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彫刻科、1学期後半へ!

こんにちは!彫刻科の小川原です。新たに1年始まるって時は入試まで長く感じたりしますが、実際始まってみるとあっという間に時間が過ぎていってしまいますよね。そんなにすぐに上達するわけではないので焦りだす頃でもあります。新美彫刻科では今年の目標を「見る力を鍛える」に照準を合わせ、4月から集中的に練習してきました。その成果が徐々に出てきた感じが見て感じられるので、これからの成長が更に楽しみになってきました!昼間部はさすがの実力を見せてくれますが、夜間部も今年は素晴らしいです。課題を追うごとにメキメキ上達していてこちらも指導していて面白いくらいです!この調子で1学期後半戦も気合を入れて頑張っていきましょう!

さて、今回の優秀作品の紹介です。
昼間部、自刻胸像。この課題は物量に対して短い時間設定でしたが内容の濃い作品も出てきました!
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凛とした雰囲気が魅力的な作品です。日常の1コマを感じさせるようなポーズの選び方も良いです。

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シンメトリックな構成で、静かなイメージに表情もよくあっています。作者の内面も感じ取れそうです。
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動きのあるポーズですが、人体として自然に作れているところがとてもよいです。顔の造形感も形態感に反応できています。
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自分というテーマに向き合って、これから何かを乗り越えていく意志の強さを感じる作品です。この作品にかける思いも感じ取れます。

それでは夜間部生の作品です。
ヘルメス。
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現役生とは思えないレベルの高さを感じます。モチーフに対する素直な見方と、それを画面に置き換える技術と、その両方に対して妥協すること無くやりきっていることに好感が持てます。

自刻像。
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初めての自刻像です。人間として自然な形になっている以上に生身のリアルさも感じ取れます。髪の毛の扱いも魅力的です。

自画像。
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この作品は制作中後ろから見ていて飽きさせない進め方をしていたのが印象的でした。何が面白かったかというと、とにかくメチャメチャ乗りに乗ってかぶりつくように描いていたことです。自らどんどん魅力を発見し、それを画面に詰め込んでいく行程に楽しさを感じて取り組めていました。技術の高さも作品を高める重要な要素を持っていることに変わりないですが、それ以上に「自分のこうしたい、を形にすることを素直に目指す。作品をつくるってこういうことだよね。」って改めて感じさせてくれた、そんな作品です。この感覚を大事にしながら成長していって欲しいです。

今回僕はヘルメスを描いてみました。今回はいつもと違う描き方をしています。どんなテーマで描いたかというと、「調子で形を模刻する」です。受験で石膏デッサンを学ぶと、セオリーから入って、ベースの形の重要性について説かれます。短時間で描き切るにはそれが一番手っ取り早いし、間違ってはいないですが、じゃあ最初から大きな構造も細部も全てベースとして描いていったらどうなのかなと言うのと、(ベースの作業を形式的に単純化せず、はじめから見た目通りうに描いていく)できるだけタッチに頼らず、色の変化を利用して形に起伏を作っていく(模刻するように)という考え方で描きました。
1段階目。描き出しでは慎重に印象を捉えていきたいです。
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2段階目。日なた、日陰を分けて、調子を乗せていく計画を立てます。
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3段階目。色幅を増やして実際的な印象に近づけていきます。
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4段階目。ガーゼやサッピツ、消し具はとりあえず置いておいて、細部も含め、調子を乗せ切ります。スカスカしないように詰める感じで。この段階で1回完成させる気持ちです。できるだけ短時間で。
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5段階目。ガーゼで奥行きに差をつけます。
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6段階目。どんどん描き込んでいきます。
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7段階目。そのまま描き込んで完成。
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まだまだこれからですが、4時間で区切りました。いきなり大きく変化したところは無かったと思います。常に今やっている作業の延長に次の作業が生きてくる積み重ねの感覚で描きました。基本的には特別なテクニックがあるわけではなく、よく見てよく描くというだけなのですが、ちゃんと一つ一つの作業が印象に反応して手が動いているということが重要です。
去年辺りにこの考え方で実践してみているのですが、いわゆる受験的なデッサンの描き方の延長で描いていた頃に対して、同じ時間で完成度がより上げられるようになりました。
とりあえずこの描き方は「受験的」ではないので、まずはセオリーをしっかり理解し、こなせるようにしておいて欲しいです。最終的にはどんな描き方であれ、自分なりに明確な理論に基づいたプロセスを手に入れて欲しいです。

さ、1学期後半に向けて頑張りましょう!

