カテゴリー別アーカイブ: 新宿校

日本画科便り10-日本画科レクチャー②?

日本画科です。

今夏、夏期講習会「後期芸大コース」において坪井講師が石膏像マルスのデッサンデモンストレーションを行いましたが、9月16日?17日には角田講師が今年度二度目のデッサンデモンストレーションを行いました。

(日本画科では周期的なイベント、レクチャー、デモンストレーションを行い、生徒のブラッシュアップを図っています。口頭指導、個人指導の他、”直に見て学ぶ”というそんな学びのあり方も大切にしています。)

 

「日本画科 角田講師(日本画科講師) デッサンレクチャー」

9月16日?17日 石膏デッサン(ヘルメス)

◆角田講師デモンストレーションによるデッサン指導。

1日目 (AMレクチャー)

2日目 (PM 講評?レクチャー)

9-3?←日本画科の受験では共通一次に石膏デッサンを課している大学も少なくなく、避けて通ることの出来ない課題と言えるでしょう。画像は描き出し。

9-4←5時間経過時点。ポイントを抑えながらの見え方を指導しました。

9-5←画質が悪いですが、11時間経過時点。位置関係や空間との関わりを確認しながら完成へと向かいます。

 

二学期ではデッサン課題、着彩課題の通常課題のほか、面談による個人指導、校外授業、私大対策、さらにはAO入試対策などの課題を準備しています。

さらに、日本画科レクチャーとして新美各科主任クラスの講師を招いて体系的な実技レクチャーのほか、講師デモンストレーション&指導などを組み入れていきます。

 

■お知らせ

10月12日?13日、「全国公開実力コンクール」を開催します。課題は「着彩写生」です。詳細はホームページよりご覧下さい。皆さんの参加を心よりお待ちしております。

 

秋になりました

はじめまして。工芸科学生講師の仲道です。

私は現在、東京藝術大学の工芸科に在学しているのですが、9月の第一週の金・土・日曜日には、藝大生にとって一大イベントの学祭 ”藝祭” があります。
今年は9/5~7日の開催でした。(websiteはコチラ)

作品展示やコンサートなども開催され、外部の方に活動を見て頂ける機会でもあるため、学生のモチベーションはとても高いイベントです。

また、毎年注目なのが、新一年生によるオリジナル神輿・法被の制作です! 美術学部と音楽学部がチームを組み、制作しています。
今年の工芸科は神輿・法被ともに百鬼夜行がモチーフでした。

写真 2014-09-05 14 22 22

写真 2014-09-05 14 22 27

細部までしっかり作り込んであります!一年生の皆さんお疲れさまでした!
気になる方はぜひ、来年足を運んでみてくださいね。

さてさて、そんな9月ですが、新美は2学期が始まりました。

工芸科昼間部では、ヌードクロッキー、コンクール、などの課題の後、現在は連日デッサン・平面をこなしているところです。

暑い夏が過ぎ、段々と秋の夜風を感じるこの頃ですが、受験生はここからが正念場ですね。
外は涼しくとも心は燃やして、駆け抜けましょう?!

ボッティチェルリの「ヴィーナスの誕生」と「春」について②

こんにちは。油絵科の関口です。

先週に引き続き、ボッティチェルリの代表作の二点を比較し、何故これだけ違う雰囲気の作品が生まれたのか?検証してみようと思います。先週の記事を読んでいない方はこちらからどうぞ。
http://www.art-shinbi.com/blog/20140908/

ヴィーナスの誕生と春0
大らかな「ヴィーナスの誕生」(左)と、繊細な「春」(右)この二つの違いは一体何に由来しているのでしょうか?

考えられるのは「ヴィーナスの誕生」はカンバスに描かれていて、「春」は板に描かれている。という事です。え?たったそれだけで、そんなに作風に影響が現れるものなの?と思われるかもしれませんが、大いに影響があるのです。

 

実はテンペラ画でカンバスに描かれている作品というものは非常に珍しく、殆んどありません。ボッティチェルリ以外には同時代の画家、マンテーニャの作品にカンバスにテンペラで描かれたものが数点だけ存在します。(マンテーニャの作品も殆どが板に描かれていますし、同時代の他の画家達は描画材をテンペラから油絵具に移行していきました)

死せるキリスト
マンテーニャ作「死せるキリスト」(制作年は1480年、1497年など諸説あり)

死せるキリスト部分
キリストに短縮法を利用した作品として有名?ですが、技法的にはカンバスの凹凸を利用しながら「かすれ」を使って描いています。
ところで、ボッティチェルリの「ヴィーナスの誕生」は生の麻布(カンバス)に少し厚め(若干布目が見える程度)に石膏で下地が施されています。その上に描かれた表現は、他の作品よりハッチング(線影、線の集積で調子を表す表現のこと)の跡もあまり見えません。ヴィー目アップ2
カンバスの目を利用しながら、少し大きめのタッチを使って、薄?く薄?く塗り重ねていったものと考えられます。制作時間は約2年となっていますが、構図にかなり時間を掛けて、実制作には1年に満たない期間だったと思われます。
ヴィー髪アップ
左手にいる西風の神ゼフュロスの息吹きで、ヴィーナスの髪の毛が靡く様子が大胆なタッチで描かれていますね。
ヴィーへそアップ
さて、これはどこの部分か分かりますか?・・・そう、まさかのヴィーナスのヘソです(笑)。ヴィー海とガマ
あと、海のところの表現を見ると、まるで魚の鱗の様な波模様が様式的に描かれているのが分かります。ガマの描写もかなりシンプルですね。このように「ヴィーナスの誕生」は全体的にザックリ、ゆったりと描かれているのです。

