カテゴリー別アーカイブ: 油絵科

仲間について

こんにちは。油絵科の関口です。

 

さて、以前このブログでライバルについて書きましたが、今回は「仲間」について書こうと思います。

僕は新美で大学生時代から講師をしていますが、その傍らで20年以上に渡って作家活動を続けてこられた背景には「多くの仲間に支えられてきた」という実感があります。そしてその原点は、新美で浪人していた頃に遡ります。
当時僕を担当してくれていた先生は森一浩先生と広田稔先生という、非常に個性の強い方達でした。ウチのクラスでは、どういう訳か伝統的に「先生」という言い方はせず、「さん」付けで呼んでいましたので、浪人生の頃から「森さん、広田さん」と呼んでいました。
森さんと広田さん
※僕の浪人時代の恩師。左が森さんの作品。右が広田さんの作品。

僕と森さんは約20歳、広田さんとは10歳ほど年齢が離れており、18歳で上京してきた田舎者の自分に多大な影響を与えた二人になります。お二人のエピソードは数限りなくありますが、今回は真面目なものを一つだけ紹介し、思わず笑ってしまう様なお話はいつかまた書こうと思います。
僕が芸大に入った後、広田さんから言われた事が僕の中でずっと残っています。

「僕が絵を描き続けられてきたのは良い仲間がいたからだ。仲間がいなかったら、僕は絵をやめていたかもしれない」「お前らも仲間は大切にした方が良いぞ」

当時も今も広田さんという人は精力的に作品をつくり続けています。当時自宅兼アトリエにお邪魔する事も何回かありましたが、壁には常に数十枚という描きかけの絵が掛かっており、1週間後にまたお邪魔すると、殆んどが違う絵に入れ替わっているという、信じ難い光景を目にしてきました。当時から年間数100枚という作品を作り続けており、バイタリティーの塊のような人の口からポロッと溢れた弱音の様な言葉が、自分の中ではとても衝撃的でした。

それから20年以上の歳月が経過しましたが、その言葉を実感する事が何回も訪れました。

所詮「人間とは一人では生きていけない弱い存在」なのかも知れません。幸いな事に今の僕の周りには色んな仲間がいます。その多くは、出会った時には「お互いにこんなに長い付き合いになるとは思ってもいなかった」という様な人達ばかりです。
反面、かつてかなり深い付き合いをしていた人の中にも、今ではすっかり音信不通で、疎遠になってしまった人もいます。別に喧嘩別れした訳でもないのに・・・。

仮に自分の人生に「道」というものが存在するとしたら、仲間というのはその道中で出会った人達の一部なんだと思います。反対方向からすれ違う人もいれば、少しの間だけ同じ道のりを行く人もいます。すれ違う人は、自分の人生の中でのキャスティングでは、通行人A・B位の位置づけでしかありません。同じ道のりを行く人でも、歩むスピードが異なる事もあります。仮に同じスピードで歩んでいても次の交差点で別の方向へ行く事もあります。

道中、意気投合した人とは、知らず知らずの内にスピードを合わせたり、別れてもまた同じ道に現れたり、相手の道の方へ自分の方から現れたりしながら、お互いの人生の中で重要なキャストになっていくのです。
今の僕には、新美の浪人中に出会った人で、とても大切でかけがえの無い仲間が何人もいます。
その時には分からなくても、今隣にいるその人は、将来のあなたにとって大切な仲間になっているかもしれません。

 

さて、最後に宣伝で申し訳ありませんが、12月11日より横浜の石川町のギャラリーARKでグループ展を行いますのでご案内致します。
14animato
この展覧会の名前はAnimato(アニマート)展と言います。Animatoとはイタリア語で”生き生きとした”とか、”元気の良い”という意味だそうで、ギャラリーのオーナーが名前を付けてくれました。この展覧会、実に今年で17回目になります。小さなギャラリーですが、100点以上の作品が所狭しと並んでいるので、きっと楽しめると思います。上で書いた広田さんも一緒に出品していますし、僕にとってかけがえの無い仲間が何人もいますので、興味のある方は是非見に来て下さい。

http://ark.art-sq.com?

