こんにちは。彫刻科の小川原です。新年度に入り、1ヶ月が経ちました。といってもまだまだ始まったばかり。しっかり先を見据えて地に足つけてどんどん吸収していきましょう!少しでも上達が早まるように講師一同全力でサポートしていきます!
さて、4月からの課題の中でいい作品が幾つか出たので紹介します。
T.Uくんの作品。
空間に溶けこむようにコントロールされた調子が魅力的です。逆を言うと調子に意識が行き過ぎて、形(構造)についての説得力が足りなくなっています。色としては正解でも、それを「形」として強く認識して作業できているかどうかで結果はだいぶ違ってくるはずです。この作品の場合、一連の制作の流れは本人の完成のイメージに向かって無駄なく進んでいるので安定感があるという意味ではとても良いです。そこに調子と構造を関係付けた探りを新たに入れていくことが出来ると更に内容を高めていくことが出来ます。まだ1年のはじめなので、崩れることを恐れず、守りに入らないで最終的に到達するべき目標を見失うこと無く取り組んで欲しいです。
R.Yくんの作品。
指導なし6時間制作のコンクール作品です。実直に形と向き合い、簡単に省略してしまうこと無く複雑に像を捉えていこうという意識が感じられる作品です。模刻も慣れてくると短時間でそこそこのものが出来るようになりますが、それだと本来の模刻の意味合いには到底追いつくことは出来ません。全体としてみるとシンプルな構造に収まっている石膏像も、その表面の全てが圧倒的に複雑なフォルムを持っていて、しかもそれは断片的なものではなく、全体の構造の中に全く無駄なく理想的に収められているのです。謙虚にそれを取り入れようとする努力ができるかどうかでその後の成果は大きく変わってくるでしょう。
Y.Mくんの作品。
こちらもコンクール作品です。上の作品に対し、土付が形の張りを表現するのに一役買っていて、また違った魅力を感じることが出来ます。粘土そのものは色が同じですが、作り方次第でその「色味」は大きく変わります。そういった意味で好感が持てる土付けができるということは単純に「形」以外でも評価が得られるという点で大きな武器になるということでもあります。但し、逆にこの作品の場合は形の探りに迫りきれていない部分があり、パッと見よく見えるけど突っ込んで見ていくと浅い。という印象が残ってしまいます。今の表現を生かし、さらに一歩進んだ追求ができるようになると評価がグッと上がりそうです。
T.Uくんの作品。
春期講習の続きでマルスの模刻を完成させてもらいました。途中首の動きがなかなか合わずに苦戦しましたが、最終的には内容の詰まった完成度の高い作品に仕上がったと思います。(まだ頭部は動きに違いがあります 笑)彫刻でやるべきことはまさに形の追求に尽きる、というのは当然のことですが、それが当たり前すぎてたまに見えなくなってしまうこともあるんじゃないかなと思います。そこに妥協や諦めが入ってしまった瞬間に「彫刻」になろうとしていたものは「無意味なもの」に変わってしまうのです。少なくとも僕は自分の作品を作っている時には常にもっと「いい形」を目指しているので基本的に「これでいいかな?」とかはありません。どうやってもこれ以上のものはないというところまで詰めることは自分の想像を超えることでもあって、そこに自分に返ってくる強い感動があったりします。彫刻を志す人にはたとえ模刻であっても作業的になってしまうのではなく、モチーフに近づく為に努力を惜しまない人になって欲しいと思います。
作品数が多いので2回に分けたいと思います。4月の作品紹介は次回に続きます。