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夏期講習開始。実材実習の台座制作。

彫刻科の小川原です。夏期講習が始まりました。前期が終わり、中期に入ります。前期は8日間と短い期間ですが、多くの事を学べたんじゃないかなと思います。かなり力をつけてきましたが、まだまだこれからです。さらにグッと上達してもらえるよう、講師一同全力で指導していきますので、皆さんも負けずについてきて下さい!
前期では昼夜1人ずつ現役芸大生にデモンストレーションに入っていただきました。非常にレベルの高い作品を間近に見る事が出来て、生徒の皆さんも多いに刺激を受けた事と思います。こうした機会は滅多に無いことなので、このチャンスにしっかり見て感じ取って欲しいです。
前期昼間部のデッサンのデモンストレーション。T.Aさんの作品。
新井
強引になる事無く、的確に、計画的に、そして着実に探りを重ねていたのが印象的でした。特に今のみんなに必要なものの見方と言えるのではないでしょうか。あらゆる角度からモチーフを分析し、しっかり理解してから手を動かす。当たり前と言えばそれまでですが、意外と意識出来ていない人は多いんじゃないかなと思います。自分で形を割り切ってしまうのではなく、あくまでモチーフの魅力に素直に向き合う事は表現活動において基本中の基本であり、同時に最も難しい事であるとも言えます。この作品はどの部分を見ても簡単に済ませてしまったところは無く、深みがあります。さらにそれらが全体で響き合っている事が素晴らしいです。

前期夜間のデッサンのデモンストレーション。R.Iさんの作品。
今井
開始と同時にすぐに描き始めるのではなく、しばらくの間像を眺めて制作の計画を練っていたのが印象深かったです。画面の中に像をどのようにつくっていくのか、その最終的なビジョンがしっかりしている事でブレの無い制作工程を踏む事が出来ます。像のイメージをしっかり自分の中に落とし込めていれば、今描いている内容の中で印象を外している部分にすぐ気づけるし、直していく方向性も迷わず見つける事ができます。計る事に頼りすぎている(計る事は良い事だが、他の見方があまり出来ていない)人は、一旦狂いが生じると混乱して手が付けられなくなってしまうのではないでしょうか。また、割と合わせたつもりでも何となく似てない。という事も多いと思います。計って合わせるというのはあくまで補助的な方法論でしかないので、まずはモチーフの魅力を見切る目と、それをそのまま出力出来る腕を養う努力をする事、これが大切です。この作品は端々まで非常に触覚的に形を感じ取れる内容に仕上がっていて、具体的に形や空間がどうなっているのか、再現性の高い作品に仕上がっています。

中期以降も全部で8回のデモンストレーションを見る事が出来ます。見逃す事無く、役立ててもらえたらなと思います。
生徒の皆さんもかなり頑張ってくれて良い作品も多く見る事が出来ました。特に良かった2点を紹介します。
浪人生、K.S君の作品。
アバタ2
アバタのヴィーナスは小振りな作品ですが、動きが単純ではないので本当の意味で印象を引き出すのは非常に難しい像です。この作品はアゴからおでこまでの捻れの面展開がよく表現出来ています。全体のバランスや印象も良く、完成度もしっかり上げられました。自分で終わりを決めてしまうのではなく、最後までアバタを捉え続けた丁寧な探りに好感が持てます。今回はサイズの小さい像でしたが、大きなものになっても全体での印象合わせを怠らずに取り組んで欲しいです。

昼間部もう一人のK.S君の作品。
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全体に印象よくまとめられています。特にバルールに対する意識が高く、空間的なモチーフの魅力が上手く捉えられています。組み石膏では単体石膏デッサンに比べて形も色も確認しなければいけないポイントが非常に多くなります。しかしだからといって計り倒すように描き進めるのではなく、むしろ絵画的に、画面全体を包み込むように描写していく事が非常に重要になります。この作品ではそうした捉え方に着眼点を置く事で成功している事が沢山あります。逆に全体を大切にすればするほど一つ一つを具体的な形に置き換えていく事が難しくなり、客観的な構築性が不十分となって雰囲気に偏ってしまいがちです。この作品では特にマルスが形にし切れませんでした。まさにそれは「何を取るか」というジレンマであり、その時点での作者の技術と与えられた時間の中で、最大限良い作品にする為にいろいろな事を取捨選択した結果の産物であると言えます。

