カテゴリー別アーカイブ: 映像科

映像科:冬期講習会

映像科の森田です。推薦入試も一段落していよいよ一般入試まで残り2ヶ月となりました。映像科の2学期の授業も今週末でラスト。今回は冬期講習の内容をお伝えしておきます!

■前期【EA】12/15~12/20|17:30~20:30 *時間に注意
前期は「志望校別対策コース」です。特に武蔵野美大映像学科の「感覚テスト」「小論文」「鉛筆デッサン」の今の時点での実力を確認する課題の制作を行います。また東京造形大映像系専攻、日芸映画・写真・放送学科などの実技・小論文の対策を行うことも可能です。前期は授業時間が17:30~20:30と、まだ高校の授業があるという人も受講しやすい時間帯になっています。また武蔵美の試験を直前に控えた留学生、帰国生も感覚テストと面接試験の対策を行うことができます。

■中期【EB】12/22~12/29|9:00~18:00
中期は「私立美大映像総合コース」です。武蔵野美大、東京造形大、日芸を中心に各学科・専攻の実技試験対策を前期よりも更にじっくり行うコースです。<制作~個別講評~リメイク~全体講評>の1日8時間授業はややハードですが、その分試験で活かせるアイディアをたくさん吸収することができるはず。

■後期【EC】1/3~1/6|9:00~18:00
後期は「武蔵野美大映像特訓コース」です。「感覚テスト」「小論文/鉛筆デッサン(どちらか選択)」に特化したコースです。感覚テスト対策では特に画面のレイアウトと文章の構成を中心に、小論文対策はモチーフの捉え方を、デッサン対策では今までの過去問の傾向を踏まえて、それぞれ指定の時間でどう仕上げるかについて、解説を加えつつ制作をします。また小論文とデッサンの日には、武蔵野美大【学科試験・過去問解説講座】も予定しています!

※毎年全く同じ内容をこのブログに書いていますが、映像系の入試、特に武蔵美映像学科や日芸は学科の点数が合否を決めます。センター試験が明けると約3週間で武蔵美の試験。学科についてもそろそろスパートの時期ですよ。目標は学科8割!

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(*写真は去年の冬期講習の感覚テスト対策の様子)

映像科:ナム・ジュン・パイク・アートセンター

こんにちは、映像科の百瀬です。しばらくぶりの更新でこのブログの更新の仕方も忘れていました。

わたしは先日、自分が参加している展覧会《Artist File 2015》が韓国国立現代美術館に巡回するということで10日間ほど韓国に行ってまいりました。この展覧会には先端科の小林先生も参加しています。ハングルの読めない新美講師ふたりが韓国の空港で右往左往している図はなんだか面白かったです…。

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ちなみに私たちが展示をしている韓国国立現代美術館にはソウル館とカチョン館のふたつがあり、私たちは今回やや郊外にあるカチョン館でした。少し中心部からのアクセスは大変ですが(山の上にあるので毎回シャトルバスで向かいます)、そのぶんロケーションが素晴らしく、この時期はとても紅葉が美しいです。小林先生の後ろ頭と一緒にお楽しみください。

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この美術館の顔ともなっているのがこのナム・ジュン・パイクの巨大なTVモニターのタワー。(電気代だけでいくらかかるのだろうと思ってしまいますが…)この美術館はグッゲンハイムのようにタワーを中央に据えながら回廊を登っていく建物で、モニタータワーは先端が3階まで伸びており、すべてのTV画面が煌々と点滅を続けています。ちょうどアーカイブチームとおぼしき人達がドローンを遠隔操作しながら展示風景の撮影をしていたのですが、人の目の届かない無数のモニターたちが遠隔操作モニターによって撮影され、新たな映像が生みだされているその状況は非常にナムジュンパイク的だなあ、なんてぼんやり思ったりしていました。

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この韓国滞在中は、当初想像していたよりも自分の展示の設置などで時間がなく、全然美術館なども満足に回れなかったのですが、唯一じっくり観れたのがナム・ジュン・パイク・アートセンターでした。その名の通りパイクの作品が常設でコレクションされているのですが、建物も綺麗ですし、エデュケーション・プログラムも豊富に用意されていて、国をあげて応援している感じですね。

こちらも韓国現美カチョン館と同じく郊外にあり、カンナム駅から高速バスで向かいます。停車場に着くといきなり恐ろしくさびれた場所に降ろされるので不安になります。高速道路の足部分だけが建っている川沿いの道がひどくシュールでした。

