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彫刻科 夏期講習 最初の課題。

こんにちは。彫刻科の小川原です。夏期講習が始まりました!前期昼は塑像を集中特訓していきます!第一課題はニワトリでした。動物も彫刻を学ぶ上で欠かせない要素の一つです。将来的に動物を作品としてつくっていく事だってありますから。
ほとんどの場合は彫刻作品として動物を制作する場合実際に動物を見ながらつくることはないです。大抵は動物園等に取材に出かけてクロッキーをしたり写真を撮ったりして、それを元に彫刻に置き換えます。予備校の段階では本物の動物を目の前にして作品をつくる訳ですが、こちらの方が稀な例なんですね。
「動物」というジャンルにおいて、基本的な骨格構造だったり(どの動物も思ったよりそんなに変わらない)断面の形状や起伏の特性のリズムを掴む事で最低限の資料さえあればどんな動物であってもつくれます。動物の課題で学ぶべき事は「ニワトリ」ならニワトリの、「ウサギ」ならウサギのつくりかた、という事ではなく、(それもあるかもしれないけど)もっと大きなくくりで、「動物」そのものの性質を理解する。というところに詰まるのだと思います。
さて、それでは今回の秀作を紹介していきます。
まずは現役生、R.S君の作品。
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一つ一つの形に抑揚があって変化に富んでいます。丸みも単純化する事なく複雑に捉えられているのでそれも魅力を高める事に一役買っています。まだまだ手が遅く、具体的にしていくのに時間がかかってしまい完成度は十分とは言えません。最終的な形がどうなると良いのかという事を早い段階で捉え、荒付け段階で60%、中付けで80%を言い切るくらいの見切る力を養いましょう。

K.S君の作品。
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出だしからポージングのイメージを持って取り組めていました。特に指導を必要とする場面も少なく、自分で考えて自分で探っていく事が出来ていたので、かなり実感を持って取り組めていたのだと思います。生命感があり、密度も十分で高い完成度が感じられます。この調子でどんどん研究を深めていきましょう。

F.Tさんの作品。
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途中立ち方を根本的に大きく動かして直すという一幕がありましたが最終的には安定して地面を捉える事が出来たと思います。印象も良く、冴えた作品と言えます。
「見る目」が良く、軌道修正する力がずば抜けていますが、逆にもう少し冒険する部分があっても良いかなと思います。探り探りの作業が多いので結果となって現れるのが遅い傾向にあります。もっと大きくやり取りを重ね(失敗があってもよい)、それを繰り返して正解に近づいていくような道筋もあります。いろいろ試してみて下さい。(2日課題であっても1日で完成させるつもりで挑んでください)

T.U君の作品。
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誰より手が早く、完成度がどんどん上げられるのが強みです。この作品も端々まで意識が行き届いて重厚な作品となっています。
逆を言うと完成度以外のところで戦っていないので作品追求がおろそかであった場合一気に作品の質が落ちてしまう危険性も孕んでいます。とにかく形の狂いは一切なくす事、その上で常に自分の限界を半歩越えた完成度を目指す事を原点として下さい。それさえ守れれば必ず結果はついてきます。

F.T君の作品。
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生命感の感じられる形の起伏が捉えられていて魅力ある作品となっています。本人はなかなか完成の糸口が掴めないと思っているようですが、やっている事は間違っていません。むしろセンスもいいし、高度な事が自然と出来ていると思います。手を止めてしまえば作品も止まってしまいますが、手が動いている限りは決して悪くない方向に作品は動いているので自分を信じてやりきってください。

最初の課題でしたがいくつもいい作品が出て良い流れだと思います。夏期講習ではとにかく今まで自分になかったものを新たに取り込んだり、出来なかった事に挑戦したり、攻めの姿勢でこなしていってほしいです。夏を制するものはなんちゃら…。という名言があるように、この時期自分を高められた人は2学期以降得られるものも段違いで変わってきます。そして勝負を見据えて全力で取り組んで下さい。自分には何が足りないのかしっかりと見極めて、必要な力を強く欲して下さい。「求めよ、さらば与えられん」ではありませんが、「こうしたい」「ああしたい」と強く思っている事は自然と吸収できるものです。淡々とこなしているだけではあまり上達しないのです。一緒に頑張って、この夏を乗り切りましょう!