彫刻科 1学期中盤戦

こんにちは!彫刻科講師の稲田です。
1学期も中盤に差し掛かってきました。5月は悩みながらも各自、粘り強く課題に立ち向かっていった姿勢がデッサンや塑造から感じられました。6月もこの調子で走り続けましょう!!

今回は昼間部生のデッサン2枚を紹介します。

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組石膏の場合、像を取り巻く空間の観察がどれだけ出来ているかがストレートに画面に出ます。奥に抜ける空間が弱い部分も見受けられますが、作者が課題として取り組んでいた構造に沿って細部が自然に見えてくる見え方に一歩近づいたデッサンになったのではないでしょうか。

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こちらの静物デッサンは丁寧に素直な観察が魅力的なデッサンです。誠実な観察からくる描写は人を説得させますね。ここからさらに画面の奥に向かう空間を意識的に作って行くことやモチーフに重さを感じれれるようになればさらに高いレベルになる可能性を感じさせます。

作者2人はそれぞれ取り組んでいる課題がありますが、今回紹介したデッサンにはそれぞれが良い方向に向かう兆しが見えています。この見方と感覚を大切にコンスタントな結果に結び付けて行きましょう!!

話は変わりますが先日、丸の内を歩いていたら道に作品が並んでいました。彫刻ではジュリアーノ・ヴァンジ、三木俊治、三沢厚彦などなど見応えのある作品が設置されていました。美術館ではない場所で見る作品はまた新鮮な目でうつりますね。
近くには三菱一号館美術館などもあるので散歩がてらに見に行くのもいいかもしれません。

では!今回はこのくらいで。次回は小川原先生です。宜しくお願いします!

こんにちの彫刻科

或る日のこと、或る若い娘をデッサンしたいと思っていたとき、ピンときたことあった。
つまり、常に生き続けている唯一のもの、それは眼差しだと言うことが突然分かったのだ。
残りのもの、頭蓋骨に成り変わってしまう頭部は、死人の頭蓋骨とほとんど同じものになってしまった。死者と生者の違いをなしていたもの、それは彼の眼差しであったのだ。
その時、私は思ったー死人の頭蓋骨を彫刻することは、本当は望ましいことではないのではあるまいかと。
だれしも生きている者を彫刻したいと思う、しかし生きている者のなかで彼を生かしめているものは、疑いもなく、その眼差しなのだ。

今年度、1回目の記事になります、彫刻科の氷室です。
上記の文章は、有名な彫刻科、アルベルト ジャコメッティのものです。

直接眼差しを思うわけではないが、眼差しは眼を取り囲むものによって出来ており、眼の形そのものを、形の現れようを心がけている。
眼の形が捕らえられれば、眼差しに似た何かが現れるだろう。

そんなジャコメッティの言葉に、みなさんも感じる所があるかもしれません。
受験では、今日の実技が求められて早いスピードで日々が流れていきます。本来、作品を作るにはとても時間がかかりますし、長い歴史から素材であったり作ることは、変化していません。
受験で通用する実技は基本中の基本ではあるので最低限必要ではありますが、そのスピードゆえに伸び悩んだ時や、ふと実技に集中できなくなった時に、合格の先にある自分を励ましてくれる目標や作家、作品、または作家の言葉などを見つけてみるのも、1つの突破口になるかもしれませんね。

なんのために目に見えぬものを理解しようとこんなに夢中になるのか。かくも頭を描いたり、彫刻しているとはどういうことなのか、ジャコメッティもたくさん考えていたのかなと思うと何だか近くに感じませんか?

