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体調管理の難しさ

ご無沙汰してしまいました。渋谷校、箱岩です。

夏期講習会もあとわずかですが、成果のほどはいかがでしょうか?

お盆も過ぎると一気に秋めいてくるはずです。

暑いの苦手なあなた、あと僅かの我慢です。

さて、タイトルの件ですが、お若い受験生の皆さんには馴染みないとは思いますが、7月末から、自分の体調の悪さが原因で、生徒の皆さんにも大変ご心配かけてしまい申し訳なくおもっています。

ご心配いただいた皆様にはこの場を借りまして御礼申し上げます。

おかげさまで、腎臓結石のほうは峠を越したようで、結石が排出されるのを待つばかりです。

最初の発作は、強烈過ぎで過呼吸で手足が麻痺し、何度も失神するほどでした。

苦しんでる最中、陣痛並みの痛みらしいと看護師さんから教えられました。

正直、子供を何人も生むお母さん達の感覚が信じられませんでした。あの痛みは無理です。

今は定期的な激痛も投薬で止まるので、何も無ければ通常通り、元気そのものです。

いい加減若くないのだし、気をつけなければいけませんね。

渋谷校の油絵科は、一学期にあまり枚数を書けなかった油絵を皆ひたすらに描いています。

一人一人、自分の求める方向性を探していますが、情報不足なのか、なかなか見えて来ないものです。

けれど、自分の着眼点や視点を持つことは、とても大切なことですので、焦らずにじっくり探していきたいところです。

さてこの夏は、忙しくてなかなか元生徒の展示に足を運べず、いい刺激を受けるチャンスが少なかったのですが、気がつけば美術館の展示についても見たいものをのがしてしまって、子供から美術の宿題のために美術館行きたいなんて言われても、どこ行ったらいいのやら・・・と迷いまして、無難に?定番の西洋美術館に行ってまいりました。

企画はあまりインパクトがなくて記憶喪失しましたが、久しぶりに見る常設展示はそれなりに思うところがありました。

今回自分の興味が一番強かったのは、シャイム・スーチン

(1894年-1943年)「心を病む女」

 

スーティン

大きくギョロギョロとした目、振り乱した髪、あからさまに異常なその出で立ちと緊迫感が画面を覆い尽くし、強烈な印象を与える赤い服と荒々しい筆致によって、非常に鮮烈な作品。

過去にも見たことはありましたが、今回は「恐ろしいほど潤いのある赤」という印象でした。

子供には怖いと不評でたが、私的にはこの絵の前では、ホームグランドに戻るような、少しまともな呼吸ができた気がしました。とても現代的な魅力を感じました。

 

2点目は、版画ですがオディロン・ルドン

『ゴヤ讃』:(5)奇妙な軽業師

ルドン版画

素晴らしい空間性と質感。版表現でこれほど空間が表せますかと驚きました。(この画像では不鮮明すぎますが。)

ルドンの版画は、学生時代から好きでしたが、実物に刻まれた版の生々しい痕は物質的な迫力が違いますね。プリントだとなめていると痛い目にあいますよ。

 

3点目は、ヨハネス・フェルメールに帰属「聖プラクセディス」個人蔵、国立西洋美術館に寄託とキャプションのついた作品です。

フェルメール

帰属?面白い表記だと思いました。「真珠の耳飾りの少女」などで知られる17世紀オランダの画家、ヨハネス・フェルメール(1632~75年)の作品との説がある「聖プラクセディス」(1655年)。世界に三十数点しか作品がないとされるフェルメール。本物、真筆となれば、とっても貴重な作品となります。本物か否かの議論にも注目が集まる作品のようです。

産経ニュースによると、昨年7月にロンドンでフェルメール作として競売にかけられ、手数料込みで約624万ポンド(当時のレートで約10億8600万円)で落札された。同美術館によると落札したのは日本人で、同年秋に寄託の申し出があったという。

競売に際し行われた科学調査では、鉛白(白色の顔料)の成分が、フェルメールの別の初期作品で用いられた鉛白の成分と極めて類似していると結論づけられたという。しかし、フェルメールの真筆と立証するには不十分とされる。

同美術館は「作者がフェルメールであるかどうかについては研究者の意見の一致をみていない」ことから、展示にあたっては「フェルメール作」ではなく「フェルメールに帰属」と表記。「美術ファンや専門家に実見・検証の機会を提供することで、今後議論が深まれば」としている。

 

さて、私のこれまでに見聞きした知識をフル動員で、子供に解説しながら見て回っていたのですが、ほとんどの作品で何かしらの話ができることを、子供には「ものしりすぎて気持ち悪いし,話が長ぇ~笑」と茶化されていました。

