カテゴリー別アーカイブ: 油絵科

画集が見たい、手に入れたい…人へ

こんにちは。油絵科の関口です。
ここのところ急に暑くなったり、雨が降って気温が下がったり…こんな時は体調を崩しやすいですよね。皆さんは体調管理の方は大丈夫ですか?
さて、新美には沢山の画集がありますが、たまには自分で画集を探しに行くのも良い勉強になると思います。ということで、今回は銀座6丁目にあるGINZA SIXの6階の蔦屋書店に行ってきました。


4月20日にオープンした当初は、連日凄い人だかり…と聞いていたので、どうしても足を運ぶ気になれなかったのですが、昨日はかなり強い雨が降っていたので「少しは空いているかな?」と考え、思い切って行ってみました。ただ土曜日という事もあり、土砂降りの雨にも拘わらず ?かなり沢山のお客さんで賑わっていました。
行ってみたら結構楽しい…。面白い…。もっと早く行けば良かったです。


広い店内には書籍だけではなく、様々な展示もあります。名和晃平さんのオブジェや平面作品、杉本博司さんの写真…


ちょっと変わったところでは、なんと日本刀までも展示されていました(笑)。本屋さんなのに、カオスな雰囲気が刺激的です。


書籍に目を移すと、さすがに大型店。こちらも色んなコーナーがあります。世界中の美術書籍が所狭しと置いてあり、西洋美術、日本美術、デザイン、建築、写真、サブカルチャー…など各コーナーかなり充実しています。


珍しい特集としては、世界の美術書籍の出版社別のコーナー。こういうのは見たことがありません。大型店舗なのにかなりマニアックな企画ですね。


あとこんな超大型本もありました。持ち上げる事さえ困難な感じで、ページは手袋をしてめくる仕様でした。

オンラインショップでは、世界中で現在開催中の展覧会カタログも購入できるとか…すごい時代になったものです。
店舗の営業時間も9:00?23:30と自分の都合に合わせて行く事ができる設定になっています。興味のある人は一度足を運んでみてはいかがでしょうか?行くだけなら交通費だけで済みますし、店内が広くて楽しいので、あっという間に1?2時間は過ぎてしまいますよ。
…とここまで宣伝して褒めまくってると、なんか店員の回し者みたいな感じになってしまいましたね(笑)。では今日はこの辺で。

 

追記:既に告知が始まっていますが、新美新宿校の1階がリニューアルされ、6月からギャラリーがオープンします。展示の第一弾として、僕の展覧会が開催されます。こちらの方もどうかご期待下さい。
特設サイト↓
http://www.art-shinbi.com/event/shinbi-gallery/

終了間近!エリザベス・ペイトン展

こんにちは。油絵科の関口です。
ゴールデンウィークなのでお出かけしたいけど、どこも混雑しているから家でノンビリ…という人も多いと思います。今日はそんなあなたにお勧めの展覧会を紹介します。

品川駅から少し離れた所(徒歩15分くらい)に原美術館という美術館があるのをご存知でしょうか?ちょっと現代的で通好みの企画が多い美術館です。IMG_5575
展示は現代的なのに、外観は昔ながらの塀に囲まれた、何だか時代劇にも登場しそうな入り口です。すぐ近くにミャンマーの大使館もあります。

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美術館の裏は御殿山庭園。小さいながらも結構落ち着ける場所です。

今そこでエリザベス・ペイトン展が開催されています。僕は4月の平日に訪れましたが、割と空いていて、ジックリと見る事ができました。
エリザベス・ペイトンは1965年生まれのアメリカ人女性作家。新美にもペイトンの画集がありますので、油絵科の学生なら見た事のある人もいると思います。日本ではあまり紹介されてこなかったという事で、日本の美術館では初個展だそうです。僕も本物を見るのは初めてでした。作品の内容に関しては、それぞれ好みもあると思うので、今日はちょっと変わった視点から紹介してみようと思います。

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ペイトンの作品はどれもかなり小さく、キャンバスやパネルに描かれた作品は、殆どF6号以下のサイズでした。紙に描かれた作品以外は、ジェッソの様なアクリル系の白い下地材をナイフで塗り、その上から絵具の吸収を抑える為と思われる半透明なメディウム(これも恐らくアクリル系)が塗られているのが、側面を見る事で分かります。ペイトンはキャンバス地の凹凸は好まないタイプなのでしょう。でもナイフで下地材を乗せた後にサンドペーパーなどで磨いたりはしません。パネルのヘリからはみ出た塗料もそのままで、きっちりとした四角の作品ではないのも特徴です。
制作を始めるにあたって、テーブルの上にパネルを並べて下地作りをする事が彼女のルーティーンになっている事が伺えました。

