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油絵の筆について・その2

 

こんにちは。油絵科の関口です。(今回は自分の番ではありませんが、ピンチヒッターです)

さて、早いもので10月になりセンター試験の出願が始まりましたね。芸大をはじめとする国公立、センター利用の私立美大を受験する皆さんはもう出しましたか? 毎日一所懸命に制作に取り組んでいる人や、休みがちの人は特に忘れがちです。まだ出していない人は期限内に忘れずに出しましょう。

 

ところで、前回のブログでラファエルの豚毛の筆3592について、デザインの変更があった事を書きました。今日はその使用感について少し触れたいと思います。

まず最初の印象ですが、柄が太くなったので、当然の事ながら全体に重くなった感じがします。下の写真でも分かる通り、ちょうど持つ部分が太くなっているのが分かると思います。太いので掴みにくいと言うか、何かシックリきません。重心も前の方が重くなったので、自分的にはかなり違和感があります。

持ち方1
旧タイプの3592              新しいタイプの3592

正直な話、キッチリと描く「仕上げの筆」としては使いにくくなってしまった。と言わざるを得ません。こういう筆は、どうしても描き出しや大きな筆の持ち方になってしまいます。(この持ち方は、基本的に筆の角度を寝かせて使います)

持ち方2

同じラファエルの筆でも3572というシリーズ(フィルバートロングと言われているシリーズで、柄が黒くて金具が銅色のもの)なら、この太さでも良かった気がしますが・・・まあ、慣れもあるのかもしれません。

トゥールズの店員さんのお話では、ラファエルの筆は予告無く変更される事がしばしばあるそうですので、今後のデザイン変更に期待したいと思います。尚、現時点では以前のタイプの筆(青い印字のもの)がまだ若干残っているそうです。キッチリ仕上げたい人は、青い刻印の筆を買ってみて下さい。反対に新しいものにチャレンジしたい人はプラチナカラーの刻印の筆を選んで下さい。なんだかんだ言っても、道具は自分の感覚にフィットするかどうか?ですからね。

 

 

ちなみに、油絵の筆は日本画の筆と違って、柄の太さが均一ではありませんよね?

日本画筆
↑日本画の筆

ラファエル3592
↑油絵の筆

これには諸説がありますが、複数の筆を持った時に絵の具が他の筆に付かない様になっているのだとか。確かに生徒が描いている姿を見ていると、片手が千手観音状態になっている事もしばしば。

ちょっとした事ではありますが、実は理に適っているのです。

 

 

あと個人的な話になりますが、来週の木曜日から横浜の石川町にあるギャラリーアークという画廊で個展があります。もし会期中に横浜方面へ行く事がありましたら、是非お立ち寄り下さい。

優雅な空に風はじゃれ合う
10月17日(木)?10月26日(土) 会期中無休
AM11:00?PM6:00(最終日はPM5:00終了)

〒231-0024
横浜市中区吉浜町2?4 AXIS元町1F  ? 045-681-6520

ギャラリーアークのホームページ ?http://ark.art-sq.com

基礎科専門クラス紹介 ・・・油絵・・・

基礎科講師の岡田です。

今回は基礎科の専門クラス、油絵クラスを紹介します。

基礎科の油絵コースの授業では、最初に道具の説明からはじまります。
基礎油00

↑ オイル、筆、油絵の具、パレット、etc… 色々な種類があります。
描きたい絵によって道具を使い分けねばなりません。まずは皆それぞれで描きたい絵を考えて、それに合わせて道具をセレクト、どんどん使って慣れてゆくのが大切なのです。

今回のモチーフは
基礎油01
↑ 馬頭の石膏、紺とクリーム色の布、フランスパン。
限られた色のモチーフも、描く人によって色々な色で表現されます。
画面のどこにモチーフを配置するのか? 絵の具の厚みは? 背景は? 色々な事を考えながら描き進めてゆきます。

例えばこんな表現の人。
基礎油02

パレットは ↓ こんな感じです。
基礎油02
鮮やかなブルーが印象的に描かれています。

例えばこんな表現の人。
基礎油03

パレットは ↓ こんな感じです。
基礎油03 
メインのモチーフをモノトーンで、色々な太さの筆を併用し筆あとをいかしながら描いています。

例えばこんな表現の人。
基礎油06

パレットは ↓ こんな感じです。
基礎油06 
画面で絵の具を混ぜ込んだり、パレットで混食して色を重ねたり、ペインティングナイフを上手に使い描いています。

自分が描きやすい構図、筆、絵の具、色、それぞれ皆の個性が光る作品達です。

基礎油04

基礎油05

基礎科の油絵では、できるだけ色々な道具に触れて、型にはまらず色々な表現の仕方にチャレンジしています。
画集、参考作品、一緒に描く人たちの表現に刺激されながら、一枚一枚「自分らしい」作品が身に付いてゆくのです。

興味はあるけれど、難しそうだと思われがちな油絵ですが、実は楽しく自由に表現できるジャンルなのです。
是非皆さんチャレンジしてみてください!

