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芸術の秋!イベントの秋!

こんにちは。彫刻科の小川原です。今月の13日、14日は彫刻科の公開コンクールがあります。芸大を第一志望にしている人はぜひ受けてみてください。学外生は個別に面談も行う予定ですので、作品等講評希望の方は当日持参してください。日程は13日はデッサン、14日は塑像となっています。この時期でのコンクールの結果がそのまま入試につながっていく訳ではないですが、現時点での実力を検証し、本番当日までの指針をしっかりと立てることが重要です。
さらに20日には、原則高校生対象ではありますが、彫刻科で1日オープンスクールを行います。今回は「塑像を徹底攻略 モデル首像を1日で完成」と銘打って、芸大入試でも出題されるモデル首像に焦点を絞り、講師によるデモンストレーションと解説を交えながら制作にあたってのポイントを学びます。参加費は無料です。学内、学外、経験の有無は問いません。人数によっては締め切りもありますので、早めの申し込みをお願いします。新美のホームページのトップにバナーがありますのでご覧ください。

さて、今回も日々の制作の中で出てきた完成度の高い作品をいくつか紹介したいと思います。
まずは昼間部からです。1学期に行った実在ゼミ、今年はテラコッタでした。夏に窯で焼成、台座の制作を行い、2学期に入ってから仕上げを行いました。テラコッタ作品は素材として魅力を引き出せる可能性に溢れていますが、焼いたそのままだと深みがなく、スカスカして軽い印象を受けてしまいます。少し色をのせたりすることで作品に質感と抵抗感を与えていきます。ただしあくまで素材の魅力を失わない程度にとどめておく必要があります。
R.Y君の作品。信楽土での制作。台座は楠。
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迫力があり、生き生きとした表現が魅力的な作品です。カッティングや台座の形もこだわり、一つの「作品」として向き合えていることに好感が持てます。細部や髪の表現方法に関してはさらに研究を深めていきたいです。

K.S君の作品。黒泥での制作。台座は楠。表面を焼いて焦がしています。
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全体と細部の関係性が無理なく自然に捉えられていて、端々にリアリティを感じさせる気の利いた造形がなされています。非常に完成度が高く、一つの彫刻作品として鑑賞するに値する内容になっていると思います。これからは短時間でも、この作品を超えていくくらいの意識で取り組めると良いです。

R.A君の作品。マルス+水色のタスキ。
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炭の発色が独特で魅力があります。全体にマルスらしさが良く捉えられていて、目を引く作品になっています。全体に完成度が高いですが、欲を言うと体の陰側の回り込みと、あごの下の構造の表現がより考えられるとさらに隙のないものにできたと思います。次回のデッサンも楽しみです。

T.Y君の作品。
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調子が美しくコントロールできています。実物のモチーフの持つ印象に素直に忠実に、そして実直に取り組んだ結果の賜物だと思います。一つ一つの形を表現するための探りがとても丁寧で、遠目の印象だけでなく、近くで見ても説得力のある表現ができていることに作品としての完成度の高さを伺えます。下地で時間を使っているようなので、出だしで素早く的確な見切りができるようになってくるとより短時間でもこのレベル、あるいはそれ以上のものが描けるようになると思います。

K.S君の作品。
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気迫が感じられるデッサンになっています。制作のプロセスや、セオリーに縛られる事無く、モチーフから感じた感動と自分の世界観を画面の中で魅力的に形にする事が出来ました。堂々と、揺るがない理想を持って制作に取り組む事は上達するための最短コースなのではないでしょうか。受験生はしばしば不安からいわゆる「描きかた」に走りがちですが、結局それだとある程度までやれてもそれ以上の高みは望めません。自分の目指すものが「美術」の世界であり、その本質は魅力の追求である事を忘れてはいけません。それはやり方を学ぶ事で出来ることのずっと先にあるものです。

K.Oさんの作品。
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静物デッサンとして、石膏像が置かれた状況を丁寧に表現出来ています。床に落ちた影の微妙な変化の捉え方も良いです。非常に明解で見やすく、落ち度の無い完成度の高さが目を引きますが、形の探りにはもう1段階複雑さが出てくると尚良いです。事によっては探り不足でスカスカな内容になってしまう危険性も含んでいるので、意識的にコントロール出来るよう経験を積んでいけるといいと思います。

Y.M君の作品。
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空間を包み込むように全体的な探りがなされていて、量感や奥行きの感じられる作品になっています。全体にバランスよく作業を進める事によって、ひとつながりの形という点では効果を成しているのですが、逆に強い意志を持って手前を引き出す作業も盛り込んでいかないと雰囲気は良くても実体感を感じられないものになってしまいます。今回は意識的にそうした作業が出来たので、元々出来ていた事が一層引き立つ内容に仕上がっています。

ここから夜間部、現役生の作品です。
T.U君の作品。
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宿題で描いてきた自画像です。背景を含め、非常に完成度の高い作品に仕上げてきてくれました。欲を言うと、腕や、胴(腰)が短くなってしまっている事でバランス面に違和感を残している事と、頭部に表現の浅さが感じ取れるという事が上げられますが、そうしたマイナス要素もある程度補ってしまうほどの説得力がこの作品にはあります。どんなにありふれた課題であっても、作品として最高のものを出す。これは一瞬大変な事のように聞こえますが実はそうでもなくて、本来好きで始めた「美術」であるので、それを楽しんでやればいい。ただそれだけの事なのです。受験の為の勉強だと思って日々のデッサンが義務的になってしまったり、興味が持てなくなってしまうとそれだけ成長も遅くなってしまいます。惰性でやれるほど美術は単純ではないし、嫌々やるものでもありません。皆さんには是非、目的と目標を明確にして、楽しんで制作に取り組んで欲しいと思います。

