カテゴリー別アーカイブ: 彫刻科

2学期、大型組み石膏静物。

こんにちは!彫刻科の小川原です。先日昼間部、夜間部どちらも同じ内容で、「大型組み石膏静物」という大課題を行いました。昼間部生は1学期に1度やっていますが、2度目ということでより内容の濃い物が求められます。夜間部生はこういった課題は初めてなので楽しんでもらえたと思います。
今回はこんな感じで組んでみました!どこから見ても描きごたえたっぷりの内容です!
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昼間部は倍版木炭紙か、全版アルシュ紙のどちらか選択で描いてもらいました。
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画面が大きいので全体をコントロールするのは大変だったと思います。皆いい作品になったと思います。今回はその中でも力作を数点紹介します。
Y.M君の作品。
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モチーフごとの重なりによって出来る空間の表現がとても丁寧に表現できています。こういった課題はある程度全体が決まってきたら基本奥から決めていくと良いよ、というアドバイスにうまく反応してくれました。デッサンは空間を出す為に手前を強くしなきゃ!と一番近いところから攻めがちですが、手前に対して奥は弱めていく一方になってしまうので、結果遠くがボヤボヤしすぎてしまうということが結構あります。特にこういった沢山のモチーフが林立する時には、一番遠くの物の魅力を最低限維持できる描写をして、それより手前はそれより強く、さらに手前はさらに強く、と言った感じにレベルを意識的に変えていくと自然と内容の詰まった作品になっていきます。画面が大きいので何となく場当たり的に進めていても収集つかなくなってしまうので、そういった意味では要領よく進めていく部分も必要になります。この作品は距離感の深度による明解さの段階がうまく表現できています。

M.Nさんの作品。
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物の置かれている状況が明解に伝わる作品です。丁寧に質感を追い、空間を平面に置き換えていく仕事に好感が持てます。自分が納得できるところまで責任を持って描ききることは大前提で、作品を人に見せてその魅力を伝える為にはそれ以上の目標や目的が必要になります。デッサンを自己満足で終わらせてしまうのではなく、見る側のレベルの一歩先に行くくらいのつもりで粘り強く追求していきたいです。彼女の作品からは実直に作品と向き合う姿勢が感じられます。

T.Y君の作品。
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彼は常にモチーフ全体が持つ気配や雰囲気を大事に制作を進めます。光をメインに部分に固執せず、全体を印象で追っていくので、副作用的な問題として作品としての言い切りの弱さがあります。この作品も、時間があればまだまだ描いていけそうな期待感を抱かずにはいられませんが、画面の端から端までを一つの作品としてコントロール出来ていることで、既に空間的な魅力に溢れる作品となっています。

K.Oさんの作品。

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炭の扱いが独特で、目を引くデッサンに仕上がっています。表面的と言うとネガティブな印象に聞こえてしまいがちですが、ここまで徹底していると逆にそれが魅力にもなるのだなとハッとさせられる作品です。距離感もしっかり考えられていて、一つの作品の方向性としての完成形が見えてきていると思います。
K.S君の作品。
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ドラマチックな作品に仕上がりました。作品の雰囲気を自分でぐいぐい創作できる人は、しばしば客観的な自然さが失われ、その結果、魅力以前に違和感の残る作品に陥ってしまいがちです。彼も例に違わずそうした一面を持っているのですが、今回の課題のように、自分でコントロールしきれる許容量を超えた物量に対して、ある程度長時間かけて挑めるような時には、途中方向性を見失ったときに軌道修正していく為のニュートラルな視点が必ず必要になります。僕も割と自分で流れをつくって勢いで行くタイプだったのでその重要性は身にしみてよく分かります。今回彼の作品は最後まで一貫して作品の質を高めるということを粘りきることができ、魅力をダイレクトに伝えることが出来る作品に仕上げることが出来ました。

続いて夜間部です。夜間部は通常の木炭紙サイズで行いました。
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T.U君の作品。
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今回のようなモチーフでは、倍版のように大きな画面では単純にコントロールするのは難しいですが、一つ一つのモチーフを大きく描けるので細部の表現には適しています。逆に通常サイズの木炭紙だと全ての物が小さく縮小されてしまうので、密度の魅力が出しにくいという難点もあります。この作品の魅力的な点は、全体の空間の統一感もさることながら、手前の物には触覚的に実感を持てるレベルでの描写が出来ていることにあります。手前の表現がきちんとできているので、遠くの表現との響き合いが生まれています。