1学期の実材実習。テラコッタ首像の台座制作。

こんにちは。彫刻科の小川原です。1学期に制作したテラコッタのモデル首像の台座制作を僕のアトリエで行いました。
素材は楠を使います。楠は木彫でスタンダードに扱う素材です。大学に入ってから必ず扱う事になるので、今のうちから触っておくのはいいかもしれません。
まずはチェーンソーで材を切り出すところから。
※写真はやらせです(笑)チェーンソーの作業は僕がやりました。危ない工具は大学に入ってから使ってね(笑)
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切り出した材を電気カンナで成形、面出しします。電気カンナの回転の性質上外から中に削り込んでいくようにして、抜けて出ないように気をつけないと木の繊維が割れてはがれてしまいます。
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このあとベルトサンダーをかけて大まかに仕上げます。IMG_0844
その後サンダーで仕上げて鑿で軸を立てる為の穴を空けます。
(先にドリルで蜂の巣状に穴だらけにしておいて、鑿はそれを崩すだけです。)IMG_0850
首像作品が完全に乾燥したら窯で焼成作業に入ります!割れずに全部上手く焼ける事を祈ってます!

木彫作品制作1 耳の彫り込みと頭部の中仕上げ。襟周辺まで。

彫刻科の小川原です。夏は暑くて制作がきついです…。体も使うし頭も使うし、数時間でオーバーヒートしてしまいます。気合いだよ気合い!って若いときは思ってましたが、そんなもんは若いうちだけです。ちょっと彫ってはエアコンの効いた部屋で休む、すぐ暑いアトリエに戻って彫る。の繰り返し。そして風邪を引く…。
今回は作品の耳を彫り込んでいきます。耳は左右あって、角度はもちろん形が対応関係にあるので感覚的にささっと進める訳にはいけないところです。片側決めたらもう片方は反対側に合わせて慎重に決めていきます。
まずは顔の角度や頬からの距離等を踏まえてデッサンを入れます。
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輪郭の周囲を落として耳自体の形を浮き上がらせます。
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耳の穴に向かって奥行きが螺旋状に深まっていくフォルム感を意識しながら荒彫りしていきます。
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少しずつ具体的な形にしていきます。失敗を恐れて彫り込みが浅いともっさりした造形感になってしまいます。カービングこそ思い切って量を削っていく勢いみたいなものが大事だと思っています。
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とりあえず荒彫りから中仕上げの段階ではこんなものです。最終仕上げの時にさらに彫り込んでいきます。
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次は後頭部を進めます。荒彫りから中彫りまで。
荒彫りは本当に荒いです。量を合わせて表情を入れていく際の見当を取っておくくらいです。
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中彫り完成。とりあえず彫り込みやすい丸刀でどんどん形にしました。
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襟周辺を彫り込みます。
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次回から肩周辺を彫っていきます。

 

1学期最後の課題。

彫刻科の小川原です。コンクール明けの3日間、昼間部では普段描かないベルベデーレやヴェンナのヴィーナス、組石膏等好きなモチーフを選択して描く課題を行いました。日頃良く描く石膏像に慣れ切ってしまうと新鮮な目で見れなくなってしまいがちですが、たまに気分転換の意味も込めてこういった課題をこなす事で再び素直な目を取り戻すきっかけになると思います。
それでは今回の優秀作品を紹介します。
K.S君の作品。倍版サイズの木炭紙です。
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まるで岩の塊のようなベルベデーレが力強く表現できています。量感と筋肉の構造とが複雑に絡み合い、実感のある探りが打ち出せています。欲を言うと台座やお尻の割れ肌の表情の描き込みや、奥の脚の腹部からの距離感がもう一段階はっきりと出せると良かったです。

