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木炭で描くアグリッパ。

こんにちは。彫刻科の小川原です。基礎の課題でアグリッパを描きました。解説を加えながらのデモンストレーションだったので前半撮影が出来ませんでしたが途中からのものを紹介します。
1段階では構図を考えながらアタリをとります。輪郭内の作業では面の変わり目に出来る稜線を探り、立体を掴むようなイメージを深めます。正中線に対する左右の稜線の角度の精度も高め、今後大きく形を直す必要がないことを確認します。
2段階目では光源を設定し、明確に日向と日陰で調子を分けていきます。もちろん調子は最初に捉えた稜線上で変化させます。
そして3段階目。構造にそって調子をコントロールしています。より実際に近い起伏を追い、短時間でアグリッパの持つ印象に限りなく近づけていき、全体を微調整します。大抵の場合はこのくらいの進度で明確な狂いがある場合、アドバイス無く自力で修正するのは困難です。もしモチーフが捉えられていたらこの段階で十分に合わせきれるはずです。逆に合わせられない人はもう少し慎重になってここで精度を上げる努力をすることと、クロッキー力を上げることが求められます。1
4段階目ではガーゼを使って空間を作っていきます。奥行きのある面と逆行側は基本ガーゼで形を起こします。光側はガーゼを使わず、ザラ目を利用し、奥行き面とのコントラストのギャップを高めることで空間性を強めます。
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5段階目では4段階目でつくった下地に具体的な起伏をどんどん詰め込んでいきます。光源設定が崩れない限り、やや黒っぽくなっても良いです。ここでの探りは完成に直結するものなのでじっくり時間をかけて行いたいです。
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最終段階では特に何を重視して描くということは必要ありません。あえて言うなら具体的な描写と、バルールのコントロールは欠かせませんが、そのとき必要だと思ったことは何でもやるべきです。理想とする作品が見えてないと何となく時間が過ぎていってしまいます。どのような作品にしたいのか、その為に何をするべきなのか考えながらいろいろなことを試していくことが大切です。
このくらいで十分かな?というレベルでは実際のところ到底不十分なので、常に自分の限界を超えていくつもりで挑むつもりで向き合いましょう。
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完成作品をフォトショップで加工してみました。出だしでの光源設定では明確な光線状況の説明をしていきたいです。
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色数を4色に減色しました。たった4色でも十分に像の印象を引き出すことが出来ます。どこにどんな色を置いていくか、描き出す前に作戦を立てましょう!
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今回は時間がなかったので2時間半くらいで仕上げました。ちょっと無理がありましたがなんとか間に合わせた感じです(笑)
僕は受験時代も描くのは早かったですが、その当時とはモチーフに対する見方や描き方は全く変わりました。デッサンは普段あまり描かないので日々の特訓の延長で段々変わってきたと言う訳ではなく、どちらかと言うと自分の作品制作の中で形に対する追求度や視野の範囲が変わってきた為にいつの間にか変わっていたと言うのが正直なところです。
受験時代ではいかに奥行きを深く、細部を緻密に、画面全体を明解に描けるかにこだわりを持っていました。やや実際のモチーフの状況を置き去りにしていたところがありましたが、今はどれだけ実際のモチーフの魅力を引き出すことが出来るかと言うことに興味の方向性が変化しています。
皆さんも自分のデッサンに作品としてのこだわりを持って取り組んでほしいです。最初は「こんなデッサンが描きたいな」でいいのだと思いますが。最終的にはそれを越えていくべきだし、自分で理想を見つけていくことがおもしろさでもあります。

さて、プレ夏期講習が近づいてきました。彫刻科では6/22日にプロセスから学ぶモデル首像、29日にプロセスから学ぶ石膏デッサンを行います。どちらも1日で完成させます。まだ未経験でこれからはじめるという人、とにかく早く上達したい人、制作に行き詰まっている人は是非参加してみて下さい。丁寧に制作のコツを伝授します!
基本は現役生対象の講座ですが、学外の浪人生も是非。参加無料です。各日3日前までの申し込みとなっているのでお見逃し無く!!