さて前置きが長くなってしまいましたが、生徒の近況秀作を紹介します。
去年や一昨年を遡って新美ニュースを見返してみましたが、この時期の実力としては、高いのではないかと感じました。
新美の講師陣は、妥協無く辛口で指導が入るので、そこに心が負けず、ついてこれると、さらに伸びて行くことは間違いないなと個人的に感じています。

昼間部では、5月は木炭紙倍判でのデッサンに挑戦しました。
生徒の皆さんはその課題意図など考えてみましたか?
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脇腹付近はまだ整理ができていませんが、本人の求めるクリアなデッサンが、描くことと共に叶っている魅力のある1枚です。

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頭部や足の形態感は弱いですが、本人が様々な発見をしながら、そこにある空気を感じてマルスのリアリティーに迫れたデッサンです。色幅も綺麗ですね。

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構造を意識しながら、とにかく目の前に在る円盤の持つ形を木炭で表現できてきました。ここからさらに、らしさを探ってもう一歩魅力を引き出せると良いですね。

ジョジョの模刻2点は、夜間部生の作品です
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ジョルジョの印象を引き出すのは難易度が高いですが、とても似ています。第一印象が良いですね!計り知れない力を持っていることを感じます。さらに心棒や切り口に気をつけながら、今回得たことをつなげていってください。

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こちらの作品も底知れぬ実力を感じます!量感を捉えながら、良く印象を感じ、それを手に伝え表現ができています。似ていますね。次回は。粘土の質感もジョルジョの動きや骨格に会わせて探求してみてください。

このクロッキーは彫刻科の課題以外で、夜間に行われる新美のクロッキー会を自ら利用して、普段できない表現に挑戦した1枚です。こういった場を利用すると、他の科のデッサンも見れますし、刺激を受けひと味違ったチャレンジができるので、センスを磨く訓練にもなりますね!
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描くこと楽しみながら、瞬時にモデルさんの持つ雰囲気に彫刻科として反応して行く姿、両方を感じ取れる1枚です。

ジャコメッティは、こうも綴っていますー
いつでも成功よりも私の失敗のほうが一層大きでしょう。
偉大な冒険とは、同じ顔の中に日ごと見知らぬものが現れるのを観ることだ。

みなさんも日々同じようなデッサンと塑像ではありますが、挑戦し試行錯誤をし、自分なりの捉え方を発見していってください!

今回はこれで以上です。次回は稲田先生の担当です!

彫刻科秀作の紹介。

こんにちは!彫刻科の小川原です。GWも終わりましたが、休み気分が抜けてなーい…。なんて人はいませんか!?もう来年に向けての戦いはとっくに始まっていますよ!
皆さんのことだから休み中は学科の対策に集中して取り組んでいたことと思います。日々の積み重ねが重要ですね!毎日頑張っている人には是非来年合格を掴んで欲しいです!

さて、GWでしばらく休みが続いていましたが、ここ最近の学生の作品の中で優秀だったものを紹介します。

まずは昼間部から。背景付きガッタメラータ。調子のコントロールの上達と、自然な色の変化を表現できるようになることを目標として行いました。
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色の変化が豊かで、リアルな質を感じさせます。抜けのない力強さが魅力的な1枚です。

この課題は僕も描きました。
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背景をつける時は形の狂いを直していると紙が傷んで背景の色が美しく表現できなくなるので特に慎重にアタリを取っていきましょう。背景に関しても後付でなく、最初から計画的に進めていきたいです。
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今回はタッチを使わずに、徹底的に色幅を増やすことで形を説明することをテーマに進めました。立体感を出すために、首のあたりなんかは多少実際の色の変化から外して、より伝わりやすくするための工夫を入れています。雰囲気で描くのは割りと簡単ですが、しっかり説明し切るためには結局形を理解していないと出来ないんだなと改めて感じました。

続いて昼間部の素描課題、牛骨です。
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上顎の骨っぽさ(薄くて固くて有機的な感じ)が良く出せています。下顎はやや固さが足りないので、さらに客観視して調整できると良いです。床面の作業が丁寧なのがとても好感が持てます。