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そんな怪しい道をおそるおそる歩いていくと急に現代的な風景が!目の前にパイクセンターが現れます。

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パイクの常設は初期の映像作品から、彼が主催していたイベントのアーカイブなど多岐に渡って収められています。わたしの写真の腕が悪くうまく雰囲気を伝えられずすみません…

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《TV Fish》という作品。水槽の中に実際に魚が泳いでいて、水槽の後ろで映像(魚の映像もありました)が終始びかびかと発光しています。水槽の奥行きはこのブラウン管テレビの奥行きと呼応しているように見えます。だけど現在、自分がこのテレビの奥行きというものをどこまでリアリティを持って感じているんだろうかと自問すると怪しいなとも思います。

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これはインタラクティブな作品で、マイクの前で音を出すと映像内のリングがそのリズムに合わせて震えます。

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これは女性の胸にブラジャーに見立てた円形の物質をつけ、そこに映像を投影している映像です。(イベントの記録映像でした)まるで「見る欲望」を女性の胸に二重に投影させているように見えますね。

あと以前、高野文子特集でわたしが記事を書いた時に紹介したフルクサス・フィルムの作品もありました。(フィルムに付着した埃を写すというもの。この写真には全然写っていませんが。。)

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また、ナム・ジュン・パイク・アートセンターは館独自のプライズを毎年設けており、受賞した作家はそこで大規模な個展を開催することができます。わたしが行った時は、77年生まれのハルーン・ミルザの個展でした。パイクが切り開いたビデオアートの土壌が国境問わず現代においてどのように更新されているかリサーチし、新進気鋭の作家を支援していこうという館の姿勢が見えますね。

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ハルーン・ミルザの主な作品は、LEDライトや電子音的なサウンドが流れるスピーカーを使用し、ある一点で視覚と聴覚が混ざり合うような特殊な時間軸を作り出します。本来設営中にジャマなものとして隠してしまうはずのコード類などを、白い壁面に対する造形的な要素として使ってしまうところも面白いですね。

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また、写真ではわかりづらいですが、プロジェクターで投影された映像の画面の上にダイレクトにLEDライトを貼り付けてしまう作品もありました。(これまたこのライトが、映像内に要素として存在している線の上に重ねられているのです)ライトはリズミカルに点滅しつづけ、鑑賞者が映像内に没頭することを阻みます。「映像であること」と「物質であること」の行き来に対するパイクの問題意識を、彼もまた違う形で引き受けているのかもしれません。

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ナム・ジュン・パイク・アートセンターの近くには出店も多く、でっかい蒸し器で蒸される肉饅頭がすっごく美味しくておすすめです。帰りは開けた大通りから帰りましたが、どこかしら町田とか橋本などの多摩っぽさを想起させる、親しみやすい街でした。

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ナム・ジュン・パイク・アートセンター、韓国にお立ち寄りの際には是非行ってみてください。

http://njpac-en.ggcf.kr/

それでは?!

映像科:秋のオススメ展覧会&映画祭

こんにちは。映像科講師の森田です。
芸術祭も終わるといよいよ受験シーズンの足音が聞こえます。映像科では既に武蔵美の公募推薦の出願も終わり(該当する人、ひとまずお疲れさまでした!)、ここからポートフォリオ制作の追い込み、面接の練習といった怒濤の日々が始まります。また並行して留学生試験コースも11月後半?12月の各大学の入試に向けて対策が佳境となります。

そんな受験を直前に控えた人にとってはちょっとした息抜きとして、あるいは一般入試に向けてまだまだインプットを増やしたいという人へも向けて、秋のオススメ展覧会&映画祭を紹介しておきます。

①『Re:play 1972/2015ー「映像表現’72」展、再演』東京国立近代美術館
10月6日?12月3日
ぱっと見どこからどこまでが展覧会のタイトルなのかわかりづらいですが、この展覧会は1972年に京都で開催された「映像表現’72」という展覧会を、2015年の今「再演/再生(replay)」するということがテーマとして挙げられています。当時は当たり前の技術として使われていた8mmフィルムや、むしろまだ珍しかったビデオによる作品なども、当時と同じ環境で鑑賞できるようです。ちなみに2009年にこの近美で開催された『ヴィデオを待ちながら』もそうでしたが、映像の展示を観るのは(全部を観ようと思うと…)結構時間的な余裕が求められます。しっかり観たい人は一日かけてぜひ。

