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天才たちのノート

こんにちは。油絵科の関口です。早いもので私立美大の入試がもう少しで終わりますね。僕は不覚にも風邪をひいてしまいましたが、皆さんもあともう一踏ん張りして、芸大入試まで頑張りましょうね。

さて、先日油絵科の夜間部では取材課題を行い、上野にある国立科学博物館に行ってきました。訪れた時に「南方熊楠ー100年早かった智の人ー」という企画をやっていましたので、今日はその紹介をしたいと思います。

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皆さんはこの南方熊楠(みなかた くまぐす)という方をご存知でしょうか?博物学、生物学、民俗学など、幅広いジャンルで活躍した、日本の生んだ天才の一人です。今年は生誕150周年ということで、この企画展示を行った様です。僕は生物学にも興味があったので、密かに今回の展示を楽しみにしていました。
この冊子には熊楠が採集した標本がビッチリと貼り付けられている様で、上から見ると紙がボコボコになっているのが分かります。う?…。ページをめくってジックリ見てみたい。


生物学者という事もあり、かなりの数のスケッチを残しています。結構上手ですね。

今の菊皿とは違いますね。梅皿と言ったほうが良さそうです。こういうのを見ていると、美術と科学というのは、かなり近いところにあるのが分かります。

そこで思い出されるのはレオナルド・ダ・ヴィンチです。
レオナルドも美術と科学の領域を行ったり来たりしていた天才です。


これはニュートンのノート。


こちらはコペルニクスのノート。

天才と言われる人たちのノートには、イメージ(図像)と文字がごちゃ混ぜに描(書)かれているのが特徴なんだとか。右脳と左脳を同時に使うことによって、脳の領域を広く活用させていることが、彼らを天才たらしめている…という説もあるそうです。好奇心のあるジャンルなら、誰でも天才になる可能性を秘めているはずです。
落書きやイタズラ書きだらけの皆さんのノートやクロッキー帳も、もしかしたら天才になるためのトレーニングなのかもしれませんね(笑)。

国立校近況&体験受付中!

こんにちは国立校です。

生徒の入試直前の作品と、講評の様子を少しご紹介します。
ついに私立の試験が始まりました。 みんなリラックスして、いつも通りの力を出せますように…!


こちらは基礎科の生徒の作品です、いい感じ!
これから実技を始める高1、2年生は、2月17日と24日に「土曜チャレンジ」という体験イベントをやっているので、ぜひ気軽に参加してみてください!
お申し込みはこちら→ http://www.art-shinbi.com/event/oneday/

入試直前コンクール1回目。

こんにちは!彫刻科の小川原です。先週芸大入試に向けたコンクールを行いました!これまで積み重ねて来たものがしっかり出せた人、出せなかった人、そしてこれからの課題など、入試まであと1ヵ月というところで見えてきたものが多いのではないでしょうか。
本当に揺るぎない実力があって合格を確信できている人なんていません。本番はギリギリの戦いです。紙一重の勝負に勝つために、今やるべきことをしかり見据えて全力で取り組んでいきましょう!

コンクールデッサン1位。

手前の抵抗感を上げていきたいところですが、無理なく自然に印象が捕まえられています。

デッサン2位。

アゴ下がやや長いことで印象を崩してしまっているところがありますが、力強い炭使いが魅力的です。

デッサン3位。

頭部の構造に歪みがありますが、高い実力を感じさせる炭使いです。素直で丁寧な観察に好感が持てます。

塑造1位。

360°どこから見ても不十分な点がなく、それでいて正確なことが素晴らしいです。普通にやって毎回このレベルに到達できる安定感が素晴らしいです。

塑造2位。

アゴ周りに少し量が足りず、印象的には惜しい所ですが、ブルータスの方向性がしっかり捉えられているので全体によく見えてきます。この調子!

塑造3位。

全体に印象が良いです。何も外していないので、もう少し密に緊張感を出していっても良いと思います。

皆実力を出してきています!例年より入試に向けてのペースが早いのではないかなと思っています。この調子であと1ヶ月、さらに安定して高いレベルの作品が出せるようになってくれれば、かなりいい勝負ができそうです!頑張りましょう!

番外編。
基礎科彫刻コース(高校2年生)の生徒もグイグイ伸びてきました!
デッサン。奴隷。

粘り強い探りが素晴らしいです!顔も似ていますね!今年受験しても合格できる実力です!