この課題は野村先生がデモンストレーションしてくれました。
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背景も含めて作品性の高いデッサンになっていると思います。1枚1枚のデッサンも自分の「作品」として捉えられるようになれると上達も早いです。「こだわり」が徹底していかないとなんとなーくのデッサンで終わってしまいます。

最後に夜間部生のデッサン、フォーンです。
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とにかく力強いです!でも強引なところはなく、全体をしっかりコントロールして完成まで持ってこれました。この間始めたばかりの現役生とは思えない完成度です。この調子で頑張りましょう!

こんな感じで彫刻科は昼間部、夜間部いい感じで実力者が揃ってきました!まだまだこれからなので、じっくり力をつけていって、揺るぎない実力者を目指していきましょう!

あと、そろそろ推薦入試の対策を始める時期になってきました。多摩美やムサビなど、作品ファイルや、実際に作品の提出が必要な大学もあります。近年推薦入試の難易度も高まってきています。作文や、面接なども含めてしっかり対策をしていかないと簡単には受からないので、推薦入試を考えている人は是非相談に来て下さい。新美では実材での作品制作もサポートします!

彫刻科 修復師、アーティストとしての生き方 吉水快聞インタビュー

彫刻科の小川原です。今回は芸大の学部彫刻科を卒業後、芸大大学院保存修復科に進学し、仏像の修復の為の工房を立ち上げ、修復の仕事をしながら自らの制作活動もしている吉水さんに話を伺いました。寺の住職でもあり、修復師でもあり、アーティストでもあり、大学の客員教授でもある吉水さんですが、「作品」や「仕事」や「仏像」に対する徹底的とも言えるこだわりが話から伺えます。美術の世界を目指す人には是非見てほしい内容です。どうぞご覧ください。

Q.保存修復の仕事をされていますが、具体的に保存修復とはどのような仕事内容ですか?

保存修復の仕事は現在まで脈々と伝えられてきた文化財を未来に繋ぐという仕事です。文化財は勝手に残ってきたわけではなく、各時代で守られ修復をくり返しながら現在に伝わっています。
私の場合は彫刻文化財の保存修復が専門です。日本における彫刻文化財のほとんどは仏像になりますので、仏像の修理を行うということが中心となります。

保存修復の仕事はしばしばお医者さんに例えられます。患者(仏像などの文化財)を診察(調査)し、それぞれの病状に合わせて、治療方針(修復方針)を計画して、
それぞれの患者に合った適切な治療(処理)を施します。
具体的には、所有者等と相談、仏像の梱包から運搬、写真撮影、必要であればレントゲン撮影などの調査を行い、修復方針を決めた上で修復を行います。
修復は全体の洗浄や彩色などの剥落を止めたり、欠失している部分を補ったり、症状が重い場合は全解体などケースバイケースです。
Q.保存修復の仕事に携わるにはどのような経験や能力が必要ですか?また、吉水さんはいつから保存修復家への道を意識し始めましたか?

どのような経験や能力といわれると難しいんですが、少なくとも「良き作家」と「良き修復家」はだいぶ異なる能力かもしれません。
作家はいかに自分を出して自己表現するかが重要ですが、
修復家は逆にいかに自分を殺して相手(修復対象)に合すかということが重要になってくる気がします。
修復の仕事に携わるには、まず脈々と伝わってきた歴史の重みと知識を身につける必要があると思います。
能力についてはそうですね、地味な作業が多いので、根気の良い人がいいですね。(笑)
技術については少なくとも、修復をする像を当時造立した仏師と同等くらいの能力はは必要かもしれません(まぁ理想的にはですが)。

私が保存修復の道を意識し始めたのは大学学部一年のころです。
木彫実習をやったときにそれが楽しくて、木彫のことをもっと勉強したいと思ったときに「仏像」だと思い、大学院は文化財保存修復彫刻に行こうと決めました。
22博士課程の研究 快慶作阿弥陀如来立像の想定復元模刻 (1)
博士課程の研究 快慶作阿弥陀如来立像の想定復元模刻
20博士課程の研究 快慶作阿弥陀如来立像の想定復元模刻 (2)

19博士課程の研究 快慶作阿弥陀如来立像の想定復元模刻 (3)
Q.彫刻科を受験しようと思った理由は何ですか?

