カテゴリー別アーカイブ: 油絵科

油絵科・夏のSPイベント

こんにちは。油絵科の関口です。
暑い日が続いていますが、夜に耳を澄ませば、コオロギや秋の虫達の鳴き声が聴こえるようになりました。もう秋がすぐそこまで来ているんですね。

 

さて、新宿校の油絵科では、例年の夏期講習会と違う試みとして、各期の最終課題を全クラス合同で、作品に投票するというイベントを行いました。
クラスで課題内容が違うので、課題毎に一番良いと思うものに対してシールを貼っていく(自分の作品以外に投票)というルールで、講師も生徒も投票に参加。(講師と生徒は違う色のシールを貼りました)

投票数を数えて、得票数が多いのが上位・・・というものではなく、講師が選んだ作品について何を基準に選んだのかをコメントする。というスタイルで、まずは全体講評。その後、各クラスに別れて通常通りの講評を行いました。全体講評風景

投票では生徒に人気のあるものと、先生に人気のある作品がズレていたり、突拍子もない作品が選ばれたり(笑)して、非常に面白いイベントになったと思います。

仲間講評
そういえば僕が高校生の時、新美で先生の講評を聞いていると「何であんな下手な絵を褒めるんだろう?」とか「あの浪人生は凄く上手いのに、何であんなにボロクソに言われるんだろう?」と疑問に思った事が多々ありました。(当時はかなり癖の強い先生や、怖い先生もいたのです)
当時の自分を振り返ると、まだ絵に対する知識も経験も乏しく、素人同然の見方しか出来ていなかった…という事です。年輪を重ね、人生で色んな経験を積む事で、絵の見方も幅広くなっていくのだと思います。

今の生徒も、講師の選んだ作品に対して、何枚かは「え?? あの先生、それ選んじゃうの??マジか?」とか思ったのではないでしょうか(笑)。

宮本講評
でも、僕らは至って真剣に作品を選んでいるつもりです。全体講評で、その作品が選ばれた理由を聞いて、納得いったのではないかと思います。
・・・え?聞いても納得いってない? そういう人でも、歳を取れば分かるようになりますよ。・・・多分(笑)。
まぁそれは別として、自分の作品が他人から選ばれる(この中で一番好き!と思ってもらえる)というのは、皆にとっては制作の励みになったのではないでしょうか?

前期と中期に行ったこのイベント、後期も最終日に行いますので、乞うご期待下さい。

 

 

さて、もう一つ。最後は宣伝です。

8月26日(水)新美では二学期入学を考えている人(高卒生対象)に対して、二学期特待生試験があります。試験とは言っても、持参作品数点(油絵科は原則としてデッサン5点、油絵5点)と、面接によるもので、学科試験もありません。
経済的な面も考慮して審査しますので、実力や学科に自信が無い人でも、これから二学期入学を考えている人は受けてみては如何でしょうか?

http://www.art-shinbi.com/tokutai/images/tokutai2015-2.pdf?

 

まだまだ暑い日が続きそうですので、夏バテしない様に元気にこの夏を乗り切りましょう?

 

油絵具の色ついて(青色編)

こんにちは。油絵科の関口です。
前回はルネサンスの頃に油絵に使われていた「赤」について書きましたが、今日は「青」について書こうと思います。

現在使われている、コバルトブルー、セルリアンブルーなどのコバルトを原料としている青色顔料は19世紀の中頃から使われる様になりました。プルシャンブルーは18世紀から使われています。
名前は色んなものが付いていますが、サファイアブルーやコンポーズブルーなどのフタロシアニン系の混色でできる青も20世紀に入ってからの絵の具です。

 

ウルトラマリンブルー
この色は、昔はラピスラズリから採取されていました。ヨーロッパでは殆ど取れない鉱石でしたので、アフガニスタンや西アジアから「海(地中海)を越えて来た色」として伝えられ、それで「ウルトラマリン」という名前が付いたそうです。原石は綺麗な青い色をしていますが、実はかなり不純物が多く、石を砕いただけでは綺麗な青い顔料になりません。cristaux de lazurite sur calcite (Afghanistan)
ラピスラズリの鉱石

チェンニーニの「絵画論」の中で紹介されている精製法を簡単に説明すると、粉砕したラピスラズリを油や樹脂で練ってパテを作り、薄めた灰汁の中で揉むと青い顔料だけ抽出されるそうです。ヨーロッパでは輸入に頼るしかなく、精製法が複雑な為、高価な色として知られ、17世紀では何と金よりも高価だったそうです。
先日の芸大説明会で技法材料研究室を訪れた時、奥の方にラピスラズリの鉱石と青い色の塗布サンプルが置かれていたので、気になって助手の人に尋ねると、やはりチェンニーニの技法で天然のウルトラマリンを作ったそうです。

その昔、この青をふんだんに使えたのは、人気と実力のある画家だけでした。初期ルネサンスを代表する巨匠、ジオットは壁画に惜しみなくラピスラズリを使いました。
PadovaScrovegni1305
パドヴァにあるスクロヴェーニ礼拝堂、ジオットによるフレスコ画 (1305年頃)

真珠の首飾りの少女1655
17世紀の画家、フェルメールの「真珠の首飾りの少女」(1655年頃) のターバンのところに使われている青もラピスラズリです。

ちなみに現在使われているウルトラマリンは人工のもので、化学組成は殆ど天然のものと同じです。人工のウルトラマリンの方が不純物がない分、色が鮮やか。粒子が細かく、均一で絵の具にしやすい。化学反応で作れるので安価です。僕のオススメはマツダスーパーのフレンチウルトラマリン。通常のウルトラマリンよりもちょっと高いですが、発色の良さは国内外にある他のどのメーカーと比較しても群を抜いており、本当に絶品です。

 

よくウルトラマリンブルーを和名で「群青」と表現する事がありますが、ラピスラズリの和名は「青金石」とか「瑠璃」と表現します。
日本画で使われている「岩群青」という色はアズライト(藍銅鉱:らんどうこう)と言われる鉱石を砕いたもので別の色です。昔は日本にも豊富なアズライトの鉱床がありましたが、今では取り尽くしてしまったため、現在では輸入に頼るしかなく、かなり高価という事です。
6azurite2-hewlin
海外で採取されたアズライトの鉱石

 

ここのところず?っと暑い日が続いていましたので、青い色で少しでも爽やかな気分を味わってもらえたなら幸いです。夏バテしないように、しっかりご飯を食べて、元気に暑い夏を乗り切りましょう!