T.Dさんの作品。
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彫刻科では珍しく、絵画的に作品を追求しています。彫刻科だからといって「彫刻」らしくないデッサンがダメという事ではなく、結局は作品として魅力的であるかどうかが重要(芸大で言うと特に2次素描)なので、むしろ自分のオリジナリティを大事にしていく事は最終的に武器になります。この作品は頭部が魅力的に描けている分、手前の腕が弱くなってしまっているのがもったいないです。細部の表情が無いところほど(形や色の変化の少ないところ)、調子だけで説得力を出すのは難しいので、しっかり時間をかけて表現していく必要があります。

K.Kさんの作品。
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ブルータスを包帯でぐるぐる巻きにして、細部にとらわれない大きな量感や空間を掴む。というのが今回の課題の趣旨でした。この作品は後半までなかなか構造感が見えてこず(形と陰の関係が整理出来ない)具体的に量感を説明するのに苦労していましたが、最終的に、実際通りの色を忠実に追うというこれまでの作業から、光源の設定は安定させたまま、面と調子の関係を自分でコントロールする事が出来ました。デッサンでは実際通りに描くというのは基本ではありますが、それだけだとどうしても作品の中で実際の印象が出るところまで中々到達出来ないというジレンマに陥ってしまいます。デッサンでは紙の(空間の)中にモチーフを自然に見えるように組み立て直すという事が求められています。その為にはどうしてもある程度創作が必要になってくるので、どうしたらどうなる。この場合はどうすべき。という経験に基づいた対処法を地道に身に付ける事が重要です。

T.U君の作品。
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ダビデの顔パーツと耐火煉瓦と布の構成課題です。構成では様々な見せ方の方向性がありますが、この作品のように現実にあり得る配置の状況を再現するような構成も一つです。この場合はどんなに置き方に気を使ってもそれだけでは、アクロバットな配置をした作品など、構成にこだわった作品に魅力負けしてしまいます。では何で勝負するかですが、「形の精度」と「密度」これに尽きます。構成にこだわればこだわるほど単純に密度を上げる時間が少なくなるので、そこを逆手に取って誰よりも完成度と言い切りを徹底して「つくり込む力」で評価を勝ち取る作戦です。逆に言うとこのタイプの構成で密度がずば抜けてなければアピール出来るものが何も無くなってしまうのでそこはメリット、デメリットを分かった上で選ぶ必要があります。この作品はレンガの刻印や、マスクの完成度の高さに好感が持てます。写真では分かりにくいですが、布の表現がさらに追求出来ると尚良いです。

K.Kさんの作品。
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こちらは上の作品とは対照的に、アクロバットな構成になっています。3つのモチーフの特徴から最大限効果的な「役割」を見つけ出せています。こうした方向性での構成で勝負していく場合、折角時間をかけて心棒をつくるのと、その後もつくりにくい形(時間がかかる)になるので、出来るだけ他の人の作品と似てしまう事無く、オリジナリティを訴えられるものを出していく事が必要です。似た作品が連発してしまう状況では、時間をかけただけ損をする、という事になり兼ねません。この作品では、レンガの上に目を点で立たせています。ここまではかなり多くの人が同じような事をすると予想出来ますが、この作品は布の扱いが非常に良く、魅力を一層引き立てています。そして何より驚かされるのが、難しい形に挑戦しているにもかかわらず、密度感がずば抜けて感じられる事です。(レンガの刻印もしっかりつくられています)構成課題は模刻や首像、動物などと違ってスピーディな決断と進行が求められます。しっかり経験を積んで完成までのリズムを掴んでおきたいところです。

T.U君の作品。
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非常に完成度の高い作品です。癖っぽさが無く、素直で丁寧な描写に好感が持て、それが質の高い魅力に繋がっています。頭部の描写も見事です。顔はパーツは似ているのですが、やや表情が寄ってしまって見えるので、さらに客観的に見比べられるようになると良いです。入試は1度限りなので、隙のないデッサンを目指すのは大切な事と言えます。ただしそれが先行してしまって守りに入ってしまうと途端につまらない作品しか描けなくなってしまうので、目指すものは常に1ランク上を捉えておいて欲しいです。

K.Kさんの作品。
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今回も高い実力の感じられる作品を見せてくれました。まだまだ感覚に任せて確信の無いまま描き進めてしまっている時が見受けられますが、そうした部分を無くしていく方向性ではなく、感覚はむしろ大事にしながらも、それを意識的にコントロール出来るようになれたら良いと思います。感覚で描いているときは部分的になってしまいがちで、全体で見るとギクシャクしてしまい、はまってこない事が多いですが、探っているもの自体は実は魅力的だったりします。描き始めから完成まで一息で走りきってしまうのではなく、段階ごとに作品を自分なりにしっかり評価して、その後の指針をしっかり立て、改善すべき点とその対処法を明確にしながら進められると良いです。対処法(応用力)は経験に応じて増えていくので、毎課題で試した事を次回に生かしていくつもりで取り組みましょう。もちろんこれまでの経験は作品にしっかり反映出来ているので、どんどん良くなっています。