K.Kさんの作品。
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画面全体での光線状態の統一感や距離感設定など、まだまだコントロールしてほしい部分は多々あります。しかしそうしたセオリー的な要素とは別の良さがこの作品にはあります。内容からは物の特徴(印象)に直感的に反応してぐいぐい手が動いているのがよくわかり、理屈では語れない説得力を放っています。これからさらにレベルを高めていく為に、デッサンの基本理論を、頭でっかちになることなく、その持ち前の感覚の良さを生かして吸収していってほしいです。

今回の課題は生徒一人一人にとって実力の底上げ、作品性の追求、表現の限界突破といった観点で非常に効果的であったと思います。1学期に比べてだいぶ力がついてきたことも実感出来ます。この調子で冬期講習に向けてまた地に足をつけ、実直に力をつけていきましょう!

さて、これ以外の課題でもいくつか良い作品がでています。
昼間部から紹介します。
K.Oさんの作品。
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かなり体格の良いモデルさんがきてくれました。作者は描写が生きるタイプなのでモデルさんにうまくはまってくれました。丁寧に、そして観察に基づいた描写が魅力的です。

M.Nさんの作品。
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コンテを用い、空間を含め非常に明解にモデルさんを捉えることが出来ています。毎回表現したい物が気分で変わっていくのは自然なことであるかもしれないけど、一本芯の通ったブレない自分の世界観が持てると、今の力でも高いレベルで安定することが出来ると思います。今回はビジョンを持った制作が出来たのだと思います。

K.Oさんの作品。
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動き、量、バランス、表情。どれをとっても非常にバランス良くまとめられています。髪の毛に関しては目立つポイントにもう少しメリハリを持たせるとさらに説得力のある作品に仕上げることが出来ます。

同じくK.Oさんの作品。
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テラコッタの作品が完成しました。独特の生々しさ、表情のリアリティが面白い作品です。

T.Y君の作品。
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この課題は普通の動物のデッサンではなく、メインは「空間」です。課題内容は、目の前のうさぎをモチーフとし、モチーフがアトリエ内の自由な場所にいる所を想定して描きなさい。というものでした。少し難しい課題だと思います。この作品は空間とうさぎの自然な一体感が評価できます。

続いて夜間部の作品です。
R.Tさんの作品。IMG_2869
実際の試験時間に近い時間で仕上げました(8時間くらい)。正直この時間でここまで持ってくると思わなかったので驚いています。持ち前の感覚の鋭さがダイレクトに作品に反映されていて非常に力強く、魅力的な作品になっています。

K.Kさんの作品。
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自主的に時間外に制作した作品です。静物デッサンとして求められる要素を高いレベルでまとめられています。こうした課題もどんどんこなして表現力をさらに高めていきたいです。

同じくK.Kさんの作品。
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こちらも自主課題です。回を重ねるごとに理解しながら描けるポイントが増えていくようで、見ているこちらも楽しませてもらっています。アムールを疑わせない説得力のある作品となりました。

同じくK.Kさんの作品。
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現役生で模刻をここまで合わせてくることに驚かされます。僕が現役生だった頃を思い出すととてもこの作品に並べることは出来なかったなと思います。まだまだ制作途中では自分で気づけない狂いがあったりするので、より客観的な目を養う意識を持って取り組んでもらえたらと思います。

同じくK.Kさんの作品。
自主制作の作品です。
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昨年度の芸大の出題課題をやってもらいました。帽子のぽつぽつを細かにつくるのを頑張っているように見えますが、下地の形もかなりしっかり追っているので、非常に説得力が高い作品になっています。

アトリエの雰囲気も少しずつ引き締まってきて、入試が近づいてきていることを何となくそれぞれ肌で感じ取っていることと思います。僕はこれまでは経験!これからは実戦だと思っています!これまで学んできたことを、一気に形にしていきましょう!!スタートで出遅れた人もまだまだ間に合います!ただしこれからは一課題一課題が勝負と思ってください。自分自身で入試で勝つ為の力を掴んでほしいです!頑張りましょう!

