カテゴリー別アーカイブ: 新美

馬肥ゆる秋ですね?。

こんにちは油絵科昼間部の箱岩です。
季節の進行がはやくなって、めっきり秋の気配ですが、体調を崩しやすい時期です。受験生の皆さん、体調管理に気をつけていきましょう。

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今日は、東京芸術大学が初開催した、美術学部入試説明会に行ってきましたので、そのご報告をします。
説明会は約1時間スライドによるカリキュラムの説明や、芸大出身の作家や先輩たちからの受験生へのメッセージなどが紹介され、続いて試験の主な流れや評価のポイントなどが説明されました。これらは、既に芸大のHP等に紹介されたものと同一の情報なので、詳しくは芸大のHPを御覧ください。
今回の特典は、実はこの後で紹介された過去4年分の合格者の作品画像で、よく予備校のパンフレット等で見かける再現制作の作品ではなく、当然、実際の試験の絵をスライドで見せていただきました。
残念ながら、会場は撮影も録音も禁止ということでしたので、文章のみでお伝えしたいと思います。
私も芸大の受験に長く携わっていますが前代未聞の画期的な出来事でした。説明会開催に踏み切った芸大に拍手を送りたいと思います。
内容は各年、各課題ごとに4~5名分を見せた程度ですが、受験生の絵が見れたので、いろいろと思うところはありました。
個人の感想としては、「試験本番のライブ感の中で、個々の思いや考えは、どんなレベルであろうと絵に表れるもの。そして、その子の持つ魅力は、どんな形であれ、必ず理解されるのだなぁ」ということ。絵は巧さじゃない。好きであること、のめり込める存在であるかのほうが大切。
この考えが確信的になったことは、自分の中で大きかったと思います。

2学期に入り、各自の考えや感情の動きに作品が不安定に変化をすることと思いますが皆さんの制作の傍らで、皆さんの放つ魅力や想いや感性を、しっかり晴れた眼差しで見つけていけるようにと意気込む帰り道でした。

さて、今週からセンター試験の出願が始まります。出し忘れなど無いよう十分気をつけてご準備下さい。

国立はお祭りでした。

国立校 基礎科です。

ずいぶんと秋らしく涼しくなりました。
学業も制作も、はかどる季節です。

この週末、国立市では谷保天満宮の例大祭がありました。
普段は静かな住宅街なのですが、この日ばかりは屋台にお神輿と、
なかなかのにぎわいです。
谷保天満宮は学業の神様です。
いつかきちんとお参りに行ってみたいと思います。

お祭り

お神輿

授業中もお祭りの賑やかな音が聞こえてきましたが、みんな集中です。

デッサン

国立校では、10/24(土)・10/26(土)・11/23(土・祝) 13:00~14:00 の3日間、
美大を目指すお子様をお持ちの保護者の方にむけての
進学説明会を行います。
授業の見学のみでも結構です。
美大を受験したいけれど、どんな学校や科があるのか、
どのように勉強したらよいのか、
簡単な疑問から、専門的なご質問まで、お答えいたします。
お気軽にお立ち寄りください。
お問い合わせはこちらまで。
http://www.art-shinbi.com/02kunitachi/access/index.html

映像科・作品研究(秋の遠足)のレポート

こんにちは。映像科講師の森田です。朝晩はすっかり涼しくなり季節の変化を感じる日々ですが、一年間のカリキュラムもちょうど折り返し地点。これまでは基礎的な描写力や文章力を身につけることが目標でしたが、この先は試験の点数を意識しながらの制作になります。映像科の試験では絵だけでなく、文章表現やテーマの設定によって総合的に評価されるので、ひとりひとりが自分の表現を様々な角度から鍛え上げていく必要があります。

そんな中、先週の金土日コースの授業はちょっと趣向を変えて、新美から徒歩3分、走れば1分のオペラシティ・アートギャラリーへ。『アートがあればⅡ 9人のコレクターによる個人コレクションの場合』という展覧会をみんなで観に行きました(金曜日)。とはいえただの遠足ではありません。200作品以上の展示の中から自分が興味を持った作品をピックアップし、教室でその作品についてのレポート記入と研究発表を行なってもらいます(土曜日)。そして最終的にはその研究発表を参考にしながら、自分が制作することを想定した映像メディア作品の展示プランをプレゼンテーションする(日曜日)という、推薦入試対策も兼ねた特別授業でした。

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『アートがあればⅡ』という展覧会自体は個人のコレクションによる展示なこともあり、比較的絵画や写真の作品が多かったのですが、日曜日のプレゼンテーションはあまりそれに捕われず、みんな自由で壮大な、ある意味突き抜けた発想で取り組んでくれました。その一例、ということで授業内でプレゼンテーションしてくれたプランから紹介しようと思います。

□タイトル:『壁をなくすノート』
□素材、メディア:ビデオ映像(15分・ループ再生)、本
□内容:映像と一冊の本によるインスタレーション作品。映像と本はそれぞれ二つのパートに分かれている。日本の小説家と海外(英語圏)の小説家に協力してもらう。日本のことを少し知っている海外の小説家に、知っている日本語を挙げてもらう。日本の小説家はその単語だけを使って小説を作る。同様に日本の小説家は知っている英単語を挙げ、海外の小説家はその単語を使って小説を書く。映像ではその小説家たちが単語を思い出しながら口にする場面を映し、鑑賞者はその映像とともに、実際に書かれた小説を読むことができる。
□テーマ:「言葉の壁をなくす」私たちが別の言語を持った人と通じ合うことができないのは「言葉の壁」のためである。だが、私たちが言葉とは別のかたちで自分の考えを表現しようとすることで、その壁を越えて通じ合うことができるのではないか?