金木犀の香りがし始めました。

新宿美術学院 国立校 基礎科です。

すっかり秋の気配になりました。
四季のある日本の景色は、目まぐるしく変わっていきます。
そして、夏には夏の、秋には秋の匂いがあるのも、
素敵なことです。

今週は同じモチーフで、デッサンと油絵の授業です。
マルス

「ふて寝のマルス、パンに囲まれて。」というタイトルをつけられました。
高校生は、何でも楽しんでしまいます。

全体

デッサン

デッサン

デッサン

同じモチーフなのに、それぞれ見え方が違います。

油4

油絵

国立校では、10/5(土)・10/26(土)・11/23(土・祝) 13:00~14:00 の3日間、
美大を目指すお子様をお持ちの保護者の方にむけての
進学説明会を行います。
授業の見学のみでも結構です。
美大を受験したいけれど、どんな学校や科があるのか、
どのように勉強したらよいのか、
簡単な疑問から、専門的なご質問まで、お答えいたします。
お気軽にお立ち寄りください。
お問い合わせはこちらまで。
http://www.art-shinbi.com/02kunitachi/access/index.html

「小論文」の話し

 

こんにちは、先端科です。ここ最近は涼しさを通り越して朝晩は寒さを感じるようになってきました。体調には十分気をつけながら、引き続き頑張っていきましょう。

さて、今回は「小論文」についての話しを簡単にしたいと思います。以前もお話ししましたが、先端科の1次試験は「素描」と「小論文」とから選択することができます。

素描と小論文の共通点?

もしかすると、いわゆる「実技系」「制作系」を目指す人は素描を選択し、たとえばキュレーター(展覧会やイベントなどを企画したりするような仕事)や研究者のような「理論系」を目指す人が小論文を選択するのかと思っている人もいるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。そもそも、「実技系と理論系」といったような分け方自体便宜的なものにすぎませんし、むしろそこを分けて考えないことが先端科の特徴と言ってもいいかと思います。そう考えると、モチーフを描写したり、モチーフの新しい見方や側面を発見したり、モチーフに対して自分なりの疑問を見つけたりする力を問われると言う意味では、小論文の試験も素描の試験と共通している部分がたくさんあることが見えてきます。

 

「小論文は意見文ですか?」

新美の先端科では、基本的に過去の入試の出題形式に照らしながら、課題文(既存の評論文や批評文、小説等)に対してその人なりの考えを述べてもらうような問題に繰り返し取り組んでいきます。以前生徒に「小論文は意見文ですか?」というような質問をされて、「意見文とは違います」というようにこたえたことがありました。それは課題文を読んで自分なりの考えを述べるというのが、必ずしも課題文の中で言われていることに反対か賛成かを述べることではないということです。なぜなら課題文への応答の仕方は多様であるはずで、賛成と反対の2つだけではないからです。ここでは課題文を正確に読解する力はもちろん大切ですが、課題文の中のアイデアから自分なりに発想したり展開したり、あるいは大胆に読み替えたりする力も求められます。先端科の小論文が「自由」だと言われることがある理由のひとつはここにあるかもしれません。

自分が知っていることから出発する

さて、課題文が与えられるとしても、もちろん課題文はモチーフではありません。いざ実際に自分の考えを書こうとしたとき、まずは何か具体的な対象を見つけなければなりません。かといって目の前に何かあるわけではなく、与えられているのは自分の身体(と鉛筆と消しゴム)だけです。そうすると書くべきモチーフは、自分がこれまで見たり聞いたり体験したりした事柄、つまり広い意味で自分の「経験」の中から探し出さなければなりません。言い換えれば、まずはあなたが既に知っている事柄から出発しなければならないということです。しかしそれでは「自分の事」を書いているだけの「私的」で「主観的」な文章になってしまって、はたして小「論文」と言えるのか?などと心配になってしまうかもしれません。

 

文章を書くことで新しく発見する

確かに本人が既に知っていることだけしか書いていない文章は小論文としておもしろいとは言えそうにありません。なぜかと言うと、そういう文章はなによりもまず書いている本人にとって何か新しい発見がないからです。逆に、書き手が書きながら何か新しく発見した瞬間というのは、読み手にもかなり正確に伝わるものだし、おもしろい文章にはそのような書き手の発見の瞬間がいくつもあります。そしてそのような発見の積み重ねこそが文章を展開していく原動力になります。

 

知っていることから知らないことへ

「新しい発見」というと大げさに聞こえますが、粘り強く考えることを怠らなければ、それほど難しいことではありません。あたりまえのことですが、個人的な経験といっても、普通私たちはそれを文章や書き言葉のかたちで経験しているわけではありません。そういう意味では、まずは自分の経験を文章にするという事自体が、それまで自分が経験したことのないものと出会う経験になるわけです。絵では描きかたによってモチーフのかたちが変わるように、文章でも書き方によって物事のかたちがかわります。自分がよく知っていると思っていた経験も、文章にしてみると自分が知らないかたちをして現れるということがよくあります。このような初歩的な段階にも、新しい発見のきっかけはあります。また、これも考えてみればあたりまえのことですが、いくらそれが「個人的な」経験だと思っていても、そこには自分ではない様々な人やモノや出来事が介入しているはずです。文章を書くことは、この当たり前の事実に出会い直すことでもあります。

 

「自分の言葉で書く」?

