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充実した夏期講習でした!

彫刻科の小川原です。先日夏期講習が終わり、つかの間の休みに入りました。講習会はどうでしたか?多くの得るものがあったと思います。もう一度振り返ってみて学んだ事を確認してみましょう!
後期では僕も少しデモンストレーションをしてみました。試験時間に合わせての制作になったので、受験生当時を思い出すようでした。その他芸大生にもデモンストレーションに入ってもらったので、生徒の作品も含めていくつか紹介していきます。

僕のデモンストレーション作品です。ジョセフ。最初は計測具など使わないクロッキーをして像を捉えます。クロッキーは時間をかけずに像を説明する上で必要なもののなかから重要度の高いものを優先的に引き出していきます。
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像が掴めてきたら本番の木炭紙に入ります。木炭紙に入っても部分にとらわれず、形も調子も全体で見ていく事が大切です。常に立体(空間)を実際に触って描いていく感覚が必要です。
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細部も空間に乗せていくように描写して作品を詰めていきます。下地と細部と光、陰を響き合わせて説得力のある画面を目指します。
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最初のクロッキーと完成したデッサンを重ねてみました。腕と衣に若干ズレがありましたが大体重なりました。クロッキーでしっかり精度が出せればデッサンはで形が狂う事はまず無いですよね。逆にクロッキーで出来ない事はデッサンでも出来ません。やり方ではなく、「見る目」を養いましょう。クロッキーは短時間で何枚もトレーニング出来るので枚数をこなして感覚をしみ込ませていきたいです。
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K.S君の作品。
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表情も似ていて、空間もきれいな作品になりました。「光」を描く意識が感じられるのも良いです。大きな構造感に具体的な形として説得力が弱いので、ベースの探りでさらに詰めていけるとさらに良い内容になっていくと思います。

K.S君の作品。IMG_0991
色幅がとても多く、木炭の魅力が良く引き出せていると思います。一つ一つ着実に構築しながら進めていくことで抜けの無い作品になっています。逆に形の言い切りが過ぎて単純な表現で終わってしまっている部分もあるので、より複雑な理解を深め、さらに発展させていきたいです。

現役生、K.Kさんの作品。
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探りが柔軟で無理が無く、印象の良い作品です。構造感の弱さやバルールの整理不足が毎回の課題になっていますが、理屈抜きにその像らしさが追求出来ている事に、純粋な対象の観察が伺えます。

デモンストレーション、E.Tさんの作品。外国人モデル。
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2時間強程度のデッサンです。芸大2次素描では短時間でも中途半端に終わらせず、作品として提出する事が求められます。それは密度勝負という事だけではなく(もちろんそれも有り)、それぞれの持ち味や魅力を短時間の中で画面にどれだけ詰め込んでいけるか、ということが重要で、スタートから明確な完成のビジョンが必要不可欠です。この作品は「対象が人物である」という臨場感を作品の柱とし、柔らかく画面をコントロールしています。

デモンストレーション、E.Nさんの作品。
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同じく短時間での作品です。実際のモデルさんの印象を非常に良く引き出しています。時間内で探れる手数をしっかり把握しているので、最小限の描写で最大限の効果を出す事に成功しています。

現役生、T.Dさんの作品。
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セオリーにとらわれず、絵画的な魅力に溢れる作品になりました。画面から作家性を感じられる事が2次素描では非常に重要です。モデルさんを捉えた彼女の視点が伝わってきます。欲を言うと体にもっと具体性を感じられると良いです。

現役生、T.U君の作品。
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印象がとても良いです。時間は絶対に足りないはずなのですが、その中で作品として完成させる為にこれだけは外せないという事をしっかり抑えてきているのが良いところです。惜しいですが、やはり体はもう少し手を入れたいところです。

デモンストレーション、E.Tさんの作品。
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とても全体のバランスの取れた作品に仕上がっています。髪の毛の表現などはある程度バリエーションをつくっておく事が必要です。毛の重なりによって出来る陰の落とし方などがとても参考になる作品だと思います。

デモンストレーション、E.Nさんの作品。
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生命感の強い魅力溢れる作品です。内側から感じる形の説得力がより作品の質を高めています。内側の形と表面の形、両方を関係づけながら組み立てられると、臨場感がグッと増してきます。リアリティとは何か、その要素はどこに隠されているか、それを知る事から始まります。

K.S君の作品。
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完成度の高い作品に仕上がっています。人物の持つ下地の構造感をしっかり保った上で肌のフォルム感も良く捉えられています。表情がまだカタいので、さらに印象よく完成出来ると良いです。

Y.M君の作品。
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柔らかい土付けが魅力的な作品で、丁寧な形の探りに好感が持てます。ここからさらに質を高めていく為に、表情の硬さ、柔らかさにもっと反応し、質感のバリエーションが増えてくると良いです。