2学期は落ち着いてじっくり制作に取り組める最後の期間と言えます。今のうちに自分の上限をどんどん更新していきたいです。一課題一課題、自分が納得のいくレベルまでしっかり持っていく事。これが大事です。うまくいったかいかなかったかで終わらせてしまうのではなく、過程を充実させ、結果を反省して下さい。今足踏みしている余裕はありません。来年の入試で勝ち残る為に、与えられた時間を無駄にしないよ、全力で取り組んで悔いの残らない2学期にしていきましょう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彫刻科 個別推薦入試対策

こんにちは。彫刻科の小川原です。2学期が始まりましたね!入試の足音も近づいてきて、気が引き締まる思いです。

さて、美大入試も推薦入試がもうすぐ一斉に始まりますね。新美彫刻科でも毎年数名の推薦入試志望者がいます。

各大学、意欲のある生徒が受験してくるのを期待しています。推薦入試は、各大学で課せられる試験が若干異なりますが、彫刻科では概ね作品のファイル提出と面接があります。

中には実際制作した自分の作品を当日持参しなければならない大学もあり、十分な事前の準備が必要となります。作品のクオリティはもちろん高ければ高いほど良いですが、美術系高校に通っているとかでなければ中々しっかりした作品を制作出来る環境も設備も、その機会も無いと思います。

新美彫刻科では、推薦入試志望者の個々の状況に応じて、ファイルの制作、及び彫刻作品の制作に特に力を入れています。特に作品の提出が求められる大学によっては、簡易的、趣味的な作品のレベルでは通用しない高いレベルのものを求められる大学もあります。

単純に造形的な問題に対する指導だけでなく、素材の扱い方から完成までのフォローや、作品のプレゼンテーションまでカバーしています。新美の彫刻科夜間部は生徒を放置せず、講師が必ず毎日出講するので、途中でどう進めたら良いか分からない。などの心配がなく、通常の授業も含めて安心して制作出来ます。

生徒にはまずプラン出しをしてもらい、ディスカッションを経て実制作に入ります。最終的に作品として成立させる為に素材選びも重要です。石膏取りやテラコッタ(素焼き)での制作が中心となりますが、特別な設備が必要なときは僕のアトリエにある窯や溶接機、木工機材など使って仕上げまでの工程を行います。

考えられる事、出来る事は全てやりきってこれ以上無いというところで試験に送り出す!というのが僕ら講師の共通した思いです。

推薦入試用の作品制作。現役生T.Dさん。最終的な仕上がりが楽しみです。
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推薦入試で必要なものと通常のカリキュラムで行っている事は当然違います。なので特に2学期の頭では、志望者それぞれに必要なカリキュラム設定をしています。ファイル制作用、あるいは提出用作品を制作する生徒もいれば、実技が課せられる大学を志望する生徒はそれに対応した対策をしたり様々です。

ここで個人的な事で恐縮なのですが、9月の後半に国立新美術館で作品の展示があります。新制作展という公募展なのですが、芸大、美大の先生方や、大学関係者が数多く出品する展覧会です。特に美大を目指す学生の皆さんには勉強になること間違い無い内容(具象作品も多いです)で、なにより学生は入場無料ということもあり、気が向いたら見に来てくれたらうれしいです。
ポスター一般
今年も木彫の作品を出品します。ところどころ寄せ木してますが、大体は1木彫りです。高さは2.2メートルくらいです。楠の木。元は下の台座上の丸太の部分が上まであったとイメージして下さい。飛び出た足や手、コートの裾などは寄せ木です。
「眠りに落ちる者の瞳」というタイトルです。

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左足かかとと、右足だけで重さを支えています。当然そのままでは折れてしまうので、中は全て空洞です。上から順に彫って、空洞にしながら下に彫り進めました。
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目や口も空洞になっています。個性や表情、生命感を取り去って残るものを自分なりに形にしています。でも大事なのは形より作品を取り巻く空間(空気感)です。表現したい空間がまず先にあって、それに合わせて形が出来ていく。という感覚です。
彫刻を教える身としては、受験の為の勉強だけでなく、生徒達の先輩として彫刻のおもしろさや可能性を少しでも多く伝えられたらなと思っています。
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充実した夏期講習でした!

彫刻科の小川原です。先日夏期講習が終わり、つかの間の休みに入りました。講習会はどうでしたか?多くの得るものがあったと思います。もう一度振り返ってみて学んだ事を確認してみましょう!
後期では僕も少しデモンストレーションをしてみました。試験時間に合わせての制作になったので、受験生当時を思い出すようでした。その他芸大生にもデモンストレーションに入ってもらったので、生徒の作品も含めていくつか紹介していきます。