作品は油絵具で制作している様ですが、白いところは下地の白さを活かしている事が多く、暗さで描いていくデッサンや水彩に近い構造になっています。肌の表現を除いて、全体的に殆どホワイトを使っていませんでした。この事から、色が濁るのを嫌うタイプなのだと思います。
使用している筆は丸筆が中心で、数少ない大作には、何やらスポンジ状の描画材を用いて描かれているものが見受けられました。筆致も一度画面上で止めてから離しているのが特徴です。習字でいうと「払う」タッチというものが、殆どありません。筆運びは結構早い方だと思うので、こういうのは割と珍しいタイプだと思います。理由はわかりませんが、何か特別な拘りがありのかもしれませんね。WW9-Peyton_10
この絵の写真では分かりにくいと思いますが、背景の青いタッチは明らかに筆とは違うもので描かれていました。

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他にも紙に描かれたパステルの作品(左)や水彩(右)なども面白い作品が多いです。水彩でもしっかりとタッチを止めています。

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左が今回来ていたペイトンの作品で、右がドラクロワの「アルジェの女たち」。オマージュなので原画を知っているとより一層楽しめます。この他にクールベのオマージュもありました。

かなりマニアックな見方を紹介しましたが、探偵になった気分で、作品の隅々までよく観察していくと、色々な発見があるので、どんな展覧会でも結構楽しめめるものです。まだご覧になっていない方は、会期が5月7日(日)迄です。今ならまだ間に合いますよ。

体感する展覧会・ミュシャ展

こんにちは。油絵科の関口です。
新学期も始まり、この時期は新しいクラスメイトが多いので、少し緊張した空気がアトリエに漂っている感じですよね?ゴールデンウィークも過ぎれば、少しずつ新しい環境に慣れて笑顔が溢れる雰囲気に変わってくると思います。

さて、皆さんは国立新美術館で開催中のミュシャ展を既にご覧になりましたか?
※数年前のブログにも書きましたが、現地では「ムハ」又は「ムッハ」と発音するそうです。通じにくいので、今回のブログでは日本での通称である「ミュシャ」で統一しています。

油絵科の皆さんの中には、一定数の「ミュシャ大好き派」と「ミュシャ苦手派(嫌い派)」が混在している…と僕は考えています。何を隠そう…まさしく僕も後者で、昔からミュシャの甘ったるい雰囲気がどうも苦手だったのです。そんなミュシャ苦手派の人達にも、今回のミュシャ展なら、従来のミュシャのイメージを覆す事が出来る様な気がします。
とにかく今回の展覧会で圧巻なのは、ミュシャの生まれ故郷であるチェコ以外では初公開となる、20点に及ぶ連作「スラヴ叙事詩」全作品です。その大きさは、何と1枚が高さ6m、幅8mにもなる、超巨大な作品群なのです。24b1caacb340e4ac76483fd210f91a1bThe-Celebration-of-Svantovit-1912
この「大きさ」というのは、ネットの画像や画集ではまず体感する事が出来ません。ミュシャ苦手派の僕ですら、実際の作品群を見て「う?ん。こりゃあ凄げ?な」と思わず唸ってしまいました。(大きさに、ですが・・・)

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ちなみにピカソのゲルニカも大きな作品と言われていますが、それでも高さ3.49m、幅7.77mです。

ついでに言うと、世界最大の油彩作品は、16世紀ヴェツィア派の画家、ティントレットの作品「天国」と言われています。この作品のサイズは高さ7m、幅20mという圧倒的な大きさ。学生の頃に現地で本物を見ましたが、作品の内容は別として、とにかく巨大な作品でした。
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この中央奥にあるのが世界最大の油絵。この部屋は横幅が20m以上もある!と想像してみてください。体育館並ですね。

特に印象に残っているのが、天井や壁面にびっしりと敷き詰められた、必要以上にゴージャスな柱や梁のような額縁の数々で、太いものだと2mはゆうに超えていそうな幅があり、余りの巨大さに一緒に行った友達と思わず笑ってしまったのを記憶しています。
※油彩ではなく、壁画であればミケランジェロのシスティーナ礼拝堂をはじめ、もっと大きな作品は多数存在しています。

