カテゴリー別アーカイブ: 新宿校

誰が自然を殺したのか?②「スペイン編」

こんにちは。油絵科の関口です。
芸大の合格発表も終わりましたね。皆さん本当に一年間お疲れさまでした。

さて、前回に引き続き、静物画=natura?morta(死んだ自然)という解釈を巡り、誰が自然を殺したのか?推理を働かせ、容疑者を洗ってみようと思います。

 

bodegón(ボデゴン)について
ところで、静物画というジャンルはいつから単独で描かれるようになったのでしょうか…?
17世紀のスペインでは、bodegón(ボデゴン)と呼ばれる静物画が流行します。
ボデゴンとして有名なのはファン・サンチェス・コターンですが、一般の人には馴染みのない作家名だと思います。しかし名前は知らなくても「この絵なら見た事がある」という人はいるかもしれません。コターンの作品は構図が独特で、規則的で数学的な配置が特徴です。ある意味ボデゴンらしいスタイルを確立した一人だと思います。MBAGR-bodegoncardo
コターン作「食用アザミのある静物」

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コターン作「マルメロの実、キャベツ、メロン、胡瓜」

さて、本題に戻りましょう。ボデゴンを洗ってみると、一人の容疑者に辿り着きました。

 
容疑者②スルバラン
フランチェスコ・デ・スルバランはスペインのバロック時代に活躍した画家で、カラバッジォの影響を強く受けた一人です。カラバッジォについては前回触れましたが、人間性はともかく、スペインのバロック絵画に大きな影響を与えました。特に極端に強い明暗の使い方は、陽射しの強いスペインの風土に合っていたのでしょう。スルバラン静物
スルバラン作「レモン、籠のオレンジ、茶碗」

スルバランの静物画の特徴は、漆黒の中から浮かび上がる、キッチリ整然と並んだモチーフ。動きが極端に少なく、静寂を感じさせる構成と、感情の起伏が殆ど感じられない冷たい描写にあります。
そのスルバランの描いた一点が目に止まりました。
羊が描かれているこの作品。スルバラン/羊
スルバラン作「神の子羊」

無表情で顔色一つ変えず、手足を縛り、、、まさかあんな大人しそうな人が…この男が自然を殺した犯人なのか?

しかし前述した通り、スペインではbodegónという名称で静物画を表現しています。このbodegónという言葉はスペイン語で「酒蔵」を意味するbodega(ボデガ)の増大辞(ニュアンスとしては大きいという意味)だそうです。日本ではbodegónを「厨房画」と訳し、それ自体が独立したジャンルのように扱われています。言われてみれば確かに厨房にあるものばかりです。スルバランは羊も食べ物として描いた可能性がありますね。
ちなみにスペインにもnaturaleza?muerta?というイタリア語やフランス語と同じ「死んだ自然」という解釈の言葉が存在しますが、殆ど使われていないそうです。

うーん、どうやらスルバランもどうやら犯人ではない様ですね。
という事で次回に続きます。

 

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番外編 ベラスケス
卵を調理する老婆
ベラスケス作「卵を調理する老女」

スペインを代表するバロックの巨匠、ベラスケスの描いたこの作品。単独の静物ではありませんが、当時スペインで流行していたカラバッジォとボデゴンの影響が強く表れています。ちなみにベラスケスがこの作品を描いた年齢は、何と19歳!!
ちなみに僕は19歳の時、この作品を何枚も模写しましたが、少ない色数の中で幅を出したり、一つひとつの静物の質感を描き分けたり、当時の自分にはたいへんに勉強になりました。僕にとっては非常に思い出深い一枚です。

春のスタートイベント⑤ 春から受験対策!  各科イベント公開講座

こんにちは。
またまた春のイベント告知です。

今回は3/21(金・祝)、「各科イベント 受験対策公開講座」のご案内。
このイベントは、新美の受験指導をぜひ体験していただこうという企画です。

例えば油絵科では「芸大油画専攻一次試験にチャレンジ」と題しまして、芸大の一次試験と同じ課題に取り組んでもらいます。そしてただ授業を受けるだけでなく、実績豊富な新美の入試分析をもとに、芸大油画受験について詳しく説明していきます。
工芸科では立体指導に定評のある新美の指導で、この1年間に身につけるべきことをしっかりレクチャーします。
などなど、、、各科ごとに特徴のあるカリキュラムを設置していますので、いよいよ受験の新高3生や来年も再チャレンジという受験生はぜひご参加お待ちしています。

もちろん初心者だけど実践課題にチャレンジしたい!という方もどうぞ。
基礎デッサンからしっかり学びたい、という方は、「1日体験講習」がお勧めです。

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詳細・お申し込みはこちら→http://www.art-shinbi.com/open-s/20140321.html

 

誰が自然を殺したのか?①「イタリア編」

こんにちは。油絵科の関口です。
芸大の二次試験も終わり、残すは最終発表のみになりましたね。皆の一年間の努力と、試験でベストを尽くした結果が、良いものでありますよう、心からお祈り致します。

 

さて、今日のタイトルは随分と物騒なものになっていますが、ご安心下さい。ちゃんと絵のお話ですよ。ちなみに今回のテーマは「静物画」です。モランディ
20世紀イタリアの巨匠、モランディの静物画