武蔵野美術大学 入試説明会

こんにちは、油絵科 松田です。

先週の金曜日、新美で武蔵野美術大学油絵科の入試説明会が開催されました。

今年は、丸山直文先生にお越し頂いたのですが、品の良い穏やかな方でしたね。
丸山先生の作品は新美の学生にも好評でして、図書コーナーの画集は貸し出し頻度が高い気がします。
制作の段階でも参考にする生徒を時々見かけますが、素材の扱い方は、なかなか上手く取り入れらないようですね。
布にアクリルという素材で描いていらっしゃる丸山先生の作品を参考に、キャンバスと油彩で格闘している生徒をみると微笑ましいもので、後ろで静かに応援してます。
素材の関係性や表現内容の必然性が違うものですから、なかなか上手くはいかないけれど、失敗やアクシデントから不意に成功へ持ち込む生徒もたまにいます。
制作への入り方はどの場所からでも、最終的に本人のイメージへ転化された作品は評価してあげたいですね。  そんな時は、生徒の制作への入り口となって頂いた丸山先生の作品にも人知れず感謝する事があります。

今回も、わざわざ遠方から新美の生徒のためにお越し頂いた武蔵野美術大学関係者の方々、丸山先生、本当にありがとうございました。
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近年は少しずつですが、入試の変更点があるようです。
受験される学生さんは、ご自分の受験校へのリサーチをお忘れなく!

公開コンクールが終了して

油絵科 箱岩です。

先日の公開コンクールに、ご参加いただいた皆さん、お疲れ様でした。油彩&デッサンのダブル受講をされた皆さんは疲れがたまったことでしょう。外部からの受講者も多数有り、大変活気あるコンクールでしたね。

僕も2週連続の日曜出勤と、別件の仕事でのトラブルが立て込み、必要以上に充実した日々でした。

しかし、ストレスの捌け口が作れない日々が続いてしまうと、メンタルの弱い私はすぐ体調を崩します。まんまと、鼻風邪をひいてノックアウト寸前の日曜日でした。お恥ずかしいw

それでもせっかくの休みなので、一切、心を「空」にして水辺の景色を楽しんできましたよ。

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気持ちの切り替えの方法は人それぞれですが、いろいろと悩まずに何かしら行動を起こすことで脳はポジティブ・シンキングへと切り替えやすくなるそうです。メンタルが疲れたなと感じたら、思いつきのワンアクションを心がけると良いかも知れませんね。

さて、先日のコンクールで感じたことを今日の本題にしたいと思います。

率直な感想として、受験生の大多数の考えが窺い知れて、個人的に大変参考になりました。

講評しながら感じたのは、イメージや、テーマに対する取り組みの甘さです。

大多数の人が「そこそこのイメージ、そこそこのコンセプトでも、絵的な部分でクオリティーを上げりゃ良いんでしょ」と言わんばかりの絵を描いているなぁと感じました。もちろんその考えでは、構図も、モティーフの使い方も消極的で希薄になってしまいがちです。

上位であっても、作品の第一印象がそうなっている作品は「伸びしろ」が感じられず、逆にそこが充実している作品は、技術度返しに高評価につながっていたのではと思います。

とある生徒の個別講評で、本人の絵が上位だったこともあり、褒めるべき所から話し始めたのですが、どうも本人の顔色が冴えないので、???となった私は質問してみました。

「あれれ、表情が曇ってるね。上位だったけど何か思いどうりにいかなかったのかな?」

すると、ウンとうなずいて自分の最初のイメージやコンセプトを話してくれ(正直、内容が難しく、表現するのは厳しかった様子)て、自分で納得できなかったのに高評価でも喜べないということのようでした。

だとすると私の褒め言葉はさぞ追い討ちをかける事になったでしょう。本当に、ごめんなさい。

皆さんこの方はなんと現役高校3年生ですよ!!本当に末恐ろしい「アートの鬼」の出現です。受験やコンクールの順位よりも、今自分が表現したい事に、これほど本気でいられる精神の強さ。本当に素晴らしいと思いました。

常々、担当の生徒に話していることですが、試験さえ突破すればどんな方法でも良い。そんな薄っぺらな即興の受験対策で大好きな絵の世界を汚してしまっていいのでしょうか?

