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いよいよ・・・

冬が待ち遠しい彫刻科講師内田です。

朝晩寒くなり、いよいよ受験シーズンという感じがしますね。あちらこちらで、コンクールも開催され、浪人生はいつもと違うメンバーと、現役生は先輩に混ざり、皆それぞれ刺激があったのではないでしょうか?

受験が近づき不安を感じる人、勢いに乗る人、様々いるでしょう。
合格する保証は誰一人にもありません。だから不安になるのですよね。でも、あなたが受かる可能性だってあるのです。私は自画像が苦手でしたが、試験に出るかもしれないので家で自主練しました。(但し嫌にならない程度に。←ココ自分の中ではポイント!)結局上手くならなかったのですが、やるだけやったので当日出たら描くしかないし、努力したことは自信になりました。ただ毎日やれることを真摯にやっていれば、下手なはずの自分も受かったりするのです。
でも人それぞれなので、腹をくくって苦手分野はやらずに、できる方面をとにかくレベルを上げるっていうのもありかもしれません。運良く試験に出ないかもしれないし、出ても久しぶりすぎて新鮮な気持ちで描けるかもしれないし。はたまた、例えば素描、自画像が苦手でも静物が得意でレベルアップしてきたならその力で突然自画像も描けるかもしれない。少し極端な話をしてしまいましたが、受験は結局自分次第。そのためにはやはり、自分にベストだと思う方法で、やるだけやってみるしかないのです。本番当日、誰にも頼れない中、自分なりにやってきたという自信が味方してくれるはずです。

さてそれでは早速、新美生の自信作を見て行きましょう。

まずは人体です。

I.Hさんの作品IMG_9078n

全体的に自然な仕上がりです。さらに上を目指すなら、曲げているポーズのせいか、遊脚のひざ下が立脚より長く見える気もします。気にならないレベルですが、左右や手前奥の位置関係を意識して、より自然になるよう微調整しても良いかもしれません。線のストロークももう少し柔らかくなると肌の柔らかさが出そうです。

同じくI.Hさんの作品IMG_9092n

こちらは一枚目より線が目立たず柔らかい空気感が伝わります。曲げた奥の膝が少し内向きに入っている感じがとてもよいですね。

 

H.Aさんの作品IMG_9084n

胴体部分は人体の柔らかさがでていますが 足首、くるぶしがもう少し自然だとなお良かったのではないでしょうか。ちょーっと、このくるぶしはいかついね。全体的には人体のボリュームが出てて良いです!ポーズも自然。

同じくH.Aさんの作品IMG_9096n

こちらは肩甲骨の表現が少し強引かもしれません。全体的に強いストロークの線画目立ちますが、伸び縮みを捉えようとしているので印象は悪くない線です。

M.Yさんの作品
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鼻の下に落ちる影など強すぎて目鼻がはっきりしているせいか、顔の表情が少し硬く見えますが実感ある炭が乗っています。横位置でも体手前奥の伸び縮みが上手く表現できています。特に奥側が絶妙。手前の脚は、少し肌や筋肉の張りの表現が固いかも。

同じくM.Yさんの作品
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腕やお尻の光の抜き方が単調になっているかもしれません。肘と腰の間の空間を活かしながら丁寧に光を白でぬけるとより良くなりそうですね。バランスは良いでしょう。炭もたっぷりのって味わい深い素描になっています。

S.Kさんの作品IMG_9104n

肘周りが小さく見えますが、輪郭線がやわらかく、人体を取り巻く空気感を意識して描けています。空気感を感じる素描、大好物です!が、これ以上白くなると人体の存在感も薄くなってきてしまいそうなので注意しましょう。

T.Hさんの作品

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腕の表現や体の質感がよく描けています。ただ、体に対して少し首が細く見えてしまうことと、首と顎下の描写をもう一歩突っ込んで描きたいです。

次の二人は普段の木炭紙の倍版で描きました。
U.Tさんの作品
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横から見たら、どのくらい足を前に出しているか、身体のそり具合などが想像できるほど、緻密に描いています。左腕と身体の間の空間もこだわりが感じられます。きれいです。

Y.Rさんの作品
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全体感は良いですが、じっくり見て行くと奥の遊脚が、手前の立脚の膝下と比べ長くなっています。かかとの位置が、画面のもう少し上に位置するとよかったかも。かかとが尖って見えるせいもあるかもしれません。人体素描はポーズが多少ぐらつくので、画面の中で見たとき、より人体のバランスが自然になるように微調整して合わせてしまって良いでしょう。

次は塑造です。
U.Tさんの作品

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途中パーツの張りから頭部の張りまでバチバチに目立っていましたが、最終的には部分的にならず、全体的にまとめ、強い模刻像となりました。

S.Aさんの作品

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指先で押さえる仕事が多く、指先単位の凹凸が目立っていましたが、最終的には頬の張りが出て、グデアのカチッとした雰囲気が表現出来ました。顔も似ています!