塑造。アバタ。

印象いいですね!単純に上手いです。アバタは小さい像ですが動きにねじれがあって難しいです。でもそれもよく捉えられています。

高校2年生の時点でこんなに上手いのだから、来年は恐ろしいくらい上達することでしょう!楽しみです。今はどんどん上手くなっていくことを楽しんで下さい!

新しく始める僕の制作です。1メートルくらいの大きさで作ります。ブロンズにします。
この間まで作っていた翼のある作品は今型になって窯で数日かけて焼成中です。700°ほどに温度を上げて、型の中の方まで水分を抜きます。分子レベルまで飛ばさないと1200度の溶けたブロンズを流した時に沸騰してしまい、ボロボロの作品になってしまいます。

いよいよ明日からムサビ入試!

国立校です。
女子美大、東京造形大と入試が始まりだしました。
そして明日から武蔵野美大の入試が始まります!

国立校は地域的にムサビを第一志望にする生徒も多く、いよいよ本命入試を前に生徒も講師も気力十分です!
入試前に、最後の確認をして送り出しています。
受験生の皆さん、全力で実力を出し切ろう!!

筆職人のこだわり②

こんにちは。油絵科の関口です。ここのところ本当に寒い日が続いてますね。寒さもある一線を越えると、痛みに感じてしまうんですよね…。

さて前回に引き続き、ナムラの筆工場見学のレポートを書きたいと思います。前回は豚毛の筆作りの前半をザックリと見てもらいました。
そして豚毛のフィルバート「HF」シリーズの品質が、他社の筆と比べると別次元という話まではしましたが、何故そこまで品質に違いがあるのか?までは説明できませんでした。今回はその辺にメスを入れていきましょう。


ちなみに筆の形で「フィルバート」と言われているものは、中央部分が端よりも長くなっているのですが、実は毛先をハサミなどで切っているのではありません。

一般的に使われている筆というものは、毛の先端の方が細くなっています。動物の毛は美容院や床屋で切ることが無いので、毛先は全て尖っています。しかも豚毛は毛先が程良く枝毛になっていて、そこに絵具やオイルを含ませる事でタップリと絵の具が乗せられるのです。

逆光で少し見辛いですが、この右側にある木の棒で後ろから押す事で、フィルバートの筆は真ん中が盛り上がる様に調整しているのだそうです。

 

あと、実は筆というものは消耗品で、キャンバスに絵を描いていくことで、少しずつ擦り減ってしまうのです。「フィルバート」の形は平筆が擦り減って来た時にできる自然な形で、絵を描いている人が手に馴染んで「描きやすい」と感じる事が出来るのです。ただ、毛が擦り減るという事は、毛先が磨耗しているので、散髪した髪の毛の様な断面になってしまう…という事でもあります。


そこでナムラさんが独自に開発し、HFシリーズに採用したアイデアが、毛の中に敢えて短いものを混ぜておくというもので、擦り減った毛の中から毛先が尖った新しいものが顔を出すのです。まるで折れても新しい尖った歯が出てくる、サメの様な感覚です。

敢えて短い毛を混ぜる、というプロセスが加わるので、他の筆よりも手間が掛かっています。それに使い込んだ感じを最初から味わってもらいたい為、毛量も他の筆と比べるとわずかに少なめにしているのだとか。筆先がビシッと尖って、キワをしっかりと極められるのは、こういう理由があったんですね。少し値段が高いのも納得です。
上の写真は違う長さの毛を手に取ったもの。下の写真は前回ナイフを使ってクルクルっと見事に丸めていくのを紹介しましたが、一度毛の根元を揃えてから、異なる長さの毛が満遍なく混ざる様にする作業でもあるのだそうです。

ただ残念なことに、近年は中国から入ってくる原毛の質が著しく低下してきているのだとか…。もともと食用に豚を育てていて、筆はその毛を利用しているわけですが、昔の数倍も無理矢理早く成長させる様に品種改良をし、飼料を調整しているのが、筆に使う毛の品質を落としている理由だそうです。その辺に関しては、職人さん達の腕ではもうカバーしきれないのだとか…。原毛のお話をする時の目は、どこか悲しそうな表情をしていました。

筆職人さん達のこだわりを色々と聞いていくと、奥が深いものです。我々描く方もちゃんと筆の手入れをして、良い仕事をしなくては失礼ですよね。今日も良い作品を作れる様に頑張りましょう!