僕のデモンストレーション作品です。ジョセフ。最初は計測具など使わないクロッキーをして像を捉えます。クロッキーは時間をかけずに像を説明する上で必要なもののなかから重要度の高いものを優先的に引き出していきます。
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像が掴めてきたら本番の木炭紙に入ります。木炭紙に入っても部分にとらわれず、形も調子も全体で見ていく事が大切です。常に立体(空間)を実際に触って描いていく感覚が必要です。
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細部も空間に乗せていくように描写して作品を詰めていきます。下地と細部と光、陰を響き合わせて説得力のある画面を目指します。
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最初のクロッキーと完成したデッサンを重ねてみました。腕と衣に若干ズレがありましたが大体重なりました。クロッキーでしっかり精度が出せればデッサンはで形が狂う事はまず無いですよね。逆にクロッキーで出来ない事はデッサンでも出来ません。やり方ではなく、「見る目」を養いましょう。クロッキーは短時間で何枚もトレーニング出来るので枚数をこなして感覚をしみ込ませていきたいです。
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K.S君の作品。
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表情も似ていて、空間もきれいな作品になりました。「光」を描く意識が感じられるのも良いです。大きな構造感に具体的な形として説得力が弱いので、ベースの探りでさらに詰めていけるとさらに良い内容になっていくと思います。

K.S君の作品。IMG_0991
色幅がとても多く、木炭の魅力が良く引き出せていると思います。一つ一つ着実に構築しながら進めていくことで抜けの無い作品になっています。逆に形の言い切りが過ぎて単純な表現で終わってしまっている部分もあるので、より複雑な理解を深め、さらに発展させていきたいです。

現役生、K.Kさんの作品。
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探りが柔軟で無理が無く、印象の良い作品です。構造感の弱さやバルールの整理不足が毎回の課題になっていますが、理屈抜きにその像らしさが追求出来ている事に、純粋な対象の観察が伺えます。

デモンストレーション、E.Tさんの作品。外国人モデル。
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2時間強程度のデッサンです。芸大2次素描では短時間でも中途半端に終わらせず、作品として提出する事が求められます。それは密度勝負という事だけではなく(もちろんそれも有り)、それぞれの持ち味や魅力を短時間の中で画面にどれだけ詰め込んでいけるか、ということが重要で、スタートから明確な完成のビジョンが必要不可欠です。この作品は「対象が人物である」という臨場感を作品の柱とし、柔らかく画面をコントロールしています。

デモンストレーション、E.Nさんの作品。
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同じく短時間での作品です。実際のモデルさんの印象を非常に良く引き出しています。時間内で探れる手数をしっかり把握しているので、最小限の描写で最大限の効果を出す事に成功しています。

現役生、T.Dさんの作品。
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セオリーにとらわれず、絵画的な魅力に溢れる作品になりました。画面から作家性を感じられる事が2次素描では非常に重要です。モデルさんを捉えた彼女の視点が伝わってきます。欲を言うと体にもっと具体性を感じられると良いです。

現役生、T.U君の作品。
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印象がとても良いです。時間は絶対に足りないはずなのですが、その中で作品として完成させる為にこれだけは外せないという事をしっかり抑えてきているのが良いところです。惜しいですが、やはり体はもう少し手を入れたいところです。

デモンストレーション、E.Tさんの作品。
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とても全体のバランスの取れた作品に仕上がっています。髪の毛の表現などはある程度バリエーションをつくっておく事が必要です。毛の重なりによって出来る陰の落とし方などがとても参考になる作品だと思います。

デモンストレーション、E.Nさんの作品。
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生命感の強い魅力溢れる作品です。内側から感じる形の説得力がより作品の質を高めています。内側の形と表面の形、両方を関係づけながら組み立てられると、臨場感がグッと増してきます。リアリティとは何か、その要素はどこに隠されているか、それを知る事から始まります。

K.S君の作品。
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完成度の高い作品に仕上がっています。人物の持つ下地の構造感をしっかり保った上で肌のフォルム感も良く捉えられています。表情がまだカタいので、さらに印象よく完成出来ると良いです。

Y.M君の作品。
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柔らかい土付けが魅力的な作品で、丁寧な形の探りに好感が持てます。ここからさらに質を高めていく為に、表情の硬さ、柔らかさにもっと反応し、質感のバリエーションが増えてくると良いです。

僕のデモンストレーション作品です。人物は石膏像に比べて画面に入る面積は少ないですが、組立ての要素が圧倒的に多いので、バランスよく描くのが難しい課題です。特に出だしではプロポーションとムーヴマンに関して徹底して合わせていきたいです。
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制作中もモデルさんは微妙に動くし、ポーズも徐々に変わっていきますが、大事なのは画面に中にしっかり人物を想定する事です。写し取る感覚ではどうしても違和感が出てしまいます。
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K.Oさんの作品。
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端々にモデルさんを見て感じ取ったリアリティが詰め込まれていて、魅力に溢れる作品です。途中やや見方が断片的になり、全体でのつながりが悪かったですが大分解消してきたと思います。ビジョンがしっかりしていることが、作品に説得力を与えます。

T.Y君の作品。
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抜けの無い抵抗感のある作品です。ややボヤボヤして終わってしまうことが多かったですが、形の締め方が分かって全体に広げる事が出来ました。そんなに特別な事をした訳ではないですが、ちょっとした事で劇的に作品の質は変わるものです。しかし頭部の立ち上がりに不自然さが残っています。構造に関してはさらに全体で自然さを追求していきたいです。

現役生、T.U君の作品。
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バルールからくる空間感が魅力的な作品です。密な探りによって、抵抗感の強さも光ります。ただ見方はややカタいようです。人体の持つ柔軟さがもっと出るとさらに良い展開が出来るようになると思います。人体デッサンはたとえ固定ポーズであっても、そのまま滑らかな動作が出来そうな印象が欲しいです。

