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彫刻科:11月になりました

こんにちは、講師の新妻です。公開コンクールも終わり、二学期もあとひと月ほどです。

採点、講評をした感想としては、もっと席から観た時のモチーフの印象をじんわり味わって、絵の見え方が複雑化する前の要素(主に構図、比率、動き、視点)を大事に考えて欲しいなぁと感じました。6時間の制作時間の前半戦ですでに勝負がついているデッサンが多かったんじゃないかなと。モチーフの魅力に繋がる要素をどれだけ見つけられたか、どれだけ冷静に絵の状態を把握できていたかがそのまま順位に結びついている印象を受けました。

と同時に、描き手それぞれの熱量やストロングポイントが伝わってくる作品も多くありました。試験までの残り時間で何を課題として考え、どう対策して良い方向へ自分を導いていくか、そのきっかけを掴むためのイベントになっていれば幸いです。芸大受験、特に彫刻科の受験に関しては、個々人の独創性や特殊能力バトルではなく、いかに自分が気をつければできる「普通のこと」を冷静に判断して現場に置いてこれるかが勝負の分かれ目になります。是非「判断する力」を養ってください。

では最近の秀作紹介に移ります。

公開コンクール1位作品でした。シンプルに、一番ブルータスを構成する要素を正確かつ明快に捉えていたデッサンでした。頭部の描写やカッティングラインのヌルさなどまだ突っ込みどころはあります。

描写の密度と空間のスケール感が気持ちいい一枚です。手前肩の、光を受けていながらも奥の顎に対して迫り出してくる距離感がもう少し出るといいですね。

仕上げに向かう中でも固く単調な方に向かわずに自然に形を詰めていけました。首の張りと頭部の密度のテンションなどはまだ深追いできそうです。

きちっとやりきりました。その過程での「実感を伴った土付」が、基本的なバランスを合わせて以降の模刻には必要不可欠です。

今まさに落下してきたような動きのベクトルが魅力的な構成になりました。仕事の段取り、気遣いと警戒、作り込みの精度と踏み込みなど、トータルコントロールが至極真っ当なやり取りは見守っていて安心するものがありました。

シンプルな構成ですが、逆にいえば構成で余計なことをせず、作者の模刻力の高さを自然にアピールできている点で確実に評価できる作品といえます。配置でカッコ悪い見え方を避けていく、それだけでも自然に良いものになるんです。

夜間部、基礎科生の作品です。

ガッタメラータらしい厳しく高潔な表情をよく捉えています。体、顔に対して、頭部全体の形態感がつかめてくると尚良いですね。

今までにない空間性とトーンを駆使した光の表現が魅力的です。顔の表情がもう一歩迫れるとさらにカッコよくなりそうです。

今回は以上です。ではまた。