現役生K.Kさんの作品。組み石膏

特に現役生にとっては難しい課題だったんじゃないかなと思いますが、彼女は元々広い視野の持ち主で、高いバランス感覚も持ち合わせているのでブレる事なく持てる力を出し切って表現し切れたのだと思います。炭使いが独特で、深い味わいを出しています。単純に「絵」として魅力的に見えるのが素晴らしいです。浅いところで結論を出してしまうのではなく、魅力的なモチーフにひたすら素直に向き合った結果と言えます。欲を言えばマルスの頭部に明るさが足りないのと、背中の反射光部分に形がなくなってしまっている事が惜しいところです。

中期以降も生徒の皆さんの頑張りに期待しています!体力的にはとても負担が大きいところがあると思いますが、前向きに集中して取り組めばそれだけ実力もアップする事間違い無いです。体調管理には万全を期して、やりきった夏にして欲しいです。経験も、実力も、自信も身につける夏期講習にしましょう!

ところで彫刻科昼間部は1学期に実材実習ということでテラコッタの自刻像の制作をしました。1学期中に原型の制作と土の掻き出し、乾燥まで進めておき、夏期講習までの休みの間に台座の制作と窯で作品の焼成を行ったので紹介します。
窯は今回はガス窯を使用しました。8つあるバーナーを低いガス圧で順次点火していき、全部点火したら圧を上げていく事で温度を上昇させます。最終的には800℃まで温度を上げて、土を素焼きの状態に変化させます。
下の写真は窯内部の温度を示したものです。右が窯上部の温度。熱は上に上がるのでやや温度差が出ます。
800
温度が下がってから窯のフタを開けて作品を入れ替えます。作品数が多いので複数回に分けて焼成しました。
焼き上がり
台座は木かセメントで制作しました。まずはセメントでの台座づくりからです。セメントは建物などの基礎工事と同じように、型枠をつくってそこに詰める形を取りました。まずはコンパネ(裏側がコーティングしてあるもの)に型枠の寸法を書き入れて、電動丸鋸や手鋸でカットします。
線入れ
次は型枠の組立てです。ガムテープで繋げていくのですが、角に金折れを入れて直角を出します。
型枠
首像に差し込む心棒は最初から台座に埋め込む形をとりました。これをひっくり返してセメントを詰めます。
型枠2
セメント(モルタル)を水と混ぜて撹拌機で混ぜ合わせます。今回は最初からセメントと砂がバランスよく混ぜてあるドライモルタルを使用しました。水は多すぎても少な過ぎても良くないです。流すというより手でもって詰め込むくらいがいいです。
セメント
最後にモルタルを逆さにした型枠に詰めていきます。隙間が出来ないよう気をつけます。急激な乾燥を防ぐ為にビニール袋で養生して硬化を待ちます。
セメント2
次は木での台座づくりです。使う木は楠です。木彫用の素材として一般的なもので、僕の制作での余り物を使いました。
最初に材料に線を書き入れます。
線描く
次に希望のサイズより少し大きいサイズにチェーンソーで荒取りします。荒取り
実際のサイズを測り、面の基準を決めながら電気カンナで荒削りしていきます。削りすぎて量が足りなくならないように、全ての面が90°の関係になるように気をつけます。
線入れ2

カンナがけ
ほぼ電気カンナで形は作ってしまいます。その後ベルトサンダーで面を整えます。
ベルトサンダー
最後はランダムアクションサンダーやオービタルサンダーで仕上げます。
仕上げサンダー
心棒をさす為の穴をつくります。心棒は2x3の小割りを使うので四角い穴をあけます。まずは中心に2x3の四角を書き、ボール盤でその内側を穴だらけにします。
穴空け
穴だらけになった残りの部分を鑿で崩していきます。小割りがうまく差し込めるか確認しながら進めます。
鑿
基本は木地での仕上げですが、バーナーで焙って黒く木目を出した人もいました。
バーナー
台座も完成し、焼成も無事全員うまくいきました!2学期に作品の仕上げを入れてもらって完成になります。

たまにはこうして実際に作品がどのようにつくられているのか体験してみるのもいい経験になります。結構大変だったと思いますが、皆楽しかったんじゃないかな。また完成が楽しみです。最後まで自分の作品に責任を持つ事。作家のたまごとして、そこを学んでもらえたらなと思います。
完成

夏期講習に向けて、気持ちを引き締めていきます!

