カテゴリー別アーカイブ: 新宿校

人物表現と巨匠たち②

こんにちは。油絵科の関口です。

今週から夜間部は人物課題に入るので、土曜日は巨匠のデッサンの模写をしてもらいました。僕も学生に説明をするため、描き出しだけ模写をしてみましたが、改めて巨匠の凄さを実感した次第です。
という訳で前回に引き続き、今日も人物表現と巨匠について書こうと思います。今後の制作の参考になれば幸いです。

 

ルーベンス
前回のブログでも少し取り上げましたが、実際に今回模写をしてみて「ルーベンスって本当に上手いな?」と、心から感心しましたので、もう一度紹介したくなりました。
表情の美しさや自然さ、モデルに対しての想いや感情…そして、微に入り細を穿つ程の画面への気配り、構成や技術も含めて色んなところが見えてくると、ただただ感心してしまいまうばかりです。絵を沢山描けば描くほど、その上手さは心に染みてきます。

このルーベンスの上手さをちゃんと伝わるように説明するには、少なくとも何回かに分けて書く必要がありそうなので、また機会があれば詳しく紹介しますね。

 

レンブラント
レンブラントは17世紀オランダの巨匠です。自画像なども数多くの名作を残しています。
銅版画やデッサンも数多く制作しており、顔の模写をして勉強をするには、ピッタリの画家だと思います。銅版画はかなり描き込んだものが多く、どの作品も表情が絶妙です。生きている人間の心の奥底を描いている、という実感が伝わって来ます。名だたる巨匠の中で言えば、決して技術的に器用な方ではないと思いますが、味のある「良い絵」を描くのがレンブラントという画家です。
全盛期には奢侈を尽くし、ある作品がキッカケで晩年は破産をして、見すぼらしい生活に陥ってしまいます。波瀾万丈な人生を送っていますが、その作品からは何とも言えない人間臭さを感じさせてくれるのです。人生、辛い事があっても、作品にはプラスになる事がある。という良い例ではないでしょうか。

 

ベラスケス

17世紀スペインを代表する巨匠ですが、ベラスケスはどういう訳か殆どデッサンを残していません。ただ、この人が卓越したデッサン力の持ち主であることは、疑いようがありません。彼は若くしてその実力を評価され、宮廷画家になります。宮廷では当時のスペイン国王フェリペ4世に寵愛され、沢山の肖像画を残しています。正確無比のそのデッサン力は、初期の頃から晩年まで決して衰えることなく、味わいを増しながら磨きがかかって行きます。
昔の巨匠は、晩年になればなるほど技術的にも内容的にも向上していることが共通しています。老眼や肉体的な衰えはあった筈ですが、もはやそういう次元ではないんですよね。僕も人生の折り返し地点は過ぎていると思うので、そういうところを目標にして行けたらな…と思います。

僕の知る限り、ベラスケスのデッサンで真筆として現存しているのは、2?3枚しかありません。もしスペイン王室のどこかに大切にしまわれているのなら、そのお宝を一度は見てみたいものです。

 

今回紹介したのはバロックの3大巨匠でした。ルネサンスと比べると脚光を浴びることが少ない気がしますが、絵を学んでいる人には是非じっくりと見て欲しい巨匠達です。
それでは今日はこの辺で。

通信教育:もうすぐ夏期講習

こんにちは、通信教育の講師の土屋です。

今月、6月に発送する7月タームの課題で一学期の通信教育は終わりです。
提出は来月ですが、一つ一つの課題を着実にやっていきましょう。
通信講師一同、作品をお待ちしております!

さて、一学期が終わりということはもうすぐ夏期講習会ですね。
特に通信をとっている遠方の生徒の方は
早目にスケジュールを考えていることかと思います。

夏期講習はWEB申し込みも受け付けていますので、
こちらをご覧ください。

ちなみに、せっかく東京に来たから美術館やギャラリーも見てみたい!という方は
Tokyo Art Beat
というサイトが便利ですよ!

こんな感じで、エリアやジャンルごとにアートスペースを探せます。

それでは夏期講習のお申し込みお待ちしております!

