講師の新妻です。新美彫刻科の公開コンクールお疲れ様でした。今年はマルスを出題しました。
今年は例年よりも参加者が多く、上位の作品は例年の今の時期としてはレベルの高いものが多かったように感じました。と同時にまだマルスという人体彫刻の持つ「そのものらしさ」についての読み解きよりも描き手の思い込みが先に透けて見えたり、頭部と胸部の関係を空間的に捉えている(捉えようとしている)作品が少ない印象でした。まだ時間はあります。デッサンや塑像で伝えるべきことは描き手が思っているよりもシンプルなことだったりします。そこをクリアにしていくために今一度自分の制作を整理して受験の後半戦に向かっていきましょう!
1位。スモールa評価が出ました。この時期に、この制作時間で、このアングルで、(しかも現役生で)結果が求められる場面でここまでマルスに寄り添ってデッサンできていることが素直にすごいなぁと思いました。グレーのトーンの扱いや空間設定のシビアさなど、ここからもモチーフに対しての興味理解を深めていけるよう貪欲に制作してほしいと思います。
2位。全体的な印象の良さが自然と目に入ってきました。ここぞという場面で基本を外さない、それだけでもむずかしいことですが、そこからどこまで観察と表現をリンクさせてこだわれるかは、まだ伸び代がたくさんありそうです。
3位。良いプレッシャーの中で仕上げてきた作品で絵としての冴えが抜群です。影のエリアやラインにまだやや強引さが感じられるので空間に置かれた物体としての自然さで最後は判断してあげられると強みが活きると思います。
続いて普段の習作紹介に移ります。
新宿中央公園での風景素描です。普段の課題では固く空間的なアプローチが鈍くなりがちな作者ですが、新鮮なモチーフのおかげか、日差しの爽やかな広場の抜け感を短い制作時間の中でも表現できました。
風景素描と同じ作者のデッサンです。空間への捉え方が今までのものから一段抜けてきたように思います。形に対してはもっと本物に寄り添っていきましょう。
表現のイメージについてはいつも模索している作者の、泥臭く形に執着した一枚です。地道に積み重ねた仕事が何よりも雄弁に語ってくる、そういう作品をいつも期待しています!
手と任意の生物を構成して作品にする課題です。アイデアを聞いたときに、造形や粘土の色味や質の差の表現で幅が出しやすい良いチョイスだなと思いました。背中の硬質な感じや、そこをノックするような手の内在する力の表現にもう一押しリアリティが欲しいところです。
大胆に塑像板の裏まで絡みつく足が、選んだ生物らしさを強調しています。手のクオリティやシルエットの手らしさがタコと同等の魅力を持ってそこにあるとなお良いですね。
複数の手を海中の珊瑚やイソギンチャクのイメージを持って作りました。手の配置を空間の中で上手く扱うことで影の色味やシルエットが効果的に見えてきます。選んだシチュエーションや生物へのこだわりや引き込みをもっと思い切ってあげても良いかなとも感じました。
続いて夜間部生の作品です。
グデアの模刻です。デッサン、塑像ともにメキメキ上達している最中です!序盤から大きな組み立てを意識して、グデアらしさを常に感じながら作れている様子でした。この調子!
騎馬像らしい威厳のあるガッタメラータ像をこの位置から仰ぎみた時のスケール感が伝わってきます。6h描きの作業の采配もだんだん板についてきましたね。
絵的に良い感じなだけじゃなく立体として紙の中に成立するように描くには?という作者の課題がだんだんと身を結び始めてきました。形やラインの印象も手なりのものが消化されてきました。
アトリエの中から廊下を見たようなアングルの室内空間を素描しました。しっかり建物の構造的な形は合わせつつ、馴染みの場所を眺めているようなじんわりした空気感が出ていて良いですね。部屋のプレートの入れ方がニクイ。
留学生の自画像です。試験時間を想定した中でも完成度を上げてこれるようになりました。成長を感じます!
基礎科生も頑張っています。
本人の雰囲気が出ています。前回作ったときよりも立体的な面性やパーツの周りの形を観察できました!

初自刻像です、上手です。作り初めから完成までの間でのアドバイスをどんどん吸収していけました。視線も作品的に活き活きした印象があって良いですね!
こちらもかなり本人に似ています。首周りや様々なアングルからの形の印象も確認できるようになってきました。今後が楽しみです!
今回は以上です。ではまた!