カテゴリー別アーカイブ: デザイン・工芸科 私立美大

私大デザイン補習③

前々回は「色彩」について、前回は「構成」について書きました。
「色彩」と「構成」、2つあわせると……「色彩構成」になりますね。デザイン科のほとんどのみなさんがこの「色彩構成」を受験で描くことになると思います。

(「平面構成」とも言ったりしますが、私は使い分けていません。個人的には「色彩構成」の響きの方が好きですね。)

実は「色彩論」にも色彩のコンポジションについて説明されたページはあるのですが、いちばん最後の2ページ程でさらっと触れられているだけです。

逆にカンディンスキーは純粋な構成の基本を浮き彫りにするために、色彩を除外して「点・線・面」を説明しようとしました(らしいです)。しかし、やはり構成というのは色彩と密接な関係に?あることは否めないようです。

デザイン史…なんていうとそれこそ数千年単位の話になってきてしまいますが、現在みなさんが受験勉強で描いているような平面デザインであれば、たった100年ちょっと歴史を遡ればだいたい把握できると思います。建築や彫刻、もしくは絵画などに比べればはるかに短い時間感覚です。

だいたい1910年ごろ、西洋美術史からグラフィックデザイン史が派生し始めると考えてもいいでしょう。その年代は抽象画が描かれ始める時期です。そしてその抽象画の創始者といわれるのがカンディンスキーでもあります(こういうざっくりした説明は油絵の先生から叱られそうですが…汗)。

カンディンスキーの代表的な抽象画のシリーズの題名は「Composition」、そうまさに「構成」といわれるものです。その一例が以下の作品です。

a
<Composition Ⅳ> 1911

いや?素晴らしい絵ですね!
…ん?よくわからない?むしろちょっと具体的じゃないの?みたいに思うと思います。もう少し時間が経ったあとの作品だとこうなります。

b
《CompositionⅧ》 1923

 

c
《Composition Ⅹ》 1939

どうでしょう?
最初のものより情景的な印象は薄くなり、普段みなさんが描いているような色彩構成にだいぶ近くなってきた気がします。
(ちなみに前回の最後にのせたモノクロの《trente》は1937年の作品だそうです。)

このように歴史をたどっていくと普段描いている色彩構成も、どこか違った視点で見え始めませんか?

私立デザイン補習②

こんにちは、大島です。
というわけで補習第2回です。
前回はヨハネスイッテンの色彩論について書きました。みなさん色彩の対比について調べていただけたでしょうか。まだなら、いますぐにでも調べてみてください!

さて、デザインの基礎で大切なことは「色彩」のほかにもうひとつあります。
そうです、「構成」です。
ちょっとソレっぽくいうとComposition(コンポジション)というやつですね。

現代のビジュアルデザインにおいて色彩の考え方がヨハネス・イッテンなら、構成の考え方はワシリー・カンディンスキーという人がベースになっています。
(ここでは詳しい説明は省きますが、どちらもドイツの美術学校、バウハウスの先生でした。)

構成とは、これまた前回のようにざっくりと説明すれば、「Element(エレメント)=要素をどう組み立てるか」ということです。

みなさんはその構成する力を磨くために日々受験勉強に勤しんでいるわけですが、カンディンスキーは構成に使われるエレメントを3つに定義しました。

それは点・線・です。

色が原理的には「赤・青・黄」の3原色からできているように、いわば構成も「点・線・面」の3つの主要素をいかに扱うかが基本となるのです。

(厳密に言えば平面上に描くときは点や線もある意味では面として扱われるでしょうから、その境界は曖昧ともいえますが。)

線には直線曲線の2種類があります。
平面上のあらゆるカタチは直線と曲線の組み合わせによって作ることができます。そして曲線にはフリーハンドで描いたような自由曲線と、道具を使って描いた幾何学的曲線があります。

また、その線や面を使って描けるカタチは無限にありますが、円・三角形・四角形が基本的なカタチです。それらのカタチが人間にとって判別しやすく、古来よりなじみ深いそうです。

「構成」と聞くと難しく思ったり、よくわからないと思う受験生も多いと思います。事実、絶対的な正解というものはありません。

しかし、その基本として「構成」とは「点」と「線(直線、自由曲線、幾何学的曲線)」と「面」、そして「円」と「三角形」と「四角形」の組み合わせというシンプルな原則をおさえておけば、構成することがきっともっと楽しくなってきますよ。

 

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《trente 》  Wassilly Kandinsky

 

私立デザイン補習①

こんにちは。
デザイン科講師兼ブログ管理の大島です。

先日1学期の授業が終了し、いよいよ20日からは夏期講習ですね。
ついに本格的に受験対策が始まります。体調に気をつけて頑張りましょう。

基本的に20日まで各科ブログの定期更新はお休みなのですが、みなさんの受験勉強の息抜きにでも読んでいただければと思い、「補習」と称し、おもに私立デザイン科の受験生に向けて何度か更新してみたいと思います。