芸大デザイン総合コースのW.S

6/17(日)サマーワークショップ リサーチTシャツ制作を行ないます。

新美から新宿中央公園へ短時間でリサーチ、自分の興味の視点を持ったスケッチ、ドローイングを基にデザインし、伝える内容と表現との実際を体感します。

ヘビーウエイトTシャツと描画材は用意しております。

申し込みはこちらからどうぞ。



石膏デッサン考

こんにちは、実技全科総合部です。
本日の美大入試対策でも当たり前のように描いている「石膏デッサン」を考えてみましょう。

?日本においての石膏デッサンによる美術教育は、20世紀初め(西暦1900年)から始まりました。

東京芸術大学油画科においては、1949年の「マルスの胸像」以来、繰り返し石膏デッサンが入試の課題としてされ続けました。

その一方では、今日まで様々な偏見や、ときには敵意にさらされ、なかなか理解してもらえなかったという事情もあります。

「石膏像が描けても・・・」という声が今でも時々聞こえてきますし、専門家のあいだでも石膏デッサンを巡って様々な否定的な意見も交わされました。

そんな状況にもかかわらず、石膏デッサンは生きのび、美大入試においても重要なまたは入試を代表するような課題として高い評価を得ているのです。?

それはいったいなぜでしょうか?

やはりそれだけの意味が、そして価値があったのだと認めざるを得なさそうです。?

今回、71516日のスペシャル・サマー・セミナーでは、“石膏デッサン強化ゼミ”2日目の制作終了後の解説

「なぜ?石膏デッサン」で、興味深いお話しを新美のレジェンド講師よりしていただく予定です。

ゼミを受講し、上手くなったついでに知識もつけ、疑問なく石膏デッサンができるようになると、もっと成長するにちがいありません!!?

詳細、お申込みはこちらから 「石膏デッサン強化ゼミ」

是非、ご参加お待ちしております!

人物表現と巨匠達

こんにちは。油絵科の関口です。

6月は昼間部も夜間部も人物課題が入っていますね。人物は静物と比べると色々と難しいところが多く、それなりに力がある人でも失敗する確率が高い課題です。形態が複雑な上、生身の人間はじっとしてもくれません。生きてるんですから、当然感情だってあります。そんな事を踏まえながら絵を描く訳ですから、上手く描けないのは、ある意味当然なんです。

そんな受験生の皆さんにお勧めしているのは、デッサンの模写です。特に名だたる巨匠達のデッサンを模写する事は、とても勉強になると思いますよ。

ミケランジェロ
このデッサンはシスティーナ礼拝堂天井画の為のものです。ミケランジェロ位になれば人体全体のフォルムは当然把握していたと思いますが、格パーツのディテールの一つひとつを確認するように描いているのが分かります。

上のデッサンを元に描いたと思われるフレスコ画(壁画)。

フレスコは一気に描き上げなくてはならないという制約がありますから、描く時に迷いを残したくなかったのかもしれません。巨大な壁画であり、当然足場が組んであるので、下がって見ることも難しかったでしょう。にもかかわらずこのクオリティー。レオナルドと並んで評されるルネサンスの巨人です。

ルーベンス

この人のデッサンは正しく達人の領域。自身の制作の為に描いたものも当然ありますが、多くはルーベンス工房で働くお弟子さん達に渡して、途中まで絵を描いてもらう為のものと思われます。(メインの仕上げはルーベンス自身が行っていた筈です)絵画空間の把握や強弱の的確さにおいて、この人の右に出るものはいないのではないでしょうか?異素材を組み合わせているにも拘らず、全く浮くこともなく、見事に空間の中に収まっています。

こちらも上のデッサンを元に描いたと思われる油絵。

デッサンと比べると、かなり変更も加えられているので、ルーベンス自身がほとんど描いている可能性もあります。気合が入った中期の傑作です。(本物は3枚組の祭壇画で、両脇に一枚ずつ半分の大きさの絵があります)

アングル
顔はまるで精密機械の様な正確さで、しっかり丁寧に描写しています。(このデッサンはアングルにしては顔の表情がちょっと硬いかな?でもきっとモデルさんそっくりなんでしょうね…)顔とは対照的に、服には遊びの線を用いているにも拘らず、ゴージャスな雰囲気を捉えています。この対比がアングルのデッサンの真骨頂とも言えます。この辺が油絵では決して見ることの出来ない、アングルの隠れた一面です。

シーレ
力強くシンプルな線を用い、形は大胆にデフォルメしながら描いています。クセの強さはありますが、それも含めてシーレの魅力です。受験生なら、誰しも一度はシーレの魅力に惹かれて虜になる…とも言われています。少し絵を勉強すれば見えてくる、分かりやすい上手さがその要因と思われます。

人物は奥が深いので、焦ることなく、じっくりと取り組んで勉強して行きましょう!