僕のデモンストレーション作品です。人物は石膏像に比べて画面に入る面積は少ないですが、組立ての要素が圧倒的に多いので、バランスよく描くのが難しい課題です。特に出だしではプロポーションとムーヴマンに関して徹底して合わせていきたいです。
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制作中もモデルさんは微妙に動くし、ポーズも徐々に変わっていきますが、大事なのは画面に中にしっかり人物を想定する事です。写し取る感覚ではどうしても違和感が出てしまいます。
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K.Oさんの作品。
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端々にモデルさんを見て感じ取ったリアリティが詰め込まれていて、魅力に溢れる作品です。途中やや見方が断片的になり、全体でのつながりが悪かったですが大分解消してきたと思います。ビジョンがしっかりしていることが、作品に説得力を与えます。

T.Y君の作品。
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抜けの無い抵抗感のある作品です。ややボヤボヤして終わってしまうことが多かったですが、形の締め方が分かって全体に広げる事が出来ました。そんなに特別な事をした訳ではないですが、ちょっとした事で劇的に作品の質は変わるものです。しかし頭部の立ち上がりに不自然さが残っています。構造に関してはさらに全体で自然さを追求していきたいです。

現役生、T.U君の作品。
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バルールからくる空間感が魅力的な作品です。密な探りによって、抵抗感の強さも光ります。ただ見方はややカタいようです。人体の持つ柔軟さがもっと出るとさらに良い展開が出来るようになると思います。人体デッサンはたとえ固定ポーズであっても、そのまま滑らかな動作が出来そうな印象が欲しいです。

現役生、K.Kさんの作品。
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作者の見る目の良さと、素の画力の高さが感じられる作品です。頭部のつき方に自然さが足りないですが、その他はとても良く描けています。人体への知識、理解をさらに深め、デッサンとして捉えていくときの外せないポイントをしっかり把握出来ると、さらにグレードを上げていけます。

僕のデモンストレーション作品。ジョルジョの模刻です。
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模刻は土台の正確さが命です。まずは軸の傾きから捉え、構造の動きを捉え、前後、左右、上下バランスよく対応させながら構築していきます。
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部分で見始めると全てに関係性が失われ、やってもやっても合わない状態に陥ってしまいます。細部は細部の下地が出来るまで行わず、細部の下地は全体の土台が出来るまで行わず、全体の土台は軸が合うまで我慢するのが重要です。
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髪や目、鼻、口、耳など、凹凸の強い部分に作業が集中しがちですが、あくまで細部も全体に乗っている事が大事です。常に外していないか確認する必要があります。
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一つ一つ様々な角度から見て確認しながら形づくっていきます。目も最低正面、側面、下面からの十分な情報が無ければつくれません。結構多くの人に正面からだけ見て観察した気になってつくった結果似てない。という事が見受けられます。デッサン以上に塑像は確認作業が求められます。上手いひとほど軽くつくっているようで実は見る(情報を引き出す)作業が圧倒的に多いです。作業工程が、「見る」→「つくる」の繰り返しになっている人は、「見る」→「理解する」→「つくる」→「確認する」の繰り返しに出来るよう心がけてみて下さい。
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髪(特に後頭部側)が不十分で終わってしまいがちです。彫刻はどこから見ても緊張感が詰まっているので、正面だけ見せれるってことが無いように、全体に責任を持って、その部分ごとの緊張感を与えていきたいです。

すぐに2学期が始まります。いよいよ2013年度の入試も後半戦突入ですね!気持ちの準備は整っていますか!?ぼやっとしているとあっという間に時間は過ぎてしまいます。ちょっとした休みも自分の足りない力を伸ばす時間に充てたり、芸大入試でも重要視されている学科もしっかり対策しておかなければいけませんね。来年絶対合格する為に出来る事は全てやって下さい。これ以上は出来ないというところまでやりきって入試に臨めたらきっといい成果が出せるはずです!そして自分の目指す道に自信と誇りを持って進んでいってくれたらなと願っています。頑張りましょう!

暑い日が続いていますが夏期講習も後半戦へ!