Y.M君の作品。倍版木炭紙です。
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形態に対する粘り強い執着と探りが作品の完成度の高さを引き上げる事に一役買っています。ここ最近自分で作品の方向性をコントロールして決着を付けられるようになってきました。さらに深いやり取りが出来るように今以上に視野を広げていきましょう。

R.Y君の作品。倍版です。
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非常に丁寧に像に迫れています。さらに丁寧でありながら表面的でなく、像のリアリティに迫れている事に好感が持てます。台座の表現が強すぎて像より主張してしまっているのがもったいないです。本当に見落としが無いか考えられる事は全て確認し、不安は取り除いてしまいましょう。

T.U君の作品。2日間制作。
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とにかく良く描けています。ここまで描けたら何も言う事は無いです。ただ、今回も途中ほとんど進まず、攻めあぐねていたように、やりきらない状態で先に進めなくなってしまうときがあるのがすごく恐いところです。どうやったらいいとかそういう事ではなくて、単純に今持っている技術でもっと手数を与えていけばいいだけの話です。簡単に出来上がってしまった作品は、例え技術的に上手くても本当に薄っぺらく見えてしまいます。そうならないよう毎回自分の限界プラスαくらい詰めていくつもりで挑んでください。

A.Hさんの作品。2日課題。
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ミロビ背面は表情が少ないので具体的に描くのが難しいのですが、この作品は微妙な起伏に反応し、豊かな量感を表現する事に成功しています。とにかく描く力は十分にあります。しかしそれに一生懸命になって視野が狭くなり、出だしで形が大狂いして、それが最後まで直しきれない(最後まで全体が見えていないので違和感が見極められない)のが最大の弱点です。これは意識の問題とクロッキー力不足の両面に課題があるのですが、意識の部分に関しては明日解決できる事であるので厳しく受け止めてもらえると良いです。これさえクリアできれば一気に受験の土俵でトップに上がって来れるポテンシャルがあります。

さ、これで1学期の授業は終わりです!それぞれの問題点ははっきりしてきました。
皆第一希望の大学に受かりたい!と思っている事に間違いはないし、僕達講師陣も全員受からせたいと思って指導しています。僕らはそれぞれの成長が最も早い道を探して即効力のある指導を毎日心がけています。皆も受かる為に必要な努力を責任を持ってやり切って下さい。主体性を持って課題に立ち向かってもらえたら僕らの指導もダイレクトに伝わるはずです。来年合格する為に、自力でゴールに向かって歩んでいく覚悟を持って下さい。僕らは全力で支えます!

1学期末コンクール

こんにちは。彫刻科の小川原です。1学期の最後の週末にコンクールを行いました。
1学期の集大成として優秀な作品が幾つも出てきたのでこれからの指標としていいコンクールだったと思います。
それでは作品を見て行きましょう。
木炭デッサンはガッタメラータがモチーフでした。ガッタメラータは動きの強い像ではありませんが、微妙な軸の傾きに難しさがあります。特に正面から左側45°くらいの位置(横顔位置)あたりはパースなども相当意識してかからないと説得力のない描写になってしまいます。特徴的な形を持っている像なので感覚的な作業になりがちですが、むしろこういう像こそいつも以上に構造感に対する意識を高く持って制作に当たると良いです。
1位、R.Yくんの作品。
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バランスよく全体がつかめていて、落ち度なく網羅されています。実直な探りの積み重ねが評価されました。一つ一つの形には集中して取り組めても、全体を一つのものとしてコントロールしていくことはなかなかできることではありません。しかし彫刻としてはそこが一番重要であると言えます。どれだけ視野を広げられるか、そこが受験でも大きなカギになってくるのだと思います。
決して派手なデッサンではありませんがモチーフとの丁寧な対話が感じられる秀作です。

2位、K.S君の作品。
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色幅が豊かでスケール感のある作品に仕上がりました。エンブレムも印象良く丁寧に描かれていて好感が持てます。手前の肩の断面が色で終わってしまっていて形になっていないのと、顔の反対側が想像できない(ややパースに狂いがある)事が作品の雑味になっていることが非常に惜しいところです。見落としがなくなれば誰より目を引くデッサンが描ける強さを感じます。