現役生、K.Kさんの作品。
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作者の見る目の良さと、素の画力の高さが感じられる作品です。頭部のつき方に自然さが足りないですが、その他はとても良く描けています。人体への知識、理解をさらに深め、デッサンとして捉えていくときの外せないポイントをしっかり把握出来ると、さらにグレードを上げていけます。

僕のデモンストレーション作品。ジョルジョの模刻です。
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模刻は土台の正確さが命です。まずは軸の傾きから捉え、構造の動きを捉え、前後、左右、上下バランスよく対応させながら構築していきます。
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部分で見始めると全てに関係性が失われ、やってもやっても合わない状態に陥ってしまいます。細部は細部の下地が出来るまで行わず、細部の下地は全体の土台が出来るまで行わず、全体の土台は軸が合うまで我慢するのが重要です。
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髪や目、鼻、口、耳など、凹凸の強い部分に作業が集中しがちですが、あくまで細部も全体に乗っている事が大事です。常に外していないか確認する必要があります。
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一つ一つ様々な角度から見て確認しながら形づくっていきます。目も最低正面、側面、下面からの十分な情報が無ければつくれません。結構多くの人に正面からだけ見て観察した気になってつくった結果似てない。という事が見受けられます。デッサン以上に塑像は確認作業が求められます。上手いひとほど軽くつくっているようで実は見る(情報を引き出す)作業が圧倒的に多いです。作業工程が、「見る」→「つくる」の繰り返しになっている人は、「見る」→「理解する」→「つくる」→「確認する」の繰り返しに出来るよう心がけてみて下さい。
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髪(特に後頭部側)が不十分で終わってしまいがちです。彫刻はどこから見ても緊張感が詰まっているので、正面だけ見せれるってことが無いように、全体に責任を持って、その部分ごとの緊張感を与えていきたいです。

すぐに2学期が始まります。いよいよ2013年度の入試も後半戦突入ですね!気持ちの準備は整っていますか!?ぼやっとしているとあっという間に時間は過ぎてしまいます。ちょっとした休みも自分の足りない力を伸ばす時間に充てたり、芸大入試でも重要視されている学科もしっかり対策しておかなければいけませんね。来年絶対合格する為に出来る事は全てやって下さい。これ以上は出来ないというところまでやりきって入試に臨めたらきっといい成果が出せるはずです!そして自分の目指す道に自信と誇りを持って進んでいってくれたらなと願っています。頑張りましょう!

暑い日が続いていますが夏期講習も後半戦へ!

こんにちは。彫刻科の小川原です。ここ最近記録的な暑さが続いていますが体調管理はしっかりできていますか?夏期講習で学べるは本当に多いので、そのチャンスを最大限有効に生かす為に万全の体調で挑みたいですね!
さて、彫刻科講習中期は沢山の芸大生のデモンストレーションも見る事が出来て非常に盛り上がりました!生徒の皆さんも頑張ってくれて、短期間でしたがグッと実力を上げてくれていると思います!良い作品も出ているので、デモンストレーション作品と一緒に紹介したいと思います。

K.S君の作品。
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光、陰の整理が良く出来ていて、表情も合わせてきています。特に顔を似せようとする時に、線的な情報に頼りすぎて強引に合わせようとするとやればやるほど似なくなってしまいますが、色面的な印象を似せる意識で捉えていくと自然になりやすいです。いきなり中身を注目するのではなく、外堀から合わせていく感覚は重要ですね。やや口が構造に沿っていないのは少し気になります。さらに視野が広がってくれるのを期待します。

T.Y君の作品。
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部分に執着する事無く、空間も含めて全体をコントロール出来ています。派手さや強さはありませんが、実直で嘘の無い丁寧な探りに好感が持てます。明るい側の形をもう少し具体的に表現出来ると、作品に説得力を与える事が出来ます。

現役生K.Kさんの作品。
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独特な質を持つデッサンです。今回は途中やや光源設定で混乱する場面もありましたが(実際通りの色を合わせようとすると形にならない。今回は胸側面と腕正面が実際はほぼ同じ色だったが、それを自然さが失われない範囲で変えた。)、最終的にはそういった部分に関しては創作を入れていく事が必要なんだと言う事を分かってくれたと思います。

M.Nさんの作品。
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芸大2次素描は3時間で仕上げます。それに合わせて短時間で描き上げました。なにより本人に似ているのが良いです。デッサンも塑像も同じですが、「似せる」ということは単純に観察が実物を捉えている証拠と言えます。後はその似ているというレベルがどれほどのものかという事が重要で、やはり出来たものにリアリティが感じられる事が大前提になります。まだ十分とは言えませんが、この作品はそうした要素を感じ取る事が出来ます。欲を言うと表情は良く描けていますが、首より下は手数が少なくなってしまっているので、改善していきたいです。時間が短いので、完成のビジョンを強く持って、スタートからスパートをかけていくつもりで展開させていきたいです。

現役生K.Kさんの作品。
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鳩は量が少ないので観察も作業も小さくなりがちですが、そうなってしまうとまさに作り物のようになってしまい、生命感が失われてしまいます。小さな体の中には骨があり、筋があり、皮があり、羽があります。シンプルで洗練された形の中には途方も無く複雑な構造が隠されています。進化の過程で淘汰されてきた形には全て意味があって、それを感じ取りながら制作する事は彫刻では必須であると言えます。形を写す。という意識だけでは「生きている」という情報までは写せないのです。この作品はまだまだ実際の構造の成り立ちにそぐわない部分も多いのですが、表面的にならず目の前にある真実を見ようとする意識が感じられます。