今週はいい作品が多く出ました2

こんにちは。彫刻科の小川原です。今日しばらく放置していた作品に手を付けました。ほぼ完成状態だったのであとちょっとだったのですが、もうすぐ終わる!という安心感と、ちょっと間が空いてしまったことによる気持ちの離れから結構な時間が経ってしまいました。複数の作品を同時並行的に進めていたので、どうしても時間の割き方のバランスが取れなかったです。結局メインの作品に目をかけてしまうわけですね。作品は無事完成しました!なんかほっとしてます(笑)

さ、前回に続いて作品を紹介していきます!
自刻像。
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隅々まで観察が行き届き、説得力のある作品になっています。自刻像は鏡(平面)を見て立体におこすので、どうしても複雑な形が追いきれずに甘くなりがちです。日頃から筋骨が与える表皮への影響を研究しておくことが必要不可欠です。さらには自刻像は「自分自身」がテーマであるので、自分の内面性を形に置き換えるということも考えられると作品にさらに高い価値が生まれます。そういった意味では模刻的な形合わせに一生懸命になるだけでなく、作品の内面性を感じ取り、足りないと感じるものを探していくのも大切なことと言えます。

石膏デッサン。円盤投げ。
Y.M君の作品。
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量感も動きも全体の印象も円盤投げの持つ魅力に迫れていて、迫真に迫る内容の作品です。素直に、謙虚に対象を追った結果と言えるでしょう。やや白側のグラデーション、特にハイライトが不足している為に鈍さが目立ちます。最後まで作品としてデッサンをコントロールしきれるよう理想的な完成のビジョンを持てるようにしましょう。

T.U君の作品。
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2列目から描きました。この位置は動きや厚みを出すのが難しく、円盤投げの中で最も難しい位置と言えるでしょう。そんな中でかなりの精度が出せているので作者の実力の高さが伺えます。今回の作品に関しては手前の脇から脚にかけての陰の調子がべったりしてしまい、やや具体性を欠いてしまったのがもったいないです。陰の中での調子の変化についてはさらに意識を高く持って取り組めると良いです。

Y.S君の作品。
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やや首が長いものの、状態を後ろに傾け、伸びている印象がとても良く出ています。色は独特で多くの作品が並んだときに目立ってくるのが良いですが、形の抵抗感はやや弱めです。色と形が相互に関係し合えるような表現が目指せると良いです。

R.Y君の作品。
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調子の幅の広さが作品のリアリティを高めることに一役買っています。質量感を感じることも魅力的です。腰より下は良いのですが、回り込みの仕事がやや浅く、背中までの断面の厚みが足りなく感じてしまうのがこの位置から描く円盤投げとしてはもったいないところです。あと、口が2mm上に上がると印象が合います。集中して描いていると何が合っていて何が違うのか分からなくなりがちですが、常に客観的な目(普通の目)で見れるようになるとデッサンにおいて印象を外したり、何かの要素が足りなくなったりしなくなるので常に一定以上の評価が得られるようになります。最終的な作品性に関しては本人の意思を詰め込んでいくことが必要になるのでそこは「見たまま」以上に「狙い」や「目的」が必要です。

T.F君の作品。
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見上げたスケール感が良く出ています。胴から腰、脚までの調子のコントロールが断面の量感や印層をしっかり捉えられていてとても魅力的です。反面肩から頭部にかけては探りが非常に浅く、実態感が感じられません。画面全体で一つの世界観をつくっていくと言う意味ではやや仕事がばらけてしまっているのがもったいないところです。とはいえ作品からは他の人には無い魅力を感じます。
放課後T.F君が体を張って上半身裸で円盤投げのポーズ解説をしてくれました。ちょっと違ったような気もしますが、石膏像のポーズを自分でしてみるのは理解を深めると言う意味で重要です。(写真をブログに載せてくれと本人の強い希望がありましたが割愛します。)さ、1学期も後半戦!気合いを入れていきましょう!!

