カテゴリー別アーカイブ: 映像科

映像科:二学期の一般入試対策&推薦入試対策

映像科講師の森田です。暑さもようやく一段落して、現役生は文化祭なども終わり、ようやく受験に集中できる(せざるを得ない)季節になってきましたね。個人的には毎年二学期は本当にあっという間という印象があります。うっかりするとすぐに年の瀬です。一方で10月?12月の推薦入試を受験する人にとっては、一足早く受験に突入という時期でもあります。

一般入試対策としては当面の目標である公開コンクールに向けて、特に「武蔵美の感覚テストの完成度をどうやって上げられるのか?」ということを課題として制作をしています。これは先週の講評前の様子。実際の感覚テストはB3画用紙に絵と文章を自由にレイアウトすることになりますが、この課題ではあえて絵と文章別々に描く/書くことで、それぞれの表現を吟味してみます。

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推薦入試対策では、今年から始まる武蔵美の「クリエーション資質重視型」を中心として、個別で講評します。これは金土日コースF君の映像作品の中間発表の様子。編集作業についてのアドバイス、ファイル制作や面接試験なども見越した作品のテーマについてのディスカッションなども。出願は10月後半、実際の試験は11月後半なので、こちらは今がまさに正念場です!

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映像科:感覚テストにおける色彩表現

こんにちは。映像科講師の野澤です。武蔵美映像学科の感覚テストでは、鉛筆に加えて色鉛筆やパステルを使うことができます。そこで今回は、デザイン系の学科とも、ファインアートの学科とも微妙に異なる、映像科の試験対策における、色鉛筆の使い方のポイントについて解説していきたいと思います。

デザインと映像で、色彩に対する考え方はビミョーに違う

それでは、デザイン系の学科と映像科で、色彩の使い方はどのように異なっているのでしょうか。非常におおざっぱに言ってしまえば、「モチーフに対する色使いの恣意性(自由度と言い換えてもいいでしょう)が、デザイン系では高く、映像科では低い」ということです。

デザイン系の実技試験では、モチーフのシルエットをトリミングしたり、抽象的な幾何学図形を組み合わせるなど、高い画面構成能力が求められます。つまりデザイン系では、色彩は画面構成の一要素であり、モチーフにどのような色を載せるかという恣意性は高くなります。

一方、映像科の学科試験では、映像的な「シークエンス(場面と言い換えてもいいでしょう)」を表現することが求められます。つまり映像科の試験において、自分が表現したいシークエンスに対して、どの色を主調色に持ってくるのかは「その出来事が起きている場所はどこなのか、季節や時間帯はいつなのか、その出来事を見ているのは誰の視点なのか、その人物は何を思っているのか」といったシークエンスの諸条件から決まる、ということです。明度-彩度-色相という技術的な面から発想した色使いは、しばしばシークエンスを表現するという目的からズレてしまうことに注意しましょう。

たとえば、リンゴの色を決める時、デザイン系では、形態と色彩をいかに構成するかという、抽象的な関係性から考えてゆきます。このとき、リンゴの固有色を使わないという判断も十分ありえます。それに対して、映像科では、たとえばリンゴの色を敢えて青くした場合、そのシークエンスに「青いリンゴ」が登場する根拠があるかどうかが、問われてくるということです。

映像科志望も押さえておいた方がいい、色相・明度・彩度という考え方

さて、いろいろ前置きが長くなりましたが、こうした違いさえ理解しておけば、色鉛筆は感覚テストで、シークエンスの雰囲気を表現したり、シーンの焦点を際立たせるための有効なスパイスとして使用できます。色相・明度・彩度という、3つの属性で色彩を考えられるようにしておくことは、映像科の対策でも憶えておいて損はないでしょう。

色彩は、色相・明度・彩度という3つの属性で考えることができます。

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・色相
色相は赤、黄、緑、青、紫といった色の違いのこと。この色相を並べたものを色相環と呼びます。色相環の反対側に位置する色同士は、反対色もしくは補色と呼ばれ、最も対比が際立つ色の組み合わせとなります。

・明度
明度は文字通り、色の明るさのことです。明度を上げていくと明るくなり、明度を下げていくと暗くなります。

・彩度
彩度は色の鮮やかさのことです。彩度を上げていけばビビッドな色になり、彩度を下げていけばカラーの無い白黒になります。絵具や色鉛筆は、異なる色を重ね合わせると、濁った色になり、彩度が下がることに注意しましょう。蛍光色は特に彩度が高い色です。

シークエンスを際立たせるために、補色を利用する

さきにのべたとおり、映像科の試験において重要なのは、たんに抽象的な関係性から色が設計されていることではなく、映像を表現するという目的に合わせて色が選ばれている、ということです。しかし、特に映像で焦点となるような人物やモチーフを表現する際、補色対比が使えることは、いざというときプラスになるでしょう。補色とは、色相環の反対色同士のことです。2つの補色を組み合わせることで、対比的な色の組み合わせを作ることができます。