S.Kさんの作品

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バランスはよいですが、首周りが弱そうです。肩へのつながり具合、鎖骨周りなど切り口の先にある形や構造を、より一層意識してみましょう。頭は重いので、芯棒に頭部を支えられてるのではなく、(粘土の)首が頭部を支えているような安定感が首に出せると良いですね。

デッサンに戻ります。
同じくS.Kさんの作品

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パジャントの首がすっと立ち上がる緊張感が出せました。髪と首周りの空間も綺麗に出ています。(パジャントって微妙に顔で正中線がずれているんですよね?。知ってか知らずかいい具合に描いてますね。)

M.Yさんの作品

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パジャントの横位置は頭部が大きく、前から見た時より迫力あったりします。カチッと全体を捉え、安定感のあるデッサンです。首向こうに落ちる影、個人的にグッと来ます。

続いてウサギさんにいきます。まず素描から。
U.Tさんの作品

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精度の高い素描です。特に顔から背中にかけては、触った時の肉質感や体に沿う柔らかい毛並みのふわっとした空気も感じられます。毛色の違いまで緻密に表現しているところは好感が持てます。この描写力はかなり自信を持って良いですね。

H.Tさんの作品

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書き出しのクロッキー的な捉え方が非常に、いや、異常に?良かったと思います。そのため、最終的にうさぎのボリューム感が上手く捉えられています。描き込みがH系の硬い鉛筆が多かったので、なかなか描写が詰まっていきませんでしたが、粘り強く描けました。(・・・やれば出来るのは皆知っています。毎回粘れ!)

T.Hさんの作品

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出だしなかなかプロポーションが取れませんでしたが、最終的に自然に描けました。素描の雰囲気も戦って描いたような熱い、温もりある素描になりました。実際より気持ち胸がむくむくしてるかな?

Y.Yさんの作品

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影が縞模様のように主張していましたが、最後に大きな面で光を整え、ベタッとしていた床も横からの光を入れて前足とお腹の空間も出せてこれました。背骨の膨らみは少し強いですが、毛の流れをよく観察していて、頭部の骨格に沿った毛並みも丁寧に描写できています。

続いて塑造です。

T.Hさんの作品

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前足と地面の空間が生かされ、佇まいが自然です。柔らかいポーズで体重移動とプロポーションがマッチしていて、動いている一瞬を捉えられた感じのする作品で好感触です。

I.Hさんの作品

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こちらも同じく、どこに力が入ってそういう動きになっているのかがピタッと来る作品です。今挙げた2人共通して全体感は良いのですが、周りと差をつけるためにはもう少し指先、地面との接地面まで手を入れていきたいですね。(写真で見るとまあまあですが。実際見ると少し大雑把だったので・・・)

 

さてさて次は夜間部です!

まずはデッサンから。

S.Rさんの作品
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脇が実際より少しぎゅっと詰まっている感じがありますが、炭のバランス、光と影の響き合いがきれいです。へそ下が真っ平らになっていましたが、少しの凹凸も見逃さず、身体のどこに力が入っているかなども考えながら何度も探っていきましょう。

T.Yさんの作品

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胸の張り具合、両腕の位置関係など、背骨のS字も良く出せています。構造や全体感がしっかり捉えられるようになってきたので、石膏デッサンは、アウトラインだけでなく光影の量もミリ単位で合わせていくと、もっと説得力あるものになります。しつこくモチーフに食いついていきましょう。(いやー、でもかなりレベルを上げてきましたね。)

お次は自画像。

S.Aさんの作品

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目がグッと来ます。眼差しが美しい。正面構図でも直立な固さがなく、頬の側面、耳への奥行き・髪のエアリー感。上手い!首の付き方が少し・・・・・・・でも良い!

