カテゴリー別アーカイブ: 彫刻科

彫刻科春期講習会

こんにちは。彫刻科の小川原です。彫刻科での春期講習会はベーシックな課題に加えて、経験者にはマルス胸像の模刻やベルベデーレのデッサンなど、一部臨機応変に変更しながら生徒のニーズに合った内容にしています。

ヌードデッサンでは良い作品が出ました。
U君の作品。6時間描きです。技術が高いだけに表面的になりがちでしたが、構造的なリアリティについて1段階レベルを上げることが出来ました。

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今年度から講師として迎える内田先生も描いてくれました。内田先生は芸大の博士課程を修了されています。10年ぶりのデッサンです。同じく6時間。良く描けるなあ。人体の柔らかさ、しなやかさが魅力的に表現されています。
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そして僕も描きました?。
当たりから人体の自然な立ち振る舞いを捉えます。
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光源設定をします。特に脚の前後関係はここで出しておきたいところです。
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色を重ねて幅を増やし、厚みと空間をつくります。
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部位の形態感を具体的にしていきます。
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肌の色味を整理しつつ、密度を上げて完成です。
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彫刻科のブログは新年度から僕小川原と、社会人講師の氷室先生、内田先生で順番に書いていきます。それぞれの個性を生かしたおもしろい内容に出来たらいいねと話しているので楽しみにしていて下さい。
僕は普段彫刻作品を制作しているのでその制作過程を紹介しようと思います。
現在は複数の作品を同時進行で進めていますが、主たる作品はこれです。
写真はマケットです。マケットとは模型のことを指します。あくまで模型なので作品的な完成度を重視しないのが一般的(立体の設計図としてつくるので、大まかな形が分かればマケットとしては十分)ですが、僕はマケットも一つの作品として制作しています。これはテラコッタと言って焼き物で出来ています。高さ80cmくらい。
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原型はもちろん粘土なのですが、僕は色の下地を土の種類によって切り替えているので、原型の段階で数種類の粘土を使い分けます。頭部、手、足は信楽土(薄い肌色)シャツは白彫土(白い)ズボンは黒泥(グレー)。焼成後に胡粉や日本画用の絵の具で彩色します。
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焼成の為に体を複数パーツに分けながら、均一な厚みにしていきます(中を空洞にする)。厚みが厚いままだと焼成時に破裂してしまいます。
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焼成前に腰を境に上下のパーツは再度接合して仕上げます。腰もつけてしまいたいところですが作品を台座に立たせる構造をつくる為に腰に穴があいていないといけません。
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窯で焼成します。素焼きなので800℃。僕は830℃くらいまで引っ張って、中まで素焼きが通るようにしています。ガス窯と電気窯とあるのですが、電気窯はこの作品には大きすぎて燃費もかかるので今回はガス窯を使います。電気はオートで焼いてくれるので楽なんですけどね?。
焼成後に組み立てて彩色してマケットは完成です。
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本制作の素材です。楠を使います。おそらく九州の方の木。まだ切って間もないので水分を含んでいてとても重いです。2トン以上あるかも。完全に水分が抜けると3分の1くらいの重さになります。
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作品の底面になるところをチェーンソーで面出しします。使っているのは電気チェーンソーです。
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フォークリフトで吊って材木を立てます。ちなみに元の木は大きすぎるので余分な分は事前にカットしています。
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材木の側面にデッサンを入れます。このチョークで描いた線より外は不要な量です。

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余分な量をチェーンソーで荒取りします。電気チェーンソーでは両側から切っても真ん中が残ってしまうので、今回はエンジンチェーンソーで切り離します。ちなみに僕の持っているチェーンソーは電気の物はブレード長が40cm弱で、エンジンの物は75cmくらいあります。エンジンのは重いし、跳ね返ってきたときに危険なのであまり高い位置では使えません(頭上より高い位置など)。

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大型のチェーンソーが無ければこういった部分は細かく崩していくしか無いのですが、こうやって切断して分離させることで取れた材は後々素材として使えるので無駄が無いです。

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同じ要領で背面もカットします。現在ここまで進んでいます。また次回、進んだ状況を紹介できたらと思います。