今週はいい作品が多く出ました!

こんにちは。彫刻科の小川原です。梅雨ですね?。いかに濡れないように傘のポジションのコントロールに集中するんですが、結局背中や足下が濡れてげんなりしてしまいます…。
ところで彫刻科は石膏デッサンを木炭で描くのですが、僕は受験時代の入試直前の時期に木炭紙への木炭の乗りの悪さに困ったことがあって、当然自分の技術を全く疑うことなく(笑)何か別に原因があるんじゃないか!と考えたことがあります。その結果湿気不足と言う結論に至り、イーゼルにずぶ濡れのぞうきんをかけたり、周囲の床に霧吹きで水を撒いたものです。もちろん芸大入試当日も(笑)相当白い目で見られましたが、湿気の効果もあって両隣の人は無意識のうちにいつもよりいい作品になったことでしょう(笑)自分的には効果はあったように思いますが、実際描き比べをした訳ではないのでどれほど有効であったかは今でも不明です…。予備校で講師を始めてから生徒から乗りのいい木炭と乗りの悪い木炭の見分け方を教えてもらってからは湿気なんて全く問題なく乾燥してても描けるようになりました(笑)

そもそも木炭にはそれぞれナンバーが割り振られています。木の種類や木炭の製作行程によって描き味が変わるわけです。ただし同じ種類であっても全く紙に乗っていかないものなんかも混ざっていて、質にはばらつきがあり、買ったものから使いやすいものを選定していく訳です。見分け方を知りたい方は是非聞きにきて下さい(笑)カンタンすぎて笑ってしまいます!

さてそれでは作品の紹介に入ります!数が多いので2回に分けようと思います。
ヌードモデルデッサン。
T.U君の作品。木炭紙に鉛筆デッサン。うすだ

隅々まで行き届いた観察と、破綻無くコントロールされた調子にかなりのレベルの高さを感じます。コンスタントに結果を出せていて、なおかつ惰性で描いていないことが素晴らしいです。今回は木炭紙に鉛筆描きでしたが、彼の描写の特徴で、中盤以降H系の硬い鉛筆でベースを抑え込んでいってピタッとした形を表現する方法が木炭紙の質に合わず、木炭紙が負けて波打ってしまいました。木炭紙は普通の画用紙と違って描写が詰めていきやすいし、もともとマットに仕上げやすいので出来るだけB系からFくらいまでの鉛筆で探り切って、H系は最小限にとどめておいた方が良いかもしれません。画用紙のようにH系で抑えて抵抗感を出す。と言うのは向かなそうです。でもそれをしなくても形にしやすいと言う風にポジティブに考えて大丈夫だと思います。

自刻像プラス手
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ポーズに雰囲気を感じる作品です。顔の印象も柔らかく魅力的になりました。まだまだ首、肩、胸、髪など、表現として成り立っていない部分が多いのでどうしても荒削りな印象を受けてしまいますがもう少し技術を磨けばとても光る作品が生み出せそうです。どこまでやりきるのか、しっかり目標立てて取り組みましょう。完成した作品を早く見たくて僕はうずうずしています(笑)

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saitou
自分の「手」ではない設定でつくりました。が、本当は自分の手としてつくってほしかったです(手首と肩の間に肘を想像しながら作品を見たかった)。それは抜きにして、柔らかく粘土の特性を生かした土付けと、自然な動きが魅力的な作品です。表情の弱さ(まだ生きている人間の精神を感じない)や切り口付近(こだわりが感じられない)の工夫が何とかなれば言うことは無いです。自分がここまで出来ればいいかなというレベルを常に越えていくことを目標として下さい。その為に工夫したり努力することを楽しめるようになるといくらでも上手くなれます。それが積み重なっていつかロダンを越える時が来るかもしれません!そう考えるとまだまだです!