静物画というジャンル
ところで、絵画には静物画というジャンルがありますよね?
英語ではstill?life(直訳すれば、留まる生命、止まった生命)になります。これに近いのはドイツ語のstill?leben?とオランダ語のstilleven?です。
ところがイタリア語ではnatura?morta(直訳すると死んだ自然)になります。これに近いのはフランス語?のnature?morte?とスペイン語のnaturaleza?muerta?です。最初に聞いた時「おいおい、死んでいるのかよ!」と思わず突っ込みたくなりました。

この「死んだ自然」という解釈は、どの様にして生まれたのでしょう?そして一体誰が自然を殺してしまったのか?に迫ってみたいと思います。

ヨーロッパのルネサンス期において、静物画というジャンルは単独で描かれる事は殆どなく、宗教画、歴史画、肖像画の脇役として描かれる程度でした。ちなみにレオナルドやミケランジェロ、ラファエロ等のルネサンスを代表とする三大巨匠達は、単独の静物画を一点も残していません。

容疑者①??カラバッジォCanestra di frutta
カラバッジォ作「果物籠」

古代の作品を除き、僕が知っている一番古い単独の静物画は、1595?1596年頃にカラバッジォが描いた静物画「果物籠」になります。(僕が知らないだけで、他にも存在するかもしれませんが、その時はご容赦下さい)ちなみにこの絵は西ヨーロッパの通貨がユーロになる前、イタリアの100000リラ紙幣の裏面として使われていました。僕が友達と旅行した1993年頃のレートは10リラが1円程度だったと記憶していますので、この紙幣が10000円位の感覚でした。100000リラ紙幣裏

さてカラバッジォという画家は、バロックという時代の先駆けに位置する画家として今では有名ですが、当時としてはかなり変わった画家だったようです。
ルネサンスとその後に続くマニエリスムは、基本的な思想は違いますが、理想的な美を求めて作品が作られているという点では共通していました。いわゆるお手本の様なものが存在していたと思われます。しかし、カラバッジォは「俺の手本は街ゆく人々だ」と言い放ち、宗教的な題材の作品でもモデルを目の前にモデルを立たせて描いたと思われます。当時の絵画は、殆どモデルを立たせて描くという習慣が無かったので、実在感のある絵を見て、人々は驚きを隠せなかった事でしょう。今日で言うレアリスムを体現していました。ロレートの聖母
カラバッジォ作「ロレートの聖母」
しかし当時の人々の目には、リアルであると同時に下品なものに見えてしまう事が多く、このロレートの聖母という作品では「巡礼者足の裏がドロで汚れている」という理由で、飾られる筈だった協会から受け取りを拒否された、という逸話が残っています。

あと、色んな本を読んで調べてみると、カラバッジォという人は酒を飲んでは喧嘩ばかりしていて、かなりの問題児だったそうです。但し存命中から絵の評価や人気は高く、問題を起こしても権力のあるパトロンに匿ってもらい、中々捕まる事は無かった、或いは捕まってもすぐに釈放されていたようです。しかし、度重なるトラブルの果てに、賭事をキッカケとして友人のヌラッチオを殺害していまい、ローマを追われます。流石の権力者達も殺人者を匿う事は出来なかったという事でしょう。

そのカラバッジォが描いたからnatura?morta(死んだ自然)になったのでしょうか?

 

 
しかし、ヌラッチオを殺害してしまったのは1606年と言われていますので、1595?1596年に描いた「果物籠」との関係はなさそうです。
それに静物画というジャンルが存在しなかった当初、「果物籠」というタイトルがあれば、他の名称は必要無かった筈ですね。・・・という事でカラバッジォはシロ。

では自然を殺してしまったのは一体誰なのか?長いので次回に続きます。

3/9(日) 1日体験講習 保護者ガイダンス&合格者作品展示

こんにちは。
明日3/9(日)は1日体験講習です。いよいよ新年度に向けてスタートですね。
(とはいえ、まだまだ芸大はじめ、国公立大の入試真っ最中の学生もたくさんいます。頑張れ!)

さて、明日10:30からは保護者の方向けの入試ガイダンスを同時開催します。
なかなか情報が分かりにくい美大入試について、全体像や具体的な受験対策まで、丁寧にご説明いたします。こちらは申し込み不要ですので、ぜひご来校お待ちしております。(新宿校、国立校両校舎で実施します)
※1日体験講習の実技参加は締め切らせていただきました。次回3/16(日)以降のご参加お待ちしています。

また、合格者作品の展示も行っています!ぜひこちらもご覧になってください。
(保護者ガイダンス中の10:30~11:30は、一部入場を制限させていただきますので、ご注意ください)

春のスタートイベント③ 山口晃氏特別講演 春期生優先予約

こんにちは。
イベント告知第3弾です。

春期講習会期間中の3/29(土)に、人気作家の山口晃氏をお迎えして、特別講演会を実施します。
山口先生は受験生時代新美に通っていましたので、受験時代から大学時代、現在に至るまでのお話をしていただく予定です。
油絵科志望の学生も、そうでない方も、ぜひ貴重な機会ですので参加をお待ちしています。

そして!、春期講習を早めに申し込んだ方は、講演会の優先予約があります。
3/1~3/16までに春期講習会にお申込みいただいた方は、優先的にお申し込みができますので、
春期の受講をすでに決めている方、山口先生のお話をぜひ聞きたいという方、ぜひ早めに春期講習を申し込んで、講演会の予約をしてください!(新美enart国立校の春期講習生も同様に対象となります)

尚一般の方、保護者の方などは3/17~の受付になります。

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詳しくはこちらから→http://www.art-shinbi.com/muryo-event/20140329.html