カテゴリー別アーカイブ: 新宿校

映像科:武蔵美映像学科 推薦入試対策

こんにちは。映像科の森田です。
映像科では一般入試の対策と並行して、推薦入試対策の真っ最中。
クリエーション資質重視型、ディレクション資質重視型、それぞれ正念場です。
26日の出願に向けて、ポートフォリオや自己推薦調書の制作に、文字通り全精力を注いでいます。
(これを読んでいる人で出願がこれからという人は、もう一踏ん張り。頑張ってください…!)

無事に出願が終わったら来週以降は、面接対策。
またディレクション資質重視型で受験する人は、構想力テスト対策も行います。
リーダーシップや発想をまとめる力が問われるこの入試は対策が難しいですが、
プレゼンやディスカッションという形式に慣れておくことで、
試験という限られた時間の中で、自分の普段の力を発揮することを目指しましょう。

10/30と11/6の構想力テスト対策は、この授業だけ参加することもできます!
詳しい授業の内容はこちらからどうぞ。

絵の上手さについて②

こんにちは。油絵科の関口です。
前回に引き続き、絵の上手さについて書こうと思います。

僕が考える上手さは、一般の人には分かりにくいものが多いと思いますので、今回は少しとっつき易いものから入って説明していこうと思います。
klimt-adele-bloch-bauer
クリムトは一般人にも人気が高く、この絵は数年前 世界で一番高い値段を付けた肖像画として、ニュースを賑わせました。煌びやかで、まさに宝石箱をひっくり返した様な美しさ。人物を見れば、かなり写実的な表現が使われており、分かり易い上手さだと思います。

%e3%82%aa%e3%83%aa%e3%82%b8%e3%83%8a%e3%83%ab
では、クリムトでも少し変わった作品を紹介しましょう。こちらも上と同じく、肖像画のジャンルになりますが、背後に中国風の絵が描かれています。これだけの数の顔が画面に登場したら、普通はうるさくて中央の人物は目立たないと思いませんか?
実は、この絵には中央の人物をメインにするための工夫が、色んなところに散りばめられています。一番分かり易いのは、明度対比です。

%e3%82%b3%e3%83%b3%e3%83%88%e3%83%a9%e3%82%b9%e3%83%88%e5%bc%b1
こちらの左右を見比べると、右側の絵は背景に完全に同化してしまっていると思いませんか?
顔の明るさに対して髪の毛の調子の黒、同じく靴の黒、この二つを取るだけでもかなり背景と同化してしまいます。更には腰の周りにある馬の暗さもウエストを引き締めるのに使われているのが分かると思います。
こういう工夫を全てを書いていたら、物凄く長くなってしまいますので割愛しますが、クリムトの絵は平面的な処理をしているだけに、こういう工夫が細かいところまでギッシリと詰まっているのです。
こういう操作も絵を描く上での上手さです。説明する上での難易度は低いですが、この能力をある程度身につけるのは、それなりの年月が掛かります。

 

%e3%83%87%e3%83%83%e3%82%b5%e3%83%b3%ef%bc%91
あと、クリムトのこのタイプのデッサンも、かなり上手だと思います。ただ、こちらの方が説明するのが難しいかもしれません。
これを見ても、ミミズが這いつくばった様なヘロヘロの線で、何が上手いんだ?と思うかもしれませんが、長年絵を描いている人間からすると、こういうのも上手なんですよ。
例えば、この絵には調子を全くと言って良いほど使っていませんが、お尻にはボリューム感があると思いませんか?普通は陰影をつけて量感を表現しますが、線のみで表しています。お尻から奥の方にある腿までの空間も感じられると思います。身体の捻じれも上手く表現されていますし、服装や髪の毛、肌の質感の差も線のバリエーションで表現しています。唇なんかもササッと描いていますが、とても表情豊かです。・・・ここまで書いていると、言葉では中々表すことが出来ず、自分の表現力の乏しさに限界を感じます。

%e3%83%87%e3%83%83%e3%82%b5%e3%83%b3%ef%bc%92
どちらもクリムトのデッサンですが、右側のデッサンなんか、もはや僕のボキャブラリーでは、上手さを説明するのが困難です(笑)。

%e3%83%87%e3%83%83%e3%82%b5%e3%83%b3%ef%bc%93
こちらのデッサンは表情が豊かですね。人形とは違い、意思を持った一人の人間として描かれており、今にも何か喋りだしそうな気配さえ漂っています。この絵からはクリムトのこのモデルに対する想いや、人間そのものに対する眼差しを感じます。
ここに挙げた数枚のデッサンは、描かれた時間は僅か数分だと思いますが、この領域に到達する為には、一朝一夕の訓練では不可能なのです。

