カテゴリー別アーカイブ: 彫刻科

もう1学期も後半戦です。

こんにちは!彫刻科の小川原です。今日は前回に引き続き社会人講師の紹介をしたいと思います。昼間部では彫刻論の第2回目を行いました。彫刻論で紹介した作品の写真とともにそれぞれの先生にコメントをもらいました。

氷室幸子先生は、僕の芸大時代の同級生で、6年間一緒に大学で彫刻を学んだ仲です。まさに切磋琢磨の関係!作品に対するコンセプトが非常におもしろい作品です。毎作のモチーフとなるものはどこか人の気配を感じさせるもので、それが時とともに形を変えていく事が果敢なくもあり、また美しくもあります。
ブランコ
ブランコ
口紅
口紅
のど飴を素材にして鋳造する作品です。ゆっくり溶けながら形が無くなっていく半面、甘い香りが、質量を増して空間を占めていきます。

竹邊澄子先生は僕の大学の後輩です。テラコッタで具象をつくるという点で、僕にとってかなり近しい存在です。やわらかな曲線をもつ人物彫刻で、物語性のある作品を制作しています。
竹辺アップ
Boy,boy
テラコッタ H178×W60×D50cm
東京芸術大学の卒業制作作品です。表面が滑らかになるまで形に迫り、素材の新たな質感を追求しました。
竹辺2
Alice
テラコッタ H140×W60×D50cm
東京芸術大学大学院在籍時の作品です。釉薬で着色した義眼を使用しています。自分を追求する不安と迷いを、少女の像に重ねました。

こうして見ると、作品に対するアプローチって本当に人それぞれですよね。何かの模倣でなく、自分の中の真実に近づけば近づくほど、生まれてくる作品も全く違うものになります。そういった意味では、作品って自分を映し出す鏡みたいなものなのかも知れません。

さて、これで彫刻科の社会人講師の紹介は一通り終わりました。ここで彫刻科の学生の授業作品の一部をお見せしたいと思います。
昼間部では5月に大型組み石膏静物ライティング課題を行いました。ベーシックな課題だけでなく、こうした特殊な課題も実力を底上げしていく上で非常に重要です。
組み
今回は経験に応じて木炭紙のサイズを通常のサイズと倍版サイズ選択して行いました。制作期間が
4日と、物量に対してやや短いところもありましたが、力作が多く並びました。また2学期にさらに力をつけたところでもう一度やってみたいと思います。
K,S君の作品。倍版ですが、全体をバランスよくコントロールできています。5月の時点ではなかなか良い出来といえます。ただ、作品性で見ると、手前のアポロンに頼りすぎている部分があるので、他のモチーフの魅力もさらに引き出していきたいです。
20130528大型組み石膏2

指導無しで行ったヘルメスの頭部模刻です。ヘルメスは動きも表情も難しく、物量もあるのでなかなかいい作品が出る事は少ないですが、この時期自力でこのレベルの作品がつくれたら立派なものです。構造ではまだまだ不満な点が多いので、さらに視野を広げて像の印象から外れないようにフィニッシュさせたいです。K,S君の作品(今年はK,S君が2人います)
ヘルメス

さて次は夜間部の作品です。5月の末に組み石膏のデッサンを行いました。経験が少ないと1体描くのも手いっぱいになってしまうものですが、なかなかの力作を完成させる事ができました。
K,Kさんの作品。調子や空間にやや問題を残すところがありますが、素直な観察と、粘り強い描写が魅力的な作品に仕上がっています。何より「描くのが楽しい」というのが伝わってくるのが良いです。20130603組み石膏菊池

U,T君の作品。奥のフォーンの脇が空間に馴染んでいない事や、ホーマーからフォーンまでの隙間の距離感がやや潰れているのがもったいないですが、光、陰のバランスや、コントラストのコントロールがとても良く出来ています。
20130603組み石膏臼田

先日行った鶏の塑像作品です。動物は常に動くので、モチーフの構造をきちんと分析し、理解しながら形にしていく事が必要です。表面の凹凸を追うだけではいかにも作り物っぽくなってしまうので、骨格や筋肉もイメージしながらつくれると良いです。
K,Kさんの作品。全体のバランスがよく、まず、きちんと2本の脚で立っているように見えるのが良いです。頭部、尾羽、脚と、表現を密度に頼れる部分は完成度が高いですが、逆を言うとそれ以外に形としての意味を十分に与えられていません。表情の少ないところほど、構造としての強さをより引き出すつもりでやり取り出来ると良いです。鶏

もうすぐ1学期も終わり、夏期講習会が始まります!夏期講習では各期現役芸大生によるデモンストレーションを入れていきます。普段なかなか見れる機会の無い事ですから、是非このチャンスに何か一つでも得るものがあればと思います。僕たち講師もどんどんデモをして盛り上げていきますので期待していて下さい!