 

台風27号 授業変更はありません 2013/10/25 18:00

こんにちは。
台風27号接近にともない、授業への影響が懸念されましたが、今のところ26日(土)、27日(日)の授業および行事は予定通り行います。

ただし、土曜日の午前中は雨の予報が出ていますので、お住まいの地域の状況をみて、安全面を考慮し行動するようにお願いします。

台風26号接近にともなう授業対応について

台風26号の接近に伴い、東京も影響があることが予報されています。
今後の予定は以下のようになりますので、ご確認ください。
尚お住まいの地域によって、状況が変わりますので、安全面を考慮し行動するようお願いします。

本日(10.15)の授業
◎昼間部・・・平常授業。
◎夜間部、基礎科、先端芸術科・・・平常授業ですが、状況をみて早めに 切り上げる可能性があります。
◎美大学科・・・平常授業。

明日(10.16)の授業
◎昼間部・・・午前中休講。 13:00~16:00のみ授業を行います。
◎夜間部、基礎科、先端芸術科・・・平常授業。
◎美大学科・・・平常授業。

台風の状況により、変更がある場合はまたお知らせします。
よろしくお願い致します。

公開コンクール

武蔵野美大公開コンクール 開始

新宿校 私立美大コース 古関です。

今日、10/13 武蔵野美大公開コンクール
(視デ、工デ、空デ、映像)が始まりました。
同時に彫刻日本画の模試も行っています。
普段と比べると、とても活気の感じる日曜日です。

午前中の学科試験を終えて、午後のデザイン課題では、
集中して、制作している姿が見られました。

今の時期の結果はあまり気にせず、
この結果を元にこれからどうするか、が大事です。

明日はデッサン課題です。
2日間と体力的に大変ですが、頑張れ受験生!

明日の午後の講評はみっちり頑張ります。全員しっかり講評します。
講評後も新美の講師一同、相談に応えますので気軽になんでも聞いて下さい。

今週以降は

多摩美のグラフィックのデッサン 11/10
多摩美のグラフィック平面は   11/17
多摩美の油は          11/10

その他芸大デザイン建築先端工芸の公開コンクールも
申し込み受付中です。
特に芸大デザインの形態(粘土)の模試はやっている予備校が
少ないので、ぜひこの機会に参加して下さい。

詳しくは新美の模試のHPまで。

公開コンクール

公開コンクール学科の様子

公開コンクール

公開コンクール実技(デザイン)制作中

 

公開コンクール 日本画

公開コンクール 日本画(制作中)

公開コンクール 彫刻

公開コンクール 彫刻(制作中)

公開コンクール 映像科

公開コンクール 映像科(制作中)

芸術の秋!イベントの秋!

こんにちは。彫刻科の小川原です。今月の13日、14日は彫刻科の公開コンクールがあります。芸大を第一志望にしている人はぜひ受けてみてください。学外生は個別に面談も行う予定ですので、作品等講評希望の方は当日持参してください。日程は13日はデッサン、14日は塑像となっています。この時期でのコンクールの結果がそのまま入試につながっていく訳ではないですが、現時点での実力を検証し、本番当日までの指針をしっかりと立てることが重要です。
さらに20日には、原則高校生対象ではありますが、彫刻科で1日オープンスクールを行います。今回は「塑像を徹底攻略 モデル首像を1日で完成」と銘打って、芸大入試でも出題されるモデル首像に焦点を絞り、講師によるデモンストレーションと解説を交えながら制作にあたってのポイントを学びます。参加費は無料です。学内、学外、経験の有無は問いません。人数によっては締め切りもありますので、早めの申し込みをお願いします。新美のホームページのトップにバナーがありますのでご覧ください。

さて、今回も日々の制作の中で出てきた完成度の高い作品をいくつか紹介したいと思います。
まずは昼間部からです。1学期に行った実在ゼミ、今年はテラコッタでした。夏に窯で焼成、台座の制作を行い、2学期に入ってから仕上げを行いました。テラコッタ作品は素材として魅力を引き出せる可能性に溢れていますが、焼いたそのままだと深みがなく、スカスカして軽い印象を受けてしまいます。少し色をのせたりすることで作品に質感と抵抗感を与えていきます。ただしあくまで素材の魅力を失わない程度にとどめておく必要があります。
R.Y君の作品。信楽土での制作。台座は楠。
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迫力があり、生き生きとした表現が魅力的な作品です。カッティングや台座の形もこだわり、一つの「作品」として向き合えていることに好感が持てます。細部や髪の表現方法に関してはさらに研究を深めていきたいです。

K.S君の作品。黒泥での制作。台座は楠。表面を焼いて焦がしています。
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全体と細部の関係性が無理なく自然に捉えられていて、端々にリアリティを感じさせる気の利いた造形がなされています。非常に完成度が高く、一つの彫刻作品として鑑賞するに値する内容になっていると思います。これからは短時間でも、この作品を超えていくくらいの意識で取り組めると良いです。