T.Yさんの作品

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若干、目の収まる位置が不安定ですが、顔の表情が緩くて(←いい意味で!)良いです。頭部と体がゆるっと傾いていて(←いい意味で!)ゆったりとした空気が感じられ、全体感の良い作品になっています。

I.Hさんの作品
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顔のパーツが骨格におさまり、安定感ある自画像です。奥行きも出ています。願わくば鎖骨も丁寧に描きたいところですが、髪の表情、首の表情、顔の表情と、形を追った線で詰めてきたのでとても良いです!

最後にうさぎさんです。

T.Aさんの作品

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力みや強引さがなく自然な素描です。手数は少なそうですが指先の表現はよく観察しています。目の前でこっちの様子をうかがう、あのうさぎの雰囲気が出ていますね。素描の中で必要なところにピリッと少し強い線が効いています。(いつの間にそんな小粋なコト出来るようになったんでしょう・・・いい。)

S.Aさんの作品
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素描の精度が上がっていますね!潤いのある瞳や動きのあるポーズで身体の伸び縮みも自然です。少し前足が上がっていて、体を丸めている様子にグッと来ます。毛並みもふんわり最高!(あ、耳の折れた感じが、これ以上やると若干嘘っぽくなるかも?)

 

すでにうろ覚えの記憶ですが、私の現役浪人のときよりみんなの方が断然上手だと思います。それでも生意気にも粗探しをして注文つけてしまうのは、まだまだ伸びしろが感じられるからです。まだ受験まで日数もあるし、上手くいった人もこれで満足してたらもったいないですよね。上手くいかなかった人も本番に向けて予備校で失敗して改善していけばよいのです。一度失敗すると覚えるしね。

って感じで、講師らしいことを言いつつ途中ぼやきを入れつつ、次回(11/11)の小川原先生へたすきをつなげます。では。

季節は秋 

彫刻科の氷室です。 季節は秋 私は大好きな栗をせっせと煮ては食べ、食欲の秋を堪能しています。

みなさんセンター試験の申し込みは無事に終わりましたか? いよいよこれから!と言う時期ですね。

さて、一昨日と昨日の連休に、新美の彫刻科で公開コンクールが行われました!!IMG_10131 IMG_10132 (コンクール結果上位のメンバーへの受賞式が行われました)

台風が近づく中、外部から参加して下さった皆様、ありがとうございました。さすがだな!と感心させられる作品があったり、現役生が上位へ食い込むなど、内部生のみんなには特に刺激になったことと思います!結果をそれぞれ考えながら、気持ちを新たに1つ1つの課題を大切に、さらなる高見を目指して切磋琢磨していきたいですね!!!

ここからは作品紹介です!

デッサン・塑像においての課題は共に、どう観察するのか? その観察力を鍛える課題だとおもいます。たとえば新宿駅の人混みを歩く時、自然に人とぶつからない様に先を読みながら歩く、自然と身についていることですが、これも空間の観察力だと思います。また、先日作品展示のために1週間、栃木のとあるお家に滞在してきたのですが、そこでの共同生活においても、お風呂掃除や食器の片付けなど自分に出来る事を探す、こんな事も観察力だなと実感しました。デッサンや模刻ではみんなで共通のモチーフを描いたり作ったりするのですが、その人がどう物事を捉えているのか、その人の生き様が現れてきますよね。全ては妥協のない観察からです!!ちょっとでも、なんとかなるかな?なんて言う気持ちが出て来たら、その小さな積み重ねが、、、なんて言う結果になるのは皆も経験済ですかね。

R.Y君のデッサンIMG_876411 頭部の傾いてくるボリューム感、腕の動き、アゴ周りなど惜しいですがそれ以上に作者の視点や光の落ちてくる雰囲気が感じられる1枚です。とても大切な要素ですね!

T.U君のデッサンIMG_1002 形への執着を持って、空間や動きにアプローチが出来るのは実力のある証拠です。さらにはジョルジョの難しい表情も臨場感を持って表現できています!レベルの高い言い切りのある1枚です。素晴らしい!!

A.SさんのデッサンIMG_10021 光の印象が綺麗で空間をも取り込めています。鼻や目や耳の印象が動きにハマっていないので、惜しいですね。精度を上げていきたいところです。

同じくA.SさんのデッサンIMG_10022 最近のデッサンには安定感があり、彫刻としてモチーフを捉えていく強いデッサンが印象的です。量感を感じてここまで持って来る力はあるので、影側の形や顔も丁寧に描けると最高です!