絵を描くより、立体物を造る方が好きだったんですよね。得に迷いもなく彫刻科でしたね。
4.芸大彫刻科の学部を卒業後、芸大大学院で保存修復科へ進まれましたが、具体的にどのようなことを学びますか?工房の雰囲気などはどのような感じでしょうか?彫刻科とは大分違いがありますか?

保存修復では美術史などの学術的なことと、仏像の制作における古典技法について学びます。修復を行うには昔の材料、膠や岩絵の具、漆などといった古典的材料を学ばねばなりません。
といっても、大学院という所は教えてもらうというよりは自分で研究するという側面が強いので、最低限教わって、あとは自分でということになりますが。
私の在籍していたころの研究室の雰囲気で大きく違うのは、機械をあまり使わないところですね。彫刻科では常にチェーンソーの音が響き渡っていますが、保存修復科では皆黙々と手作業な人が多いです。
彫刻科の大学院に進んだ人は学部の延長上にあるかとおもいますが、保存修復に進んだ場合は、もう一度1年生に戻る感じですね(笑)
1修復中
修復の作業
2蓮花寺修復前
蓮花寺修復前
3蓮花寺修復後
蓮花寺修復後

Q.保存修復の仕事の中で、予備校で学んだことが生かされていることはありますか?
もちろん予備校で学んだ基礎があるから今があると思っています。具体的には「観る力」ですね。
予備校は、ひたすらデッサンをしますが、それってとても重要なことなんです、予備校って眼を養えるには最高の環境だと思います。
デッサンは受験のためにするのではなくて、クリエイターになるためのほんとの基礎基本で一番大事な部分だと思っています。
Q.吉水さんは自身の彫刻家としての制作活動もされています。保存修復の仕事と、作家としての仕事の意識の違いはどんなことがありますか?

先ほども述べた通り、修復はいかに相手に合わせるかですが、作家としては、いかに自分の表現をするかということなのでかなり対照的です。
4専念寺修復前
専念寺修復前
5専念寺修復後
専念寺修復後

Q.保存修復の仕事も、作家としての仕事も、両立することでプラスになったと感じることはありますか?

そうですね、これは私にとってはとてもプラスに感じています。
保存修復をすることによって先人の知恵や技術、そしてなにより感性を学ぶことができ、それを自分の作品に入れ込むことができます。
修復においても、創作をしていることによって頭が柔らかくなり柔軟に対応できている気がしています。
Q.彫刻作品を制作する上で大切にしていることはどんなことがありますか?

修復の仕事にも携わっているので、いつか私が死んだ後も、修復してもらえるような作品を創りたいと思っています。
歴史はけっこうシビアです、駄作は淘汰され、いいものしか残らないのも身を以て知っていますので。
Q.受験生が多く見てくれていると思います。予備校時代に努力したことや、苦労したこと、思ったことなど教えてください。

予備校時代・・懐かしいですね(笑)そうですねぇ、私は高校は美術科ではありましたが現役では藝大落ちてから奈良から上京してきて予備校に通ったわけですけども
当然、浪人生の中では底辺から出発です。デッサンの良し悪しすら分かりませんでした。自分のデッサンが何故駄目なのか、良いとされているデッサンのどこがよいのか・・・
挫けそうにもなりましたが、周りの人と同じことをして同じ時間を過ごしているだけでは追いつけないと思ったので自分なりに何かしてみようと思いました。
具体的には、家に帰ったらできるだけ毎日最低一枚は手のクロッキーをしようと決めてノルマにしました。それから電車の中では人の観察・・隙あらばクロッキー。
なんせ、デッサンがあまり得意じゃなかったので、少しでも時間を費やそうとおもったんですね。
まぁ、今思えばこんなに一つのことに集中してできる時期は人生にそう何度もないので、とっても有難い時間でしたね。
それから、関係ないかもしれませんが、「掃除」にはなるべくきをつけてましたね。朝早くいってアトリエを片付ける。
予備校とか大学っていろんな人がいますからね・・制作の環境を整えるのも一つの技術かなと思います。
Q.芸大の彫刻科に入学して、良かったと思う所は、どんな所ですか?また、どの様な点が具体的に今の仕事に役立っていますか?