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2013年度彫刻科入試再現 芸大 制作プロセス

1次試験はジョセフでした。構造や光源設定など、基本的なことはもちろん外せませんが、それ以上に結果的にその像の印象がしっかりと出せているかどうかが評価のポイントとなってきます。ポイントを「外さないこと」も大事ですが、だからといって守りにはいってしまうのではなく、しっかり攻めて印象を引き出すことが求められます。ジョセフとしての魅力がしっかり伝われば必ず評価されます。
Kさん(現役)の作品。
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Nさんの作品。
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2次素描はこれまでアルシュ紙だったものが木炭紙に変わりました。描画材はこれまで通り鉛筆、コンテです。課題はアルミホイルで任意の幾何形態(形歪んでいてよい)をつくり、両手で持った状態を描きなさい。でした。近年素材を造形させて描かせる課題が続いていますが今回もそれに近い物でした。今回の課題は結構手間のかかる課題だったので3時間の中でしっかり完成度を上げるのは大変だったと思います。2次素描では単純に技術を見るだけでなく、作家としてのセンスも見てきます。それを短時間で言い切る(密度を上げる、ということだけが答えではない)力を養っておきたいです。
Kさん(現役)の作品。アルミホイルで三角錐をつくりました。
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Nさんの作品。多面体2つです。
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2次塑像はゲタの模刻でした。これまで出題されたことが無かったので驚いた人も多かったと思います。彫刻科の入試での決めてはやはり塑像と言えるでしょう。1次が高得点で合格しても、塑像が十分でなければ最終合格は掴めません。しっかりと彫刻そのものを理解し、構造を分析できる力が必要です。
Kさん(現役)の作品。
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K

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M

N

O

Nさんの作品。
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芸大受験においては基礎力がしっかり身に付いているかどうかが最も重要です。そういった意味で、これから彫刻を始める人ではダメで、彫刻家としての最低限の力がすでにある人でないといけません。大学に入って基礎練習などしません。すぐ作品をつくれるレベルでないといけないのです。そう考えると予備校で学ぶ1年間って、とても重要なんだなと思いませんか?近年少子化で、受験生の現象によって大分倍率も下がってきまた。この10年で半分になりました。今年は22名合格した内8名が現役生だそうです。今や芸大は誰にでも合格するチャンスのある時代です。立体造形に興味があって、頑張って学ぶ気持ちがある人はぜひ挑戦してほしいです。

 

2013年度彫刻科入試再現 タマ美、ムサ美

こんにちは。彫刻科の小川原です。2013年度の入試再現を各大学合格者の中から2名ずつ行ってもらいましたので紹介します。
タマ美デッサン。両手を含めた自画像でした。短い時間の中で多くの要素をこなさなければいけないので、完成度を上げるのは大変だったと思います。人物としての自然なバランスを大事にしつつ、ポージングで魅力を出していきたいです。その上で作品として抜けの無いよう画面の隅々まで気を配り、完成度で見劣りしないことも重要です。
M君(現役)の作品。

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Nさん(現役)の作品。
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タマ美塑像。「静」もしくは「動」をテーマにつくると言う内容でした。どちらも様々な解釈が可能で、テーマで限定しているようでいて、静でも動でも良いので基本どんな形であっても大幅にテーマから外れてしまうということは無いと思います。ただし自らが選択したテーマがよりダイレクトに伝わる内容の方が採点者に伝わりやすいのは確かです。作品が彫刻的にどうかと言うことよりも、作者にイメージを膨らませられる土壌があるかどうかと、イメージを思い通りに形に出来るかどうかを見ています。もちろん言い切りも大切なので、時間内にしっかり完成度を上げられることも必要です。
M君(現役)の作品。「動」のテーマ。
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Nさん(現役)の作品。「静」のテーマ
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ムサ美デッサン。毎年モデルがモチーフを持ち、台上を自由に動き回る「ムーヴィング」課題が出題されていますが、今年はモチーフが「シート状の綿」でした。少しずつ崩れていったそうです。ムーヴィングは事前の特訓が重要です。当日までにモデルを見なくてもある程度空で描けるようにしておかないといけません。人体としての自然さ、モチーフとの関係性を含め、作者が動くモデルに対し、どう反応してくるのかを見ています。
Nさんの作品。
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Oさんの作品。
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ムサ美塑像。体の一部が出題されています。近年では手にまつわる出題が多いです。今年は「綿」を持った手。でした。3時間と言う短い時間の中で、しっかり形をコントロールして、どれだけそのものらしさを出していけるかが重要です。粘土っぽさを越えて、リアリティが伝わるレベルまで持って来れるよう特訓しましょう。
Nさんの作品。
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Oさんの作品。
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タマビ、ムサビは実技課題が少しクセがあるので一年かけて特別に特訓が必要であると思いがちですが、基礎をしっかり固めた上で入試直前で短期間対策を行うことできちんと合格していくことが出来ます。芸大や公立大も含めて多数受験することを考えている人も問題なく受験できるので興味があればどんどん挑戦してほしいです。