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色鉛筆でテクスチャを作る

色同士の組み合わせよりも重要なのが、鉛筆のタッチでつくるさまざまなテクスチャです。色鉛筆の尖り具合、描線の方向、画用紙の凹凸、ガーゼなどを生かして、いろいろな質感を表現できれば、感覚テストにおける色鉛筆の使い方はぐっとひろがるはずです。制作の中で実践していきましょう。

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映像科:武蔵美進学説明会

こんにちは。映像科講師の森田です。中期、後期の計24日間の夏期講習もあっという間に終わろうとしています。中期は推薦入試対策でプレゼンテーションと映像制作に明け暮れ、後期は一転して感覚テストや小論文の対策と、なかなかハードな夏だったかと思いますが、この頑張りが必ず二学期以降の飛躍に繋がるはずです。

8/23日の放課後には武蔵野美大映像学科の篠原教授が映像学科の説明に来校されました!この時期の新美での説明会は毎年恒例となっていますが、今年も入試のことから大学の授業のことまで色々とお話しいただきました。後半は映像科の学生からの質問コーナーとなりましたが、特に今年は推薦入試についての質問が多かったような気がします。従来からの方式「ディレクション資質重視型」、今年から新たに始まる「クリエーション資質重視型」の両方について、どのような点を評価しているのか、詳しく聞き出せた(?)ような気がします。

さて映像科の二学期からの金土日コースの授業は、9月5日に始まります。二学期からはいよいよ小論文or鉛筆デッサンの対策も分かれて、さらに推薦入試組は一般入試対策と並行して、各入試の準備が始まります。「ディレクション資質重視型」の「構想力テスト」については昨年以前に受験した人のレポートなどもありますし、「クリエーション資質重視型」の参考になる資料もあります。出願を考えてる人は、お気軽に相談に来てください!

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映像科・デッサンができる人は「前半の姿勢」が違う!

こんにちは、映像科講師の野澤です。

さて、今回は美術予備校のみなさんが避けて通れない、デッサンについて話したいと思います。デッサンを描くとき、みなさんは普段どんな指導を受けていますか? 「全体をよく見ろ」とか「細部までしっかり観察しなさい」とか、色々言われては試行錯誤していると思います。

見えるものを見えるままに描くことは、なぜこんなにも難しいのでしょう? それはデッサンが、裸の眼で素直に自然を見ればおのずと描けるようになる、などといったものではなく、ヨーロッパリアリズムの歴史が作り上げてきた、きわめて特殊な身体技能だからです。

ちょうど最近、デッサンの制作過程を3Dモーションキャプチャーで計測した野中哲士さんの研究論文(野中 他, 2010)を発見しました。そこで今回はデッサン中の「姿勢」に焦点をあて、画家がデッサンを描くあいだどのような姿勢を取っているのかを解説します。

さて、デッサンを体得した画家の「姿勢」は、どこにポイントがあるのでしょう? その答えは、前半・中盤・後半での「姿勢の切り替え」にあります。今回は特に、初級者にとって重要な、デッサンの前半場面にしぼって解説しましょう。

身体の芯を動かさずに、自分とモチーフと画面の位置関係を描き込む

デッサンを成立させる上で、最も重要なのが、モチーフの全体的な形を取り、地面の陰影を描き込む、前半段階です。この段階は、デッサンで最も難しい局面だと言っていいでしょう。なぜなら、画用紙の上にまだ何も描かれていないので、身体を少し動かしただけで、画家自身が、画用紙とモチーフの位置関係を見失ってしまうからです。画家はモチーフの形を取ることで、自分がそこでデッサンを描くための土台を、画面の中に築き上げてゆきます。

野中さんの計測によれば、画家の姿勢は前半で、体幹(背骨の通っている胴体の芯)の位置をほとんど動かしていないそうです。席から立ったり、頭を揺らしたりせず、身体の芯の位置を一定に保ったまま、モチーフの輪郭や形を、画用紙に描き込んでゆきます。

ここで「モチーフの全体的な形をとる」ことの隠れた役割が、明らかになります。最初に言った通り、画用紙に何も描かれていない前半段階では、身体を少し動かしただけで、画用紙とモチーフの位置関係を見失ってしまいます。つまり画家はデッサンがはじまってすぐ、たとえ自分の身体が動いてしまっても、身体が元あった位置を発見できるように、画用紙に痕跡を残しておかなくてはならないのです。

画用紙にモチーフさえ描いてあれば、それをヒントに元の身体の位置に戻ることができます。デッサンにおいて「モチーフを描くこと」は、画面の中に「モチーフ – 画用紙 – 自分自身」の相互位置を構築することなのです。ここがデッサンの我慢のどころだと言ってもいいでしょう。