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迫力のある造形感が魅力的な作品です。かなり全体に手が回るようになってきましたがまだまだ大味な雰囲気は抜けません。単純に丁寧に作り込む意識(密度を上げる)を高めることによって克服することも出来ますが、要点を絞って形を締めていく方法や、これ以上密度を上げることは考えずに、大きな構造の張り、締まりの展開を追求する方向性(彫刻的に形を分析し再構築する。現実と違ってよい)なども考えられます。形に緊張感を与えるコツが掴めるとガラッと見え方が変わってくるので是非テーマに加えてほしいです。

メディチの模刻。
K.S君の作品。IMG_6144
全体にわたってバランスやプロポーション、印象を合わせられています。荒付け段階から(狂いはあっても)メディチそのものを捉えながら進めることが出来たと思います。問題点は二つ。一つ目は全編通して作業の確実性が甘いところがあることです。そのために行ったり来たりするため、時間を効率よく使えていません。もう一つは作品のクオリティに対しての追求心の甘さです。まだその形の特徴が出せていない段階で完成としてしまっていることです。美術とは決められた答えが無く、無限に追求していくことが前提の学問なので、基本「終わり」は無いのです。例え受験生であっても「合格」を目標とせず、その先を目指して下さい。その結果「合格」は必ず貰える「ご褒美」のようなものなのです。

名言でた!と思った人、そんなの精神論でしょ?と思った人。まだまだですね(笑)作品の評価が数名の教授達の主観でしか無い以上、確実に合格する為にはいわゆる予備校が打ち出す「合格のライン」を目指していては足りないのです。(皆がそこを目指しているから)100点の答案で120点を出せるのが美術のおもしろいところで、皆が100点を目指してきわどい争いをしている中(大抵100点は取れない。ここが重要)、100点以上のことが普通に出来る人は余裕で合格を手にすることが出来るのです。
当たり前のことを話しました(笑)しかし真実でもあります。
芸大に入りたい!と思ったとき、多くの人は必至で努力することと思います。必至になってやれるだけやって、ギリギリで受かっていくのだと思います。でも現実には少数ながら全く苦労することなく余裕で受かっていく人も何人かいるのです。
苦労してギリギリで受かるタイプと、苦労せず余裕で受かるタイプ…。真逆ですね。
苦労しないで受かる人なんて、どうせ元から上手い人か、天才ってことでしょ?と思うかもしれませんが、実はそうではないのです。ここで話は戻りますが、苦労しないタイプの人は100点を越えることを目標にしている人たちのことです(100点に興味が無い)。どんな人かと言うと、「上達することが最大の目標である人」であり、「上達する為にあらゆる工夫をする人」であり、「その過程のすべてを楽しむ人」です。そういう人は意外に入試のことなんてあんまり考えてなくて、もっぱら自分の作品をどうしたらもっと良くできるか考えて、研究して、挑戦します。その連続でどんどん成長するのです。彼らの原動力は「大学に受かりたい」というものではなく、より高いレベルへの「好奇心(探究心)」と「成長する喜び」。それだけです。人によって成長のスピードには差がありますが、この二つを合わせ持った人は少なくともその人の中での最速での上達が見込めます。そんな彼らにとって受験の世界は自分を成長させるための絶好の環境であり、1年通して研究し切ったご褒美に「合格」がついてくるのです。
「好きこそものの上手なれ」ということわざがありますが、まさにその通りなのだと思います。
美術の世界を目指す全ての人は美術が好きだからこの道を選んだはずなのに、受験の世界に身を置いている間にいつの間にか「美術」そのもののおもしろさを見失ってしまい、受かる為の努力しか出来なくなってしまいがちです。
本当に上手い人は特に何も悩まず、制作そのものを楽しんでいるパターンが多いのです。でもよく考えてみて下さい、美術を始めたきっかけは皆そんなものだと思います。これが才能だと言うのなら皆が持っているはずのものです。もし忘れかけてしまっているなら是非思い出してみて下さい!
自分自身の経験(自分の受験の経験、講師としての経験)を振り返って、大学に受かる必勝法は何かと聞かれたら、自信を持ってこれだと言い切れます。