こちらは模刻です T.U君の作品IMG_10042 IMG_1004 円盤は普段中々作らない像なので難易度の高いモチーフですが、印象を大事にできています。欲を言えば、さらにおでこから頭部にかけての形態感のベースがしっかり見えて来ると良いですね。

K.S君の作品IMG_10043 形態のベース感じさせながら、しっかり印象を合わせられています。ベースと作り込みのバランスを作者が強く意識できている証拠です!粘土付けも柔らか過ぎず固過ぎず、塑像の魅力が感じられます。

K.S君のデッサンIMG_10071? 奴隷の重たさを感じさせる黒が、チラつくことなく使えています。自分の持つイメージを比較的綺麗に表現出来たのではないでしょうか。細部にも手が入りつつボリュームをしっかり感じさせてもらえる1枚です。

A.HさんのデッサンIMG_10072 独特な描き込みのリズムで、立脚側に体重がかかってくる円盤の迫力を感じます!逆光側の暗さの中にも形を探って行く姿勢が丁寧で自然さがあります。良さが先に見えてくる、それも自信につながる要素です!

T.U君のデッサンIMG_10073 円盤の腕を引いている動き、伸びと縮み、構造がしっかり見えてくるデッサンです!背骨が感じられるデッサンは、そうお目見え出来ません!形一つ一つをとっても考えながら描かれています。作者の力を感じます。

R.Y君のデッサンIMG_10074 床に座り、視点を少し下げて描いたデッサンです。モチーフと近いのでバランスを取るのに苦戦していましたが良く描き上げてきました!やや台座のパースが劇的ですが、こう見えている!という形の説得力があり、円盤らしい腕を引いているスケールを感じます。

こちらは自画像素描ですIMG_1008 説得力があり、完成イメージをしっかりと持って取り組めた1枚です。そこに本人が居るかの様な空気が表現出来ています。体の描き方がかっこ良いですね!顎下の明るさや鼻立体感がやや気にはなりますが、何より意志の強さを感じる素描は見習いたいです!

Y.M君のデッサン?IMG_1010 明確なデッサンです!ジョセフの髪の毛に風があたっている様な空気感も感じます。かつ、色味で消えてしまいがちな首の形も追求してあり、実力を感じます!

T.U君のデッサンIMG_10101 ややハッチングが気にはなりますが、逆光側の臨場感や奥行きを感じる1枚です。余白の部分に手が入って行きそうです!前髪や手前に見える髪の毛はもう少し描きたかったですね。惜しい!

こちらも自画像素描ですIMG_101010? 本人の雰囲気をとても良く表現できていると思います!!願わくば肌の色味が欲しい!なんて欲張ってはしまいますが、丁寧に描かれたこの素描を見ていると、今しか描けない大事な作品の様にも感じます。眼差しを感じる秀作だと思います!

K.S君のデッサン IMG_1112 首から髭周りの空間が固く、奥の布の色味が単調にも感じますが、普段なかなか出番の少ないミケランジェロ、そのモチーフをここまでの理解力で描けると言うことは自信につながりますね!

T.U君のデッサンIMG_1011 これも同じく手前のハッチングが気になりますが、光の状況を綺麗に作れています。奥行きのあるデッサンですね!視点が分かり易く、この石膏像を見たことが無い人にも、こう言う石膏像なんだよと伝えられる気がする、そんなデッサンです。

さて今回の作品紹介はここまでです。

 

おまけでもう1枚

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私が先月参加した野外展、茂木里山アートフェスタにての作品です。

足を運んでもらった皆さん!本当にありがとうございました!!嬉しかったです!!!

次回のブログ更新は10月28日です! 内田先生にバトンタッチーーー!

 

 

日本画科便り12-日本画科レクチャー③?