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②『Who Dance? 振付のアクチュアリティ』早稲田大学演劇博物館
10月1日?2016年1月31日
以前にもこの早稲田大学演劇博物館で開催されていた『幻燈展–プロジェクション・メディアの考古学』を紹介しましたが、今回の展示はコンテンポラリー・ダンスの、特に「振付」にテーマを絞った展示だそうです。こちらの展覧会は映像科のN先生のオススメということで自分はまだ行けてないのですが、「振付けとSNSの関係」などウェブサイトを読む限り、面白そうです。こちらも時間をかけてじっくりと観たい展示です。

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③『第16回東京フィムメックス』有楽町朝日ホール、TOHOシネマズ日劇、有楽町スバル座
11月21日?11月29日
たまには展覧会だけでなく映画祭の情報も。比較的大きな規模の『東京国際映画祭』は既に終わってしまいましたが、こちらの東京フィルメックスは11月の後半です。アジア各国の映画が中心ということで、なかなか普段観られない作品も多いので、ぜひ足を運んでみてください。映画祭の場合はもちろん「コレだ!」と狙って行くのも良いですが、予定が合った作品をふらっと観るという偶然の出会いも期待できる気がします。個人的には学生時代に偶然深夜にテレビで観た『風櫃の少年』という映画が上映されるのが楽しみです。

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急に寒くなりましたが、体調管理もしっかり。年末まで2ヶ月を駆け抜けましょう!

映像科:公開コンクールのレポート

こんにちは、映像科講師の森田です。すっかり秋も深まってきたこの頃ですが、いかがお過ごしでしょうか。武蔵美に通っていたことがある自分としては、このくらいの気温になると芸祭を思い出します。今週末は武蔵美、来週には多摩美の芸祭がありますね。入試対策もそろそろ力が入ってくる時期だと思いますが、たまには息抜きを兼ねて、大学に足を運んでみるのも良いかもしれません。

さて、先週の10/11、12は新美の公開実力模試、いわゆるコンクールが行われました。講習会生や外部から参加してくれた方なども多く、なかなか盛り上がった2日間となりました。残念ながらスケジュールの都合などで今回受講できなかったという人もいると思いますので、このブログの方にも課題と解説を載せておきます。武蔵野美大映像学科の一般入試の傾向と対策について、ここで一度確認しておきましょう。

■感覚テスト(必須科目)
下記の文から想起する状況のイメージ、あるいは出来事のイメージを解答欄に絵と文章で表現しなさい。
「境界に触れていた」(B3画用紙/3時間)

感覚テストは映像学科を受験する学生ほとんどの人が制作する(一般方式では必須の)実技です。例年短い文章やキーワードをきっかけにして絵と文章で「映像のワンシーン」を創作します。去年の入試の問題は「空白が生まれた」というものでした。「空白」を何として設定するのか?ということが大きな問題になりますが、空間的な空白だけでなく、時間的な空白、あるいは記憶の中の空白、など様々に考えられると思います。感覚テストを制作する場合、なるべく具体的な場面を想像してみることが重要です。特に文章では、絵だけでは伝えきれないその場のリアルな状況や出来事が読み手に伝わるかどうかがひとつの評価基準となってきます。また画材として指定されている色鉛筆やパステルで描くことに慣れておくことも大切だと思います。

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(*参考作品:公開コンクールと同じ出題)

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■小論文(選択科目)
配布された4種類の「木目柄折り紙」の観察と考察から、あなたなりの論点を発見して、「○○の捉え方」と題して論じなさい。(600字以内/2時間)

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映像学科の小論文は、毎回何かモチーフが手渡されて、そのモチーフを観察することから論文のテーマを見つけるという、ちょっと独自の出題になっています。ちなみに去年の問題では、紙風船と白いゴム風船がひとつずつ渡されて「○○の魅力」というテーマで論文を書くという内容でした(「○○の魅力」に言葉を当てはめて題名にします)。この小論文の問題文の「観察や考察」は目で見ることだけではありません。触ってみたり、匂いを嗅いでみたり、何か書き込んでみたり…など。実際に今回の「木目柄折り紙」の場合でも、試験時間の前半には「鶴を折ってみる」「くしゃくしゃにして紙としての質感を与えてみる」などの色々なことをしている人もいました。そういう「行為」から、自分が発見したことを論文にするということが求められています。もちろん文章としての一貫性は必要ですが、テーマについては自由な発想で望むことが大切になってきます。

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■鉛筆デッサン(選択科目)
配布されたモチーフ2点を構成して描きなさい。(B3画用紙/3時間)