 

 

木彫作品制作1 足の荒彫り終わり。腕の荒彫りへ。

こんにちは。彫刻科の小川原です。彫刻科ってツナギを着ているイメージがあると思います。でも僕はこのツナギがダメなんですよね。全部の重さが肩にかかってくるので疲れるし、あとしゃがんだりするとき背中が引っ張られる感じがあって。意外に動きにくいです。なので僕は予備校生の時からほとんど作業着は着ずに、デッサンも塑像も服を汚さず作品をつくる力を身につけました。という話を友人にしたら、「だとしても舞ってる粉とかついて汚いじゃん」と一蹴されました。
それはそれとして作業着は着古した上下別のものが一番だよね!と言うのが僕の持論です!
さて、今回は僕の制作状況の報告です。前回は脚が形になってきたところでした。その続きです。

足を荒彫り。
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これで立ちの印象は概ね決まってきました!足はとにかく重心を決めるのが難しいです。粘土のように後でグイグイ動かせたらいいんですけどカービングでは一発勝負です!

次に腕に入ります。左腕の先は今つけてしまうとそれが邪魔になって脇や胸が進められなくなってしまいますが、右腕は問題ないのでこの時点で寄せ木しておきます。
まずは腕用の材を丸太から切り出すところからです。
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次に材をちょうどいい太さ(後で削るので当然太め)にさらにカットします。↓下の写真のものをさらに半分に。
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二の腕への接合部にはダボ(丸棒)を入れて強度を高めます。その為の穴をドリルで面に対して垂直に空けます。
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材を台に乗せて角度を確かめます。
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接着剤をつけてラッシング(ラチェット式のベルトかしめ)で固定します。接着剤はボンドが理想なのですが、木が生なので乾くのに何週間もかかります。それだと作業が進まないのでエポキシ接着剤と言う化学反応で硬化する接着剤を使用します。この接着剤は主に硬化時間が5分型、30分型、60分型、90分型と4種類あります。厳密に言うと硬化時間が早いほど強度が弱いのでよほど急いでなければ90分を使います。エポキシはカチンカチンに固まるので鑿には良くないですが、作業効率はとてもいいです。ただしエポキシはボンドより歴史の浅い品物なので、長期保存(例えば100年とか)を考えた場合にどんな劣化が出てくるかは未知数です。ボンドは仏像なんかの保存修復にもバンバン使ってるし、信頼度は厚いです。安いし。
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この後胴と左腕を中心に彫り進めました。
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次回から右腕もどんどん削ってきます!僕のアトリエはもちろん冷房が無いので夏は地獄ですが、暑い中木槌振りまくってるのもそれはそれで健康的ではあるかもしれないです(笑)