日本画科です。

 

日本画科では周期的なイベント、レクチャー、デモンストレーションを行い、生徒のブラッシュアップを図っています。10月1日~2日は、日本画科の人物デッサンと石膏デッサンの対策を兼ねて、新美彫刻科の小川原講師(彫刻科主任)による人体デッサンレクチャーを開催しました。

 

「彫刻科/小川原講師(彫刻科主任) 人体デッサンレクチャー」

10月1日?2日 人物デッサン[女性ヌード]

1日目

AM小川原講師レクチャー(人体デッサン、人体クロッキー)

?クロッキー開始(座り、立ち、しゃがみ)

PMデッサン開始

2日目

AMデッサン

PMデッサン?講評

 

 

人物を描くにしても、石膏像を描くにしても、人体について把握をしていないと描くことが出来ません。特に今年度の日本画科は、人物課題や石膏デッサン課題の時、描き出しの際の捉え方が細部を意識し過ぎていたり、大元の骨格や組立が弱くなりがちだったので、人体課題を多く取り組む彫刻科主任の小川原先生にご協力を仰ぎ、今回のレクチャー開催に至りました。

日本画科では積極的にクロッキーの練習を奨励していますが、本レクチャーでは人体の基礎からクロッキーの捉え方、練習方法、そして石膏デッサンへの応用まで丁寧かつ徹底的にご指導いただきました。

11-1←モデルのポーズに入る前に、人体デッサンの基礎とポイントを解説いただきました。

11-2←描き出しから仕上げまでの過程を解説いただいています。

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11-3←最初のポージングは小川原先生のクロッキーを直接見学し、ポイントの押さえ方、基準の設定方法などの捉え方を具体的に指導いただきました。

11-5←講評の採点風景です。

11-6←講評風景です。生徒の表情は真剣そのものです。各々、メモを取る手が止まりませんでした。奥の彫刻科参考作品や各資料がアトリエの活気を物語っているようです。

11-7←日本画科の漆原講師(手前)と小川原先生。熱い講評!!!!!

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今回、生徒たちの作品は今までで一番しっかりした人物デッサンだったと思います。その生徒たちにとっても、また、日本画科講師にとってもとても勉強になりました。今回の学習を今後のクロッキー練習や石膏デッサン、そして人物デッサンに活かしていきたいと思います。

小川原先生、2日間、本当にありがとうございました!

 

日本画科では周期的なイベント、レクチャー、デモンストレーションを行い、生徒のブラッシュアップを図っています。口頭指導、個人指導の他、”直に見て学ぶ”というそんな学びのあり方も大切にしています。次回のレクチャーは基礎科日本画コース講師の佐々木講師による着彩レクチャーです。後日、こちらにアップ予定です。乞うご期待!

 

10月13日と14日に「全国公開実力コンクール」を開催します!課題は「着彩写生」。受験生、現役高校生の皆さん、是非奮ってご参加下さい。

動物園取材制作作品完成!

こんにちは。彫刻科の小川原です。芸術の秋ですね!!気候の中で思いっきり制作に励みたいものです。さて、彫刻科昼間部では、動物園に出向いて観察、取材をし、アトリエで作品に起こすという課題を行いました。近場ってことで上野ZOOへ!
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将来自分の制作で具象作品を作ろうと思ったときも基本は取材です。いい作品を作る為にはきっちり必要な情報を集めなければなりません。
情報収集→デッサンにてイメージをより明確に→作品に再構築。と言った、彫刻作品制作プロセスに欠かせない一連の流れを何となく理解してもらえたと思います。例え石膏デッサンでも、模刻であってもそれは変わりません。落ち着いてモチーフの分析が行えなければリアリティを掴む事は出来ないのです。是非、これからの制作に生かして欲しいと思います。

動物園では沢山のモデルの中から自分が最後まで責任を持って向き合う相棒を捜します。
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クロッキーを沢山描いて観察を深めます。どういう構造や表情を持っているのか。はっきりイメージが持てないと何もはじめられません。
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取材資料を持ち帰ってまずはデッサンを行いました。木炭紙大での制作だったので、画面が大きく、デッサンそのものの作品性も高い物となりました。ここで助走をつけて一気に塑像作品に向かっていきます。
普段制作しない大きな物や、小さくても密度の高い物、後々テラコッタ作品にする事を見越したもの。作品としてどのような完成のビジョンを持つのか。ここも重要です。
それでは素描と塑像作品を合わせて紹介します。新宿動物園です!
グリーンイグアナ
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最初から作品のイメージがしっかり持てていて、作品に魅力を与えていくスピード感が素晴らしかったです。この作品は構成的にも完成度が高く、360°どこから見ても見栄えのする内容です。

ハシビロコウ
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動物園では草むらの中にいて、脚がほとんど見えない状態でした。少ない情報の中で素晴らしい完成度に到達する事が出来ました。脚の緊張感も良いと思います。