上手い人ほど、モチーフを見る視線と利き手はシンクロして動いている

さらに計測によれば、画家の視線は前半段階で、非常に素早くモチーフと画用紙の間を行き来しており、なおかつ視線と利き手がシンクロしていました。視線は1分間に約20回、モチーフと画用紙を往復しており、視線がモチーフを離れた瞬間には、すでに鉛筆をもった利き手が動きはじめていました。つまり画家は、体幹を一定の位置に保ったまま、まるで視線と利き手をヒモで結んでいるように細かく連動させて、モチーフの形をスキャニングしているのです。

モチーフと画用紙を視線が往復する周期は、デッサンに熟練した者ほど早く、デッサンの写実性と周期の速さは比例することが、別の研究でわかっています。さらに、短時間で描き上げる時ほど、画家は何度もモチーフを確認します。5時間で人物を描く場合は12回/分、2分間で人物をラフスケッチする場合は22回/分、40秒でラフスケッチの場合はなんと35回/分です。体幹を安定させつつ、視線と利き手をシンクロさせる技術は、クロッキーの際にも重要なことがわかりますね。

中盤と後半の姿勢:身体を大きく画面から離して、チェック!

もしみなさんが、前半の姿勢を体得しているなら、中盤と後半は、もう解説の必要がないでしょう。モチーフの大まかな形を取り、モチーフと画面と身体の相互位置さえ構築しておけば、あとは画板を動かしても、顔を思い切り画面に近づけても大丈夫。ちゃんと元の位置に戻ってくることができます。ただし、ひとつだけアドバイスするなら、後半の仕上げ。身体を大きく画面から離して、デッサンの形や、トーンの調子を、何度もチェックする習慣をつけて下さい。

絵画を描く「姿勢」は、絵画と画家の関係から絞り出される

さて最後に、絵画と画家を結びつけている「姿勢」が、受験のみならず、作品を制作する上でどのような意味を持つか、ぼくなりの考えを書いてみます。

今日解説した、デッサンを描く際の「姿勢」は、人工的な訓練で動作をひとつひとつ叩き込んで身についたものではありません。左側にモチーフがあり、右側に画用紙があり、その真ん中に自分自身の身体があり、モチーフから乱反射する光の粒を、白い紙に写し取らなくてはならない、というデッサン特有の「制約」が、画家の身体を長い年月のうちに縛り上げて、このような「姿勢」をかたちづくったのです。

絵画を制作するとき、画家はかならずしも、「自由」に自分の身体を動かすことができるわけではありません。画家の周囲をとりこかんでいる広大な光、樹や、海や、人、そしてなにより眼前の絵画が、画家の肉体を拘束しています。そして、これらの「制約」と折り合いをつけ、自らの絵画を成長させてゆくにしたがって、画家の身体は、新しい水脈を見つけるように、新たな動きの可能性を見つけ出してゆきます。「自由」とは、「制約」から発見されてゆくものなのかもしれません。それではまた!

●引用文献
野中哲士, 西崎実穂, 佐々木正人:デッサンのダイナミクス, 認知科学 17(4), 691-712, (Dec. 2010). ※Figure2. には高校生にわかり易く、改変を加えた上で掲載しました。

映像科・2014夏期講習、始まります。

こんにちは。映像科の森田です。
梅雨も明けてすっかり夏本番の日々ですね。映像科の夏期講習は来週の火曜日、29日にスタートします。中期と後期合わせて計24日間。朝から夕方までのカリキュラムは受験の一年の中でも一番ハードかもしれません。(過去ログを確認したところ去年もほぼ同じことを書いていましたが)しっかり体調管理をして乗り切りましょう!

■中期【EA】7/29~8/10 私立美大映像総合Ⅰ+推薦入試対策コース:
武蔵美映像学科や、東京造形大映画専攻・アニメーション専攻、日芸の映画学科などの一般入試対策と並行して、9月以降に各大学で行なわれるAO入試、自己推薦入試や公募制入試の対策をするコースです。前回の記事でも書きましたが、特に今年から始まる武蔵野美大の「クリエーション資質重視型」は、映像作品を提出するという新しい形式なので、受験を考えている人は早めに対策を始めましょう!中期では、映像実習や、プレゼンテーション課題、映像鑑賞課題などを行ないます。

■後期【EB】8/12~8/24 私立美大映像総合Ⅱ+一般入試特訓コース:
後期は特に一般入試の「実技」「小論文」の強化対策を行ないます。映像の試験問題は例えば同じ「小論文」でも、大学によってかなり傾向が異なるのが特徴です。武蔵美、東京造形大、日芸などの併願を考えている人は、実技だけでなく小論文の対策もしっかり考えておきましょう。また小論文の日には古今東西の映像作品を紹介するプログラムも予定しています。映像作品を鑑賞することで生まれる新しいアイディアもあるはず。お楽しみに。

*去年の夏期講習の記録

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