「俺は好きなものしか興味ない」なんて言っていた受験時代がなつかしいほど、気がついたら好きな作品も、あまり得意でない作品も、それなりに見てきたのだなと思いました。

新美で講師をしていなければ到底見ることも興味を示すことも無かった作家・作品も大量に見てきました。

影響されるのが嫌だという人がいますが、それは見ている量が少な過ぎると起こる感覚です。わたしは、たくさん見ることで絵画読解の眼が養われると思います。

皆さんも、好きな作品ばかりではなく、なるべく多くの作品を見るようにしてみてください。

一点一点の善し悪し、作品に作者が込めたメッセージを読み取る努力をすることが、とっても大事。そして、それは講評で他の受験生の絵を見ることも同じ。

また、本物を見てみないと気がつけない絵画空間という問題があります。

絵画空間は、絵画独自の空間性です。

これが、解らなければ作家にも美術愛好家にもなれない致命傷になりかねませんので、是非フットワーク良く本物を見て、体感的な理解をしてみましょう!

では、残りの講習も体調に気をつけ、精一杯愉しみましょう!

最後に、渋谷校の2学期入学生を募集しています。しかし、冬期講習や、直前講習で在籍学生が全員参加するようになることを考えると人数の限界が出てくる可能性が有ります。検討中のかたは、お早目のお問い合わせをお願いいたします。

 

油絵科・夏のSPイベント

こんにちは。油絵科の関口です。
暑い日が続いていますが、夜に耳を澄ませば、コオロギや秋の虫達の鳴き声が聴こえるようになりました。もう秋がすぐそこまで来ているんですね。

 

さて、新宿校の油絵科では、例年の夏期講習会と違う試みとして、各期の最終課題を全クラス合同で、作品に投票するというイベントを行いました。
クラスで課題内容が違うので、課題毎に一番良いと思うものに対してシールを貼っていく(自分の作品以外に投票)というルールで、講師も生徒も投票に参加。(講師と生徒は違う色のシールを貼りました)

投票数を数えて、得票数が多いのが上位・・・というものではなく、講師が選んだ作品について何を基準に選んだのかをコメントする。というスタイルで、まずは全体講評。その後、各クラスに別れて通常通りの講評を行いました。全体講評風景

投票では生徒に人気のあるものと、先生に人気のある作品がズレていたり、突拍子もない作品が選ばれたり(笑)して、非常に面白いイベントになったと思います。

仲間講評
そういえば僕が高校生の時、新美で先生の講評を聞いていると「何であんな下手な絵を褒めるんだろう?」とか「あの浪人生は凄く上手いのに、何であんなにボロクソに言われるんだろう?」と疑問に思った事が多々ありました。(当時はかなり癖の強い先生や、怖い先生もいたのです)
当時の自分を振り返ると、まだ絵に対する知識も経験も乏しく、素人同然の見方しか出来ていなかった…という事です。年輪を重ね、人生で色んな経験を積む事で、絵の見方も幅広くなっていくのだと思います。

今の生徒も、講師の選んだ作品に対して、何枚かは「え?? あの先生、それ選んじゃうの??マジか?」とか思ったのではないでしょうか(笑)。

宮本講評
でも、僕らは至って真剣に作品を選んでいるつもりです。全体講評で、その作品が選ばれた理由を聞いて、納得いったのではないかと思います。
・・・え?聞いても納得いってない? そういう人でも、歳を取れば分かるようになりますよ。・・・多分(笑)。
まぁそれは別として、自分の作品が他人から選ばれる(この中で一番好き!と思ってもらえる)というのは、皆にとっては制作の励みになったのではないでしょうか?

前期と中期に行ったこのイベント、後期も最終日に行いますので、乞うご期待下さい。

 

 

さて、もう一つ。最後は宣伝です。

8月26日(水)新美では二学期入学を考えている人(高卒生対象)に対して、二学期特待生試験があります。試験とは言っても、持参作品数点(油絵科は原則としてデッサン5点、油絵5点)と、面接によるもので、学科試験もありません。
経済的な面も考慮して審査しますので、実力や学科に自信が無い人でも、これから二学期入学を考えている人は受けてみては如何でしょうか?

http://www.art-shinbi.com/tokutai/images/tokutai2015-2.pdf?

 

まだまだ暑い日が続きそうですので、夏バテしない様に元気にこの夏を乗り切りましょう?

 

日本画科 夏、ラストスパートです!

こんにちは、日本画の佐々木です。

夏期講習後期は、なんとアトリエ満員御礼状態で、たくさんの生徒が切磋琢磨しています。
徐々に疲れも見え始めていますが、絵の内容も、夏を迎える前とは変わってきているのではないでしょうか??