デモンストレーション。S.Y君の作品。
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スタートから光を大事にしながら描き進めていたのが印象的でした。完成のビジョンと自分の作品を常に重ね合わせて制作していたのだと思います。中間色もとても美しく表現されていて、明るい調子、暗い調子が響き合っているのが分かります。モチーフを目の前にして、それをどう料理してやろうかという気概が持てるかどうかはとても重要で、高い目的や目標を強く持てる人は上達も早く、上限もどんどん破っていけるのです。この作品からはそういった意識の高さを感じます。

デモンストレーション。新美出身E.Nさんの作品。
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彼女はデッサンも塑像も作品全体で理想を追求出来る人で、細部にこだわることなく物の本質を引き出すことに対して高い意識を持っています。何が一番大事かという事が分かっているので、例え出だしで印象が狂っても自分で気づいて良い方向に軌道修正する事が出来ます。そういった意味で、ある意味受験では一番強いタイプなのかも知れません。視野が狭い人や、モチーフの中身をしっかり把握せずに制作している人は、いったんハマると立て直せなかったり、狂っているのに気づかず完成まで行ってしまうという事が多いです。作品の内容について、彼女のデッサンの特徴は断面構造の強さと、構造が持つ軸の方向の整理にあります。空間上にどのような塊としての特徴を持つ物体が、どんな方向に配置されているのか、それが強く感じられるデッサンだと思います。

生徒作品。M.Nさんの作品。
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モチーフの持つ量感や空間の魅力が良く描けていると思います。自分の作品をどのように仕上げていきたいかというビジョンと、その為の道筋を組み立てる事が出来た事で、難度の高い課題で実力を発揮する事が出来ました。見る目があり、実力もあるので、毎回きちんと整理しながら制作する事が大切です。その時々でやらなければならない事をしっかり分かってこなせばそれだけでコンスタントに実力の100%に近い作品が出せるはずです。この作品では欲を言うとフォーンの背中とマルスの腕を含む胸部より上に色が抜け過ぎで、形や空間が具体的でないので、改善出来ると良いです。

現役生K.Kさんの作品。
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毎回のように良い作品を出してくるポテンシャルには驚かされます。今回は今まで以上に一つの「作品」として迫れていると思います。構図も描写もドラマチックな表現が魅力的な1枚となりました。モチーフとの対話が上手く出来ていて、作品がモチーフにはまっていく作者の喜びが伝わってくるようです。途中円盤の形や、奴隷の断面で印象を外していましたが、大分良くなりました。奴隷に関してはやはりやや伝わりづらいですが、このモチーフの場合はある種背景的な捉え方でもいいと思うので、そこまでマイナスにはなっていないと思います。そしてそれを補って余る円盤の魅力があります。

デモンストレーション。Y.U君の作品。
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圧倒的に高いクオリティを感じる作品です。ここまでの作品をつくる為にはあらかじめブルータスはどんな印象を持つ像で、捉えるべき要素を把握していないと不可能です。単純な観察だけでは行き着く事ができない経験に裏付けられた説得力があります。デッサンも塑像も、上手い人ほどモチーフを良く知ろうと考えます。目で見た情報だけに頼るだけでなく、構造を想像して分解してみたり、空間的な位置や量の座標をイメージしてみたり、デッサンで描いたときの像の印象と照らし合わせてみたり、その引き出しの多い人ほど、さらにはそれが的確な人ほど質の高い作品をつくる事が出来ます。

デモンストレーション。T.Hさんの作品。
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ブルータスが持つ印象をぶれる事無く引き出す事が出来ている作品です。よく左右の量のバランスが狂ったり、目の位置がズレたりする人は「印象」という観点でモチーフが見れていないんじゃないかなと思います。角度を測ったり、カーブを似せたりという事も大切ですが、その結果「合っているのかどうか」というポイントでは確認が甘い人が結構多いと思います。なので頑張ってつくったのだけど、出来たものに不自然な歪みがあるという結果になってしまうのです。熱が入りすぎて視野が狭まって、本当に単純な狂い(多分僕の目が上下に1cmズレて登場したらみんな驚くと思います)に気づけないのはもったいない事です。普通の人の目で客観的に確認する事、これは非常に重要な事です。

生徒作品。K.S君の作品。
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量や軸が良く捉えられ、バランスの良い作品となりましたがやはりデモンストレーション作品と比べると説得力の弱さが見えてきます。まず断面はもっとしっかり決めて欲しいです。体がイメージ出来るくらいに詰めましょう。後頭部は粘土の質のままなので、張り出している部分を中心に抵抗感を上げていきたいです。とはいえこの段階で嘘の無い状態に仕上がっているので、この先もう少し時間があったら出来た事と思います。前半の時間の使い方はさらに上手くなれると良いと思います。作品として成立するところまで詰めていく作業はどうしても時間がかかるものです。

K.S君の作品。
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形を表現する為には色(陰影)が必要になりますが、その探りがかなり自然になってきました。強引になってしまうときは構造に合わせた(感じの)タッチが均一に入ってしまうのですが、今回はそれを最小限に抑え、調子を響かせる事で魅力的に形が描けています。自分なりの形の起こし方ではなく、モチーフに寄り添った表現を意識した事が功を奏したのだと思います。とはいえまだ見方のカタさが見受けられるので、これでも足りないんだという事を自覚して、さらに発展させていって欲しいです。