油絵科 現役生 合格体験記

こんにちは。学生課です。
先日、2015年度に芸大油画に現役合格をした宍倉君と、油絵科夜間部の阿部先生とで対談を行いました。
今まさに夏期講習中で、色々悩んでいる現役生も多いのではないですか?
新美HP特設サイトで、対談の様子や、宍倉君の夏から合格にかけての作品を紹介しています。
みんな悩んだり試行錯誤しながら、制作しているんですね、、! ぜひご覧ください。

http://www.art-shinbi.com/event/abura_taidan//

対談

「芸大油画 12年連続合格No.1の新美が解く、芸大油画」特設サイトはこちらから。
http://www.art-shinbi.com/event/oil_painting/

今後もいろいろな特集を組んでいきます!
たまに新美HPをのぞいてみてくださいね!

 

 

 

 

亜斗の件、一の巻answer

こんにちは、油絵科夜間部です。

前回の”亜斗の件”、覚えていらっしゃいますか?

ケンとハートの闘いです。
それは、ある作品のオマージュ?というと大層ですし
パロディーというと、クレームがつきそうですが、
そのような体のマンガもどきになっています。

「解説は次回に・・・」で終わらせてしまいました。
何の作品が元になっているのか?
お分かりになったでしょうか?

もちろん、お分かりになったかと?思いますが?
答えは、オノ・ヨーコさんの「天井の絵画」です。

オノさんのロンドンでの初個展(1966年・インディカ画廊)で
展示された作品です。

後の旦那、ジョン・レノンとの出会いのきっかけとなった
あまりにも有名な作品です。

ジョンは、こう語っています。
「レコーディングがない日は、画廊なんか観るんだ。
何か凄い女がショウをやるって、耳にした。そこでプレビューに
行ってみたんだ。(中略)天井に絵があって、それを見る為に梯子が用意してある。黒っぽい絵に見えて、それを見上げる為の双眼鏡がくっついている。で、梯子を登って双眼鏡をのぞいた。そこには小さな文字で“YES”と書かれていた。肯定的なのさ、だから救われた。すごい感銘を受けた。それから、彼女がやって来て、カードを手渡された。“息をしなさい”って書いてあった。」

解説1

さすがオノさん、シビれます。ジョンには、最高のタイミングだったのでしょう!この出会いは、彼女の最高傑作だと私はふんでいます。

その個展前の彼女の作品は、展示ができるような、具体的なものとして残らない作品がほとんどでした。映像とか、ハプニングです。この出会いを狙ったのではないかと、思えてなりません。

この後、彼女は飛躍的に変わっていきます。作品も知名度も。それは、色々な意味で手放しに良かったとは言えないかもしれませんが、本人が強く望んだことではないでしょうか?

解説2

因みに、彼女がジョンにやられた出会いは、違っていたようです。

「ジョンが”金槌で釘を打て”というタイトルの作品に向かって、釘を打っていいかときたのです。象徴化された作品で、傷ひとつない釘が置いてあった。釘を打ち込みたい人は、1本5シリングを払うということに決めてあった。だからそのことを伝えると、ジョンは暫く考えて、「じゃあ、空想の打つならどうなるか?」と聞きなおしたんです。すばらしかったわ。それこそ私のゲーム。ジョンと私は同じ次元のゲームをしていた。その時、彼が誰だか知りませんでしたけれど。誰だか知ってからも何もいうことはなかった。私のいう意味は、つまり、芸術から見たビートルズの存在は”べつになんとも”ってものだったということ」

金槌を打つ

「私は美人で、頭も悪くないし、身体もいいし、幼い時から、廻りの人に気をつかって、随分尽くす性だし、今は、その延長で世界の為に、と自分の出来るだけはしているのだから、自分では何もコンプレックスを感じていない。それがこれだけ悪口を云われて来た、と云うのはどういうことなのだろう。」(中略)

「空の美しさにかなうアートなんてあるのだろうか。私はただ私でありたい、と思って暮らして来ただけだ。その私であると云うことが、そんなに怒りをうけるのだったら、人間社会はこわい、と思う。」(中略)

「自分のいい子ぶりにウンザリしている位で、略、本当は世界にむかって、バカヤローと叫びたいのが本音だ。」1984年10月 ニューヨークにて

私も同感、バカヤローと叫びたいところですが、特に油画科の受験生には、思い切って、バカヤローと叫んでほしいものです。

油画科昼間部

こんにちは、油絵科講師の山本です。

早いもので一学期が終わりました。

充実した一学期になったでしょうか。

頑張りすぎてバテ気味の人やまだまだ余裕の人もいるのでしょうか。

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夏期講習会の前のひとやすみ

いい準備ができるといいですね。

心と体に栄養をあたえてください。

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夏期講習会では一枚でも多くの絵を描いて、いろんな作品を見て、

たくさん経験を積み重ねて下さい。

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