日別アーカイブ: 2014年12月16日

ムサビ自己推薦結果。2学期末の優秀作品。奴隷プロセス。

こんにちは。彫刻科の小川原です。
11月末にムサビの自己推薦入試の合格発表がありました。今年の受験者は11名で、合格者は5名でした。新美からは3名受験して、3名全員が合格!!素晴らしい結果でしたね!
それまで全てが未経験であっても時間をかけて作品制作を行い、面接、作文、ファイル制作の対策がすることで、しっかりと合格を手にする事が出来ると言う事が実証されたと思います。そういったサポートがしっかり出来る体制が推薦入試を勝ち抜く為には最も重要なのだと実感しています。
合格おめでとう!

さて、2学期後半は短時間特訓や構成課題が多かったのでブログに載せられる作品が少ないですが、いくつか紹介していきたいと思います。
K.S君の作品。6時間。
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最近は芸大の入試傾向として模刻が続いています。それも割と小振りなモチーフが連続して出題されています。今回の課題は入試に合わせて6時間で制作してもらいました。短時間での模刻となると、観察と同時に構造や印象の分析が必要だったり、増してやアバタのように皆がつくり慣れている像だと、事前の知識が制作のスピードを早める事にもつながるので、それまでの経験がしっかり役立てられるかという事も重要になります。この作品はアバタを説明する上で必要なポイントがしっかりおさえられている事が評価できます。

T.U君の作品。6時間。
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明解かつ自然に全体が捉えられています。像全体が持つ印象(動きや量や形)を高い精度でまとめあげられている事がこの作品が評価に値する最大のポイントと言えるでしょう。この作品も6時間制作ですが、本番もブレること無く合わせていけると良いです。

R.Y君の作品。6時間。
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やや伸び、たわみの表現に対して消極的な面も伺えますが、画面をコントロールする力は素晴らしいです。顔を似せてきている事にも好感が持てます。安定感は1度限りの受験を勝ち抜く為に重要な事なので、入試までしっかりバランスを保ちながら照準を合わせていって下さい。

T.U君の作品。7時間。
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モデル首像です。一見荒々しいようですが、土付けのすべてが形のリアリティに反応出来始めています。方法論としてではなく、実感を持ちながらこの表現を追求していって下さい。もともとデッサン力があるのでかなり効果的に結果に結びつくはずです。

K.S君の作品。6時間。IMG_0231

以前から土付けに魅力があり、それが強みでした。しかしどこかで構造のずれがあり、それが作品として大きくマイナスになってしまうのがもったいない点でしたが、この作品は全体がかみ合って響き合わせられていると思います。その事で自然に生命感がしっかり出ている事がこれまでの作品と違うところです。作業が狭い視点になる事のないよう気をつけて、作品全体での魅力をしっかり考えていければ全く問題ないです。

T.F君の作品。6時間。IMG_0266
土付けに独特の柔らかさがあり、魅力を感じます。鼻の下面の不自然さや、耳や髪の説得力不足が補えたら素晴らしい作品に化ける予感をさせてくれる。そんな作品です。この時期6時間でこのくらい出来るのであれば十分間に合うと思うので引き続き頑張って下さい。

T.U君の作品。6時間。
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土の一手一手の重みが増してきたように感じます。ただ表面をならしていくのではなく、全てに厚みと緊張感を感じてやり取りしていく事で初めて作品に深みが与えられるでしょう。そうして初めて生身の人間の魅力が表現できる訳です。かなり良くなってきました。これからが楽しみです。

小川原。奴隷プロセス3.5時間。
1
アタリから全体のバランス(動き、量、印象)を、最も魅力的な構図となるように心掛けながら捉えます。

2
内側の構造を確認しつつ、アウトラインの精度も一緒に高めていきます。

3
光源を整理しながら調子を乗せていきます。顔も具体的にはまだしませんが、細部もサイズ感や位置関係を含め似ている事をこの段階で確認します。

4
ガーゼで奥行きのある面や下の面をおさえて空間表現の為の下地をつくります。手前部分は全くガーゼを使っていないのが分かると思いますが、こうして下地から表現に差を付けるのも最終的に要素の多い作品に仕上げていく上で重要な事です。

5
少しずつそれぞれの形を具体的にしながら完成のビジョンを高めていきます。この辺りの段階はそのまま最終的な完成に影響してくるのであまり狂いは残しておきたくはないです。

6
完成に向けて全体のまとまり感や、より具体的な印象を深めていきます。画面を触りすぎて弱まってしまうようならこのあともう一度下地として強めていく作業を入れたりもします。

7
最終的には作品としての言い切りをしっかりやりきりましょう。言いたい事が曖昧な作品はスルーされてしまいます。その上で、表現が独りよがりでなく、第三者が共感できるものであれば必ず評価されます。デッサンもあくまで美術表現である事を忘れないで下さい。形を合わせるだとか、調子をコントロールするだとか、完成度を上げる。と言ったものは当たり前の事です。それを責任を持ってやり切った上で何が言いたいのか。それをはっきりさせましょう!

さて、冬期講習がはじまり、受験も目前となってきました。緊張感も高まってきた事と思います。しかし焦ってはダメです。焦っても何も良くなりません。残りの時間でやれる事は限られている訳だし、その時間を最も有効に消化していく為に何が必要か考えてみて下さい。
残りの時間の使い方次第で結果はかなり変わってくると思います。受験間近とは言え、恐いのは「受験」しか目に入らなくなってしまい、自分の作品が冷静に見えなくなってしまう事です。
悔いの残らないよう、やるべき事をやりきりましょう!