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石膏デッサン考 part 2

こんにちは、全科総合部です。
今回は、彫刻科の先生と油絵科の先生、スパー講師とレジェンド講師の対談です。
石膏デッサンについて、それぞれの見解をそれぞれの立場で語ってくれました。
今までにない貴重なテキストです。永久保存版です。

「 石膏デッサン考対談 」 小川原先生 vs 海老澤先生

?小川原先生:先天的に、石膏デッサンが最初から上手な人がいます。でもそれは稀で、ほとんどの
人が“上手くない”から始めます。なので芸大入試の石膏デッサンにおいてもごく一
部の受験生を除いて“上手くない”から描き始めますが、最後まで“上手くない”
人は、構図・形がズレているまま描き進めてしまっています。

?進行(阿部):入試の場合、決められた時間の中で仕上げないといけないので、焦ってそうなって
しまうのでしょうね。

?小川原先生:ほっといても受かる人はどの科にもいるのでしょうけど、ほとんどの合格者は他者と
競って受かっていきます。受かる人と落ちる人の差がどこに
あるのか?その一つに
「描き出し」があるのではないかと考えます。

?進行(阿部):そこでクロッキーに行きつくわけですね。

小川原先生:そうです、受かる人はクロッキー的に石膏像をとらえています。デスケル(デッサ
ン・スケール)を覗いて点をとってつなげて形をとってい
る人は、形も合わず、直す
力もつきません。

?海老澤先生:デスケルを使用したからといって、上手くなることはないですね。デスケルで形を合
わせるのは理論上で、デッサン力とは違います。

?小川原先生:細部にとらわれ過ぎず、シンプルに形体をとらえるにはクロッキー力を鍛えるのが一
番。そのことにより大きな構造感を意識することができるように
なります。むしろ細
部は、全体感ができるまで描かないつもりでもよいかと
思います。どれだけ視野を広
げてクロッキー力をつけ、他者に差をつけるこ
とが合格につながるのではないでしょ
うか。

?

進行(阿部):「描き出し」には欠かせないのが構図をとることですが、海老澤先生はどうお考
でしょうか?

?海老澤先生:石膏デッサンの歴史の中で決まっている「構図」というのがあります。その意味から
理解しないと勉強になりません。そうしないと、自身の作品等に応用もできません。
例えばフェルメールという画家の作品では、人物が小さく描かれていてもリアルな大
きさは感じられます。メイプルソープとう写真家は大理石の彫刻を撮った作品もあり
ますが、クローズアップして彫刻の魅力を出しています。特に油絵科の場合、石膏像
の模写ではなく、「あなたの感性で、石膏像を描きなさい」という意味合いで入試に
出されることが多いようです。ルールどおりだと、かえって主張が弱いとまで思われ
るふしもあるくらいです。
でも、決められた構図もいい構図のひとつであることも確
かです。
 

?小川原先生:彫刻科の入試でも、思いがけず構図が小さくなってしまったものは論外ですが、敢え
て小さく入れたものでも、力があれば認められると思います。
石膏像に他のものを組み合わせたりしたモチーフが時々でたりしますが、そうなると“石膏デッサン”というより、“静物デッサン”として構図をとります。なので、石膏像の台座まで入れることが多いです。むしろ入れないと「彫刻的」でないとみなされて、減点の対象になります。

?海老澤先生:油絵科の入試で何が大事かと問われれば、ハートが大事ではないかと私は考えていま
す。そうなると、構造が大事とも細部が大事とも調子が大事ともい
えるし、どれもいえないともいえます???要は、人それぞれ違うのです。たとえば、雰囲気が大事な人は、形を出しすぎると損なわれることもあるので、形を犠牲にすることもあります。

?小川原先生:それに比べると彫刻科はストイックですね。調子でいうと、明るさの中の形も白くと
ばしたりはせず、形を追っていきますし、暗さの中も潰さず追って
いきます。