R.A君の作品。
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非常に調子の美しい作品です。石膏の質も感じられる仕上がりになりました。パジャントのもつ美しさの特徴に良く反応出来ていて、魅力的な1枚となっています。作品の打ち出し方はもちろん十人十色で、人によって様々ですが、評価する側としてそれが「美しいか美しくないか」あるいは「心地よいか心地よくないか」という事はかなり重要だと思います。独りよがりになる事無く、みてもらう相手の事も考えられる余裕があるといいですね。この作品では欲を言うとアクリル円盤の形がまだ自然でない事です。輪郭的に直線的なところがあるので、上手くカーブが捉えられると良かったです。毎回実力をすべて引き出す為に、常に高い意識で臨んでくれる事を期待しています。

現役生K.Kさんの作品。
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前期、中期と講習を受けてきて、この短期間にかなり実力をつけてきたと思います。パジャントの表情も構造に合わせた上で良く似ていて、アクリル円盤にも奥行きを感じます。欲を言うと像の断面の方向性や面的抵抗感が弱くなっているのと、衣のひだはやや強く描きすぎて実際の印象よりうるさくなってしまっている事です。何が足りなくて、何がズレているのか、本当に微妙なレベルでの問題なのですが、そこまで意識のレベルを高くしていく事が出来たら理想的な作品を打ち出す事が出来ると思います。

さて、講習も後期に入っていきます。この時期どれだけ経験値をためておけるかどうかは、受験で勝つ事を前提に考えると1年で最も大切な時期であると言っても良いかも知れません。今すぐに実力が上がらなくても、やっている事で得られた「経験」はどんどん自分の周囲に散らばっているはずです。それを2学期で確かなものに変えていき、冬期講習から入試直前にかけて一気に積み上げていけたら良いと思います。積み上げるべき時に、積み上げるものが無いと言う事が無いように、今この課題一つ一つを大切にポジティブに取り組んでいきましょう!

 

 

 

夏期講習開始。実材実習の台座制作。

彫刻科の小川原です。夏期講習が始まりました。前期が終わり、中期に入ります。前期は8日間と短い期間ですが、多くの事を学べたんじゃないかなと思います。かなり力をつけてきましたが、まだまだこれからです。さらにグッと上達してもらえるよう、講師一同全力で指導していきますので、皆さんも負けずについてきて下さい!
前期では昼夜1人ずつ現役芸大生にデモンストレーションに入っていただきました。非常にレベルの高い作品を間近に見る事が出来て、生徒の皆さんも多いに刺激を受けた事と思います。こうした機会は滅多に無いことなので、このチャンスにしっかり見て感じ取って欲しいです。
前期昼間部のデッサンのデモンストレーション。T.Aさんの作品。
新井
強引になる事無く、的確に、計画的に、そして着実に探りを重ねていたのが印象的でした。特に今のみんなに必要なものの見方と言えるのではないでしょうか。あらゆる角度からモチーフを分析し、しっかり理解してから手を動かす。当たり前と言えばそれまでですが、意外と意識出来ていない人は多いんじゃないかなと思います。自分で形を割り切ってしまうのではなく、あくまでモチーフの魅力に素直に向き合う事は表現活動において基本中の基本であり、同時に最も難しい事であるとも言えます。この作品はどの部分を見ても簡単に済ませてしまったところは無く、深みがあります。さらにそれらが全体で響き合っている事が素晴らしいです。

前期夜間のデッサンのデモンストレーション。R.Iさんの作品。
今井
開始と同時にすぐに描き始めるのではなく、しばらくの間像を眺めて制作の計画を練っていたのが印象深かったです。画面の中に像をどのようにつくっていくのか、その最終的なビジョンがしっかりしている事でブレの無い制作工程を踏む事が出来ます。像のイメージをしっかり自分の中に落とし込めていれば、今描いている内容の中で印象を外している部分にすぐ気づけるし、直していく方向性も迷わず見つける事ができます。計る事に頼りすぎている(計る事は良い事だが、他の見方があまり出来ていない)人は、一旦狂いが生じると混乱して手が付けられなくなってしまうのではないでしょうか。また、割と合わせたつもりでも何となく似てない。という事も多いと思います。計って合わせるというのはあくまで補助的な方法論でしかないので、まずはモチーフの魅力を見切る目と、それをそのまま出力出来る腕を養う努力をする事、これが大切です。この作品は端々まで非常に触覚的に形を感じ取れる内容に仕上がっていて、具体的に形や空間がどうなっているのか、再現性の高い作品に仕上がっています。

中期以降も全部で8回のデモンストレーションを見る事が出来ます。見逃す事無く、役立ててもらえたらなと思います。
生徒の皆さんもかなり頑張ってくれて良い作品も多く見る事が出来ました。特に良かった2点を紹介します。
浪人生、K.S君の作品。
アバタ2
アバタのヴィーナスは小振りな作品ですが、動きが単純ではないので本当の意味で印象を引き出すのは非常に難しい像です。この作品はアゴからおでこまでの捻れの面展開がよく表現出来ています。全体のバランスや印象も良く、完成度もしっかり上げられました。自分で終わりを決めてしまうのではなく、最後までアバタを捉え続けた丁寧な探りに好感が持てます。今回はサイズの小さい像でしたが、大きなものになっても全体での印象合わせを怠らずに取り組んで欲しいです。