今回のスラヴ叙事詩は、一点の大きさこそティントレットには及びませんが、20点もの連作というのは「凄さ」を感じます。皆さんも本物を見たら「これを描くのにどれ位のエネルギーが必要なのか?」を想像してみて下さい。制作にあたった年月はおよそ16年。これほど巨大な作品だと、絵具だって膨大な量が必要なはずです。
これだけの大作になれば、当然足場を組んで制作したと思いますが、下がって見るにも当然足場が邪魔になるので、全体像の把握には想像力を駆使しなくてはなりません。綿密な構想の元にエスキースを制作し、それを拡大して描いたと思われます。8584
上2枚がエスキース(今回は展示されていませんが、画家の思考過程を探るためにも貴重な資料だと思います)grunwald_lg
本番は2枚目のエスキースから少しだけ変更が加えられています。

あと、この作品をチェコから日本に持って来るのも大変だったに違いありません。木枠に張ったままでは飛行機(船の可能性もありますが)には乗らないので、巻いて持って来た…と想像しています。展示会場で枠を組み立てて張ったのではないでしょうか??~???V???¯?ß?à?ï
画面の端を見ると、巨大なハトメの様な金具で穴が開けられており、紐で引っ張っているのが分かりました。↑こんな感じです。

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それから、日本では珍しく写真撮影OKの部屋(展覧会の一部)があり、皆スマホでパシャパシャ撮影していました。僕も撮影しましたのでご覧に下さい。大きさが分かりますよね?
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あと、巻いて保管していた証拠として、厚塗りの絵具部分には縦方向にヒビ割れが走っているのが確認できます。

今回のミュシャ展はいつも混雑している様ですが、夜8時までやっている金曜日の夕方以降が少し空いていてお勧めかもしれません。あと、双眼鏡を持って行くと、かなり混雑していても作品上部はよく見る事が出来ますよ。
とにかく今回は、たとえミュシャが苦手な人でも「お金を払ってでも見る価値あり」の展覧会だと思います。

芸大油画現役合格者に聞く④

こんにちは。油絵科の関口です。今回も芸大油画現役合格した山道くんへのインタビューです。かなりの長編になりましたが、いよいよ最終回。今回は一人の受験生が、一人のアーティストとして歩み始める…そんなお話です。

 

関:山道くんの二次試験で描いてきた構図が良かったから、あれは凄く大きいな、と思ったよね。
山:そうですかね…?

関:ちなみに「校内で取材して」ってあったけど、アトリエからも出なかったんでしょう?
山:あ、はい。そうですね。全然出ませんでしたね(笑)。一回も外には取材に行きませんでした。

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山道くんの描いた二次試験の油絵のエスキース。モチーフの氷が溶けて、アトリエが水浸しになっているイメージ。ちなみに左側に入っているのはイーゼルの脚です。右上から画面を横切る影の形と、イーゼルの脚が反対側の傾きを持っているので、ダイナミックな構図になっています。

関:でもアトリエの中も…校内だもんね。だから、それは課題文から外れている訳じゃ無いし「まぁそういう考えもあって良いだろう」って思ったから、敢えて「取材だから出なきゃダメだよ」とも言わなかったし。「それで行ってごらん」って感じで。僕が提案したのは本当に微調整って感じだったから。殆ど山道くんが考えた事をそのままやって来れたと思ったから、そういう意味ではすごく良かったよね。
山:そうですかね。やっぱり技術が無かった事で、逆に薄く作ったところが出来てて、それで完成度を上げる事が出来なかったっていうのはありますよね。これ以上…手を加えられない…(苦笑)

関:それが良かったんじゃないかな?、まぁ、現役で入ったって事で不安もあると思うんだけどさ。でも芸大って入学の時からそんな感じだからさぁ。入ってからも決して技術的なところで評価してる訳では無いんだよね。
山:はあ。

関:まぁそうは言っても、国立大のさ、一応美術の中では最高学府っていうのはあるからね。自分的にはそういうの(技術)も無いと、それで良いのかな?って思いが頭をよぎる訳だよね?
山:他の人の眼がキツいですよね(苦笑)

関:でも、そんなのはそんなに気にする必要は無いかな?って思うんだよね。だってさ、こっち(表現者)は提供する側なんだからさ。それ(できた作品)を見て、受け取る側がどう感じるか?っていうのは、向こうの問題だと思うんだよね。こっちはどこに向けてどう発信していくか?っていう部分では、作る側が考えていかなくちゃいけない部分だと思うんだけど、あんまりそこばっかり意識していくのは芸術としてどうなのかな?って思うよ。
山:まあ、そうですよね。そういうのとも戦っていかなきゃいけないんですよね。