2013年度(2014年)彫刻科受験結果

今日は芸大の最終合格発表がありました。新美彫刻科は3名合格。うち2人は現役生。そのうち1人は基礎科から在籍していた生徒が合格してくれました。おめでとう!!
私立美大は武蔵野美大、多摩美大、造形大全て100パーセント全員合格!!素晴らしい結果でした。
大学に入学した後もこれまで同様努力を惜しまず、積極的に活動して行ってほしいです!

また今年の受験で結果を出せなかった人たちは今とても悔しい思いをしていることだと思います。受験の厳しさを胸に刻んで、来年こそは絶対に合格しましょう!どれだけやっても足りないし、どんなに上手くなってもそれ以上の上のレベルを目指し続けて下さい。

ほとんどの人にとって、最終的なゴールは大学に受かることなんじゃないかなと思います。受験生である以上それは当たり前のことのように思えるかもしれませんが、それだけを目標にしてしまうと肝心なことが見えずらくなってしまいます。
一番大事なのは今ここでデッサンや塑像の勉強をしていることに何の意味があるのか知ることです。描き方、つくり方を学んでも、「彫刻」を学ばねば表現の本質を知ったことにはならないのです。受験で受かるレベルと言う限界値(このくらい出来れば受かるだろう)を設定して、それに向かって取り組んでいても、それを超えるのは難しいでしょう。
いわゆる受験に於けるデッサンや塑像に関しても、求められていることは「彫刻的理解」や「美術的表現力」に他なりません。それはすでに限界値のない「美術作品」と言えるでしょう。作品としてどこまでこだわり抜けるか、研究し尽くせるか、そしてその集積が「合格」という形となり、結果として1年後自然な形で手に入るのだと思います。本来限界無く上達していける分野であるにもかかわらず、多くの人が「受験」という枠組みの中でしか答えを探す努力をしていないのではないでしょうか?皆さんは「彫刻」に興味があって、「彫刻」を学んでいるのです。それがどういうことなのかをしっかり考えながら次の1年を過ごして下さい。

皆さんに問いたいことがあります。10年後、あなたはどんな生き方を選択していますか?あるいはしていたいですか?考えてみて下さい。どんな自分の未来がイメージできたでしょうか?
常に先のことに対してヴィジョンをしっかり持って取り組むこと。僕はとても重要なことだと思います。

さて、今年度の合格者の入試再現作品は順次アップしていきますのでぜひご覧下さい。

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推薦入試が始まっています。

彫刻科は先日武蔵野美術大学の自己推薦入試の合格発表がありました。新美から受験した生徒は無事全員合格!今年度の入試の華々しいスタートを切ってくれました!頑張って対策をしたことが結果につながったと思います。おめでとう!

さて、これで2学期最後のアップになります。いい作品が沢山でているのでご覧下さい。
まずはテラコッタでの実材制作からです。
昼間部、M.Nさんの作品。
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黒泥という土を使って制作した黒うさぎです。油絵の具を使って彩色。写真だと分かりにくいですが目にニスを塗って艶を出しています。自然なうさぎの印象が良く出せています。テラコッタは首像もやったし、だいぶ慣れたと思います。大学では是非大きな作品にも挑戦してほしいです。

夜間部、T.Dさんの作品。
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夏期講習の時に制作した外国人首像の完成度を高めてテラコッタにしました。大きさもあって、メリハリのある形のつくりが作品に迫力を与えています。普段使っている水粘土もちゃんと手順を踏めばテラコッタにできます。

同じく夜間部、M.Kさんの作品。IMG_3319
2学期に制作した自由制作の作品です。ティラノサウルスの頭部。骨格標本や想像図などを元に、皮膚の表情までリアルに表現しました。完成度がとても高いです。

夜間部、K.Kさんの作品。
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1学期に制作したモデル首像をテラコッタにしました。現役生で1学期のうちにこれだけの物が出来るとは、感心させられます。信楽土に彩色しました。