こんにちは。彫刻科の小川原です。ここ最近記録的な暑さが続いていますが体調管理はしっかりできていますか?夏期講習で学べるは本当に多いので、そのチャンスを最大限有効に生かす為に万全の体調で挑みたいですね!
さて、彫刻科講習中期は沢山の芸大生のデモンストレーションも見る事が出来て非常に盛り上がりました!生徒の皆さんも頑張ってくれて、短期間でしたがグッと実力を上げてくれていると思います!良い作品も出ているので、デモンストレーション作品と一緒に紹介したいと思います。

K.S君の作品。
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光、陰の整理が良く出来ていて、表情も合わせてきています。特に顔を似せようとする時に、線的な情報に頼りすぎて強引に合わせようとするとやればやるほど似なくなってしまいますが、色面的な印象を似せる意識で捉えていくと自然になりやすいです。いきなり中身を注目するのではなく、外堀から合わせていく感覚は重要ですね。やや口が構造に沿っていないのは少し気になります。さらに視野が広がってくれるのを期待します。

T.Y君の作品。
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部分に執着する事無く、空間も含めて全体をコントロール出来ています。派手さや強さはありませんが、実直で嘘の無い丁寧な探りに好感が持てます。明るい側の形をもう少し具体的に表現出来ると、作品に説得力を与える事が出来ます。

現役生K.Kさんの作品。
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独特な質を持つデッサンです。今回は途中やや光源設定で混乱する場面もありましたが(実際通りの色を合わせようとすると形にならない。今回は胸側面と腕正面が実際はほぼ同じ色だったが、それを自然さが失われない範囲で変えた。)、最終的にはそういった部分に関しては創作を入れていく事が必要なんだと言う事を分かってくれたと思います。

M.Nさんの作品。
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芸大2次素描は3時間で仕上げます。それに合わせて短時間で描き上げました。なにより本人に似ているのが良いです。デッサンも塑像も同じですが、「似せる」ということは単純に観察が実物を捉えている証拠と言えます。後はその似ているというレベルがどれほどのものかという事が重要で、やはり出来たものにリアリティが感じられる事が大前提になります。まだ十分とは言えませんが、この作品はそうした要素を感じ取る事が出来ます。欲を言うと表情は良く描けていますが、首より下は手数が少なくなってしまっているので、改善していきたいです。時間が短いので、完成のビジョンを強く持って、スタートからスパートをかけていくつもりで展開させていきたいです。

現役生K.Kさんの作品。
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鳩は量が少ないので観察も作業も小さくなりがちですが、そうなってしまうとまさに作り物のようになってしまい、生命感が失われてしまいます。小さな体の中には骨があり、筋があり、皮があり、羽があります。シンプルで洗練された形の中には途方も無く複雑な構造が隠されています。進化の過程で淘汰されてきた形には全て意味があって、それを感じ取りながら制作する事は彫刻では必須であると言えます。形を写す。という意識だけでは「生きている」という情報までは写せないのです。この作品はまだまだ実際の構造の成り立ちにそぐわない部分も多いのですが、表面的にならず目の前にある真実を見ようとする意識が感じられます。

デモンストレーション。S.Y君の作品。
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スタートから光を大事にしながら描き進めていたのが印象的でした。完成のビジョンと自分の作品を常に重ね合わせて制作していたのだと思います。中間色もとても美しく表現されていて、明るい調子、暗い調子が響き合っているのが分かります。モチーフを目の前にして、それをどう料理してやろうかという気概が持てるかどうかはとても重要で、高い目的や目標を強く持てる人は上達も早く、上限もどんどん破っていけるのです。この作品からはそういった意識の高さを感じます。

デモンストレーション。新美出身E.Nさんの作品。
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彼女はデッサンも塑像も作品全体で理想を追求出来る人で、細部にこだわることなく物の本質を引き出すことに対して高い意識を持っています。何が一番大事かという事が分かっているので、例え出だしで印象が狂っても自分で気づいて良い方向に軌道修正する事が出来ます。そういった意味で、ある意味受験では一番強いタイプなのかも知れません。視野が狭い人や、モチーフの中身をしっかり把握せずに制作している人は、いったんハマると立て直せなかったり、狂っているのに気づかず完成まで行ってしまうという事が多いです。作品の内容について、彼女のデッサンの特徴は断面構造の強さと、構造が持つ軸の方向の整理にあります。空間上にどのような塊としての特徴を持つ物体が、どんな方向に配置されているのか、それが強く感じられるデッサンだと思います。

生徒作品。M.Nさんの作品。
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モチーフの持つ量感や空間の魅力が良く描けていると思います。自分の作品をどのように仕上げていきたいかというビジョンと、その為の道筋を組み立てる事が出来た事で、難度の高い課題で実力を発揮する事が出来ました。見る目があり、実力もあるので、毎回きちんと整理しながら制作する事が大切です。その時々でやらなければならない事をしっかり分かってこなせばそれだけでコンスタントに実力の100%に近い作品が出せるはずです。この作品では欲を言うとフォーンの背中とマルスの腕を含む胸部より上に色が抜け過ぎで、形や空間が具体的でないので、改善出来ると良いです。