関:だからね。そのうち海外とかにも行ってね、外国の美術大学も見て欲しいなって思うよ。向こうはどういう教育をしているのか?まだ日本の美術大学は他の科に代表される様な、技術的な事やものの見方なんかを石膏デッサンとかやって、力を付けた人が受かって行く…っていう、そういうシステムが殆どだよね?でもそういうところはアジア圏を除いて、世界的には少ないって思うんだよね。
山:ああ、そうなんですね。

関:日本的な感覚でいうと、全然描く力も無い人たちが大学に入ってさ、それが立派なアーティストになって育って行くっていう…そういうのが何十年も前から当たり前に行われている世界なんだよね。今の芸大はそういうところに近づいて行こうとしてるんだろうな?って、個人的には思ってるよ。
山:

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こちらは一学期に描いたデッサン。課題は「鏡と手を組み合わせて描きなさい」というもの。この頃はデッサン的な甘さがあったり、技術的には拙かったりしますが、狙いや構図のセンスなどには光るものを感じていました。左上にある鏡の直線的なラインが、有機的な人体の形との対比されて、非常に効いています。

関:「上手くなりたい」って気持ちも分かるんだけど、それが芸術として正しいのかどうかは考えなきゃいけないよね。そういう問いは常にして行って欲しいよね。もちろん上手くなっても悪いことじゃないし、気持ちも分かるけど、少なくもと一般人に向けて力を付けようなんていうのは、僕は無くて良いかなって思うかな。
山:そうですね。僕もそれはそう思います。

関:こういう世界を作りたいっていうのが最初にあって、作り手が主体になって「自分はこういうのがやりたかった」っていうのを「どうだ!」って出していくのがこっちの仕事だと思うんだよね。
山:ん??!そうですね。

関:それで、評価っていうのは周りの人がしていくんだけど、こっちとしては、向こうに「ついて来てね」って言う側でさ。こっちが「合わせますよ」って事じゃないと思うのね。
山:そう言われてみると、自分の芸大の二次試験もそういう感じでしたね。自分がやりたい事をやるから、それが評価されるかどうかは分からない…言うなればギャンブルでしたけど、その姿勢が良かったのかな?思い切りにも繋がったのかな?って思えてきました。

 

関:ところで今、18歳?19歳?
山:はい。18です。

関:そっかぁ。…山道くんは、もう18歳という年齢のアーティストなんだよ。
山:ああ?

関:だからそういう自覚を持って行って欲しいよね。大学4年間、院まで行ったら6年、博士まで行ったら9年っていう…そういう長い学生生活があるんだけど、入る前に思い描いていた芸大のイメージっていうのを一回捨てて、本当にこれから勉強したい事とか、自分がやりたい事をやって、美術っていう世界に対しての携わり方を改めて考えて、自分で道を切り拓いて行ってもらいたいよね。
山:ん?。なるほど。難しいですね。

関:でも、それだけの能力は身につけたと思うんでね。
山:いやぁどうですかね?過大評価じゃないですか?

関:大丈夫でしょ(ニッコリ)。
山:まぁ今までも何とかなってますからね。

関:まぁこれから先も挫折したり、色んな困難とかもあると思うけど、何とか乗り越えて行ってもらいたいなって思ってるよ。甘やかして育ててきた訳でもないからね(笑)。
山:(笑)はい。

関:また何かあったら、何でも相談に乗るんで、いつでもおいでよ。
山:はい。ありがとうございます。

関:今日は長いことありがとうございました。
山:いえ。こちらこそ、ありがとうございました。

ー完ー

油絵科春期講習最初の一歩

こんにちは、春期講習会もはじまり
いよいよ、新しい年度の受験がスタートしました!!
初めて受験する現役生も、おしくも昨年度やぶれもう一度挑戦する浪人生も
意欲を持って、がんばりましょう!!

私が受験して合格した(5回目ですが)春は、一緒に学ぶ大学生よりも
残っている受験生のほうが、ライバルとして怖かった覚えがあります。

さて、春期講習では第1課題が終了し、最初の講評会が行われました。

油絵科では、講評のまえにカリスマ講師による講義をしました。
「どうすれば、そっくりに描けるのか?」
この講義によれば、そっくりに描くのは意外に簡単にできるそうです。
確かに、講義を聞いてみるといくつかの”ある”ことを理解すれば描けそうな気がします、
いやっ!必ず描けます!!
その”ある”ことというのは・・・・。

講義を聞けなかった人は残念でしたが、その講師の受け持つ油絵科昼間部にいけば
さらに詳しく聞くことができます。今回の講義は1時間15分程度でしたが、その昼間部の講義は3時間にわたるそうです。
是非、聞きたいものです。
さらに、毎年基礎科でもその講義を催しています。
是非、高校生の皆さんは基礎科で聞いてください!!
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