こんにちは!彫刻科の小川原です。いよいよ1学期も終わりですね。時には学んだ事を振り返って整理してみることも大切です。是非、1学期を有意義なものとして締めくくって欲しいです!
さて、それでは1学期後半の学生の作品を紹介します。まずは昼間部からです。

実材実習課題で、テラコッタ(素焼き)の自刻像を制作しました。去年までは石膏取りを行っていましたが、より完成度の高い作品に仕上げて欲しいということで、今年はテラコッタに挑戦してもらいました。土は信楽土(薄い肌色)黒泥(グレー)テラコッタ土(オレンジ)の三種から選び、技法としては掻き出し(原型完成後、中の土を刳り貫いて作品を空洞にし、厚みを薄く均一にする)での制作です。K.S君の作品。彼は黒泥で制作しました。
自刻
意思の感じられるような、魅力のある作品になりました。表情に強い説得力がある半面、それ以外の部分が迫りきれておらず、やや簡単に仕上がってしまっているので、内側の構造にこれまで以上に敏感に反応出来るようになるとさらに質の高い作品に出来そうです。
完成作品は頭部の一部(主に後頭部)をワイヤーでカットし、その断面から中の土を掻き出していきます。空洞になったらカットした部分を戻し、修正と更なる密度上げを加えて乾燥させます。完全に乾燥したら窯で焼成します。今回は800℃での素焼きです。
↓縛った髪は焼成後接着します。この段階では修正のしやすさ(いろいろな角度で置ける)を優先して切り離しています。大体乾燥しました。焼成後の色味もこんな感じです。1学期が終わって、夏期講習までの間に台座の制作と、焼成を行ってもらいます。
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木炭デッサン、奴隷像です。M.Nさんの作品。形の張り出しと量感のある仕上がりです。炭使いもやわらかく、魅力を高めています。やや正面から見たときの顔が似ていないのと、トップライトが定まりきっておらず、光の空間が明解でないのが今後の課題です。
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素描の課題で、自分の好きな石膏像をアトリエに自由に設置し、空間ごと描く。という課題を行いました。普段描きなれているシチュエーションとはまた違った切り口で石膏像や、それを取り巻く空間に迫る事で、見方の幅を広げ、表現力を強化します。
K.S君の作品。コンテで描きました。モーゼの印象もよく取れていて、窓枠のシャープな表現も心地よいです。やや床面に奥行き感が足りないので、パースの理解を深めるだけでなく、描画テクニックや質感に対する感覚的に反応出来るよう修練していきたいです。
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次は夜間部の作品です。段ボールと竹ひごを構成(造形)し、それを描く。という課題を行いました。ここ2年芸大2次素描ではこのようにモチーフを自分でつくらせる試験が続いています。デッサン力だけでなく、受験生がどういった造形に対するセンスを持っているのか、あるいは今後展開していくだろうかというところをを見るような内容です。何もポイントを知らない状態だと不利な課題なので、ある程度対策をしていく必要があります。でも受験対策ということ以上に、自ら考え、自らの責任で作品にする。という事は美術を志すものとしては基本中の基本です。
K.Kさんの作品。空間、質感共に良く描けています。割と短い時間での課題でしたが、作品的なボリュームを十分に感じます。パースが正確でないので、確実に合わせられるよう経験を積んでいきたいです。
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U.T君の作品。鋭い先端での接地が魅力的な作品で、密度も十分です。段ボールの面のタッチをパースに合わせると、段ボールの内側の空間がさらにきれいに描けたと思います。
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石膏デッサン、ラボルトです。この像は基礎の練習課題でよく出される像ですが、意外に難しく、バランスや量感、印象を合わせるのはなかなか難しいです。
U.T君の作品。特にこの位置でのラボルトは絵になりにくいですが、全体に必要な事が一通り出来ており、質の高い作品に仕上がっています。通常より短い時間での制作でしたが、粘って描ききる事が出来ました。欲を言うと、台座を中心に、頬や首など、広い面(変化の少ない面)になった時、表現が単調になるようなので、さらに観察を深め、表現力を高めて深みのある描写を目指したいです。IMG_0543