現役生K.Kさんの作品。
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毎回のように良い作品を出してくるポテンシャルには驚かされます。今回は今まで以上に一つの「作品」として迫れていると思います。構図も描写もドラマチックな表現が魅力的な1枚となりました。モチーフとの対話が上手く出来ていて、作品がモチーフにはまっていく作者の喜びが伝わってくるようです。途中円盤の形や、奴隷の断面で印象を外していましたが、大分良くなりました。奴隷に関してはやはりやや伝わりづらいですが、このモチーフの場合はある種背景的な捉え方でもいいと思うので、そこまでマイナスにはなっていないと思います。そしてそれを補って余る円盤の魅力があります。

デモンストレーション。Y.U君の作品。
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圧倒的に高いクオリティを感じる作品です。ここまでの作品をつくる為にはあらかじめブルータスはどんな印象を持つ像で、捉えるべき要素を把握していないと不可能です。単純な観察だけでは行き着く事ができない経験に裏付けられた説得力があります。デッサンも塑像も、上手い人ほどモチーフを良く知ろうと考えます。目で見た情報だけに頼るだけでなく、構造を想像して分解してみたり、空間的な位置や量の座標をイメージしてみたり、デッサンで描いたときの像の印象と照らし合わせてみたり、その引き出しの多い人ほど、さらにはそれが的確な人ほど質の高い作品をつくる事が出来ます。

デモンストレーション。T.Hさんの作品。
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ブルータスが持つ印象をぶれる事無く引き出す事が出来ている作品です。よく左右の量のバランスが狂ったり、目の位置がズレたりする人は「印象」という観点でモチーフが見れていないんじゃないかなと思います。角度を測ったり、カーブを似せたりという事も大切ですが、その結果「合っているのかどうか」というポイントでは確認が甘い人が結構多いと思います。なので頑張ってつくったのだけど、出来たものに不自然な歪みがあるという結果になってしまうのです。熱が入りすぎて視野が狭まって、本当に単純な狂い(多分僕の目が上下に1cmズレて登場したらみんな驚くと思います)に気づけないのはもったいない事です。普通の人の目で客観的に確認する事、これは非常に重要な事です。

生徒作品。K.S君の作品。
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量や軸が良く捉えられ、バランスの良い作品となりましたがやはりデモンストレーション作品と比べると説得力の弱さが見えてきます。まず断面はもっとしっかり決めて欲しいです。体がイメージ出来るくらいに詰めましょう。後頭部は粘土の質のままなので、張り出している部分を中心に抵抗感を上げていきたいです。とはいえこの段階で嘘の無い状態に仕上がっているので、この先もう少し時間があったら出来た事と思います。前半の時間の使い方はさらに上手くなれると良いと思います。作品として成立するところまで詰めていく作業はどうしても時間がかかるものです。

K.S君の作品。
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形を表現する為には色(陰影)が必要になりますが、その探りがかなり自然になってきました。強引になってしまうときは構造に合わせた(感じの)タッチが均一に入ってしまうのですが、今回はそれを最小限に抑え、調子を響かせる事で魅力的に形が描けています。自分なりの形の起こし方ではなく、モチーフに寄り添った表現を意識した事が功を奏したのだと思います。とはいえまだ見方のカタさが見受けられるので、これでも足りないんだという事を自覚して、さらに発展させていって欲しいです。

R.A君の作品。
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非常に調子の美しい作品です。石膏の質も感じられる仕上がりになりました。パジャントのもつ美しさの特徴に良く反応出来ていて、魅力的な1枚となっています。作品の打ち出し方はもちろん十人十色で、人によって様々ですが、評価する側としてそれが「美しいか美しくないか」あるいは「心地よいか心地よくないか」という事はかなり重要だと思います。独りよがりになる事無く、みてもらう相手の事も考えられる余裕があるといいですね。この作品では欲を言うとアクリル円盤の形がまだ自然でない事です。輪郭的に直線的なところがあるので、上手くカーブが捉えられると良かったです。毎回実力をすべて引き出す為に、常に高い意識で臨んでくれる事を期待しています。

現役生K.Kさんの作品。
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前期、中期と講習を受けてきて、この短期間にかなり実力をつけてきたと思います。パジャントの表情も構造に合わせた上で良く似ていて、アクリル円盤にも奥行きを感じます。欲を言うと像の断面の方向性や面的抵抗感が弱くなっているのと、衣のひだはやや強く描きすぎて実際の印象よりうるさくなってしまっている事です。何が足りなくて、何がズレているのか、本当に微妙なレベルでの問題なのですが、そこまで意識のレベルを高くしていく事が出来たら理想的な作品を打ち出す事が出来ると思います。

さて、講習も後期に入っていきます。この時期どれだけ経験値をためておけるかどうかは、受験で勝つ事を前提に考えると1年で最も大切な時期であると言っても良いかも知れません。今すぐに実力が上がらなくても、やっている事で得られた「経験」はどんどん自分の周囲に散らばっているはずです。それを2学期で確かなものに変えていき、冬期講習から入試直前にかけて一気に積み上げていけたら良いと思います。積み上げるべき時に、積み上げるものが無いと言う事が無いように、今この課題一つ一つを大切にポジティブに取り組んでいきましょう!