ごあいさつ。

はじめまして。今年から彫刻科講師をさせていただく内田です。 自己紹介として、大学で制作していた作品を載せてみます。 学部卒業制作作品は、諸事情により念のため掲載を控えます。 修士修了作品から。 「深呼吸」(220×70×H85cm)深呼吸 
この作品はオウム2羽が木にとまっているように見えると思いますが、木が肺のようにも見えるという、一つの形で複数の見え方が発生する面白さを狙ってみました。 この修了制作を終えてみると、学部とは作品スタイルに変化があったので、左右対称の形や複数の見え方がある形の面白さというテーマをもう少し詰めたくなり、博士課程を受けてみました。 ? 博士課程での作品です。 「 ALICE」(40×14×H32cm)ALICE
骨盤のように見えるウサギです。見えにくいですが、左右のウサギの喉あたりの空間を覗くと、ふたりの少女もいます。 背面ALICE
欲張って裏も彫りました。(写真の画質悪いですが・・・) 「SWAN」(30×20×H20cm)SWAN 内田麻ゆ
これは、複数の見え方というよりは、意味もなく要素を組み合わせて不思議な雰囲気に仕上げてみた作品です。 もともと、作品にあまりダイレクトなコンセプトを持たせたくなく、見た人に何かを思わせたいとすれば、一瞬「?」と何か考えてしまうような、意味があるようでないような作品や、形としては出来ればもっとシンプルな作品を作りたいと思っています。 このような感じで主に大理石を扱い、博士課程まで修了しましたが、今は石彫が出来る環境がないので、そんな時は木彫をします。 木彫作品は気が向いたらまたの機会に。 では次に新美生の作品を紹介します。 U.Tさんの作品(ハト素描) IMG_hato2
ハトの骨格も、羽根の色の違いなどまでよく見て描けています。地面に二本の足でしっかり立っていて、目にも生命感があります。次も同じくU.Tさんの塑造作品です。 IMG_5904
台座が少し大袈裟なような気もしますが、作品にしようという姿勢が感じられます。 羽を作りこむと表面的になり、羽の中の骨格を忘れがちですが、この作品は骨格も抑えながら、羽を表現できています。素描の説得力がここにも効いています。 次は5月から彫刻科に仲間入りしたばかりですが、なかなか良い感覚を持ってるな?と思わせる作品です。 E.Kさんの作品IMG_5892 IMG_5891
初心者なので、さすがに頭部は骨格が捉えきれず細くなっており、足も胴体に対して大きすぎたのでそのあたりは多少手を加えさせてもらいました。が、胴体や羽の表現はかなり良いです。初心者には難易度の高い、胴体につながる足の位置も自然ですし、頭を傾けているところは生命感に繋がっています。じあま(地面となる部分)を高くしているので空間が生まれ、程よい緊張感もあります。初心者ですが骨格も意識しつつ、とにかく素直にモチーフをよく見て作っているということかもしれません。 ミケランジェロの奴隷(のトルソ)のデッサンです。 U.Tさんの作品6
左右で伸びと縮みの筋肉の動きがあり、このデッサンのように伸びている側は、向こう側の縮みを感じさせつつ手前の伸びている張りを描きます。となるとやはり腰周りの表情を良く観察することが大事です。腰の筋肉の微妙なねじれを観察し描いています。腰から背中への回り込みも丁寧に見ています。 次は大型組みモチーフの作品を紹介します。 制作風景はこんな感じ。a
皆で囲んで通常の木炭紙の倍版で描きました。 木炭紙の倍版は画面が大きくなるので、いつも以上に離れて画面を確認する必要があります。 床の安定感、一つ一つのモチーフの関係性、手前と奥、光の降り注ぐ雰囲気などを表現することで、同一空間に置かれているという状況が自然に見える作品となります。1
これもまたU.Tさんの作品ですが、 左上のファコネのビーナスがもの足りないです。が、床に置かれた安定感があります。植物や細い枝も丁寧に描けています。 Y.Rさんの作4 出だしは全体にグレートーンで空間がスッキリせず、少しデッサンの表情に弱さがありました。モチーフが、盛りだくさんの位置なので、一つ一つの関係性に苦労したのかもしれません。結果的にはスッキリ見やすくなってきました。 M.Yさんの作品5
手前の立てかけられた円盤トルソから左上奥まで石膏が並び、視線が誘導される構図で見ごたえがあります。質感の異なるモチーフが入り組んでいますが、ひとつひとつ丁寧に描きました。 T.Fさんの作品3
白と紺、ストライプの布が組み合わさる場所で、そのコントラストを活かし見せ場のある作品となりました。バケツの質感も丁寧に見ています。

全体的には比較的安定感のある作品ではありますが、まだまだ描き足りないところもあります。課題ごとに全力を出し切ることはもちろん、むしろ全力を少し超えていくぐらいの感じがあるともっともっと良くなっていくと思っています。そういう癖をつけておくと試験本番では「全力+α(冷静さ)」な状態で乗り切れる!!ような気がしますが、どうでしょう。。。ま、頑張りすぎて試験前に力尽きては本末転倒なので、マイペースにがんばって行きたいですね。 7 。。。今後新美生がどんな作品を生み出すのか楽しみですね ?