映像を「空間を構成する要素」や「物語を伝えるメディア」と捉えることもできれば、もっと広く「何かの行為を記録する方法」と考えることもできる。プレゼンテーションとその後のディスカッションではその発想の違いや、想定したアウトプットの面白さについて意見を交換しました。どの人のアイディアも「それ、大学に入ったら実現した方がいいよ」という感じで、全体的になかなかハイレベルなプレゼン大会でした(時間はやや押し気味でしたが…)。ともあれこのように受験課題の制作でもなく、コンテンツのとしての映像を観るだけでもなく、映像の可能性についてかなり自由に考えてみたりすることもきっと大切なはず。という充実の3日間でした。

さて、そんなプログラムを経由しつつ映像科では当面の目標としての「武蔵野美大型コンクール(10月13日・14日)」に向けて、今週来週と感覚テストと小論文の特訓課題も行ないます!

芸術の秋ですね。

こんにちは!彫刻科の小川原です。暑い暑い夏も終わり、過ごしやすい日々にほっと一息ついていることと思います。でも受験生の皆さんは気を抜いてはいけませんね!1学期、夏期講習と貯めてきた経験値を今ここでしっかりと形にしていくことが受験を乗り越えていくために必要不可欠だと言えます。ただ闇雲に取り組むのではなく、これまでの制作を振り返って、自分ができること、できないことを整理してみましょう。その上できちんとした対策をとることが大切です。

さて、昼間部の自刻像のテラコッタ作品は僕のアトリエから新美への搬入が済んだので、早速仕上げに取りかかっています。素焼きの状態だと均質な質感と色味でスカスカした印象があり、非常に抵抗感が弱いので、薄く色をかけたり擦ったりしながら微妙な変化を与えていきます。やりすぎると戻せなくなるので、慎重に作業を進める必要があります。
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彫刻の基礎として石膏像にするのはポピュラーですが、石膏は他素材に置き換える過程での仮素材としての意味合いが強いですが、テラコッタはその先がない究極素材であるので、しっかり完成させるととても質の高い作品にすることができます。石膏取りの技法を勉強するのも為になりますが、今回はひとつの「作品」として追求してもらうためにテラコッタを素材として選びました。

授業作品です。まだ課題数も多くこなしていないですが、いくつか紹介していきます。
昼間部 M.Nさんの作品。肘の上まで入れることを条件とした片腕です。
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授業時間で仕上がらなかったので少し残って完成させました。Tシャツの袖を入れたのは面白いです。肘からつながる形に違和感を残しますが、非常に高い密度と説得力があり、魅力的な作品になりました。事前にしっかり完成のビジョンを持ち、スタートから一貫してそこに向かっていくイメージが持てれば制作時間が短くても同等の完成度まで行き着けると思います。しかし、時間をかけて丁寧に作ればできる。ということは大きく評価できるポイントです。

同じく昼間部、M.Nさんの作品。大顔面を含む静物。
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木炭紙サイズの画用紙で、コンテでの制作です。今回のモチーフを描いていく上でのテーマがパース、空間、固有色でした。この作品はそうしたポイントに敏感に反応し、自然で魅力的な(自然=魅力的)作品に仕上がっています。欲を言うと床面に面性や奥行き感がもっと出せると良いのですが、全体にはしっかりとした言い切りがなされていて、作者の実力を感じ取れる内容に仕上がっています。

続いて夜間部、K.Kさんの作品。首なしミロのヴィーナスです。
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形も正確で、質感、空間、密度ともに申し分ない非常に完成度の高い作品に仕上がっています。この課題は5日課題でしたが、本人は3日と勘違いしていて、3日の段階ですでにある程度仕上がっていました。そこであと2日あることを知り、今の状態をより良くするために何ができるかを考えて残りの時間取り組んだそうです。その成果があって、いままで行き着けなかった深みがあり、リアリティの感じられる作品に到達することができました。この前向きな取り組みがとても良いと思います。美術には当然ながら限界などありません。何となくこのくらいかなと終わりを決めてしまうのではなく、常に反省し、先を読み、チャレンジすること。そこに美術を志すものとして最も必要な本質があるのだと思います。

夜間部、T.U君の作品。ロープを持った手。
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高校のスケジュールが早く終わった日に昼から参加して自主的にトレーニングをしています。彼は表現がややカタくなるタイプで生もの(手や人物などの塑像)が苦手でしたが、この作品を見る限りそうした違和感は感じません。夏期講習を経てかなりの成長を見せてくれました。力強く握った手と、腕までの自然なつながりが魅力的な作品となっています。ロープも丁寧に作り込んで印象を引き出していることに好感が持てます。ぜひ、これからも目標を見据え、努力を怠らず、突き進んでいってほしいです。

2学期は始まったばかりですが、本当にあっという間に時間は過ぎていってしまいます。今やれることをやれるだけやっておきましょう!僕は2学期こそ勝負の時期と思っています。受験生の皆さんには、これまで培ってきた経験がいずれ必ず自分を助けてくれると信じて、自信を持って取り組んでほしいなと思っています!いつも応援しています!がんばりましょう!