ブログ1

生きたカブトムシや金魚を描いたり、芸大生デモンストレーターと一緒に制作したり・・・
カリキュラムの内容も、夏らしく、楽しくなるように、講師みんなで考えました!
楽しいどころか、辛かったわ!という人も、いるかもですが・・・。

ブログ2

夏期講習も残すところあと少し。
最後まで描ききりましょう!

映像科:写真展のお知らせ

こんにちは、映像科講師の森田です。
世間がお盆休みになると朝の電車がちょっとだけ空くのが有り難い今日この頃ですが、いよいよ夏期講習も後半戦。このまま最後まで駆け抜けたいものです。

今回は現在開催中の写真展のお知らせです。去年新美映像科で一緒だった3人が下北沢のギャラリーで展示をしています。僕も今日行ってきたのですが、3人3様でなかなか見応えのある展示でした。週明けの17日までですがぜひ足を運んでみてください!

「写真ワークス」ギャラリーHANA
2015年8月12日(水)~17日(月) OPEN 11:00-19:00

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油絵具の色ついて(青色編)

こんにちは。油絵科の関口です。
前回はルネサンスの頃に油絵に使われていた「赤」について書きましたが、今日は「青」について書こうと思います。

現在使われている、コバルトブルー、セルリアンブルーなどのコバルトを原料としている青色顔料は19世紀の中頃から使われる様になりました。プルシャンブルーは18世紀から使われています。
名前は色んなものが付いていますが、サファイアブルーやコンポーズブルーなどのフタロシアニン系の混色でできる青も20世紀に入ってからの絵の具です。

 

ウルトラマリンブルー
この色は、昔はラピスラズリから採取されていました。ヨーロッパでは殆ど取れない鉱石でしたので、アフガニスタンや西アジアから「海(地中海)を越えて来た色」として伝えられ、それで「ウルトラマリン」という名前が付いたそうです。原石は綺麗な青い色をしていますが、実はかなり不純物が多く、石を砕いただけでは綺麗な青い顔料になりません。cristaux de lazurite sur calcite (Afghanistan)
ラピスラズリの鉱石

チェンニーニの「絵画論」の中で紹介されている精製法を簡単に説明すると、粉砕したラピスラズリを油や樹脂で練ってパテを作り、薄めた灰汁の中で揉むと青い顔料だけ抽出されるそうです。ヨーロッパでは輸入に頼るしかなく、精製法が複雑な為、高価な色として知られ、17世紀では何と金よりも高価だったそうです。
先日の芸大説明会で技法材料研究室を訪れた時、奥の方にラピスラズリの鉱石と青い色の塗布サンプルが置かれていたので、気になって助手の人に尋ねると、やはりチェンニーニの技法で天然のウルトラマリンを作ったそうです。

その昔、この青をふんだんに使えたのは、人気と実力のある画家だけでした。初期ルネサンスを代表する巨匠、ジオットは壁画に惜しみなくラピスラズリを使いました。
PadovaScrovegni1305
パドヴァにあるスクロヴェーニ礼拝堂、ジオットによるフレスコ画 (1305年頃)

真珠の首飾りの少女1655
17世紀の画家、フェルメールの「真珠の首飾りの少女」(1655年頃) のターバンのところに使われている青もラピスラズリです。

ちなみに現在使われているウルトラマリンは人工のもので、化学組成は殆ど天然のものと同じです。人工のウルトラマリンの方が不純物がない分、色が鮮やか。粒子が細かく、均一で絵の具にしやすい。化学反応で作れるので安価です。僕のオススメはマツダスーパーのフレンチウルトラマリン。通常のウルトラマリンよりもちょっと高いですが、発色の良さは国内外にある他のどのメーカーと比較しても群を抜いており、本当に絶品です。

 

よくウルトラマリンブルーを和名で「群青」と表現する事がありますが、ラピスラズリの和名は「青金石」とか「瑠璃」と表現します。
日本画で使われている「岩群青」という色はアズライト(藍銅鉱:らんどうこう)と言われる鉱石を砕いたもので別の色です。昔は日本にも豊富なアズライトの鉱床がありましたが、今では取り尽くしてしまったため、現在では輸入に頼るしかなく、かなり高価という事です。
6azurite2-hewlin
海外で採取されたアズライトの鉱石

 

ここのところず?っと暑い日が続いていましたので、青い色で少しでも爽やかな気分を味わってもらえたなら幸いです。夏バテしないように、しっかりご飯を食べて、元気に暑い夏を乗り切りましょう!