R.A君の作品。マルス+水色のタスキ。
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炭の発色が独特で魅力があります。全体にマルスらしさが良く捉えられていて、目を引く作品になっています。全体に完成度が高いですが、欲を言うと体の陰側の回り込みと、あごの下の構造の表現がより考えられるとさらに隙のないものにできたと思います。次回のデッサンも楽しみです。

T.Y君の作品。
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調子が美しくコントロールできています。実物のモチーフの持つ印象に素直に忠実に、そして実直に取り組んだ結果の賜物だと思います。一つ一つの形を表現するための探りがとても丁寧で、遠目の印象だけでなく、近くで見ても説得力のある表現ができていることに作品としての完成度の高さを伺えます。下地で時間を使っているようなので、出だしで素早く的確な見切りができるようになってくるとより短時間でもこのレベル、あるいはそれ以上のものが描けるようになると思います。

K.S君の作品。
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気迫が感じられるデッサンになっています。制作のプロセスや、セオリーに縛られる事無く、モチーフから感じた感動と自分の世界観を画面の中で魅力的に形にする事が出来ました。堂々と、揺るがない理想を持って制作に取り組む事は上達するための最短コースなのではないでしょうか。受験生はしばしば不安からいわゆる「描きかた」に走りがちですが、結局それだとある程度までやれてもそれ以上の高みは望めません。自分の目指すものが「美術」の世界であり、その本質は魅力の追求である事を忘れてはいけません。それはやり方を学ぶ事で出来ることのずっと先にあるものです。

K.Oさんの作品。
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静物デッサンとして、石膏像が置かれた状況を丁寧に表現出来ています。床に落ちた影の微妙な変化の捉え方も良いです。非常に明解で見やすく、落ち度の無い完成度の高さが目を引きますが、形の探りにはもう1段階複雑さが出てくると尚良いです。事によっては探り不足でスカスカな内容になってしまう危険性も含んでいるので、意識的にコントロール出来るよう経験を積んでいけるといいと思います。

Y.M君の作品。
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空間を包み込むように全体的な探りがなされていて、量感や奥行きの感じられる作品になっています。全体にバランスよく作業を進める事によって、ひとつながりの形という点では効果を成しているのですが、逆に強い意志を持って手前を引き出す作業も盛り込んでいかないと雰囲気は良くても実体感を感じられないものになってしまいます。今回は意識的にそうした作業が出来たので、元々出来ていた事が一層引き立つ内容に仕上がっています。

ここから夜間部、現役生の作品です。
T.U君の作品。
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宿題で描いてきた自画像です。背景を含め、非常に完成度の高い作品に仕上げてきてくれました。欲を言うと、腕や、胴(腰)が短くなってしまっている事でバランス面に違和感を残している事と、頭部に表現の浅さが感じ取れるという事が上げられますが、そうしたマイナス要素もある程度補ってしまうほどの説得力がこの作品にはあります。どんなにありふれた課題であっても、作品として最高のものを出す。これは一瞬大変な事のように聞こえますが実はそうでもなくて、本来好きで始めた「美術」であるので、それを楽しんでやればいい。ただそれだけの事なのです。受験の為の勉強だと思って日々のデッサンが義務的になってしまったり、興味が持てなくなってしまうとそれだけ成長も遅くなってしまいます。惰性でやれるほど美術は単純ではないし、嫌々やるものでもありません。皆さんには是非、目的と目標を明確にして、楽しんで制作に取り組んで欲しいと思います。

T.Dさんの作品。
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彫刻科では珍しく、絵画的に作品を追求しています。彫刻科だからといって「彫刻」らしくないデッサンがダメという事ではなく、結局は作品として魅力的であるかどうかが重要(芸大で言うと特に2次素描)なので、むしろ自分のオリジナリティを大事にしていく事は最終的に武器になります。この作品は頭部が魅力的に描けている分、手前の腕が弱くなってしまっているのがもったいないです。細部の表情が無いところほど(形や色の変化の少ないところ)、調子だけで説得力を出すのは難しいので、しっかり時間をかけて表現していく必要があります。

K.Kさんの作品。
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ブルータスを包帯でぐるぐる巻きにして、細部にとらわれない大きな量感や空間を掴む。というのが今回の課題の趣旨でした。この作品は後半までなかなか構造感が見えてこず(形と陰の関係が整理出来ない)具体的に量感を説明するのに苦労していましたが、最終的に、実際通りの色を忠実に追うというこれまでの作業から、光源の設定は安定させたまま、面と調子の関係を自分でコントロールする事が出来ました。デッサンでは実際通りに描くというのは基本ではありますが、それだけだとどうしても作品の中で実際の印象が出るところまで中々到達出来ないというジレンマに陥ってしまいます。デッサンでは紙の(空間の)中にモチーフを自然に見えるように組み立て直すという事が求められています。その為にはどうしてもある程度創作が必要になってくるので、どうしたらどうなる。この場合はどうすべき。という経験に基づいた対処法を地道に身に付ける事が重要です。

