。?Ø?Y??

少し前に海老澤先生と「近年の木炭紙は形に歪みがある」という話をしていました。僕も生徒の作品を撮影している時にその歪みに気付いていたので、二人で「紙漉きをして乾かす時、スペースを確保する為に立て掛けて乾燥しているに違いない」という結論に至りました。?Ø?Y??
今回一部で出回っていた機械裁断の木炭紙は、そんな歪み解消の為にやむを得ず導入されたのかもしれません。トゥールズの店員さんのお話だと、現在はまだ耳があるタイプが残っていますが、いずれ全てが新しいタイプに変更されてしまうそうです。
生産効率を上げる事と、コスト削減はどこの企業でも命題なのでしょうが、こういう木炭紙を見ていると世知辛い世の中になってしまったと、悲しい気持ちになってしまいますね。
今のところ、まだ以前の木炭紙が出回っている様ですが、四辺にちゃんと耳が残っている木炭紙で制作出来るのも、あと僅かかもしれません。そんな事も思い出しながら、一枚一枚制作してみて下さい。

最後に…芸大油画専攻で出される木炭紙は例年「特厚」です。普段皆さんが使っている(と思われる)「厚口」とは木炭の乗りや描き味が違うので、試験前に一度は試してみることをお勧めします。では試験まであと僅かですので、是非頑張って下さい。