新宿美術学院 新宿校 彫刻科の紹介。

こんにちは。新宿美術学院彫刻科主任の小川原です。今日は彫刻科の紹介をしたいと思います。
彫刻科昼間部では年間を通じて、芸大、美大の彫刻科受験に欠かせない基礎力を強化していく事を目的としたカリキュラムをベースに、応用力を鍛える課題も要所に織り交ぜ、近年多様化しつつある試験内容に対しても100%の実力を引き出せるよう、総合的な力を身につける為の指導や課題編成を徹底しています。さらには個々の特性を把握した上で、どうしたら最も効果的に上達に結びつけていけるかを講師間で分析、共有し、生徒それぞれに対しての最適な指導を常に模索しています。昼間部は日々着実に実力を伸ばしていて、ここ最近になって表現力が大分身に付いてきたと実感があります。さらに、一つの「作品」としての完成度や魅力をさらに高めていけるようそれぞれの努力に期待しています。
夜間部では特に基礎力の拡充に重点を置き、毎回の課題で学んで欲しい要点をはっきりと提示し、着実に実力をあげ、経験値を積んでいけるよう丁寧で細やかな指導を心がけています。現役生は成長の伸びしろがたっぷりあるので、まさに日々の授業が勝負といえます。上達するチャンスを一つも逃さない為に、新美の彫刻科夜間部では毎日必ず講師が出講し、指導に当たっています。今年の夜間部は実力も向上心も非常に高く、課題ごとに実力を上げていることに日々驚かされます。少しずつ新しい事を覚え、出来る事が増えることはとても楽しい事だと思います。この調子でどんどん吸収していって欲しいです。

今年の彫刻科は社会人講師4名、学生講師2名の計6名で指導に当たっています。どの講師も非常に指導経験が豊富なので、指導がとても充実しています。生徒の皆さんには是非それぞれの講師とじっくりコミュニケーションをとって、幅広いものの捉え方を学んで貰えたらなと思います。

先日夜間部で彫刻論を行いました。彫刻論では、扱う素材も表現も異なる社会人講師4人が順番に自らの作品をプロジェクターを使って紹介しつつ、彫刻に対する考え方や、取り組み、そしてその変遷について話をしてもらうことで、彫刻に対するより明確なヴィジョンを持ってもらう事と、今予備校で学んでいる事が、いかに重要かということを再確認してもらう事、あとは単純に彫刻に対する興味をさらに強く持ってもらう事を目的としています。
夜間部第1回は僕、小川原と根岸先生が行いました。1学期末の第2回を氷室先生と竹邊先生にお願いしています。昼間部では第1回に小川原と氷室先生、第2回に根岸先生と竹邊先生。2学期に昼間部、夜間部ともに小川原と根岸先生が第2編を予定しています。
ここで講師の紹介を兼ねて、彫刻論で紹介した作品の一部を紹介します。

夜間部第1回彫刻論 小川原隆太 第1編
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僕の第1編では芸大の学部の卒業制作、院の修了制作から、修了後の3点の塑像作品を制作工程を含めて順番に紹介しました。2編ではその後木彫に変化した経緯を話し、作品を解説していこうと思います。
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今日も空は高く
2007 ?H.140×W.200×D100cm
テラコッタ 桜
東京芸術大学院修了制作作品です。肌と服の色の違いは土の種類の違いによるものです。作品を取り巻く空間や、作品の中にある、あるいは鑑賞者との関係性について考えました。この作品は東京芸術大学大学美術館に収蔵されています。
ガラス首5
untitled
2007 ?H.30×W.30×D.30cm
ガラス 木
こちらも修了制作作品です。気泡の無いガラスの塊で出来ています。ガラスは、塑像原型→石膏取り→石膏原型→シリコン取り→ロウ原型→耐火石膏型→脱ロウ→ガラス流し込み。と、非常に手間がかかる上、あまり大きなものが出来ませんが、それを素材の魅力が補って余るものがあります。
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朝日は大地に目覚めの時を知らせる
2009 ?H.160×W.160×D.250cm
テラコッタ
牛も人物も実物大なので非常に大きな作品です。この作品も場所によって土の種類を変えて色をつくっています。物語性を意識して制作しました。
c
life
2010 ?H.200×W.290×D.175cm
石膏
10人の人が一塊になっている作品です。粘土を3トン使用しました。社会の中の自分、という事を深く考えた時期で、人間同士の関係性についての表現に最も力を入れた作品です。この作品が僕の最後の塑像作品となり、木彫に変わっていきます。

僕は具象作品を制作しているので、生徒達には分かりやすかったかと思います。直接的にデッサン力や塑像力を必要とする作品なので、その重要性も少なからず伝わったでしょう。

根岸創 第1編
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根岸先生の第1編ではこれまで制作してきた数多くの作品をどんどん紹介していきました。それぞれの作品の関係性や、進化、変化が分かって思わず合点がいく場面もありました。ジブリ美術館や、JAXAへの作品の関わりなども非常に興味深かったです。
4.時計台
Winged Clocktower
2012 ?H.350×W.380×D.380cm
ステンレス、銅、時計含む配線関係
曙橋駅にある東京都立総合芸術高等学校に設置された時計台をデザイン、制作しました。
1.プリックリー
Prickly Leaf(M)
2008 H.70×W.30×D.20cm
鉄、ポリエステル樹脂
中心に向かう鉄の棘の先端に黄色い透明樹脂で肉付けし、その周りにも青い樹脂でさらに肉付けをしています。裏から光をあてることで色の変化がより美しく見えるはずです。
2.ドラゴン
Carillon Dragon
2004 ?H.220×W.310×D.130cm
「Carillon」とは教会などに見られる組み鐘を意味しており、この竜骨のオブジェ自体がバチで叩いて音を奏でる「楽器」であることを目的として作りました。
3.crown
Crown
2005 ?H.30×W.20×D.30cm
ステンレス、鉄、ガラス、ライト
王冠をかぶった孔雀鳩のランプです。
ステンレスで網目状に本体を作り、吹きガラスの職人の方にガラスを吹き込んでもらいました。

根岸先生は僕とは異なる素材や作品の方向性をもっているので、それを同時に見せることができてとても良かったです。これまで積み重ねられたキャリアが物語る作品の数やクオリティの高さを実感してもらえたと思います。
次回は氷室先生と竹邊先生を紹介します。

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