カテゴリー別アーカイブ: 新宿校

人物表現と巨匠達

こんにちは。油絵科の関口です。

6月は昼間部も夜間部も人物課題が入っていますね。人物は静物と比べると色々と難しいところが多く、それなりに力がある人でも失敗する確率が高い課題です。形態が複雑な上、生身の人間はじっとしてもくれません。生きてるんですから、当然感情だってあります。そんな事を踏まえながら絵を描く訳ですから、上手く描けないのは、ある意味当然なんです。

そんな受験生の皆さんにお勧めしているのは、デッサンの模写です。特に名だたる巨匠達のデッサンを模写する事は、とても勉強になると思いますよ。

ミケランジェロ
このデッサンはシスティーナ礼拝堂天井画の為のものです。ミケランジェロ位になれば人体全体のフォルムは当然把握していたと思いますが、格パーツのディテールの一つひとつを確認するように描いているのが分かります。

上のデッサンを元に描いたと思われるフレスコ画(壁画)。

フレスコは一気に描き上げなくてはならないという制約がありますから、描く時に迷いを残したくなかったのかもしれません。巨大な壁画であり、当然足場が組んであるので、下がって見ることも難しかったでしょう。にもかかわらずこのクオリティー。レオナルドと並んで評されるルネサンスの巨人です。

ルーベンス

この人のデッサンは正しく達人の領域。自身の制作の為に描いたものも当然ありますが、多くはルーベンス工房で働くお弟子さん達に渡して、途中まで絵を描いてもらう為のものと思われます。(メインの仕上げはルーベンス自身が行っていた筈です)絵画空間の把握や強弱の的確さにおいて、この人の右に出るものはいないのではないでしょうか?異素材を組み合わせているにも拘らず、全く浮くこともなく、見事に空間の中に収まっています。

こちらも上のデッサンを元に描いたと思われる油絵。

デッサンと比べると、かなり変更も加えられているので、ルーベンス自身がほとんど描いている可能性もあります。気合が入った中期の傑作です。(本物は3枚組の祭壇画で、両脇に一枚ずつ半分の大きさの絵があります)

アングル
顔はまるで精密機械の様な正確さで、しっかり丁寧に描写しています。(このデッサンはアングルにしては顔の表情がちょっと硬いかな?でもきっとモデルさんそっくりなんでしょうね…)顔とは対照的に、服には遊びの線を用いているにも拘らず、ゴージャスな雰囲気を捉えています。この対比がアングルのデッサンの真骨頂とも言えます。この辺が油絵では決して見ることの出来ない、アングルの隠れた一面です。

シーレ
力強くシンプルな線を用い、形は大胆にデフォルメしながら描いています。クセの強さはありますが、それも含めてシーレの魅力です。受験生なら、誰しも一度はシーレの魅力に惹かれて虜になる…とも言われています。少し絵を勉強すれば見えてくる、分かりやすい上手さがその要因と思われます。

人物は奥が深いので、焦ることなく、じっくりと取り組んで勉強して行きましょう!

芸大デザイン総合コース

こんにちは。芸大デザイン総合コースです。

5月は通常課題に加え校外授業や、日本画/工芸科との合同課題、短時間クロッキー特訓などのイベント課題を行ないました。普段とは違う刺激や視点を発見できたのではと思います。

 

リサーチ課題 新宿御苑 学生作品 温室パウンドケーキ パッケージ

 

葛西臨海公園 

 

リサーチ課題 葛西臨海公園 学生作品 

 

 

日本画科/工芸科/芸大デザイン科コース 合同課題 花3種の平面

 

短時間クロッキー特訓 描画材自由 講師も一緒に描いています。

 

来る6/17(日)リサーチTシャツ制作を行ないます。新美から新宿公園へ散策し、スケッチ、ドローイングを基にデザインします。ヘビーウエイトTシャツと描画材は用意しております。ふるってご参加ください。??

 

彫刻科 近況

彫刻科昼間部講師の氷室です。
早いもので、5月も後半ですね!
6月を乗り切るとすぐに夏期講習が目前です
この時期には、積極的に方法探しや道具選びにも自分なりに研究していって欲しいですね!

彫刻家の舟越保武さんは、本の中で
「私は、毎日デッサンをしているのだが、しょっ中同じ様な失敗を重ねている。
横道に外れる時と同じ様に、はじめから細部にこだわると、全体の形が壊れてしまう。
いくら細部を描きこんでも画面全体の幹を忘れた細部は、かえってぶち壊しになる。
樹木を描くにしても、幹がしっかりしていなければならない。小枝や葉がなければ樹にはならない。」
と、デッサンについて書かれています。あの有名な作家さんであっても、みなさんが今、体感し考えていることと同じ事を考えているんですよね。
彫刻家においては、特に切っても切れないテーマだと思います。
だからこそ今の基礎が大切なんです!

