日別アーカイブ: 2018年1月14日

筆職人のこだわり①

こんにちは。油絵科の関口です。
ここのところずっと寒い日が続いていますが、皆さんは風邪をひいたり、インフルエンザに罹ったりしませんでしたか?入試まであと少しです。体調管理に気をつけて頑張っていきましょう。


さて、以前このブログにも書きましたが、年末に行なっているアニマート展のメンバーと共に、名村大成堂さんの筆工場見学に行ってきました。(ナムラさんは世界に誇る筆の名門で、僕も受験生の頃からずっと愛用しています)工場と言っても全て手作りで作業を行なっていますので、案内していただいた作業場は割と小さな部屋で、職人さんたちが一本一本丁寧に筆を作っていました。

今回説明していただいたのは、油絵用の豚毛筆で最高級品「HF」の作業工程です。
他の筆と比べると少し値段も高めですが、この筆は品質が良くて使いやすいんです。その理由も今回見学する事で改めて分かりました。

HFは緑色の軸で、金属部分が銅製のもの。他のメーカーもナムラさんのを真似て、このカラーリングで筆を作っていますが、品質はナムラさんだけが別次元です。


左が豚毛の原毛。右は馬、イタチ、タヌキ、リス、羊などのいろんな種類の原毛。

まずこの束になった原毛をナイフと金属製の櫛を使って選別(この作業をサライと言うそうです)していきます。この作業で毛の向きを合わせ(原毛の束では向きがバラバラ)品質の悪い毛を落としていくのだそうです。この作業を繰り返し、回数を多く行なっていくと、良い毛だけ残っていきます。これだけで、なんと原毛の1/3位までに減ってしまうのだとか!
地味な作業ですが、良い筆を作る上で職人さんの技術が問われる大切な工程です。


写真のピントはボケてしまっていますが、この作業を何年も何年もずっと繰り返していくと、金属製の櫛がこんなにすり減ってしまうのだそうです。年月の積み重ねというものは凄いですね。


サライが終わると、少し水をつけて毛をまとめます。実は豚毛の毛は少し湾曲しているので、方向をちゃんと揃えないと、描きづらい筆になってしまうそうです。もちろん一つの方向に反ったままだと、それはそれで描きづらいですよね。


そこで専用のナイフを用いて、ガラスの上に毛を潰しながら並べ、クルクルっと丸めていきます。これで内側に反った毛で全て揃い、毛先が尖った筆になるのだそうです。これがまた見事な技なんですが、写真ではその凄さは伝わらないかもしれませんね。一本の筆を作るのに本当に色んな技術が使われています。

一回では全て書くのが難しいので、次回もこの続きを書こうと思います。2週間後にまたお会いしましょう。