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鉛筆デッサンは卓上で3時間。大学の説明によれば「オーソドックスな描写力を見るための試験」ということですが、映像学科らしく(?)毎年他の学科のデッサンではあまりお目にかからないモチーフが出されます。また例年の傾向として、小論文と鉛筆デッサンで同じモチーフ(あるいは一部同じモチーフ)が出題されています。今回のコンクールでは、小論文のモチーフと似た木目のカッティングシートを三面に貼った石膏の立方体と、正方形のフェルトの布を渡しています。なかなか手強いモチーフではあると思いますが、まずはしっかり形を取れるように、対策をしておきましょう。

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(*感覚テストの講評風景と最後の結果発表&授賞式)

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【追記】
武蔵美に関しては公募制推薦入試の方も出願直前となっていますが、先日映像学科の公式サイトの方で「Q&A」のページが更新されていました。特に去年から変更になった推薦入試(クリエーション資質重視型/ディレクション資質重視型/英語力重視型)については、かなり詳しく質問を想定してその解答が掲載されています。推薦を受験する人はもちろん、映像学科を受験する予定の人は、必ずチェックしておいてください!
http://eizou.musabi.ac.jp/qa/

映像科:おすすめの本/多木浩二『生きられた家』

こんにちは、映像科講師の森田です。
冒頭から非常に個人的な話で恐縮ですが、近々自宅の引っ越しを予定しています。数年とはいえ自分が住んだ場所を離れるのは、やはり感慨深いものがありますね。

日頃時間があるとふらっと本屋行くことが多いですが、そんな個人的な理由もあって、最近はついつい「家」や「住宅」についてのコーナーに吸い寄せられて、気になった本を手に取ってしまいます。その中で「おや」と発見したのは、平凡社の「くうねるところにすむところ」シリーズから出ていた奥山明日香さんという人の『「生きられた家」をつむぐ』という本でした。2013年に出版されていたこの本は、多木浩二さんという人の『生きられた家 経験と象徴』の文章が下敷きになっています。

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多木浩二さんは数年前に亡くなられましたが、美術、写真、建築…など非常に幅広い対象について評論をした人です。森山大道という人や、やはり最近亡くなられた中平卓馬という人たちと60年代後半に伝説的な写真雑誌『プロヴォーク』を出版した…と言えば、写真に興味を持っている人にはわかるかもしれません。そうした幅広い活動の中にあって、この『生きられた家』という本は、ベースには建築を対象とした批評がありますが、文章も比較的柔らかく、多木さん自身の幼い頃のエピソードなども書かれていて、評論文というよりはエッセイという感じです。
一方奥山さんの本の方は、多木さんのテキストを引用しながら、自宅の写真や文章が加えられていて、こちらもなかなか素敵な本でした。

ちなみに『生きられた家』という本は、1976年に出た本ですが、たびたび版を重ねています。岩波現代文庫版ならば手に入りやすいと思います、と書いた流れで調べてみたら(amazon)そうでもないみたいですね…。でも図書館などには置いてあると思うので、ぜひ手に取ってみてください。先ほど評論文というよりはエッセイ、と書きましたが、むしろこういう柔らかい文章、自由な書き方も評論にはあるんだなということを知ったという意味で、個人的にもとても好きな本です。
個人的にとても好きなので映像科の小論文の授業でも紹介したこともありますし、数年前には武蔵美の学科試験にも使われていて(確認したら2014年度入試のB日程でした)、ちょっと嬉しく思ったりもしました。まぁ、受験生にとってはなかなか手強い文章なので嬉しくはないと思いますが…。

いずれにしても、エッセイでも、評論でも、ぐっとくる文章を読むと思わずヴィジュアルつまり映像、そして物語が頭に浮かぶことがありますね。そういう感覚って映像科の実技課題ではもちろん必要ですが、何かを作る人にとってとても大切なことだと思います。
最後に『生きられた家』の一節を引用してみます。あなたならばこのテキストからどんな映像が浮かびますか?

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「人が立ち去ったばかりの部屋に入ると、この活動の残したエネルギーが頬をうつ。空洞化した部屋の壁や床や天井には無数の痕跡が見出される。壁や柱の上の落書き、原因がそれとわかるようなしみ、わからぬ汚れ、残していったカレンダー、はがされたピンナップのそこだけが妙に白い痕などが、謎めいたことばを語りはじめる。空虚なはずの家がことばで充満し、叫び声を押し殺しているように見える。(略)痕跡を眼にしたとき、われわれはすばやくこれを読みはじめているのである。」