さて、こうして1学期を過ごしてみてどうでしたか?きっとあっという間だったんじゃないでしょうか?頑張って取り組めた人、頑張りきれなかった人、何かを掴めた人、掴み損ねた人。いろいろな想いがあると思います。でも忘れないで欲しいのは、入試は必ず訪れるということと、それまでに与えられた時間は誰にも均しく平等であるという事です。だったらやる事は一つですよね!自分がやれるだけの事をすべてやって、ほんの少しずつでいいから、成長の歩みを止めないで下さい!
少しでも上達の手助けが出来るよう、講師一同全力で指導に当たります。夏期講習での皆さんの成長に期待しています!一緒に頑張りましょう!

もう1学期も後半戦です。

こんにちは!彫刻科の小川原です。今日は前回に引き続き社会人講師の紹介をしたいと思います。昼間部では彫刻論の第2回目を行いました。彫刻論で紹介した作品の写真とともにそれぞれの先生にコメントをもらいました。

氷室幸子先生は、僕の芸大時代の同級生で、6年間一緒に大学で彫刻を学んだ仲です。まさに切磋琢磨の関係!作品に対するコンセプトが非常におもしろい作品です。毎作のモチーフとなるものはどこか人の気配を感じさせるもので、それが時とともに形を変えていく事が果敢なくもあり、また美しくもあります。
ブランコ
ブランコ
口紅
口紅
のど飴を素材にして鋳造する作品です。ゆっくり溶けながら形が無くなっていく半面、甘い香りが、質量を増して空間を占めていきます。

竹邊澄子先生は僕の大学の後輩です。テラコッタで具象をつくるという点で、僕にとってかなり近しい存在です。やわらかな曲線をもつ人物彫刻で、物語性のある作品を制作しています。
竹辺アップ
Boy,boy
テラコッタ H178×W60×D50cm
東京芸術大学の卒業制作作品です。表面が滑らかになるまで形に迫り、素材の新たな質感を追求しました。
竹辺2
Alice
テラコッタ H140×W60×D50cm
東京芸術大学大学院在籍時の作品です。釉薬で着色した義眼を使用しています。自分を追求する不安と迷いを、少女の像に重ねました。

こうして見ると、作品に対するアプローチって本当に人それぞれですよね。何かの模倣でなく、自分の中の真実に近づけば近づくほど、生まれてくる作品も全く違うものになります。そういった意味では、作品って自分を映し出す鏡みたいなものなのかも知れません。

さて、これで彫刻科の社会人講師の紹介は一通り終わりました。ここで彫刻科の学生の授業作品の一部をお見せしたいと思います。
昼間部では5月に大型組み石膏静物ライティング課題を行いました。ベーシックな課題だけでなく、こうした特殊な課題も実力を底上げしていく上で非常に重要です。
組み
今回は経験に応じて木炭紙のサイズを通常のサイズと倍版サイズ選択して行いました。制作期間が
4日と、物量に対してやや短いところもありましたが、力作が多く並びました。また2学期にさらに力をつけたところでもう一度やってみたいと思います。
K,S君の作品。倍版ですが、全体をバランスよくコントロールできています。5月の時点ではなかなか良い出来といえます。ただ、作品性で見ると、手前のアポロンに頼りすぎている部分があるので、他のモチーフの魅力もさらに引き出していきたいです。
20130528大型組み石膏2

指導無しで行ったヘルメスの頭部模刻です。ヘルメスは動きも表情も難しく、物量もあるのでなかなかいい作品が出る事は少ないですが、この時期自力でこのレベルの作品がつくれたら立派なものです。構造ではまだまだ不満な点が多いので、さらに視野を広げて像の印象から外れないようにフィニッシュさせたいです。K,S君の作品(今年はK,S君が2人います)
ヘルメス