?進行(阿部):とはいえ、彫刻科にも感性的なところもあるとお聞きしたことがあります。

?小川原先生:そうですね、敢えていうなら、石膏像が写真のようにそっくりでなくても良い点です
かね。形のくるいの中でも、あっても良いくるいとダメなくるいが
あります。わざわざくるっているのが良いというわけではありませんが、構造からくるくるいは許せません。

?海老澤先生:わかります、ロダンの彫刻を思い出しました。ロココ調の彫刻は綺麗ですが、いまい
ち表面的な場合が多い。その一方、ロダンは構造的な形は言い切りが
強く、説得力があります。表面的なくるいではなく、良いくるいですよね。クロッキーもしかり。

?進行(阿部):奥深くなってきましたが、今回はこのぐらいで、続きは「スペシャル・サマー・セ
ミナー」石膏デッサン強化ゼミでお願いします。有意義な意見いただきました、ありがとうございま
した。

?お疲れ様でした。

まだまだつづく、
7月15・16日、スペシャル・サマー・セミナー「石膏デッサン強化ゼミ」の申し込みはこちらから!
是非、おまちしております!

サマーワークショップ御盛況

こんにちは、全科総合部です。
というのは勝手に命名してしまいましたが、各科に関わらず
総合的に新美の情報を促していきたく発足しました、宜しくお願い致します。
担当は阿部です。

昨日の18日(日)では、サマーワークショップが新宿校で開催されました。
お陰様で、内部生・外部生ともども多数のご参加、ありがとうございました。
その様子の一部を、今日はご紹介します。

まずは、「リサーチTシャツ制作」どんなTシャツができるのか?ただのデザインではないので、
少し心配していました。

それどころか、ジャーン!!
こんな「おもしろTシャツ」が、たくさんできました。
ただのデザインしただけでなく、それぞれ個性が出て本当に楽しく見させていただきました。
欲しいのもありましたが、さすがに一点ものなので、もらえませんでした。

一部、新宿校1階のギャラリーに展示してありますので、興味のある方はご覧ください。

つづいては「木綿のハンカチを藍染で染めよう!」です。
こちらは、はじめてのワークショップなので、準備も担当の先生まかせで心配でしたが、

それどころか、ジャジャーン!!

素晴らしい!!
大したものです。こちらも購入したいくらいです。

一部、新宿校1階のギャラリーに展示してありますので、興味のある方はご覧ください

つづいては「わくわくボディーペイント!」です。
こちらも、直接手にアクリル絵の具で描くので、大丈夫なのか?おちないのではないか?などと
余計な心配をしていました。

それどころか、ジャジャジャーン!!!

すごーい!!!
キュート!!!
全然平気でした。絵具もお湯で、ぺろーんととれました。

一部、新宿校1階のギャラリーに展示してありますので、興味のある方はご覧ください

つづいては「手を型取りして描いてみよう!」です。
自分の手を型どりして石膏で成形しますが、改めて白い自分の手を客観的に観察するのって
不思議な感覚ですよね。いつも見ていて知り尽くしているはずですが、見れない角度があったり、意外な比率を発見したり。新鮮な気持ちで自分の手を見直すことが、楽しいそうでした。

1日で型を取って、デッサンも仕上げられるのか?と心配でしたが・・・

それどころか、ジャジャジャジャーン!!!

立派に仕上げてくれました。
一部、新宿校1階のギャラリーに展示してありますので、興味のある方はご覧ください

つづいては「プロジェクターで映像を投影する」に、おじゃましてきました。

なんと!?
教室に入ると・・・ジャジャジャジャジャーン!!!
いきなり こたつ!?
これには、ビックリ!!オッタマゲーター!!!
まだ準備段階の画像しかお見せできないのが残念ですが、この段階でもワクワクしてきました。

次に「木工お皿を作ってみよう!」では、ジャジャジャジャジャジャーン!!!
お皿を越えたアーティスティックな作品が!
モチーフは、ゴッホのひまわりだそうです。敬礼!