加えて、「言葉」はどんなに頑張っても借り物です。学校の作文の授業などでよく「自分の言葉で書きなさい」と教えられますが、それは「言葉を新しくつくりなさい」という意味ではないわけです。言葉が借り物だという事が具体的にどういうことかというと、自分が書いた文章の中に、自分が言いたい事とは別の意味やイメージがいつでも流れ込んでくるという事です。言葉が常に誤解される可能性をともなっているのはそのためです。「誤解」と言ってしまうと否定的な感じがしてしまいますが、文章を書く事で物事を考える時に、言葉のこうした性質とむしろ積極的に取り組んでいくことも必要になります。なぜなら、実はそれは読み手のことを考えることだからです。自分が書いた文章を読み手の側にたって丁寧に読んでみる事で、書いているときには気づいていなかったモチーフやテーマが発見できることがあります。

 

?客観的であるとはどういうことか?

「客観的」な文章を書こうとかまえると、実はそこまで具体的に知らなかったり、興味がそれほどない物事を無理矢理書いてしまうことがよくあります。また、なんとなく社会的に共有されている考え方や論調に無意識に頼ってしまったりということもあります。そうするといわゆる「一般論」に近づいていってしまいます。そうならないためにも、自分が書いた事をよく読むことが重要です。「客観的」になるということは、まずは自分が自分の「読み手」になり、自分が知っていると思っている事のなかに、実は自分が知らなかったりそこまでつっこんで考えてこなかったことを発見していく作業を積み重ねることです。どんなにささやかな発見であっても、それを見逃したり簡単に捨ててしまわずに、小さな発見を積み重ねていく事が大切です。

 

さて、今回は「小論文」についてというよりは文章一般についての話しになってしまったかもしれません。ただ、ふだんの先端科でもまずは「小論文」という形式を無理に意識せずに、「自分の言葉で文章を書く」「文章を書く事で考える」ということがどういうことなのかということを、授業を通して考えています。もし先端科の「小論文」に対してかまえてしまっている人の印象を少しでもほぐす事ができればいいなと思ってここまで書いてきたつもりです。最後まで読んでいただいてありがとうございます。では、次回の更新をお楽しみに。

日本画科- 実りの秋&講師デモンストレーション?

日本画科講師の金子です。

木々も徐々に色づき始め、そろそろ紅葉が楽しめる季節となりました。

今日から10月。

10月といったら、私たちにとってはやはり「芸術の秋」でしょう。でも、この季節は五穀や果物が実ることから、「実りの秋」とも言いますね。

受験においては、この時期に育むことが出来るかどうか、そのためにしっかり頑張れるかどうかが今後の“分かれ目”なように思います。自然界の実り同様、この時期の実り具合が、年明け(入試直前)の立ち位置を決定付けるのではないのでしょうか。

ですから、とても大切な時期だと感じています。

一方では台風や前線の影響で雨が降りやすい時期でもありますね。

先週26日、日本画科では校外授業を行いました。台風20号が接近中であいにくの天候でしたが、午後にはなんとか晴れ間が広がりました。

校外授業で程良く息抜きが出来たところで、新たな気持ちで課題制作に向かいましょう。

日本画1

 

― 9月末は日本画科の行正衣里講師(ゆきまさえり・東京藝大在籍)がデモンストレーション〈着彩写生〉を行いました。

このデモンストレーションは、新宿美術学院のポスター化の予定で行われたものです。校長先生始め撮影に携わっていただいた各主任講師の皆様、モチーフ準備に携わっていただいた各関係者の皆様に心より感謝致します。

尚、このデモンストレーションはコマ取りのプロセスと共にポスター掲載されます。発行時期は来年春予定ですので、是非お手に取っていただければと思います。

ちなみに、動画の同時撮影も行われました。動画はYoutubeでアップされる予定ですので、こちらも視聴いただければと思います。

今回こちらのブログで、行正講師の描いたデモンストレーションの過程の一部を載せたいと思います。

日本画2←書き出し時。”アタリ”の段階です。空間、台、位置関係を把握していきます。

日本画3←デッサン終了時。ここから色を置き始めていく段階です。

日本画4←着彩開始。リズムを大切に、全体の印象を押さえていきます。

日本画5←最終段階。ここからディテール調整を行います。

画像はここまで。完成画像は大きく掲載されます!是非、ご高覧下さい。

行正先生、大変お疲れ様でした。

今後、デッサン課題、着彩課題の通常課題のほか、B全サイズの「大作着彩(昼間部のみ)」、「一人一卓課題(昼間部・夜間部)」、「私大対策(昼間部・夜間部)」、さらには「AO入試対策(昼間部・夜間部)」などの課題を準備しています。

尚、今週は二学期コンクールと先月の保護者会を踏まえた面談(個人指導)の傍ら、基礎科の講師を招いた実技指導の充実を図っています。

― 最後に。

10月13日と14日に「全国公開実力コンクール」を開催します!

課題は「着彩写生」です。受験生、現役高校生の皆さん、是非奮ってご参加下さい。