さて次は夜間部の作品です。5月の末に組み石膏のデッサンを行いました。経験が少ないと1体描くのも手いっぱいになってしまうものですが、なかなかの力作を完成させる事ができました。
K,Kさんの作品。調子や空間にやや問題を残すところがありますが、素直な観察と、粘り強い描写が魅力的な作品に仕上がっています。何より「描くのが楽しい」というのが伝わってくるのが良いです。20130603組み石膏菊池

U,T君の作品。奥のフォーンの脇が空間に馴染んでいない事や、ホーマーからフォーンまでの隙間の距離感がやや潰れているのがもったいないですが、光、陰のバランスや、コントラストのコントロールがとても良く出来ています。
20130603組み石膏臼田

先日行った鶏の塑像作品です。動物は常に動くので、モチーフの構造をきちんと分析し、理解しながら形にしていく事が必要です。表面の凹凸を追うだけではいかにも作り物っぽくなってしまうので、骨格や筋肉もイメージしながらつくれると良いです。
K,Kさんの作品。全体のバランスがよく、まず、きちんと2本の脚で立っているように見えるのが良いです。頭部、尾羽、脚と、表現を密度に頼れる部分は完成度が高いですが、逆を言うとそれ以外に形としての意味を十分に与えられていません。表情の少ないところほど、構造としての強さをより引き出すつもりでやり取り出来ると良いです。鶏

もうすぐ1学期も終わり、夏期講習会が始まります!夏期講習では各期現役芸大生によるデモンストレーションを入れていきます。普段なかなか見れる機会の無い事ですから、是非このチャンスに何か一つでも得るものがあればと思います。僕たち講師もどんどんデモをして盛り上げていきますので期待していて下さい!

新宿美術学院 新宿校 彫刻科の紹介。

こんにちは。新宿美術学院彫刻科主任の小川原です。今日は彫刻科の紹介をしたいと思います。
彫刻科昼間部では年間を通じて、芸大、美大の彫刻科受験に欠かせない基礎力を強化していく事を目的としたカリキュラムをベースに、応用力を鍛える課題も要所に織り交ぜ、近年多様化しつつある試験内容に対しても100%の実力を引き出せるよう、総合的な力を身につける為の指導や課題編成を徹底しています。さらには個々の特性を把握した上で、どうしたら最も効果的に上達に結びつけていけるかを講師間で分析、共有し、生徒それぞれに対しての最適な指導を常に模索しています。昼間部は日々着実に実力を伸ばしていて、ここ最近になって表現力が大分身に付いてきたと実感があります。さらに、一つの「作品」としての完成度や魅力をさらに高めていけるようそれぞれの努力に期待しています。
夜間部では特に基礎力の拡充に重点を置き、毎回の課題で学んで欲しい要点をはっきりと提示し、着実に実力をあげ、経験値を積んでいけるよう丁寧で細やかな指導を心がけています。現役生は成長の伸びしろがたっぷりあるので、まさに日々の授業が勝負といえます。上達するチャンスを一つも逃さない為に、新美の彫刻科夜間部では毎日必ず講師が出講し、指導に当たっています。今年の夜間部は実力も向上心も非常に高く、課題ごとに実力を上げていることに日々驚かされます。少しずつ新しい事を覚え、出来る事が増えることはとても楽しい事だと思います。この調子でどんどん吸収していって欲しいです。

今年の彫刻科は社会人講師4名、学生講師2名の計6名で指導に当たっています。どの講師も非常に指導経験が豊富なので、指導がとても充実しています。生徒の皆さんには是非それぞれの講師とじっくりコミュニケーションをとって、幅広いものの捉え方を学んで貰えたらなと思います。