T.U君の作品。
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ダビデの顔パーツと耐火煉瓦と布の構成課題です。構成では様々な見せ方の方向性がありますが、この作品のように現実にあり得る配置の状況を再現するような構成も一つです。この場合はどんなに置き方に気を使ってもそれだけでは、アクロバットな配置をした作品など、構成にこだわった作品に魅力負けしてしまいます。では何で勝負するかですが、「形の精度」と「密度」これに尽きます。構成にこだわればこだわるほど単純に密度を上げる時間が少なくなるので、そこを逆手に取って誰よりも完成度と言い切りを徹底して「つくり込む力」で評価を勝ち取る作戦です。逆に言うとこのタイプの構成で密度がずば抜けてなければアピール出来るものが何も無くなってしまうのでそこはメリット、デメリットを分かった上で選ぶ必要があります。この作品はレンガの刻印や、マスクの完成度の高さに好感が持てます。写真では分かりにくいですが、布の表現がさらに追求出来ると尚良いです。

K.Kさんの作品。
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こちらは上の作品とは対照的に、アクロバットな構成になっています。3つのモチーフの特徴から最大限効果的な「役割」を見つけ出せています。こうした方向性での構成で勝負していく場合、折角時間をかけて心棒をつくるのと、その後もつくりにくい形(時間がかかる)になるので、出来るだけ他の人の作品と似てしまう事無く、オリジナリティを訴えられるものを出していく事が必要です。似た作品が連発してしまう状況では、時間をかけただけ損をする、という事になり兼ねません。この作品では、レンガの上に目を点で立たせています。ここまではかなり多くの人が同じような事をすると予想出来ますが、この作品は布の扱いが非常に良く、魅力を一層引き立てています。そして何より驚かされるのが、難しい形に挑戦しているにもかかわらず、密度感がずば抜けて感じられる事です。(レンガの刻印もしっかりつくられています)構成課題は模刻や首像、動物などと違ってスピーディな決断と進行が求められます。しっかり経験を積んで完成までのリズムを掴んでおきたいところです。

T.U君の作品。
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非常に完成度の高い作品です。癖っぽさが無く、素直で丁寧な描写に好感が持て、それが質の高い魅力に繋がっています。頭部の描写も見事です。顔はパーツは似ているのですが、やや表情が寄ってしまって見えるので、さらに客観的に見比べられるようになると良いです。入試は1度限りなので、隙のないデッサンを目指すのは大切な事と言えます。ただしそれが先行してしまって守りに入ってしまうと途端につまらない作品しか描けなくなってしまうので、目指すものは常に1ランク上を捉えておいて欲しいです。

K.Kさんの作品。
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今回も高い実力の感じられる作品を見せてくれました。まだまだ感覚に任せて確信の無いまま描き進めてしまっている時が見受けられますが、そうした部分を無くしていく方向性ではなく、感覚はむしろ大事にしながらも、それを意識的にコントロール出来るようになれたら良いと思います。感覚で描いているときは部分的になってしまいがちで、全体で見るとギクシャクしてしまい、はまってこない事が多いですが、探っているもの自体は実は魅力的だったりします。描き始めから完成まで一息で走りきってしまうのではなく、段階ごとに作品を自分なりにしっかり評価して、その後の指針をしっかり立て、改善すべき点とその対処法を明確にしながら進められると良いです。対処法(応用力)は経験に応じて増えていくので、毎課題で試した事を次回に生かしていくつもりで取り組みましょう。もちろんこれまでの経験は作品にしっかり反映出来ているので、どんどん良くなっています。

2学期は落ち着いてじっくり制作に取り組める最後の期間と言えます。今のうちに自分の上限をどんどん更新していきたいです。一課題一課題、自分が納得のいくレベルまでしっかり持っていく事。これが大事です。うまくいったかいかなかったかで終わらせてしまうのではなく、過程を充実させ、結果を反省して下さい。今足踏みしている余裕はありません。来年の入試で勝ち残る為に、与えられた時間を無駄にしないよ、全力で取り組んで悔いの残らない2学期にしていきましょう!