 
このブログを通して「上手さと言っても色々あるんだ…」という事が分かって頂けたら幸いです。

日本画 秋といえば。

こんにちは!日本画の佐々木です。

このところ急に気温が下がってグッと秋めいてきました。
秋といえば…食欲?読書?スポーツ?いいえ。受験生にとっての秋は、公開コンクールです!!
シンビ日本画のコンクールは、10月29日、30日!
課題は着彩。なんと今年は1人1卓になっておりますので、参加者上限が卓数限りになってしまいます。参加を予定している人はどうぞお早めにお申し込みくださいね?!
そして、コンクールの講評後は持ち込み作品の講評、個別相談も行なっておりますので、外部から参加される方は是非普段描いている作品を持参してください☆

そしてそして。
先日のブログに書いた細密着彩。昼間部のみんながとてもいい勉強になっていたので、夜間部でもレッツトライ。
夜間のモチーフは、ざくろとティースプーン。
素敵な作品…出ました!

dscn3823
dscn3824

予想以上にいい作品が多く、中でもこの二枚は、作者たちの見ている世界が伝わって来るいいものになったのではないかと思います。やるなあ、現役生!

…まだ少し先ですが、11/27のプレ冬期講習では細密ゼミを行います。
デモンストレーションも交えながら、「描く」ってなんだ?ということを体感できるプログラムを用意していますので、「いまいち物をちゃんと描けてる気がしない…」「そもそもどこまで描いたら完成なの?」などなど、「描く」にギモンがある人は、冬前にそれをスッキリさせちゃいましょう。高校生以上は学年、浪人問わず参加可能です!

と、宣伝が続きましたが、とにかくイベントが盛りだくさんな秋です!
厳しい冬を迎える前の蓄え、抜かりなくしていきましょう!

映像科:公開コンクールのレポート

こんにちは、映像科講師の森田です。
映像科の二学期の授業ですが、昨日と一昨日は年に一度の公開コンクール/武蔵美映像学科実技模試でした。(受講された皆さんは2日間、お疲れさまでした!)
今回の模試では「感覚テスト」「小論文or鉛筆デッサン(どちらか選択)」に加えて、学科も含めて500点満点で現状の実力をはかります。このブログを見ている人の中には「映像の入試に興味はあるけど今回は参加できなかった」という人もいると思いますので、ここで今年のコンクールの問題と解説を紹介したいと思います。
(※問題は近年の武蔵美映像学科の傾向を踏まえて出題してますが、予想ではないです。念のため。)

+

■感覚テスト(必須科目)
下記の文から想起する状況のイメージ、あるいは出来事のイメージを解答欄に絵と文章で表現しなさい。
「この感触から記憶がよみがえる」(B3画用紙/3時間)

まずは感覚テスト。感覚テストは武蔵美映像学科を受験する学生に必須の試験科目です。例年短い文章またはキーワードから発想して、絵と文章で「映像のワンシーン」を創作します。ちなみに去年の入試の問題は「この時が永遠に続くと思われた」というものでした。解答する上で具体的に考えるべき設定は2点。①「この文の『この時』をどういう“印象的な”状況として設定するのか?」そして②「設定した『この時』をどういう表現によって“永遠”とも感じさせることができるのか?」
今回の模試の「この感触から記憶がよみがえる」でも、同様に以下の2点を主な評価の基準としました。①「この文の『この感触』をどういう“具体的な”感覚として設定するのか?」、②「設定した『この感触』からどのような“印象的な”記憶が想起されるのか?」
言葉にするとやや難しそうですが、実際の作品ではみんな、単に回想シーンを含むだけでなく、人物の設定や心情の表現など、こだわって完成させてくれました。

dscf9473

+

■小論文(選択科目)
配布された紅白帽の観察と考察から、発見したテーマについて論じなさい。(600字以内/2時間)