つづいて「シルクスクリーンで学ぶ混色」
サコッシュなるカバンにシルクで、刷っています。
準備も大変だったと思いますが、そのかいあって喜び勇んでお持ち帰られたようです。

全てのワークショップをご紹介したいところですが、とても長くなってしまいますので、大変申し訳ございませんが、今回はこの辺で失礼させていただきます。
残りは、またの機会でご紹介させていただきます。

全てのワークショップの一部、新宿校1階のギャラリーに展示してありますので、興味のある方はご覧ください

みなさんありがとうございました。
お疲れ様でした。

人物表現と巨匠たち②

こんにちは。油絵科の関口です。

今週から夜間部は人物課題に入るので、土曜日は巨匠のデッサンの模写をしてもらいました。僕も学生に説明をするため、描き出しだけ模写をしてみましたが、改めて巨匠の凄さを実感した次第です。
という訳で前回に引き続き、今日も人物表現と巨匠について書こうと思います。今後の制作の参考になれば幸いです。

 

ルーベンス
前回のブログでも少し取り上げましたが、実際に今回模写をしてみて「ルーベンスって本当に上手いな?」と、心から感心しましたので、もう一度紹介したくなりました。
表情の美しさや自然さ、モデルに対しての想いや感情…そして、微に入り細を穿つ程の画面への気配り、構成や技術も含めて色んなところが見えてくると、ただただ感心してしまいまうばかりです。絵を沢山描けば描くほど、その上手さは心に染みてきます。

このルーベンスの上手さをちゃんと伝わるように説明するには、少なくとも何回かに分けて書く必要がありそうなので、また機会があれば詳しく紹介しますね。

 

レンブラント
レンブラントは17世紀オランダの巨匠です。自画像なども数多くの名作を残しています。
銅版画やデッサンも数多く制作しており、顔の模写をして勉強をするには、ピッタリの画家だと思います。銅版画はかなり描き込んだものが多く、どの作品も表情が絶妙です。生きている人間の心の奥底を描いている、という実感が伝わって来ます。名だたる巨匠の中で言えば、決して技術的に器用な方ではないと思いますが、味のある「良い絵」を描くのがレンブラントという画家です。
全盛期には奢侈を尽くし、ある作品がキッカケで晩年は破産をして、見すぼらしい生活に陥ってしまいます。波瀾万丈な人生を送っていますが、その作品からは何とも言えない人間臭さを感じさせてくれるのです。人生、辛い事があっても、作品にはプラスになる事がある。という良い例ではないでしょうか。

 

ベラスケス

17世紀スペインを代表する巨匠ですが、ベラスケスはどういう訳か殆どデッサンを残していません。ただ、この人が卓越したデッサン力の持ち主であることは、疑いようがありません。彼は若くしてその実力を評価され、宮廷画家になります。宮廷では当時のスペイン国王フェリペ4世に寵愛され、沢山の肖像画を残しています。正確無比のそのデッサン力は、初期の頃から晩年まで決して衰えることなく、味わいを増しながら磨きがかかって行きます。
昔の巨匠は、晩年になればなるほど技術的にも内容的にも向上していることが共通しています。老眼や肉体的な衰えはあった筈ですが、もはやそういう次元ではないんですよね。僕も人生の折り返し地点は過ぎていると思うので、そういうところを目標にして行けたらな…と思います。

僕の知る限り、ベラスケスのデッサンで真筆として現存しているのは、2?3枚しかありません。もしスペイン王室のどこかに大切にしまわれているのなら、そのお宝を一度は見てみたいものです。

 

今回紹介したのはバロックの3大巨匠でした。ルネサンスと比べると脚光を浴びることが少ない気がしますが、絵を学んでいる人には是非じっくりと見て欲しい巨匠達です。
それでは今日はこの辺で。

石膏デッサン考

こんにちは、実技全科総合部です。
本日の美大入試対策でも当たり前のように描いている「石膏デッサン」を考えてみましょう。

?日本においての石膏デッサンによる美術教育は、20世紀初め(西暦1900年)から始まりました。

東京芸術大学油画科においては、1949年の「マルスの胸像」以来、繰り返し石膏デッサンが入試の課題としてされ続けました。

その一方では、今日まで様々な偏見や、ときには敵意にさらされ、なかなか理解してもらえなかったという事情もあります。

「石膏像が描けても・・・」という声が今でも時々聞こえてきますし、専門家のあいだでも石膏デッサンを巡って様々な否定的な意見も交わされました。

そんな状況にもかかわらず、石膏デッサンは生きのび、美大入試においても重要なまたは入試を代表するような課題として高い評価を得ているのです。?