ここから通常授業の作品です。昼間部から紹介。友人像。
Y.M君の作品。
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丁寧な仕事が積み重ねられています。女性らしさがよく表現できていると思います。さらにフォルム感に複雑さがでてくると良いです。

K.S君の作品。
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骨格のしっかりしたモデルをやや大きめにつくりました。とても迫力があります。出だしから作品のビジョンがしっかり持てていました。

M.Nさんの作品。
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時間内に終わらず、残って完成させました。微妙な動きにも敏感に反応できていて、非常に魅力溢れる作品になっています。作品と向き合い、最後まで対話することを忘れないことが大事ですね。

同じくM.Nさんの作品。IMG_3408
一つ一つのかたちに対して素直に、そして粘り強く反応し描き上げた作品です。目で捉えた情報や、感じ取った感動をそのまま画面に置き換えるということは難しいことですが、良く戦えていると思います。

同じくM.Nさんの作品。
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室内の自由な場所に1辺が30cmの立方体が置かれていることを想定し描きなさい。ただし立方体の素材は自由とする。という課題でした。作者は荷物棚に突き出した立方体を想定しています。立方体以外の物との関係が面白い作品になりました。欲を言うと立方体にもう少し質感があると尚魅力が増したと思います。

Y.Y君の作品。
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弥勒菩薩とモチーフを2種自由に選んで構成しなさいという課題でした。弥勒菩薩だけでも難しい課題ですが、大きな流木と構成し完成度もしっかり上げてきました。これだけの物量をコントロールするのは大変ですが、ここまでやってくれると見る側の要求を1歩超えることが出来るのだと思います。

ここから夜間部です。
M.H君の作品。
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手と卵の構成。リアリティを感じられる手の表現が魅力的です。土付けがとても良いです。

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T.U君の作品。
非常に良いつくり込みが出来ています。要素が多いので、完成させるのが難しかったと思いますが、卵にヒビが入っていて、よく見ると手の切断部分にもヒビが入っているのが面白いです。

K.Kさんの作品。
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流れのきれいな作品です。ポージングから卵の配置まで、しっかり考えられています。どの角度から見ても魅力が伝わるよう工夫されていて、構成として隙のない作品に仕上がっています。

Y.Mさんの作品。
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派手さは無くとも、一貫した丁寧なつくりが作品性と完成度を高め、見る側を引きつける作品になりました。

Y.M君の作品
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大きめな手、強い動き、卵までの流れ。その3つの要素が作品に迫力を与えています。手のしなやかさを伝えるつくりにもリアリティを感じます。

同じくY.M君の作品。
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9時間ほどで描き上げました。この時期現役生でこの時間でこれだけ描けたら大したものです。奴隷の動き、量感に敏感に反応して迫力ある作品に仕上げることができました。

T.U君の作品。
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光、陰の整理とコントロールがとても良く出来ています。この作品も9時間で完成させました。バランスの取れたバルールの表現に加え、緻密な表現が作品に強い説得力を与えています。

K.Kさんの作品。
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人体の厚みや柔らかさ、しなやかさがうまく表現できています。髪の毛の固有色の強さも効いています。

同じくK.Kさんの作品。
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ポーズの設定がとてもうまいです。陰をうまく使った作品は、色のない粘土作品に「色」を与えてくれます。生命感溢れる作品です。

僕もいくつか制作しました。
円盤投げ。
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クロッキー的な描き出しから一気に3時間で描き上げた作品です。作業の強弱を明確にコントロールして、その部分に求められる印象を最短で出せるよう意識しました。

首無し円盤投げ。
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思いがけず同じ像を描くことになりました。このデッサンは上の作品と違って丁寧に描くことを意識しています。

ブルータスの模刻

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試験時間に合わせて6時間で制作しました。この作品は制作過程を動画で撮影しています。後ほど新美のホームページで見ることが出来ると思います。ちなみに定点カメラで作品が出来上がっていく様を常に撮っているので、自分の作品を回転させたり移動したり、モチーフを寄せることも出来ず、大変でした(笑)
だんだん出来ていく作品の回りを僕が高速で動き回る、みたいな動画になると思います(笑)

さ、2学期も残すところ後わずか!!冬期講習、入試直前講座に向けてモチベーションは高まっているでしょうか!?受験生は皆必死で毎日特訓しています。ギリギリの戦いの中、気持ちで大きく差がつきます。最後まであきらめず、やれることは全てやりきって、最高の状態で試験に臨めるよう頑張りましょう!!