 

 

 

夏期講習開始。実材実習の台座制作。

彫刻科の小川原です。夏期講習が始まりました。前期が終わり、中期に入ります。前期は8日間と短い期間ですが、多くの事を学べたんじゃないかなと思います。かなり力をつけてきましたが、まだまだこれからです。さらにグッと上達してもらえるよう、講師一同全力で指導していきますので、皆さんも負けずについてきて下さい!
前期では昼夜1人ずつ現役芸大生にデモンストレーションに入っていただきました。非常にレベルの高い作品を間近に見る事が出来て、生徒の皆さんも多いに刺激を受けた事と思います。こうした機会は滅多に無いことなので、このチャンスにしっかり見て感じ取って欲しいです。
前期昼間部のデッサンのデモンストレーション。T.Aさんの作品。
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強引になる事無く、的確に、計画的に、そして着実に探りを重ねていたのが印象的でした。特に今のみんなに必要なものの見方と言えるのではないでしょうか。あらゆる角度からモチーフを分析し、しっかり理解してから手を動かす。当たり前と言えばそれまでですが、意外と意識出来ていない人は多いんじゃないかなと思います。自分で形を割り切ってしまうのではなく、あくまでモチーフの魅力に素直に向き合う事は表現活動において基本中の基本であり、同時に最も難しい事であるとも言えます。この作品はどの部分を見ても簡単に済ませてしまったところは無く、深みがあります。さらにそれらが全体で響き合っている事が素晴らしいです。

前期夜間のデッサンのデモンストレーション。R.Iさんの作品。
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開始と同時にすぐに描き始めるのではなく、しばらくの間像を眺めて制作の計画を練っていたのが印象深かったです。画面の中に像をどのようにつくっていくのか、その最終的なビジョンがしっかりしている事でブレの無い制作工程を踏む事が出来ます。像のイメージをしっかり自分の中に落とし込めていれば、今描いている内容の中で印象を外している部分にすぐ気づけるし、直していく方向性も迷わず見つける事ができます。計る事に頼りすぎている(計る事は良い事だが、他の見方があまり出来ていない)人は、一旦狂いが生じると混乱して手が付けられなくなってしまうのではないでしょうか。また、割と合わせたつもりでも何となく似てない。という事も多いと思います。計って合わせるというのはあくまで補助的な方法論でしかないので、まずはモチーフの魅力を見切る目と、それをそのまま出力出来る腕を養う努力をする事、これが大切です。この作品は端々まで非常に触覚的に形を感じ取れる内容に仕上がっていて、具体的に形や空間がどうなっているのか、再現性の高い作品に仕上がっています。

中期以降も全部で8回のデモンストレーションを見る事が出来ます。見逃す事無く、役立ててもらえたらなと思います。
生徒の皆さんもかなり頑張ってくれて良い作品も多く見る事が出来ました。特に良かった2点を紹介します。
浪人生、K.S君の作品。
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アバタのヴィーナスは小振りな作品ですが、動きが単純ではないので本当の意味で印象を引き出すのは非常に難しい像です。この作品はアゴからおでこまでの捻れの面展開がよく表現出来ています。全体のバランスや印象も良く、完成度もしっかり上げられました。自分で終わりを決めてしまうのではなく、最後までアバタを捉え続けた丁寧な探りに好感が持てます。今回はサイズの小さい像でしたが、大きなものになっても全体での印象合わせを怠らずに取り組んで欲しいです。

昼間部もう一人のK.S君の作品。
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全体に印象よくまとめられています。特にバルールに対する意識が高く、空間的なモチーフの魅力が上手く捉えられています。組み石膏では単体石膏デッサンに比べて形も色も確認しなければいけないポイントが非常に多くなります。しかしだからといって計り倒すように描き進めるのではなく、むしろ絵画的に、画面全体を包み込むように描写していく事が非常に重要になります。この作品ではそうした捉え方に着眼点を置く事で成功している事が沢山あります。逆に全体を大切にすればするほど一つ一つを具体的な形に置き換えていく事が難しくなり、客観的な構築性が不十分となって雰囲気に偏ってしまいがちです。この作品では特にマルスが形にし切れませんでした。まさにそれは「何を取るか」というジレンマであり、その時点での作者の技術と与えられた時間の中で、最大限良い作品にする為にいろいろな事を取捨選択した結果の産物であると言えます。