先日夜間部で彫刻論を行いました。彫刻論では、扱う素材も表現も異なる社会人講師4人が順番に自らの作品をプロジェクターを使って紹介しつつ、彫刻に対する考え方や、取り組み、そしてその変遷について話をしてもらうことで、彫刻に対するより明確なヴィジョンを持ってもらう事と、今予備校で学んでいる事が、いかに重要かということを再確認してもらう事、あとは単純に彫刻に対する興味をさらに強く持ってもらう事を目的としています。
夜間部第1回は僕、小川原と根岸先生が行いました。1学期末の第2回を氷室先生と竹邊先生にお願いしています。昼間部では第1回に小川原と氷室先生、第2回に根岸先生と竹邊先生。2学期に昼間部、夜間部ともに小川原と根岸先生が第2編を予定しています。
ここで講師の紹介を兼ねて、彫刻論で紹介した作品の一部を紹介します。

夜間部第1回彫刻論 小川原隆太 第1編
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僕の第1編では芸大の学部の卒業制作、院の修了制作から、修了後の3点の塑像作品を制作工程を含めて順番に紹介しました。2編ではその後木彫に変化した経緯を話し、作品を解説していこうと思います。
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今日も空は高く
2007 ?H.140×W.200×D100cm
テラコッタ 桜
東京芸術大学院修了制作作品です。肌と服の色の違いは土の種類の違いによるものです。作品を取り巻く空間や、作品の中にある、あるいは鑑賞者との関係性について考えました。この作品は東京芸術大学大学美術館に収蔵されています。
ガラス首5
untitled
2007 ?H.30×W.30×D.30cm
ガラス 木
こちらも修了制作作品です。気泡の無いガラスの塊で出来ています。ガラスは、塑像原型→石膏取り→石膏原型→シリコン取り→ロウ原型→耐火石膏型→脱ロウ→ガラス流し込み。と、非常に手間がかかる上、あまり大きなものが出来ませんが、それを素材の魅力が補って余るものがあります。
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朝日は大地に目覚めの時を知らせる
2009 ?H.160×W.160×D.250cm
テラコッタ
牛も人物も実物大なので非常に大きな作品です。この作品も場所によって土の種類を変えて色をつくっています。物語性を意識して制作しました。
c
life
2010 ?H.200×W.290×D.175cm
石膏
10人の人が一塊になっている作品です。粘土を3トン使用しました。社会の中の自分、という事を深く考えた時期で、人間同士の関係性についての表現に最も力を入れた作品です。この作品が僕の最後の塑像作品となり、木彫に変わっていきます。

僕は具象作品を制作しているので、生徒達には分かりやすかったかと思います。直接的にデッサン力や塑像力を必要とする作品なので、その重要性も少なからず伝わったでしょう。

根岸創 第1編
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根岸先生の第1編ではこれまで制作してきた数多くの作品をどんどん紹介していきました。それぞれの作品の関係性や、進化、変化が分かって思わず合点がいく場面もありました。ジブリ美術館や、JAXAへの作品の関わりなども非常に興味深かったです。
4.時計台
Winged Clocktower
2012 ?H.350×W.380×D.380cm
ステンレス、銅、時計含む配線関係
曙橋駅にある東京都立総合芸術高等学校に設置された時計台をデザイン、制作しました。
1.プリックリー
Prickly Leaf(M)
2008 H.70×W.30×D.20cm
鉄、ポリエステル樹脂
中心に向かう鉄の棘の先端に黄色い透明樹脂で肉付けし、その周りにも青い樹脂でさらに肉付けをしています。裏から光をあてることで色の変化がより美しく見えるはずです。
2.ドラゴン
Carillon Dragon
2004 ?H.220×W.310×D.130cm
「Carillon」とは教会などに見られる組み鐘を意味しており、この竜骨のオブジェ自体がバチで叩いて音を奏でる「楽器」であることを目的として作りました。
3.crown
Crown
2005 ?H.30×W.20×D.30cm
ステンレス、鉄、ガラス、ライト
王冠をかぶった孔雀鳩のランプです。
ステンレスで網目状に本体を作り、吹きガラスの職人の方にガラスを吹き込んでもらいました。

根岸先生は僕とは異なる素材や作品の方向性をもっているので、それを同時に見せることができてとても良かったです。これまで積み重ねられたキャリアが物語る作品の数やクオリティの高さを実感してもらえたと思います。
次回は氷室先生と竹邊先生を紹介します。

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