ゴリラ
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まるで受験生を応援してくれているような、そんな素描です。素描も塑像も完成度が高いと思います。シルバーバックの頼もしさが感じられる内容です。

ニホンザル
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素描の内容が特に良いと思います。毛がもこもこしていて塑像で作品とするのはかなり難しい題材ですが、試行錯誤の結果魅力的な作品に仕上げる事が出来ました。

ヒツジ
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毛に覆われたヒツジのかわいらしさが良く出ていると思います。毛の表現に関してはやはり難しく、見たまま作る訳にはいかないので独自の解釈が必要です。良くまとめる事が出来ました。
クロサイ
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岩のような塊感の魅力もさることながら、皮膚の質感表現がとてもおもしろいです。一つの作品の中にたくさんのおもしろさを発見する事が出来、見ていて飽きのこない作品です。

アジアゾウ
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土付けの質感にリアリティを感じます。ドッシリとした量感がとても魅力的な作品です。素描では構図の切り方もおもしろさの要素となっています。

コンドル
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猛禽類特有の力強さが感じられる作品です。骨格感も魅力的で、そのリアリティを追求する事で陰影が複雑に変化し、彫刻的にも内容の詰まった物となったと思います。

バーバリーシープ
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顎から胸まで続く長い毛が特徴です。それ以外の部分は割とサラッとしているので特徴を出していくのが難しいですが、骨格構造を追求していく事で間伸びせず仕上がったと思います。

ライオン
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デッサンから一貫してライオンの顔面にこだわって制作しました。荒々しい質感が強い陰影となって作品に魅力を与えています。この作品はテラコッタ作品にする予定で、信楽土で制作しました。

オオツノトカゲ
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頭部のみの制作です。細かな皮膚の表情を作り込みました。本当は頭部だけだと3cmほどの小さなトカゲです。大きく作るのは難しいですが破綻無く完成しました。テラコッタ作品にする予定です。
コウモリ
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元が小さく、骨格構造が明解に分かる資料がなかなかそろわなかったので作品にしていく時に印象を掴みづらい事に苦労しましたが、最終的に心棒造りからポーズも工夫できて良い作品となりました。

キリン 今回は途中参加で野村先生にも作ってもらいました。
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IMG_8605どうでしたか?今回の作品は皆いつもより楽しんで取り組めていたように思います。魅力的な作品にしていこうという心構えは何をやっても同じです。これからも頑張りましょう!!

次に1学期に制作したテラコッタ作品が台座も含めて完成しました。
R.Y君の作品
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モデルさんの内面的な部分を感じる事が出来る作品です。その表情に僕はとても魅力を感じています。

Y.M君の作品
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形を追求し切って、説得力のある作品にまで高める事が出来ました。ただ表面をツルツルにしていくのとは違う真に迫った魅力を感じる事が出来る作品です。

K.S君の作品
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柔らかな土付けが作品にメリハリを与えていて、作品性の高い内容になっています。ただ単純に形を写し取っていくだけでなく、部分ごとの表情に敏感に反応できないとこういった作品を生み出す事は出来ません。

それでは最後に最近の通常課題の優秀作品を紹介します。

円盤投げ
T.U君の作品
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しっかり形態感が探れています。ここまで完成度を上げたらもう特に言う事はないですが、短時間でもここまでの物が出せる事を目標にして下さい。そう考えるとまだまだ学ぶべき事は多そうです。

友人像
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表面を作り込むだけでは出ないモデルの意思を感じ取れるような真に迫った作りが魅力です。常に目の前の物を「作品」として捉え、向き合う事が大切です。

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土付けの研究を兼ねて制作した作品です。これまでより柔らかさが出てきましたが、まだまだ単調な印象が残っているのでさらに工夫を重ねて繰り返し練習しましょう。

ブルータス
T.U君の作品
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最終的な完成のおさまりは良いです。中盤までにやりきっておかなければならない事に対してさらに敏感になっていかないと、安定して満足のいく作品が出来ないので意識してみて下さい。

Y.M君の作品
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徐々に詰めていくように作品を構築していく方法論は合理的だし、的を得ていると思います。しかし注意しないと作業の流れに飲み込まれて作品そのものを見失い、完成した物が全く別物になってしまう危険性もあります。常に全体を見て、印象の良さと作品としての魅力を確認しましょう。