現役生K.Kさんの作品。組み石膏

特に現役生にとっては難しい課題だったんじゃないかなと思いますが、彼女は元々広い視野の持ち主で、高いバランス感覚も持ち合わせているのでブレる事なく持てる力を出し切って表現し切れたのだと思います。炭使いが独特で、深い味わいを出しています。単純に「絵」として魅力的に見えるのが素晴らしいです。浅いところで結論を出してしまうのではなく、魅力的なモチーフにひたすら素直に向き合った結果と言えます。欲を言えばマルスの頭部に明るさが足りないのと、背中の反射光部分に形がなくなってしまっている事が惜しいところです。

中期以降も生徒の皆さんの頑張りに期待しています!体力的にはとても負担が大きいところがあると思いますが、前向きに集中して取り組めばそれだけ実力もアップする事間違い無いです。体調管理には万全を期して、やりきった夏にして欲しいです。経験も、実力も、自信も身につける夏期講習にしましょう!

ところで彫刻科昼間部は1学期に実材実習ということでテラコッタの自刻像の制作をしました。1学期中に原型の制作と土の掻き出し、乾燥まで進めておき、夏期講習までの休みの間に台座の制作と窯で作品の焼成を行ったので紹介します。
窯は今回はガス窯を使用しました。8つあるバーナーを低いガス圧で順次点火していき、全部点火したら圧を上げていく事で温度を上昇させます。最終的には800℃まで温度を上げて、土を素焼きの状態に変化させます。
下の写真は窯内部の温度を示したものです。右が窯上部の温度。熱は上に上がるのでやや温度差が出ます。
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温度が下がってから窯のフタを開けて作品を入れ替えます。作品数が多いので複数回に分けて焼成しました。
焼き上がり
台座は木かセメントで制作しました。まずはセメントでの台座づくりからです。セメントは建物などの基礎工事と同じように、型枠をつくってそこに詰める形を取りました。まずはコンパネ(裏側がコーティングしてあるもの)に型枠の寸法を書き入れて、電動丸鋸や手鋸でカットします。
線入れ
次は型枠の組立てです。ガムテープで繋げていくのですが、角に金折れを入れて直角を出します。
型枠
首像に差し込む心棒は最初から台座に埋め込む形をとりました。これをひっくり返してセメントを詰めます。
型枠2
セメント(モルタル)を水と混ぜて撹拌機で混ぜ合わせます。今回は最初からセメントと砂がバランスよく混ぜてあるドライモルタルを使用しました。水は多すぎても少な過ぎても良くないです。流すというより手でもって詰め込むくらいがいいです。
セメント
最後にモルタルを逆さにした型枠に詰めていきます。隙間が出来ないよう気をつけます。急激な乾燥を防ぐ為にビニール袋で養生して硬化を待ちます。
セメント2
次は木での台座づくりです。使う木は楠です。木彫用の素材として一般的なもので、僕の制作での余り物を使いました。
最初に材料に線を書き入れます。
線描く
次に希望のサイズより少し大きいサイズにチェーンソーで荒取りします。荒取り
実際のサイズを測り、面の基準を決めながら電気カンナで荒削りしていきます。削りすぎて量が足りなくならないように、全ての面が90°の関係になるように気をつけます。
線入れ2

カンナがけ
ほぼ電気カンナで形は作ってしまいます。その後ベルトサンダーで面を整えます。
ベルトサンダー
最後はランダムアクションサンダーやオービタルサンダーで仕上げます。
仕上げサンダー
心棒をさす為の穴をつくります。心棒は2x3の小割りを使うので四角い穴をあけます。まずは中心に2x3の四角を書き、ボール盤でその内側を穴だらけにします。
穴空け
穴だらけになった残りの部分を鑿で崩していきます。小割りがうまく差し込めるか確認しながら進めます。
鑿
基本は木地での仕上げですが、バーナーで焙って黒く木目を出した人もいました。
バーナー
台座も完成し、焼成も無事全員うまくいきました!2学期に作品の仕上げを入れてもらって完成になります。

たまにはこうして実際に作品がどのようにつくられているのか体験してみるのもいい経験になります。結構大変だったと思いますが、皆楽しかったんじゃないかな。また完成が楽しみです。最後まで自分の作品に責任を持つ事。作家のたまごとして、そこを学んでもらえたらなと思います。
完成

夏期講習に向けて、気持ちを引き締めていきます!