さて、ここから最近の秀作を紹介します!


春期講習から取り組んでいたラオコーンの模刻です。私は初めてラオコーンの模刻を見ました!
量も大きく、動きの激しい像を模刻するのは難しかったと思いますが。作者は真摯に制作に取り組んでいました!その結果がどれほどの自信に繋がることか、感心させられます!
心棒の作り方から模索し、大きく粘土を扱える経験は、今後にも活きてくることは間違いないですね!


自主的に取り組んだ自刻像です!骨格から意識し、人間であることを問う作業。
鏡で自分を見る作業では、3次元的に形を捉える事が難しいので、思っている以上に後頭部側を意識せねばなりません。シンプルに学ぶ事が多い、この時期ならではの自刻像は非常に魅力的な作品でもあります!

ここからの3枚は自画像です。
こちらへ向けられる眼差し、洋服の色までも伝わる様な取り巻く空気。なんとも言えず、内側で無意識に感じていることが表現されてしまう。
彫刻とは何なのか、特有の何かを感じる3枚が揃いました!


頭部の印象はもう少し構造的に強さが欲しいですが、動きやねじれ、形がとても丁寧に描かれています。アムールの特徴に良く迫れた1枚です!


こちらは、現役生のデッサンです!
視点もあり、ここまでフォーンを表現出来る実力!凄いです!炭がピタット動きに張り付いており、綺麗ですね。

今回はここまでです。
上手く自分のリズムを見つけて、新しい事を探し発見する1学期にしてください!!

展示のお知らせです。
7月2日から14日まで いりや画廊にてグループ展が開催されます。
もし良かったら足を運んで頂けると嬉しいです。
http://galleryiriya.com/


どうぞ宜しくお願い致します。

通信教育:オーキャンMAP2018作りました

こんにちは、通信教育の講師の土屋です。

先日6月タームの課題を発送しました。

その際に、オマケ?として(だいたい)全国美術系大学のオープンキャンパスMAPを同封しました。

オモテはちょっとした路線図付きの主要美術大学、

ウラは東北から沖縄までの各校オープンキャンパス日程をまとめてあります。

念のため、出かける前に、各大学の発信している最新情報をチェックしてくださいね。

ターナーについて思うこと

こんにちは。油絵科の関口です。
今年の5月は気温の乱高下が激しく、体調を壊した人も多いのではないでしょうか?

さて今回は新宿の損保ジャパンで行われているターナー展についてお話しようと思います。僕もつい先日展覧会を見てきました。今回の展示では水彩を中心という構成でしたが、ターナーは水彩の扱いがとても上手なので、興味のある人は必見です。

ターナーはイギリスを代表する風景画の巨匠です。
イギリスはヨーロッパの大国の1つですが、大陸から切り離されているせいか、ルネサンス、バロック、ロココという美術界の大きな流れに取り残されてきた様な印象があります。
そんな中で、ターナーは彗星の如く現れ、19世紀イギリスロマン主義の画家として活躍しました。印象派の先駆けと言っても良いような作品を数多く残しています。
今でもイギリスは国立の美術館がターナー賞というものを設立し、50歳以下のイギリスで活躍する美術作家を表彰しています。イギリス人にとってターナーは特別な存在なんでしょうね。

このターナーも、初期の頃はかなり緻密に描いています。10代後半には既にかなりの力を身につけていた様子でした。近くでよく見ると、鉛筆ではなく、薄い茶色いインクの様なもので下描きをして、その上に水彩を使って描いているのが分かりました。
初期の頃に描かれた下描きの茶色は、セピア(イカ墨)のインクか、没食子(もっしょくし)と言われる、ブナ科の植物に出来たコブ(蜂が木の若芽に卵を産み付ける事でできる)から取れた汁を化学反応させて作られたインクだと思われます。どちらも劣化や退色などで保存や扱いが難しく、現代では殆ど描画材として使われていません。

それから、よく見ると初期の頃と晩年では、青の色味が違います。これは1824年に人工ウルトラマリンが発見された事に起因するのかもしれません。天然のラピスラズリは高価だったので、丁度この頃に安価な人工ウルトラマリンが絵具に採用されたのではないか?と僕は思っています。

1817年の作品

1827?28年の作品

あともう一つ。僕が作品を見て考えたのは、日本でターナーの人気が高い理由です。水彩画が多く、親しみやすいというのもありますが、作品の中に空気遠近法が多用されているのが原因ではないか?と思いました。湿度が高い日本人の感性と、どこかシンクロする部分があるのかもしれませんね。
これから先、鬱陶しい梅雨空になった時に、ふとターナーの事を思い出してみるのも一興かと思います。それでは今日はこの辺で。

追記:5月25日(金)?6月3日(日)
新宿のギャラリー絵夢さんでグループ展を行います。出品は2点の予定ですが、お時間のある方は是非お越しください。
http://www.moliere.co.jp/galerie/