H.Iさんの作品
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色(調子)がきれいな作品です。最終的にここまで来れたらまずは作品として満足できるでしょう。今はまだまだ先のイメージが十分に持てていない中制作している部分もあるので、今回のように上手くいった時にその流れを思い返してみる事が大切です。

F.Tさんの作品。
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力強く像を全体で捉えられているのが魅力です。手前の説得力がさらに向上すると文句ない作品になります。しかし構図はやや大きく、窮屈な感じも受けてしまうのでもったいないです。気をつけましょう。

K.S君の作品
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台座を描いた事によって緩和されているとは言え、構図はやや悪いと言わざるを得ません。それ以外は形と調子が上手く関係づいているし、印象も良くとても良いです。常に自分でコントロールし、安定して作品が打ち出せるようになりたいところです。

手(一部が床に触れている事)
H.Iさんの作品。いわた
タッチで具体的な形を捉えていく描写がとても良いです。指の長さの関係や腕の切れた先の形に違和感を感じるところがあるので気をつけましょう。床面を丁寧に表現している事に非常に好感が持てます。

A.Sさんの作品。
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色が形に吸い付くような力強い表現が魅力です。腕の表現や、床の表現はまだまだ意識として足りない部分が多そうです。画面全体が魅力的に響き合って初めて本当の意味で「完成」出来るのだと理解して下さい。

自刻像
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全体的に完成度が高いです。細部とその周辺のつながりの魅力や、首回りの複雑さが増すと尚良い作品に出来そうです。

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微妙な動きが作品に自然な生命感を与えています。土付けの柔らかさも良いです。やや目に作者の意思の投影が足りないようで、少し作り物っぽさを感じてしまいます。見る人を目で引き止めるくらいのつもりでこだわって作って下さい。

円盤投げ
夜間部 R.Y君の作品
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全体にきれいに調子がコントロールできています。形に関してはやや左肩が下がりすぎてしまい、肩の引きが弱くなってしまっています。人体としての動きのイメージがしっかり持てると良いです。

今回は沢山紹介したので長くなってしまいましたね。最後まで見て下さった方、ありがとうございます。さて、新美彫刻科は10月12日、13日に公開コンクールを行います。デッサン、塑像と、芸大受験では最も重要な課題でのコンクールとなるので学外生の方も是非参加してみて下さい!

試験本番までにはまだしばらくありますが、ちょっとここらで力試し、というのもいいと思います。普段教えてもらっている先生とはまた違った立場の先生から意見が聞けたり、新たな発見もあるかもしれません!お互いに高め合いましょう!待ってます!

次回は10月14日、氷室先生が更新の予定です!お楽しみに?!

 

木彫作品制作1 手の彫り。

彫刻科の小川原です。前回までで胴体が大体形になっていたと思います。今回は最後のパーツ、手の制作を流れに沿って紹介します。
まずはサイズを確かめる為に型紙を作って画鋲で本体に取り付けてみます。
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ちょっと不格好ですが、大きさが分かればそれで良いです。
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型紙のシルエットを材に写して荒取りしていきます。
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最初は関節を意識し、大まかに面の構造を取っていきます。手の甲側に見やすい流れがあるのでそこから捉えていきます。
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骨格と表情を関係づけながら彫り進めます。
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甲側がある程度形になったら平側も進めます。ちなみに左手は全部の指を伸ばしていますが、右手はやや閉じ気味なので同時に指を作ってしまうと内側が作れないので、指は後付けです。
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手首まで彫り込みます。
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ここで右手を本体に合わせてみます。本体にはまだ受けの構造が無いので、外側にゴムバンドで無理矢理括り付けます。概ねいい感じ。
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右手の指を作ります。まずはザックリと。
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丁寧にまとめていきます。
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くっつける時にはダボと言って、軸を通します。軸を通す為に穴を空けますが、位置を合わせる為に背中合わせにした画鋲を差して印をつけます。
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やや薬指が角度きつすぎだったのでこのあと切り離してやり直しました。
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本体への取り付けは、袖の先に穴を空け、差し込む形です。
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とりあえず形にはなりました。袖の厚みなどは後日作り込みます。
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これで全ての形が出そろいました!次回から背中の内ぐりの時に出来た穴を塞ぐ作業をして、どんどん上から仕上げていきます!

秋は涼しくて制作がはかどっていいですね!