3位、Y.M君の作品。
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キレがあり、明快な炭使いが魅力的なデッサンです。この位置で難しいのが、像を正面から見た時に首が体の中心から出ているように見えるかということだったりするのですが、この作品は首の描写が弱いためにその辺がやや曖昧になっているように感じます。頭部の大きさに対しての肩の大きさもやや小さいかもしれません。ここまで具体的に描き切れているので後は描いている最中に「見えているつもり」になってしまうのではなく、モチーフの本質を見極めていくことがこれから一層大切になっていきます。

素描課題は手と折り紙でした。今回の素描のコンクールでは残念ながら皆力を発揮できませんでした。と言うよりまだまだ手そのものの構造の理解不足であったり、魅力ある画面構成のために狙っていくべきポイントが分かっていないということが明確に結果として出てしまっています。手はいつでも描けるし、彫刻では出来て当たり前のようなものなので一層努力を深めていって欲しいです。
1位、A.Sさんの作品。
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ただ「持つ」ということではなく、ポジティブに折り紙と手の関係を遊んだのはこの作品だけでした。折り紙の質感表現に浅さは感じるものの、迫力ある画面構成が魅力的です。素描では常に攻めの姿勢で居てほしいものです。自分なりの作品性とはなにか。それを発見するための研究を皆に深めていってもらいたいです。

塑造は自刻像でした。自分自身がモチーフであるということは、他のどんな課題に対しても特別なものがあると思います。形を合わせる。ということだけでなく、自分自身の内面や、精神性、今まで生きてきた歴史など、様々なことを考えながら制作に取り組んで欲しいです。評価する側としては形は合っていて当たり前で、実はそれ以上のものを求めているということを覚えていて下さい。形が取れない段階の人は一刻も早くそれをクリアして、形ではない部分での作品性についても深めていきたいです。
1位Y.M君の作品。
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作品として向かうべき方向をしっかり見極めて、責任をもって言い切りが出来た作品です。作品の放つ眼差しに意思の強さを感じることが出来て、作品に対する真摯な思いが伝わってきます。6時間でここまでかたちにすることができたらいうことはありません。あえて言うならこれから先さらに上達して手が早くなった時に、表面に走らないで欲しいということです。これ以上の物を目指すには相当レベルの高いやりとりが必要です。作品にとって必要なこと、不必要なことを見極めて、彫刻作品としての魅力を更に高めていって欲しいです。

2位、K.S君の作品。
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モデル首像に引き続き、生きた土づけによって生命感を引き出すことに成功しています。皮膚の内側の筋骨を含む形の構造感から得られる緊張感が素晴らしいです。ただ単純に形を捉える。ということではなく、「土の魅力」を取り込んでいくことで作品の可能性は無限大に広がっていくのだと思います。そうした感覚的なものの見方は受験期以降の大学や、将来作家になった時に必ず役に立つことでしょう。

3位、R.Y君の作品。
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彼の持つ骨格構造の強さが作品としての魅力につながっています。形の厚みに迫力を感じる部分がとても良いです。やや顔の表情に弱さがあり、髪の生え際の影に負けてしまっています。生え際はこれでよいので、さらに顔を強く見せていく工夫があると一層よくなるはずです。やはり陰を利用すること。場合によっては上向きの顔を少し戻してみても影が落ちるので良いかもしれません。すぐに出来ることなので次回が楽しみです。

以上です!どうでしたか?1学期後半に入ってレベルがグッと上がってきたのを感じます。特に上位を常に争っているメンバーは既に一定のレベルを超えたものが見えてきているので、周りより一段階高い次元で作品と向きあえていると思います。もちろん他のみんなもしっかり力をつけてきました!あとは自己推進力を高めていくことです!自分の力でどんどんどんどん突き進んで下さい!これから半年が本当に勝負になると思います。一課題ごとに少しずつでも前進できるように目的を持って制作にあたりましょう!