確かに受験は競争です。けれども、美術は盲目的な修行の果てに体得する技術ではないのです。

努力とは、目標を実現するための思考量です。「すればいい」のでも「やらなければいけない」のでもありません。受験は、いうなれば絵画という遊びにおいて、誰が一番、絵画好きであるかの意地を比べていると思ってもらえばいいのです。新美では、そんな熱い想いの実現と、それを認めさせて志望大学合格を勝ち取る。この欲張りな目標を意地でも実現したいと思って指導しています。

冬の到来を予感させる寒さが続きますが、インプット、アウトプットのバランスを整えて健全な心を手に入れるのと同時に、今一度、アートに生きたいと願う皆さんの「本気」を表現の原動力として出してしまえばいいのじゃないかと思います。

最近どうもお説教くさくて駄目ですね。次回は何か面白いネタが用意できるといいのですがw

 

油絵科の公開コンクール

こんにちは。油絵科の関口です。

 

今回は先日行われた公開コンクールについて書こうと思います。今年は開催期間が例年より遅かった事もあり、新美生だけでなく、全国から大勢の受講生が参加してくれました。

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ではまずは11/2(日)?3(月祝)に行われた絵画表現・油画から。

課題は「直線と曲線と」という、モチーフの無いイメージ課題でした。今回は夜間部の井戸川先生の出題です。DSCN7738

“資料等の閲覧禁止”という実践さながらのルールの中、受講生は自分なりの直線と曲線のイメージを見せてくれました。講評の時、一人ひとりどんなイメージを持って描いたのかを聞いていきましたが、順位とは関係なく、それぞれの考えたイメージはとても面白く、興味深いものが多かったです。

 

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こちらは上位受賞者です。ちなみに1番は高3の新美夜間部生でした。おめでとうございます。

 

次に11/9(日)に行われた素描です。

課題は木製の立方体を与え「与えられた立方体に穴があいた状態を想定し素描しなさい」というものでした。条件として“実際のモチーフは加工しては行けない”という事と“穴は他の面に貫通していることを想定する事”を課しました。こちらの出題者は僕です。

素描もどんな事をイメージして描いたのかを聞いていきましたが、やはり人それぞれに色んなイメージを持っている事が分かり、とても面白かったです(油画も素描も一人ずつイメージを聞いていったので、講評の時間が遅くなってしまいましたね。申し訳ありませんでした)

 

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こちらが素描の上位受賞者です。素描も高校3年生が1番でした。スゴいですね。本当におめでとうございます。

 

ちなみに今回の公開コンクール、普段一緒に組んでいる先生同士ではなく、全体的に珍しい組み合わせにしてみました。僕自身も油画の時に松田先生と15?6年ぶりにコンビを組みましたし、素描の時の箱岩先生と山本先生は「自分たちでも意外だったけど、18年やってきて初めてコンビを組んだ!」と言っていました。
あと海老澤先生と鷹取先生のコンビも初です。全部は書きませんが、実は他にも結構レアな組み合わせが満載だったんですよ。

普段講師室でよく冗談を言ったりしていて、先生同士の仲は良いのですが、こういう機会は滅多にないので新鮮な気持ちで講評に挑めた、という人も多かったようです。

 

受講した皆さんも、我々講師陣も、新たなる気持ちで明日からまた頑張りましょう!!