こんにちは!彫刻科の小川原です。いよいよ1学期も終わりですね。時には学んだ事を振り返って整理してみることも大切です。是非、1学期を有意義なものとして締めくくって欲しいです!
さて、それでは1学期後半の学生の作品を紹介します。まずは昼間部からです。

実材実習課題で、テラコッタ(素焼き)の自刻像を制作しました。去年までは石膏取りを行っていましたが、より完成度の高い作品に仕上げて欲しいということで、今年はテラコッタに挑戦してもらいました。土は信楽土(薄い肌色)黒泥(グレー)テラコッタ土(オレンジ)の三種から選び、技法としては掻き出し(原型完成後、中の土を刳り貫いて作品を空洞にし、厚みを薄く均一にする)での制作です。K.S君の作品。彼は黒泥で制作しました。
自刻
意思の感じられるような、魅力のある作品になりました。表情に強い説得力がある半面、それ以外の部分が迫りきれておらず、やや簡単に仕上がってしまっているので、内側の構造にこれまで以上に敏感に反応出来るようになるとさらに質の高い作品に出来そうです。
完成作品は頭部の一部(主に後頭部)をワイヤーでカットし、その断面から中の土を掻き出していきます。空洞になったらカットした部分を戻し、修正と更なる密度上げを加えて乾燥させます。完全に乾燥したら窯で焼成します。今回は800℃での素焼きです。
↓縛った髪は焼成後接着します。この段階では修正のしやすさ(いろいろな角度で置ける)を優先して切り離しています。大体乾燥しました。焼成後の色味もこんな感じです。1学期が終わって、夏期講習までの間に台座の制作と、焼成を行ってもらいます。
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木炭デッサン、奴隷像です。M.Nさんの作品。形の張り出しと量感のある仕上がりです。炭使いもやわらかく、魅力を高めています。やや正面から見たときの顔が似ていないのと、トップライトが定まりきっておらず、光の空間が明解でないのが今後の課題です。
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素描の課題で、自分の好きな石膏像をアトリエに自由に設置し、空間ごと描く。という課題を行いました。普段描きなれているシチュエーションとはまた違った切り口で石膏像や、それを取り巻く空間に迫る事で、見方の幅を広げ、表現力を強化します。
K.S君の作品。コンテで描きました。モーゼの印象もよく取れていて、窓枠のシャープな表現も心地よいです。やや床面に奥行き感が足りないので、パースの理解を深めるだけでなく、描画テクニックや質感に対する感覚的に反応出来るよう修練していきたいです。
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次は夜間部の作品です。段ボールと竹ひごを構成(造形)し、それを描く。という課題を行いました。ここ2年芸大2次素描ではこのようにモチーフを自分でつくらせる試験が続いています。デッサン力だけでなく、受験生がどういった造形に対するセンスを持っているのか、あるいは今後展開していくだろうかというところをを見るような内容です。何もポイントを知らない状態だと不利な課題なので、ある程度対策をしていく必要があります。でも受験対策ということ以上に、自ら考え、自らの責任で作品にする。という事は美術を志すものとしては基本中の基本です。
K.Kさんの作品。空間、質感共に良く描けています。割と短い時間での課題でしたが、作品的なボリュームを十分に感じます。パースが正確でないので、確実に合わせられるよう経験を積んでいきたいです。
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U.T君の作品。鋭い先端での接地が魅力的な作品で、密度も十分です。段ボールの面のタッチをパースに合わせると、段ボールの内側の空間がさらにきれいに描けたと思います。
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石膏デッサン、ラボルトです。この像は基礎の練習課題でよく出される像ですが、意外に難しく、バランスや量感、印象を合わせるのはなかなか難しいです。
U.T君の作品。特にこの位置でのラボルトは絵になりにくいですが、全体に必要な事が一通り出来ており、質の高い作品に仕上がっています。通常より短い時間での制作でしたが、粘って描ききる事が出来ました。欲を言うと、台座を中心に、頬や首など、広い面(変化の少ない面)になった時、表現が単調になるようなので、さらに観察を深め、表現力を高めて深みのある描写を目指したいです。IMG_0543

さて、こうして1学期を過ごしてみてどうでしたか?きっとあっという間だったんじゃないでしょうか?頑張って取り組めた人、頑張りきれなかった人、何かを掴めた人、掴み損ねた人。いろいろな想いがあると思います。でも忘れないで欲しいのは、入試は必ず訪れるということと、それまでに与えられた時間は誰にも均しく平等であるという事です。だったらやる事は一つですよね!自分がやれるだけの事をすべてやって、ほんの少しずつでいいから、成長の歩みを止めないで下さい!
少しでも上達の手助けが出来るよう、講師一同全力で指導に当たります。夏期講習での皆さんの成長に期待しています!一緒に頑張りましょう!