私が藝大に行きたいと思っていたのは、単に、藝大というブランドに憧れたわけではなくて、藝大に入ってくるくらいの人達と一緒に勉強したいと思ったからです。
まぁ、実際入ってみるとほんといろんな人がいて面白かったですけどね(笑)
どのような点が具体的に仕事に役立っているかと言われると困るのですが、言ってしまえば「すべて」です。私の今は過去のすべてです。
一つだけ言えるとすれば、同級生や後輩、諸先輩方がいろんな分野で活躍してくれているおかげで私も励みになり、さらには一緒に仕事ができたりすることができるという点で藝大に行って良かったと思っています。
18学部の卒業制作「雅音」
芸大卒業制作  「雅音」
Q.浪人生時代や大学生の時にはバイトはされていましたか?生活面での工夫などがあれば、教えて下さい。

浪人時代は、幸いにも両親が全力でサポートをしてくれたので、、バイトはしていません。非常に感謝しています。
大学時代は、なるべく役にたちそうなバイトをしていました。引っ越しのバイトで、モノを運ぶ技術を学んだり、大学院からは、OBの仏像制作の下請けなどをして稼いでいました(笑)
生活面の工夫ですか、う?ん、そうですねぇ、メリハリですかね。遊ぶときは遊んで、やるべき時はしっかりやる。
Q.保存修復の仕事、作家としての仕事の楽しいところ、大変なところを教えて下さい。

保存の仕事の楽しいところは、先人と会話できるところですね。不思議なもので作品からはほんとにいろんなことが伝わってきます。それであれこれ想像するのは楽しいです。
作家の仕事の楽しいところは、自分の作品を通してたくさんの人と繋がって、作品を通して会話できるところですね。
大変なところは、実は修復と作家以外にもいろんな仕事を抱えすぎていて、アップアップしているところですかね・・・(苦笑)

Q.この仕事を目指している人、これから受験を考えようと思っている人にアドバイスをお願いします。

受験生にとって、受験というのは一つの目標ではあるけれども、実はスタート地点に立つための基礎基本です。
自分は才能がないと挫けそうになることもあるかとおもいますが、初めからできる人なんていません、少しの積み重ねで大きくいっていくものです。
大切なのは挫けずに続けることです。自分のやりたいことを中心に据えて、自分自身を信じて頑張ってください。
14守宮
守宮
13深々
深々
12水音 (1)
水音
10水音 (2)

9月兎
月兎
8筍の山?蛞蝓?
筍の山?蛞蝓?
8白狐
白狐
7無垢
無垢

1982年 奈良県に生まれる
2002年 東京藝術大学美術学部彫刻科 入学
2005年 伝宗伝戒道場を成満し浄土宗の僧侶となる
2006年 東京藝術大学美術学部彫刻科 卒業
東京藝術大学大学院美術研究科 文化財保存学専攻 保存修復研究領域 彫刻 入学
2008年 3月 同大学院 修了
2008年 4月 同大学院博士後期課程入学
2011年 3月 博士(文化財)号取得
研究論文『快慶と快慶風の阿弥陀如来立像について
―東大寺俊乗堂像の模刻制作と善光寺像の修復を通して―』
研究作品『東大寺俊乗堂快慶作阿弥陀如来立像想定復元模刻』
2011年 4月 工房『巧匠堂』設立
2013年 浄土宗 東光山 正楽寺 住職就任
2015年 大正大学 客員教授 就任
現在 彫刻家として創作・仏像制作・文化財修復など多方面で活動中
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