油絵の筆について

?こんにちは。油絵科の関口です。

さて突然ですが、皆さんは油絵を描く時にどんな筆を使っていますか?
前から気になっていたのですが、アトリエを回っていると、柄の短い水彩用の筆やデザインや日本画の筆を使っている人をよく見かけるようになりました。水溶性の絵の具に使う筆は総じて毛が柔らかく、実は油絵具を扱うにはあまり適してません。

水彩用の筆や、柔らかい毛の筆を使っている人は、常にオイルを混ぜながら描くことになり、結果的にそれが単調な画面へと向かって行くことになります。

?油絵に使う筆の代表格は、何と言っても「豚毛の筆」です。硬くてゴワゴワしており、それだけで敬遠している人も多いと思いますが、粘度の高い油絵具をコントロールするには最も適した筆だと思っています。特に不透明に絵の具をしっかりと乗せたい時や、擦り付ける様に薄く絵の具を付ける時など、使用頻度が高いので、油絵を描く時に豚毛の筆は欠かせません。

?メーカーも色々ありますが、日本のメーカーならnamura(ナムラ)が断然お勧めです。特に柄が緑色で金具が銅製のHFというシリーズは、品質の良さから大ヒットし、発売以来多くの画家に愛用されてきました。ポピュラーな筆なので、使ったことが無い人でもこのデザインには見覚えがあると思います。ナムラHF
ナムラHFアップ

以前生徒を連れてナムラさんの工場見学に行った事があります。一本一本が手作りで、気が遠くなる程多くの工程と手間が掛かっています。素人目には分かりませんが、手作りなので一本ずつ微妙に違い、作る職人さんによっても若干の違いがあるのだそうです。筆の出来るまで

筆を作る道具

職人さんの作業

筆を作る職人2
豚毛の特徴として、全体が若干カールしており、その毛の曲がった方向を全て同じに合わせ、内側に向く様に作られています。毛先は枝毛になっていて、絵の具や油の含みが良くなっているのだそうです。なので毛先を切って使うと、筆の能力が発揮できません。

見学の時、実際に1?2工程だけやらせてもらったのですが、単純な作業なのに難しくて、苦戦した覚えがあります。自分でやってみて、指導をして下さったベテランの職人さんの高度な技術に感動しました。職人さんの間引き作業

ただ、最近では中国から輸入される原毛の品質が低下しており、昔と同じ筆の品質を保つのが難しいのだそうです。動物の毛なので、飼料や気候などにも影響されやすいのでしょうね。

?さて、ナムラのHFシリーズはある程度有名ですが、他にお勧めしたいのは、同じくナムラのOLというシリーズ。S、M、Lの三種類しかなく、比較的大きい筆です。豚毛ですが、毛の色もあまり白くありません。メーカーの方に伺ったところ、HF等のシリーズと比べると、それほど高品質ではないらしいのですが、毛の長さ、柔らかさ共に絶妙で、値段も手頃です。筆者は今迄にこの筆だけでも数十本を愛用してきました。使い方にもよりますが、調子の幅が出しやすい素晴らしい筆だと思っています。唯一欠点を挙げるとすれば、毛の量が多いので、筆を洗うのが大変というところでしょうか?ナムラOL

あと、海外のメーカーでは、フランスのラファエル社の筆がお勧めです。特に豚毛の3592シリーズは毛先の整い方、止め金具の厚さ、及び毛の量の関係が絶妙で、特に2?6号迄の筆は本当に使いやすいです。日本のメーカーと比べると、ちょっと割高ですが、キッチリとした仕上げにしたい時には手放せない逸品です。ラファエル3592 ラファエル3592アップ

因みにこれらの筆はトゥールズさんにも入れてもらいましたので、皆さんも是非一度買って使ってみて下さい。

・・・と、ここ迄書いて、新たな事実が判明しました。

ラファエルの3592シリーズですが、知らない間にデザインが一新されていました。写真を見比べてもらえると分かると思います。上が以前買った3595の6号。下が昨日買った3592の6号です。金具と文字の刻印がプラチナカラーに変わり、軸がかなり太くなっているのが分かります。金具や文字色に関してはあまり気になりませんが、筆の軸の太さの変更は重心や持つ位置が変ってしまいます。筆圧や使い方にも大きく影響するだけに、このデザイン変更は、正直かなりショックです。

新旧3592

まだ買ったばかりで使っていませんので、この筆を実際に使用してみて、後日リポートしたいと思います。

弘法筆を選ばず。という諺がありますが、実際にはそう訳にはいきません。筆には一本ずつ個性がありますので、お店でちゃんと選んで買いましょう。