授業の中でも少し話をしたと思いますが、デザイン科の受験生にチェックしてもらいたいのはヨハネスイッテンの「色彩論」です。
現在ちまたに溢れる色彩の勉強に関する本の多くは、おもにこのイッテンの「色彩論」がベースになっていると思います。

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…と紹介すると、まじめな皆さんは本屋や図書館で開いてみることでしょう。
そしておそらく、複雑な言葉が並んだ内容に頭痛がし、とりあえず読んで見始めるものの10分後には本を閉じてしまっていることでしょう。

この本には色彩の調和のことや、色が心理へ及ぼす影響についてなど、色に関する様々な基本的な説明とその学習方法について図入りで書かれているのですが、真面目に読もうとするとなかなか手強い内容の本です。

この本の中で受験生の皆さんにまず押さえといて欲しいポイントは「7つの色彩対比」です。
イッテンの色彩論における7つの色彩対比とはすなわち、

色相対比
明暗対比
寒暖対比
補色対比
同時対比
彩度対比
面積対比

です。
ざっくりといえば「色の見え方は絶対的なものじゃなくて周りの色によって相対的に変わってきますよ」みたいなことなんですが、この対比を覚えたからといってすぐに課題制作に応用できる、というわけでもないです。

しかし、これは基本かつ重要なことなのでぜひ調べて欲しいと思います。おそらく、今後の制作の中で大きな足がかりになることでしょう。

それぞれの説明をここに書くのは大変なので参考になりそうなサイトのリンクを貼っておきます。

色の見え方
http://www.colordream.net/taihi.htm

色彩学講座
http://rock77.fc2web.com/main/color/color.html

COLOR NOTE
http://www.sipec-square.net/~mt-home/students/miyazono/project/shikumi/page01.html

当然,興味があれば「色彩論」を読んでみてもいいと思いますよ。

あと、色彩とは直接関係ありませんが、このサイト面白いです。

イリュージョンフォーラム
http://www.kecl.ntt.co.jp/IllusionForum/index.html

ではまた。

1学期終了。夏期講習会にむけて。

私立美大デザインクラス講師の笹本です

 

昨日で1学期の通常授業が終了しました。

1学期の間で充実感や上達できたことを実感できた人。

逆にあまり思うように取り組めなっかた人。

試験まで残された時間は同じ。

目標を見据えて、後悔しないように、

一所懸命に取り組んでいきましょう!

 

実技も学科も1学期で学んだ基礎をしっかりと『復習』して、

7月20日から始まる夏期講習会に備えてください。

 

今までに美大受験のための実技の経験が無い方でも、

『美大に行きたい!」「デザイナーになりたい!」

もしこのような夢があれば、この夏からぜひ始めてみてはいかがですか?

迷うよりも行動です!

 

夏期講習会の多摩美大と武蔵野美大のコースの申し込みは、

まだまだ間に合います。

講習会の参加をお待ちしております。

 

 

 

基礎固め

デザイン科夜間部担当の大島です。本年度もよろしくお願いします。

さて、4月からこれまで芸大系・私大系と合同のカリキュラムを制作していた夜間部ですが、今週からいよいよ志望校別クラスに分かれました。

デザイン科夜間部はおおまかには芸大・工芸・私大平面・私大立体の4コースに分かれています。多摩美のグラフィックや武蔵美の視覚伝達を対策する私大平面コースは例年人数が多くなりますが、今年度は多摩美に昨年から新設された劇場美術デザインコースが人気で、立体系を志望される方も多くなっていますね。

さて、私が担当している私大平面コースは最近こんな課題を制作しました。

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そうです。グレースケールをつくる課題です。 とても基礎的な課題ですが、大学生でも案外やったことない人が多いのでは?

とある学生から「この時期にこの課題ですか?」と驚かれたのですが、むしろある程度課題をこなしたこの時期だからでこそ、あらためて基礎を大切にしたいと思っています。

硬さの違う鉛筆でそれぞれ9段階のグラデーションをつくるというシンプルな課題ですが、人によって暗いほうの色幅が似てしまったり、明るいほうの色幅が表現できなかったり、各々のクセが見えてきます。

私大平面=手のデッサン、というイメージもありますが、基礎的なデッサン力さえ身につけば手は半年あれば充分に描けるようになるのではないでしょうか。

また、最近の多魔美や武蔵美の受験傾向をみている限り、もはや手だけが上手になっても通用しない受験問題になっていると感じています(個人的な見解ですが)。受験生の皆さんには「描きかた」よりも、ベーシックなデッサン力というものをまずは身につけて欲しいと思っています。

焦る気持ちもあるかもしれませんが、大丈夫です。
入試直前に仕上げます!

というわけで、夏までは基礎的な課題を積み上げていく予定ですので、これから美大受験をお考えの方も「もう間に合わないんじゃ?」などと思わず、どうぞお気軽に。5月や6月からといった途中入学者の方もたくさんいらっしゃいます。丁寧にイチから教えます!!(←これは宣伝です。)

ではまた。