 

一方「春」は何枚も継ぎ足した板に石膏で下地を施して、平滑に磨かれた画面に描いています。板の継ぎ目や木目などは完全に分からないほど厚く石膏が塗られています。(ちなみにここで言う石膏とは、石膏像や彫刻などで型を取る時に使う石膏とは異なり、水を入れても固まらない「二水石膏」というものです)
「春」はおよそ2年の時間を費やして精魂込めて描き込まれ、かなり気合を入れて制作されています。登場人物も多く、複雑で美しい画面構成と、柔らかく緻密な描写が鑑賞者の心に降り注ぎます。春フローラアップ

自分も学生時代に何枚かテンペラ画にチャレンジした事がありますが、数週間掛けて3号程度の作品がやっと…でした。それを考えると300号を越えるサイズのこの作品、たったの2年でどうやって描いたんだろう?と思う程です。

 

春アフロディーテ
ボッティチェルリの殆どの作品は板絵で、ツルツルに磨かれた石膏地に、時間を掛けて丹念に絵の具を塗り重ねて描かれています。自虐的とも言える制作スタイルを生涯に渡って貫き通したボッティチェルリは、その優雅な作風とは裏腹に、かなりのパワーと忍耐力を持った作家だと断言できます。

ボッティチェルリの作品は日本には滅多に来る事はありませんが、将来フィレンツェにあるウフィッツィ美術館を訪れた時、今回のブログを思い出してもらえたら幸いです。

映像科:感覚テストにおける色彩表現

こんにちは。映像科講師の野澤です。武蔵美映像学科の感覚テストでは、鉛筆に加えて色鉛筆やパステルを使うことができます。そこで今回は、デザイン系の学科とも、ファインアートの学科とも微妙に異なる、映像科の試験対策における、色鉛筆の使い方のポイントについて解説していきたいと思います。

デザインと映像で、色彩に対する考え方はビミョーに違う

それでは、デザイン系の学科と映像科で、色彩の使い方はどのように異なっているのでしょうか。非常におおざっぱに言ってしまえば、「モチーフに対する色使いの恣意性(自由度と言い換えてもいいでしょう)が、デザイン系では高く、映像科では低い」ということです。

デザイン系の実技試験では、モチーフのシルエットをトリミングしたり、抽象的な幾何学図形を組み合わせるなど、高い画面構成能力が求められます。つまりデザイン系では、色彩は画面構成の一要素であり、モチーフにどのような色を載せるかという恣意性は高くなります。

一方、映像科の学科試験では、映像的な「シークエンス(場面と言い換えてもいいでしょう)」を表現することが求められます。つまり映像科の試験において、自分が表現したいシークエンスに対して、どの色を主調色に持ってくるのかは「その出来事が起きている場所はどこなのか、季節や時間帯はいつなのか、その出来事を見ているのは誰の視点なのか、その人物は何を思っているのか」といったシークエンスの諸条件から決まる、ということです。明度-彩度-色相という技術的な面から発想した色使いは、しばしばシークエンスを表現するという目的からズレてしまうことに注意しましょう。

たとえば、リンゴの色を決める時、デザイン系では、形態と色彩をいかに構成するかという、抽象的な関係性から考えてゆきます。このとき、リンゴの固有色を使わないという判断も十分ありえます。それに対して、映像科では、たとえばリンゴの色を敢えて青くした場合、そのシークエンスに「青いリンゴ」が登場する根拠があるかどうかが、問われてくるということです。

映像科志望も押さえておいた方がいい、色相・明度・彩度という考え方

さて、いろいろ前置きが長くなりましたが、こうした違いさえ理解しておけば、色鉛筆は感覚テストで、シークエンスの雰囲気を表現したり、シーンの焦点を際立たせるための有効なスパイスとして使用できます。色相・明度・彩度という、3つの属性で色彩を考えられるようにしておくことは、映像科の対策でも憶えておいて損はないでしょう。

色彩は、色相・明度・彩度という3つの属性で考えることができます。

fig1

・色相
色相は赤、黄、緑、青、紫といった色の違いのこと。この色相を並べたものを色相環と呼びます。色相環の反対側に位置する色同士は、反対色もしくは補色と呼ばれ、最も対比が際立つ色の組み合わせとなります。

・明度
明度は文字通り、色の明るさのことです。明度を上げていくと明るくなり、明度を下げていくと暗くなります。

・彩度
彩度は色の鮮やかさのことです。彩度を上げていけばビビッドな色になり、彩度を下げていけばカラーの無い白黒になります。絵具や色鉛筆は、異なる色を重ね合わせると、濁った色になり、彩度が下がることに注意しましょう。蛍光色は特に彩度が高い色です。

シークエンスを際立たせるために、補色を利用する

さきにのべたとおり、映像科の試験において重要なのは、たんに抽象的な関係性から色が設計されていることではなく、映像を表現するという目的に合わせて色が選ばれている、ということです。しかし、特に映像で焦点となるような人物やモチーフを表現する際、補色対比が使えることは、いざというときプラスになるでしょう。補色とは、色相環の反対色同士のことです。2つの補色を組み合わせることで、対比的な色の組み合わせを作ることができます。

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色鉛筆でテクスチャを作る

色同士の組み合わせよりも重要なのが、鉛筆のタッチでつくるさまざまなテクスチャです。色鉛筆の尖り具合、描線の方向、画用紙の凹凸、ガーゼなどを生かして、いろいろな質感を表現できれば、感覚テストにおける色鉛筆の使い方はぐっとひろがるはずです。制作の中で実践していきましょう。

fig3