もう1学期も後半戦です。

こんにちは!彫刻科の小川原です。今日は前回に引き続き社会人講師の紹介をしたいと思います。昼間部では彫刻論の第2回目を行いました。彫刻論で紹介した作品の写真とともにそれぞれの先生にコメントをもらいました。

氷室幸子先生は、僕の芸大時代の同級生で、6年間一緒に大学で彫刻を学んだ仲です。まさに切磋琢磨の関係!作品に対するコンセプトが非常におもしろい作品です。毎作のモチーフとなるものはどこか人の気配を感じさせるもので、それが時とともに形を変えていく事が果敢なくもあり、また美しくもあります。
ブランコ
ブランコ
口紅
口紅
のど飴を素材にして鋳造する作品です。ゆっくり溶けながら形が無くなっていく半面、甘い香りが、質量を増して空間を占めていきます。

竹邊澄子先生は僕の大学の後輩です。テラコッタで具象をつくるという点で、僕にとってかなり近しい存在です。やわらかな曲線をもつ人物彫刻で、物語性のある作品を制作しています。
竹辺アップ
Boy,boy
テラコッタ H178×W60×D50cm
東京芸術大学の卒業制作作品です。表面が滑らかになるまで形に迫り、素材の新たな質感を追求しました。
竹辺2
Alice
テラコッタ H140×W60×D50cm
東京芸術大学大学院在籍時の作品です。釉薬で着色した義眼を使用しています。自分を追求する不安と迷いを、少女の像に重ねました。

こうして見ると、作品に対するアプローチって本当に人それぞれですよね。何かの模倣でなく、自分の中の真実に近づけば近づくほど、生まれてくる作品も全く違うものになります。そういった意味では、作品って自分を映し出す鏡みたいなものなのかも知れません。

さて、これで彫刻科の社会人講師の紹介は一通り終わりました。ここで彫刻科の学生の授業作品の一部をお見せしたいと思います。
昼間部では5月に大型組み石膏静物ライティング課題を行いました。ベーシックな課題だけでなく、こうした特殊な課題も実力を底上げしていく上で非常に重要です。
組み
今回は経験に応じて木炭紙のサイズを通常のサイズと倍版サイズ選択して行いました。制作期間が
4日と、物量に対してやや短いところもありましたが、力作が多く並びました。また2学期にさらに力をつけたところでもう一度やってみたいと思います。
K,S君の作品。倍版ですが、全体をバランスよくコントロールできています。5月の時点ではなかなか良い出来といえます。ただ、作品性で見ると、手前のアポロンに頼りすぎている部分があるので、他のモチーフの魅力もさらに引き出していきたいです。
20130528大型組み石膏2

指導無しで行ったヘルメスの頭部模刻です。ヘルメスは動きも表情も難しく、物量もあるのでなかなかいい作品が出る事は少ないですが、この時期自力でこのレベルの作品がつくれたら立派なものです。構造ではまだまだ不満な点が多いので、さらに視野を広げて像の印象から外れないようにフィニッシュさせたいです。K,S君の作品(今年はK,S君が2人います)
ヘルメス

さて次は夜間部の作品です。5月の末に組み石膏のデッサンを行いました。経験が少ないと1体描くのも手いっぱいになってしまうものですが、なかなかの力作を完成させる事ができました。
K,Kさんの作品。調子や空間にやや問題を残すところがありますが、素直な観察と、粘り強い描写が魅力的な作品に仕上がっています。何より「描くのが楽しい」というのが伝わってくるのが良いです。20130603組み石膏菊池

U,T君の作品。奥のフォーンの脇が空間に馴染んでいない事や、ホーマーからフォーンまでの隙間の距離感がやや潰れているのがもったいないですが、光、陰のバランスや、コントラストのコントロールがとても良く出来ています。
20130603組み石膏臼田

先日行った鶏の塑像作品です。動物は常に動くので、モチーフの構造をきちんと分析し、理解しながら形にしていく事が必要です。表面の凹凸を追うだけではいかにも作り物っぽくなってしまうので、骨格や筋肉もイメージしながらつくれると良いです。
K,Kさんの作品。全体のバランスがよく、まず、きちんと2本の脚で立っているように見えるのが良いです。頭部、尾羽、脚と、表現を密度に頼れる部分は完成度が高いですが、逆を言うとそれ以外に形としての意味を十分に与えられていません。表情の少ないところほど、構造としての強さをより引き出すつもりでやり取り出来ると良いです。鶏

もうすぐ1学期も終わり、夏期講習会が始まります!夏期講習では各期現役芸大生によるデモンストレーションを入れていきます。普段なかなか見れる機会の無い事ですから、是非このチャンスに何か一つでも得るものがあればと思います。僕たち講師もどんどんデモをして盛り上げていきますので期待していて下さい!