次に小論文です。武蔵美映像学科の小論文は、毎回何かモチーフが配られています。そしてそのモチーフを観察したり、実際に使ってみたりすることから論文のテーマを見つけるという、他の大学の小論文とはひと味違った出題です。(※去年の問題はこちらを参照
今回の模試ではモチーフとして「紅白帽」を渡しました。小学校の時に運動会で被ったことがある人も多いと思います。「こんな物を渡されて小論文って…」と困ってしまう人もいると思いますが、講評でも話しましたが、このようなモチーフの場合でもいくつか論のきっかけは考えられると思います。
①「紅」と「白」が「表」と「裏」になっているという紅白帽の「造形的な特性」。
②被ることにである集団に属していることが示されるという紅白帽の「意味的な特性」。
③今この場で被ってみることで感じられる違和感、想起される記憶など。
また小論文の試験ではもちろん他の人にはないような独創的な発想も重要ですが、やはり一番大切なのは文章の一貫性。さらに文としての読みやすさも大切。原稿用紙もなるべく丁寧に書くことを意識してください。

dscf9484

dscf9451

+

■鉛筆デッサン(選択科目)
配布されたモチーフ2点(ハンガーラック、紅白帽)を条件に従って構成して描きなさい。(B3画用紙/3時間)
条件:
・ハンガーラックは机に立て、上部に紅白帽を被せること。

最後に鉛筆デッサン。映像学科のデッサンは卓上で3時間。大学の試験問題の解説では「オーソドックスな描写力」が評価されるとされています。多少変わったモチーフが出されても、シンプルに、丁寧に描写をすることを心がけましょう。
また例年小論文とデッサンのモチーフは一部共通するものが出されます。今回の模試でもその傾向を踏まえて、紅白帽とそれをかけられるようなラックをセットにしました。

dscf9448

dscf9463

++

最後は成績発表と1位、2位の人の表彰式。良い結果が出た人はおめでとうございました!
やや結果が振るわなかったという人は、この悔しさをバネに二学期の残りをがんばりましょう!!

dscf9481

dscf9478

絵の上手さについて①

こんにちは。油絵科の関口です。
今日は絵の上手さについて、お話したいと思います。
僕は学生の絵を講評や評価する時に「君は上手いね?」と言う事が殆どありません。かと言って、皆の絵を下手だと思っている訳でもないのですが…

%e3%82%b2%e3%83%ab%e3%83%8b%e3%82%ab
ピカソ「ゲルニカ」1937年

 
先日、ふとした事で「上手さ」について生徒と喋った時「てっきり先生は上手い作品は評価しないものだと思っていました」と言われてしまいました。ショックです(笑)。
実際は上手い作品もちゃんと評価しますし、そこはキッチリ見ているつもりです。

但し、僕が「上手い」と評するのは、一般の人(受験生も含む)からすると、分かりにくいものが多いのかもしれません。
でも皆さんからすると「え?上手いのに分かりにくい??」って感じですよね…。
実は上手いにも分かりやすい上手さと、分かりにくい上手さがあるんです。

 
%e6%b3%a3%e3%81%8f%e5%a5%b3
ピカソ「泣く女」1937年

例えばスポーツの世界でも、その競技を専門にやっていた人が引退し、解説者になる事がありますよね?そしてテレビで「この選手は本当に上手いんです」などと発言されるんですが、素人の自分にはサッパリ分からない…という事がよくあります。
その競技をやっている人から見ると、明らかに「上手い」と思える技術がある。それが専門的な技術になればなるほど、一般の人には分かりにくい。そこで解説者が必要になる。という事なのでしょう。

 

15%e6%ad%b3%e3%81%ae%e3%83%87%e3%83%83%e3%82%b5%e3%83%b3
例えば、このピカソ15歳のデッサンは一般人から見ても「上手い」という感じですよね。これなら説明するまでもないでしょう。

では、これは如何ですか?
56%e6%ad%b3%e3%81%ae%e3%83%87%e3%83%83%e3%82%b5%e3%83%b3
こちらは上の作品から約40年後、ピカソ56歳(1937年)のデッサンです。僕からすると、圧倒的とも言える「上手さ」が絵から溢れ出ている作品なのですが…
一見すると雑にも思えるこのデッサン。人間の持つ表情の自然さや美しさ、このモデルの持つ独特な佇まいまで感じさせてくれます。素早く動かしたタッチの荒々しさと、モデルのリラックスした感じを同居させながらも不自然さを感じさせないバランス感覚…。構図も絶妙です。もしかすると、ピカソならチョチョイのチョイで描いた一枚なのかもしれませんが、ちょっとやそっとの力量では、こうは描けません。

※ちなみに上に載せた「泣く女」のモデルはこのデッサンの女性で、「ゲルニカ」の左の方にいる赤ちゃんを抱いている女性も、この人がモデルだと言われています。3点は同年作。

 

他にも色んな種類の上手さがありますが、長くなりそうなので、別の機会に紹介しますね。乞うご期待ください。