昼間部もう一人のK.S君の作品。
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全体に印象よくまとめられています。特にバルールに対する意識が高く、空間的なモチーフの魅力が上手く捉えられています。組み石膏では単体石膏デッサンに比べて形も色も確認しなければいけないポイントが非常に多くなります。しかしだからといって計り倒すように描き進めるのではなく、むしろ絵画的に、画面全体を包み込むように描写していく事が非常に重要になります。この作品ではそうした捉え方に着眼点を置く事で成功している事が沢山あります。逆に全体を大切にすればするほど一つ一つを具体的な形に置き換えていく事が難しくなり、客観的な構築性が不十分となって雰囲気に偏ってしまいがちです。この作品では特にマルスが形にし切れませんでした。まさにそれは「何を取るか」というジレンマであり、その時点での作者の技術と与えられた時間の中で、最大限良い作品にする為にいろいろな事を取捨選択した結果の産物であると言えます。

現役生K.Kさんの作品。組み石膏

特に現役生にとっては難しい課題だったんじゃないかなと思いますが、彼女は元々広い視野の持ち主で、高いバランス感覚も持ち合わせているのでブレる事なく持てる力を出し切って表現し切れたのだと思います。炭使いが独特で、深い味わいを出しています。単純に「絵」として魅力的に見えるのが素晴らしいです。浅いところで結論を出してしまうのではなく、魅力的なモチーフにひたすら素直に向き合った結果と言えます。欲を言えばマルスの頭部に明るさが足りないのと、背中の反射光部分に形がなくなってしまっている事が惜しいところです。

中期以降も生徒の皆さんの頑張りに期待しています!体力的にはとても負担が大きいところがあると思いますが、前向きに集中して取り組めばそれだけ実力もアップする事間違い無いです。体調管理には万全を期して、やりきった夏にして欲しいです。経験も、実力も、自信も身につける夏期講習にしましょう!

ところで彫刻科昼間部は1学期に実材実習ということでテラコッタの自刻像の制作をしました。1学期中に原型の制作と土の掻き出し、乾燥まで進めておき、夏期講習までの休みの間に台座の制作と窯で作品の焼成を行ったので紹介します。
窯は今回はガス窯を使用しました。8つあるバーナーを低いガス圧で順次点火していき、全部点火したら圧を上げていく事で温度を上昇させます。最終的には800℃まで温度を上げて、土を素焼きの状態に変化させます。
下の写真は窯内部の温度を示したものです。右が窯上部の温度。熱は上に上がるのでやや温度差が出ます。
800
温度が下がってから窯のフタを開けて作品を入れ替えます。作品数が多いので複数回に分けて焼成しました。
焼き上がり
台座は木かセメントで制作しました。まずはセメントでの台座づくりからです。セメントは建物などの基礎工事と同じように、型枠をつくってそこに詰める形を取りました。まずはコンパネ(裏側がコーティングしてあるもの)に型枠の寸法を書き入れて、電動丸鋸や手鋸でカットします。
線入れ
次は型枠の組立てです。ガムテープで繋げていくのですが、角に金折れを入れて直角を出します。
型枠
首像に差し込む心棒は最初から台座に埋め込む形をとりました。これをひっくり返してセメントを詰めます。
型枠2
セメント(モルタル)を水と混ぜて撹拌機で混ぜ合わせます。今回は最初からセメントと砂がバランスよく混ぜてあるドライモルタルを使用しました。水は多すぎても少な過ぎても良くないです。流すというより手でもって詰め込むくらいがいいです。
セメント
最後にモルタルを逆さにした型枠に詰めていきます。隙間が出来ないよう気をつけます。急激な乾燥を防ぐ為にビニール袋で養生して硬化を待ちます。
セメント2
次は木での台座づくりです。使う木は楠です。木彫用の素材として一般的なもので、僕の制作での余り物を使いました。
最初に材料に線を書き入れます。
線描く
次に希望のサイズより少し大きいサイズにチェーンソーで荒取りします。荒取り
実際のサイズを測り、面の基準を決めながら電気カンナで荒削りしていきます。削りすぎて量が足りなくならないように、全ての面が90°の関係になるように気をつけます。
線入れ2

カンナがけ
ほぼ電気カンナで形は作ってしまいます。その後ベルトサンダーで面を整えます。
ベルトサンダー
最後はランダムアクションサンダーやオービタルサンダーで仕上げます。
仕上げサンダー
心棒をさす為の穴をつくります。心棒は2x3の小割りを使うので四角い穴をあけます。まずは中心に2x3の四角を書き、ボール盤でその内側を穴だらけにします。
穴空け
穴だらけになった残りの部分を鑿で崩していきます。小割りがうまく差し込めるか確認しながら進めます。
鑿
基本は木地での仕上げですが、バーナーで焙って黒く木目を出した人もいました。
バーナー
台座も完成し、焼成も無事全員うまくいきました!2学期に作品の仕上げを入れてもらって完成になります。

たまにはこうして実際に作品がどのようにつくられているのか体験してみるのもいい経験になります。結構大変だったと思いますが、皆楽しかったんじゃないかな。また完成が楽しみです。最後まで自分の作品に責任を持つ事。作家のたまごとして、そこを学んでもらえたらなと思います。
完成