それはいったいなぜでしょうか?

やはりそれだけの意味が、そして価値があったのだと認めざるを得なさそうです。?

今回、71516日のスペシャル・サマー・セミナーでは、“石膏デッサン強化ゼミ”2日目の制作終了後の解説

「なぜ?石膏デッサン」で、興味深いお話しを新美のレジェンド講師よりしていただく予定です。

ゼミを受講し、上手くなったついでに知識もつけ、疑問なく石膏デッサンができるようになると、もっと成長するにちがいありません!!?

詳細、お申込みはこちらから 「石膏デッサン強化ゼミ」

是非、ご参加お待ちしております!

人物表現と巨匠達

こんにちは。油絵科の関口です。

6月は昼間部も夜間部も人物課題が入っていますね。人物は静物と比べると色々と難しいところが多く、それなりに力がある人でも失敗する確率が高い課題です。形態が複雑な上、生身の人間はじっとしてもくれません。生きてるんですから、当然感情だってあります。そんな事を踏まえながら絵を描く訳ですから、上手く描けないのは、ある意味当然なんです。

そんな受験生の皆さんにお勧めしているのは、デッサンの模写です。特に名だたる巨匠達のデッサンを模写する事は、とても勉強になると思いますよ。

ミケランジェロ
このデッサンはシスティーナ礼拝堂天井画の為のものです。ミケランジェロ位になれば人体全体のフォルムは当然把握していたと思いますが、格パーツのディテールの一つひとつを確認するように描いているのが分かります。

上のデッサンを元に描いたと思われるフレスコ画(壁画)。

フレスコは一気に描き上げなくてはならないという制約がありますから、描く時に迷いを残したくなかったのかもしれません。巨大な壁画であり、当然足場が組んであるので、下がって見ることも難しかったでしょう。にもかかわらずこのクオリティー。レオナルドと並んで評されるルネサンスの巨人です。

ルーベンス

この人のデッサンは正しく達人の領域。自身の制作の為に描いたものも当然ありますが、多くはルーベンス工房で働くお弟子さん達に渡して、途中まで絵を描いてもらう為のものと思われます。(メインの仕上げはルーベンス自身が行っていた筈です)絵画空間の把握や強弱の的確さにおいて、この人の右に出るものはいないのではないでしょうか?異素材を組み合わせているにも拘らず、全く浮くこともなく、見事に空間の中に収まっています。

こちらも上のデッサンを元に描いたと思われる油絵。

デッサンと比べると、かなり変更も加えられているので、ルーベンス自身がほとんど描いている可能性もあります。気合が入った中期の傑作です。(本物は3枚組の祭壇画で、両脇に一枚ずつ半分の大きさの絵があります)

アングル
顔はまるで精密機械の様な正確さで、しっかり丁寧に描写しています。(このデッサンはアングルにしては顔の表情がちょっと硬いかな?でもきっとモデルさんそっくりなんでしょうね…)顔とは対照的に、服には遊びの線を用いているにも拘らず、ゴージャスな雰囲気を捉えています。この対比がアングルのデッサンの真骨頂とも言えます。この辺が油絵では決して見ることの出来ない、アングルの隠れた一面です。

シーレ
力強くシンプルな線を用い、形は大胆にデフォルメしながら描いています。クセの強さはありますが、それも含めてシーレの魅力です。受験生なら、誰しも一度はシーレの魅力に惹かれて虜になる…とも言われています。少し絵を勉強すれば見えてくる、分かりやすい上手さがその要因と思われます。

人物は奥が深いので、焦ることなく、じっくりと取り組んで勉強して行きましょう!